旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅺ 惑星ファンタム ルダ王女と揚羽と時々土門

 

 第20話から第22話に及ぶ大ボリュームを擁するのが惑星ファンタムにおける一連のエピソードである。

 大まかに分けると第20話=惑星ファンタム到達と探査開始に超常現象の頻発、第21話=ヘルマイヤー少佐の登場と、惑星ファンタムの正体の判明、第22話=土門・揚羽両名によるルダ王女保護とグスタフ中将による惑星ファンタム破壊のフェーズとなる。

 

 

 

 作品中の立ち位置

 ヤマト2であったテレザートエピソードに近いと言えるだろう

 

 島とテレサはヤマトがゴーランドと戦っている最中も通信していた為、テレザリアムに招待された時点ですでに深い仲になっていたと言えるから、厳密には条件が違う――が、エピソードのボリュームも中身の傾向も丁度同じ程度。

 さらに言えば、テレザートエピソードは初めから26話予定だったといわれるヤマト2の中では中盤戦に位置する。一方で、ヤマトⅢは50話放送予定だったと言われる。つまり、ファンタムエピソードは50話予定の構成においては概ね中盤戦に位置すると言えるだろう。この点も同じ。

 と言うようなことから、テレザートエピソードに比定した

 

 

 

 ――惑星ファンタム上陸(第20話) ――

 あまりにも美しい惑星ファンタム。地球に似た、それも古の豊かな自然あふれる様……しかし驚愕すべきはそればかりでは無かった

 上陸した面々がそれぞれ、沖田艦長や古代守。あるいは自身の両親など……愛おしく懐かしい人々の姿を目撃したのである。

 

 ――他方、デスラー総統は古代たちが見た幻の報告を受ける(第21話)――

 この古代たちの意味不明な報告――というより問いかけを聞いたデスラー総統は結構動揺。ガルマン・ガミラスの名誉をかけた情報提供が、この疑惑発生である。ヤバい

 総統は直ちに惑星ファンタムの実態調査のため、地質学のプロであるヘルマイヤー少佐を派遣した。

 細かい事を云うと――第20話でボラー連邦とのホットラインを再開させた際、驚いた様子を見せたタランに当たっていた事を考えるとすでに機嫌が悪かった様子。それほど、古代やや地球をぬか喜びさせた太陽制御失敗が堪えていたらしい。挙句、ベムラーゼ首相に頭を下げヤマトへの攻撃をしないように要請したら老いただの何だの言われて……。ファンタムが碌な最期を遂げないのは事は実はこの時すでに決定していたようなものだったのだ。

 

 

 上陸したヤマトクルーが惑星ファンタムの温暖で快適な気候でくつろぐ中、ヘルマイヤー少佐が到着。これで話の片が付くかと思いきや、話はむしろややこしくなる

 なぜなら、ヘルマイヤー少佐もまた、幻を見てしまったのだ。つまり、惑星ファンタムにガルマン・ガミラス本星とそっくりな景色を見たのである。挙句町まで出来ていたし、カメラにも幻影がそのまま投影されたのだった。んな馬鹿な……

 

 超常現象発生だ。

 

 ヘルマイヤー少佐はヤマトクルーと接触し、やっぱり何かあると確信。他方で、アナライザーは惑星ファンタムが発するスーパーサイコエネルギーとやらが原因であると報告する。

 つまり、ファンタムは惑星ではなく――コスモ生命体だったのだ。と。この現象は恐らく、宇宙の厳しい自然と外敵から身を守る為であろうと真田さんが推測する。

 なるほど、筋の通った説明だ。だが、しかしながら、物証はない。ヘルマイヤー少佐は物証を得る為に地殻にドリルを撃ち込み中心部の探査を行う事とした。

 アナライザーは生物相手だからと抗議するが――他人の調査結果を鵜呑みにして帰るわけにはいかないとヘルマイヤー少佐は突っぱねる。そりゃそうだよ、彼も科学者なんだから。

 

 だが、案の定というべきか――ドリルをぶち込まれた惑星ファンタムは身もだえるようにその姿を変化させ、地表は無数の触手に覆われる。ヘルマイヤー少佐の調査船も危うく巻き込まれかけ、ヤマトクルーの例外では無かった。

 両者とも間一髪、離脱に成功。しかしながら成す術なく、極めて危険な状況であった。

 

 

  ――土門と揚羽――

 一方その頃、父母の幻影を見たりと色々あった土門と揚羽。この仲良しコンビが、見知らぬ美女の姿を見かける。そして二人はその幻影に導かれるようにして惑星ファンタムの中心へと駆けた。

 惑星にしては不気味な、めくるめく生物的な地質の変化。そしてたどり着いた先には――二人を呼ぶ声。惑星ファンタムの中心生命体が呼びかけていたのである。

 なぜか? それは大切なルダ王女を託すためだった。ボラー連邦、ガルマン・ガミラスの注目を集めてしまった惑星ファンタムは、すでにルダ王女にとっては安住の地では無かった。しかしながらコスモ生命体でしかない惑星ファンタムには、彼女を母星へと送り届けることはできない。戦う事も出来ない。

 だから惑星ファンタムは、ルダ王女を託すべき心優しき揚羽と土門を中心部へと呼び寄せたのである。草花を愛で、一方で故郷の父母を大切に思うその心が、ルダ王女を託すにふさわしいと、惑星ファンタムは判断したのである。

 

 ――ちょっと待て。草花を愛でる、というが……花摘み取ってましたよね土門君は……。あれ惑星ファンタム的にはOKなんですか?

 

 

 

 ――ファンタムの最期(第21話ラスト~第22話)――

 ヘルマイヤー少佐の報告に激怒するデスラー総統。総統の、帝国の顔に泥を塗った惑星ファンタムを粛清すべく、北部方面艦隊のグスタフ中将に同星の破壊を命じた。

 

 何で総統がこんなに怒っているかというと第20話で総統はベムラーゼ首相にわざわざ通信を入れて、ヤマトの邪魔をしないように休戦を申し入れていたのだった。かつてのスターシャが総統にホットラインをつないで抗議を入れたように、である。しかも、プライドの高い総統にしては、結構お願いベースの発言

 にもかかわらず、腹立たしい事に――これを弱みと受け取ったベムラーゼ首相は「老いたな」などとのたまって、申し入れを拒否する。

 

 太陽制御に失敗し、挙句のこの不愉快な思いまでしての惑星ファンタム

 それが惑星では無かったなんて――一般人だろうが国家元首だろうが腹立たしいことこの上ないだろう。しかも、カリスマがこの仕打ちを受けるというのは色んな意味で窮地。

 総統がブチ切れてファンタム粛清を命じても不思議ではないだろう。いや、惑星の粛清に関しては議論の余地もあろうが、総統の心情もまた察するに余りある。

 

 

 惑星ファンタム周辺域へとワープアウトしたグスタフ中将率いる北部方面艦隊ワープアウトとほぼ同時に惑星破壊ミサイルの発射体制に入った。

 超能力でこの危険を察したルダ王女――の騒動が色々とめぐりめぐって、艦橋まで話が入る。そこで古代は、グスタフ中将に通信をつないで攻撃中止を要望した。しかし、総統と古代、どちらの話を聞くかといえば……答えは初めから出ているようなもの。グスタフ中将は古代をガン無視で通信をぶった切り、発射命令を下した。

 

  そもそも論として他国の軍司令官に対して他国の軍司令官が、共同作戦を行っているわけでもないのに、軍事行動の中止を申し入れるというのが――果たして妥当なのか。しかも、居住不可能と判明している以上は地球にとって何の価値もないのが惑星ファンタムである。総統の友人という立場ならばまだしも地球防衛軍の軍人としての通信であるのだから、地球の利益にならない申し入れには全く根拠がない。

 加えて、その所在はボラー連邦とガルマン・ガミラス帝国の境界線。ハーキンスが通信を入れて猛抗議するならば、国境付近での軍事行動に対する正当な抗議であるが、地球防衛軍に属する一介の軍司令官に一体何の発言権があるのか不明

 つまり、古代の要請は下手をすれば内政干渉に当たり、極めて危険

 さらに攻撃中止を申し入れた際の古代君の発言は全く意味が解らなかった。「地球に似たとても美しい――」って何が何だか……。

 惑星ファンタムのコスモ生命体としての姿が美しいかどうかは別として、地球とは外観も性質も全く異なる有機物。根本として惑星ファンタムが地球に見えるのはスーパーサイコエネルギーによる幻覚であることがアナライザーの調査で、古代も知っているはず。なのにこのような事をのたまう――そんなことを延々とまくしたてられては、グスタフ中将も辟易するのも無理はない

 グスタフ中将からすれば……目の前に映る古代は、やべぇ新興宗教に洗脳された信者そのもの。判断力を喪失していると思われてしまっても仕方がない。しかも、古代はヤマト艦長の権限を以てグスタフ中将と交渉をしているが、やはり中将からすればお前に何の権限があるのか。といった具合になるのは当然。そりゃ古代に従わんわ。

 

 

 

 

 ヤマトⅢにおいては色々と残念というか、話の筋道がとっ散らかった発言の多い古代だが――総統の命令が「無法な命令」という抗議も疑問でしかない

 領域内か微妙なラインだが、支配権が及ぶならばガルマン・ガミラスに惑星ファンタムは好きにする権利がある。これは断言可能。ガルマン・ガミラスの権威は2回続けての失敗で失墜気味だし、地球もぬか喜び2回目。前述の通り、友人のために敵に頭を下げたら馬鹿にされたという前段階もあるから……そりゃ総統もキレるわ。腹立ちまぎれに惑星をぶっ壊すのも当然。まして、人が住んでいないのだし

 先に述べたが、惑星ファンタムの処分に対して抗議できるのは利害関係を持つ存在、つまりボラー連邦、惑星ファンタム、或いはシャルバート星(ルダ王女)のみ。それも、どちらかと言えば道理の部分であり内政干渉に近い。また、実際に口出しできる力と国内事情があるのはボラー連邦のみ

 利害関係にない地球人である古代が騒ぐのはお門違いだ。地球ないし古代、或いはヤマトがシャルバートの代理人であるのならば話は別だが、劇中一度も代理人という立場にならなかった

 小僧古代君、色々と勘違いも甚だしくないかい?

 

 このエピソードで興味深いのは、一人激怒する古代に対し島が「デスラーにはデスラーのプライドがあるんだ」とまさかのフォローに入るという――ヤマトⅢでは、どういうわけか島君の方が大人である。

 まあ、島君が割と大人というか古代のフォローに回るのは珍しい事ではないが、際立ったシリーズ。一方で古代君はどんどん子供じみていくから始末に負えない……。

 

 

 もし整合性のある展開にリメイクするならば……

 グスタフ中将に攻撃中止を申し入れ同時にデスラー総統の名前を出し、そちらに直接話を通すからちょっと待ってろと、デスラー総統と古代の個人的関係とグスタフ中将の総統への忠誠心を利用して攻撃を足止めさせるのがベストだっただろう。というより、この方法以外グスタフ中将を止めることは不可能。

 結局、惑星ファンタムは破壊される結果になっただろう

 だが、実際に放送された第22話の稚拙な交渉シーンや、そこからくる古代君の狂信者の様な姿をさらすこともなかったはず。

 

 

 

 さて、実はこの時、ハーキンスが警戒衛星を通してルダ王女のヤマト乗艦を目撃していた。こいつらの警戒衛星、どんだけ性能良いんだよ……。この報告を重く受け止めたベムラーゼ首相は二個艦隊からなる巨大艦隊をルダ王女奪還目指して出撃させる。

 他方でヘルマイヤー少佐もまた、同じようにルダ王女の姿を確信では無いものの目撃、総統に報告を入れて結果――グスタフ中将はそのままヤマト追跡に赴くこととなった。 

 

 

 なげぇよな、この惑星ファンタムのエピソード。もうちょい、スリム化出来た気がする。確かに、私のヒューマンドラマに対する評価が異様に辛い事のは事実だが……でも3話は長くないかい? 

 実はこの後、揚羽とルダ王女に関してはスカラゲック域とシャルバート星でのラブストーリーもあるのだから……やっぱりもう少しエピソードのボリュームを小さくできたと思う。他方、このエピソードから土門は影がどんどん薄くなってしまい――これじゃ、何のために今まで古代・土門・揚羽トリプル主演風演出をしてきたのか、彼らの内面的成長を深く掘り下げたのか、意味が解らなくなる

 挙句、放送話数が短縮された結果とはいえファンタムエピソードが残り話数を圧迫し、以降のエピソードが全てケツカッチンになってしまい、内面を深く掘り下げることが出来なくなった。このファンタムエピソードいわば……帯に短し襷に長し、無きゃ無い方がいいエピソードになり下がってしまったのである

 

 

 はっきり言って、これほどに大きく広げた風呂敷は普通、畳めないってば。1年間の放送でも、ひょっとすると彼らの人間ドラマは折りたためなかったと思う。なのに2クールじゃねぇ。視聴率とか製作陣に気にする人いなかったんかい……。

 

 

ストーリー考察Ⅹ 巡礼船との遭遇

 

 

 太陽制御失敗を目撃した古代ら。そのお詫びにと、総統はヤマトにガルマン・ガミラスの周辺域にあった惑星ファンタムの情報を渡す。

 惑星ファンタム、未知の惑星へとヤマトは旅立った――第18話ラストの話である。

 

 そこから話は飛んで翌第19話――冒頭のヤマト艦内のシーンは……航路計算がおかしい時点で何か気が付けって話だよねそれは別として、宇宙移民本部のシーンはひどかった。現実感があり過ぎて恐ろしいほどのリアリティ(超☆皮☆肉)。何じゃあの会議は。

 

 

 吊し上げ会議

 居並ぶ面々は恐らく政治家だろう。こいつらは計画の進行がうまくいかない事を全て藤堂本部長に責任をおっかぶせようと躍起になっていた。つまり、太陽が制御できなかった、今現在地球に物凄い被害が出ていると長官に詰め寄って――って、大して役にも立ってないくせに、威張って言うなや貴様らつーか、何で本題に入る前にマウント取ろうとしとんねんしかも、一回目の太陽制御失敗は黒田博士がしくじった。二回目の太陽制御失敗は恐らく、フラウスキー少佐が計画を立てた段階よりも燃焼異常増進が進んでしまっていた事が原因で不可抗力。要は、長官にはおおむね責任がないと言える。

 もっと言えば、黒田博士のあんな分かりやすく失敗しそうな計画を大統領にレクチャーしている、エネルギー省の見識が大いに怪しい。こちらの方を先に追求すべきだろう。彼が問題を認識しておきながら政治的理由で隠した事も事態を悪化させた原因だし。むしろ、長官はその危険性を認識して手を打っていたのだから賞賛はしなくとも、吊し上げにあう筋合いはなかろう。

 

 そもそも論として自然相手の不確定要素が非常に大きい事案は、計画がたとえ手ぬるかったとしても、余程の過失がない限りは概ね不問。過失がないのにもかかわらず不問に付さない場合は、多くが政治的なスケープゴート

 例えば、イタリアのラクイラ地震最高裁で無罪(「安全です、家にいて下さい」とミスリードした上に、インタビューの内容がレベルが低かったベルナルディニス副長官は猶予付きの禁固刑)だったし、東電の旧経営陣も結局あのクラスの津波は~と無罪、あまりに愚かで図々しい経営陣だったが、確かに3.11クラスの津波が運転中に襲ってくるか、その確率を考えれば――悔しいが堤防の高さについて経営判断を優先させてしまうのもわからんでもない。マクロ的視点が欠如していることに間違いはないが。

 まして藤堂長官はやれるだけの事をやったのだが……批判だけとは、ずいぶんと簡単なお仕事ですね

 

 さらに言えば、人類が居住可能な惑星の発見が困難を極めるなんて、はじめっからわかっていたはずだ

 なぜマゼラン雲からガミラス帝国がわざわざ地球へ移住をしてきたのか。なぜ暗黒星団帝国がボディを求めて地球まで遠征してきたのか。人類や同様の生態を持った生物が生命をはぐくむのに適した位置取り=ハビタブルゾーンにある惑星がない、あっても大きさが不適切でどうにもならない。だから地球のほかに選択肢がなかった。

 リアル(現実という意味)でも、恐怖の大魔王説もマヤの滅亡説も全て乗り越えてしまい、この2020年に至っても宇宙人が到来しない事実や、第2の地球候補が浮かんでは消えを繰り返す事実を考え合わせれば、明らかに移住先の惑星を火星以外に見つけることなど極めて困難という事は明白。そして劇中では結局火星も太陽に呑み込まれることが確実だった故、移住する意味がない。

 幾らヤマト世界では光速を突破できる移動手段があるとしても、発見に物凄く時間がかかるのは仕方がない事。発見できなかったとしても不思議はない、発見できてもすでに別の存在が住んでいても不思議はない。都合よく移住先の星が見つかるはずなど、元より無かったのだ。

 

 

 無論探査の方法については問題があるかもしれない。というか、多分重大な欠陥がある。故に攻めるならばこちらを攻めるべき。

 

 放映当時は知られていなかった事かもしれないが、どうやら銀河にもハビタブルゾーンがあるらしいという説がある。つまり、宇宙における位置は、組成が類似した惑星や構成が類似した星系であれば、銀河における位置によってその年齢が大体推測できるらしいのだ。

 宇宙の中心から遠い位置にあれば早くに形成され、早くに宇宙の膨張に伴い遠方へと移動していった星や星系。中心から近い位置にある星や星系は遅くに形成されているため、中心から十分な距離が取れていない――という事である。

 これがマクロ=全宇宙的にもミクロ=恒星系レベルでもいえることらしいのである。

 

 これが正しいとすれば、常識で考えれば、まず銀河系と同じぐらいの年齢の星系を見付けたい。プラスマイナス数億年程度の範囲内であれば、地球人にとっては多少暮らしずらいかもしれないが、生存は可能となる。つまるところ、結局は天の川銀河における銀河系と同じような位置にある星系以外に選択肢がないという事。それ以外は、よほどうまく条件が整わないの限りは、移住に適する星があるはずがないのである。

 つまるところ、こと座・ベガ方面は全くの無駄骨といっていいプロキオン方面とカシオペア方面もまた、見込みのある範囲は非常に狭い。イプシロン方面も見込みは薄い。という事は、探査ルートの設定が無茶更に、出動させる調査船団の数もあまりに少ないこれでは余計に新惑星探査がはかどらないのではないだろうかこんなに分かりやすい突っ込見どころがあるのに、なぜ見逃すのだあの会議の参加者たちは……。

 

 

 幸い(というか当然ながら)ヤマトⅢは架空の話で、現実ではない。だから、ある意味安心して見れるのだが――もし、現実にこのような根本がずれた指摘や見識で、挙句自分を曲げない上に棚に上げるタイプの人物が集まったならば、それは建設的な議論は望めない。そして、それは地獄

 最近見た気がしないでもないが……

 

 

 というのはこのエピソードの中心ではない――エピソードの中心はシャルバート教巡礼者との出会いだ。そして、腐れ縁的なハーキンス中将との第一戦である

 

 シャルバート教巡礼船

 シャルバート教巡礼者との遭遇は全くの偶然だった。信者の子供がいたずらで発進したSOSをヤマトがキャッチし、急行したために起きた事である。

 

 巡礼船は25年にわたる長期航洋とボラー連邦やガルマン・ガミラスの攻撃にさらされてボロボロになり、ついに小惑星のくぼみに不時着。以降、長期にわたってそこに足止めとなってしまった。

 SOS信号を出そうにも、天の川銀河は大抵がボラー陣営かガルマン・ガミラス陣営に属しており、シャルバート教信者に居場所はない。まずありえないだろうが、仮に同胞が救助してくれる見込みがあったとしても、SOS信号を先にボラーやガルマン・ガミラスが受け取ってしまえば攻撃にさらされること必至。だからSOS信号を打てなかった――のであるが、子供がいたずらしてたまたま発信。それをヤマトがたまたま受信したのだった。

 うん、ちょっと偶然が過ぎる全くない話では無いのだろうが、別に不自然かどうかは微妙なラインだが、「随分うまく収まったね」という表現になってしまう。

 このような展開をご都合主義というんですよね。

 

 さて、この巡礼船のリーダーである長老は、古代と通信を結ぶと救援に感謝しつつ、とつとつと、自分たちの苦境や目指す先を語る。ガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦の熾烈な戦い、迫害に次ぐ迫害を受けて来た歴史。苦難のにじむ話であるのだが――25年にわたる戦乱って、一体彼らはどの勢力による迫害から逃れて来たのか。ガルマン・ガミラス帝国ってそんな昔からあったっけ? 

 時間軸の錯綜が激しい

 まず、建国が昨年の事でそもそも天の川銀河突入が2202年以前はあり得ないデスラー総統が、ガルマン・ガミラスの出現が戦乱の起点である問い可能性は除外せざるを得ない。となると、ボラーと他の劇中に登場しなかった――設定案にあったと言われるゴーマン大統領率いるゼニー合衆国に原因を求められるかもしれないが、よくわからん。が、少なくとも長老の語ったボラー連邦とガルマン・ガミラス帝国の争いが彼らの行動の原因ではない。総統がタイムマシンを持っているのなら別だが。

 長老の話がホラではないとすれば、シャルバート帝国消滅後の速い段階で迫害対象として天の川銀河に拠する多数の勢力から危険視されたのだろう。シャルバート帝国の強さを知っている勢力であればあるほど、その傾向は強まっただろう。また、結構面倒な教義がある故、他の宗教と食い合わせが悪い為に迫害を他の国民が受け入れやすい。

 これは地球でも古代史からある話で、現在進行形でも宗教が理由で迫害される集団などごまんといる。そんな集団が巡礼の旅に出るのはよくある話。これは集団規模の大小や教義の排他的で有る無し、犯罪性の有無は全く関係ない。

 で、この苦難の歴史を現在進行形で生じている銀河系大戦とうっかり混同してしまった。というのが説明として最も妥当だろう記憶が入り混じって、実際には存在しなかった話を創作してしまう事はよくある似たような話をうっかり取り違えたりもよくある。酷い場合は、数カ月単位で前言と矛盾することを言ってしまう事もあるだろう。特に、感情が入り込んだ言葉は容易に混同を引き起こす。だって冷静じゃないから

 嘘とか騙しではないが、しかし実際には事実と異なる事を話してしまう――誰にでも一度はある事だろう

 

 まあ、迫害がなくとも戦乱があったのは間違いないだろう。ボラー連邦とガルマン・ガミラス帝国以外にも、現時点でバース星などの戦闘艦隊を運用可能な勢力が残存していたのだから、昔はもっと強勢だったに違いない。そんな彼らが殴り合い掴み合っていたという歴史が簡単に想像できる。天の川銀河って、結構アブナイ空間なのかも……シャルバート星が身を隠すのも無理はない。

 

 

 一番の疑問は、彼らの境遇に猛烈にシンパシーを抱く古代君正確に表現すれば、ヤマトⅢという作品の方向性の外観を表現する演出。この演出の妥当性に疑問が生じる

 

 安住の地を求めて、という点以外はヤマトとの共通項がほとんどないシャルバート教巡礼者。しかも、貧すれば鈍するというべきか、小惑星に降りて巡礼船に最初に乗り込んだ土門や揚羽に襲い掛かった……徹底した平和主義といえるほどの行動ではない彼らに、どうしてシンパシーを抱いたのか。これだと上から目線の憐れみに近い感情を表現せざるを得ない。

 また……巡礼船の信者を全面的に非難するわけでは無いが、長老から一言詫びがあっても良かったはず。感謝の言葉でこれに替えたのかもしれないが。

 

 若干、今までの考察というか論調から外れてしまうように思われるかもしれないが――ヤマトは明確な敵対関係にある相手以外には第一撃を加えないように、未確認や無関係の相手に攻撃を嬉々として加えた事はなかったと言えるだろう。

 ヤマトやヤマトクルーは好戦的・攻撃的性質はあるが、相手を見極めることを怠りはしなかっただから度々葛藤する。戦うべきなのかと

 ガトランティス戦役では、ガトランティスの特殊性ゆえに葛藤が見えずらかったし、ウラリア戦役では古代らに葛藤は無かった。その代わり、アルフォン少尉を通してウラリアの哀しさを見た雪が大いに葛藤していた。一応、ヤマトはヒューマンドラマの側面もあり全員が全員、毎回毎回軽々戦うわけでは無いのである

 

 しかし、バース星の騒動やガルマン・ガミラス本星での破壊工作といい、シャルバート教信者の一体どこに共感すべきところがあるのか……。シャルバート教信者をひいきして見極めたとしても、彼らが常に憐れまれる存在とは言えないだろう。

 確かにガルマン・ガミラスでは抑圧された存在であり、そこで起きた一連の破壊工作は抑圧者に対する反乱と言える。ボラー連邦とは違い、流刑ではなく処刑なのだから強い反発が起きても不思議はない。これは、ガルマン・ガミラスの方が悪い感が強い。だからと言って破壊工作で関係ない人を巻き込んでいいのかという問題もある。

 一方でボラー連邦は先に述べたように信者は割と流刑が多い。だからバース星のヤマトを巻き込んだ騒動生じたのである。しかも結果として、あまり関係のない他者を巻き込んで大惨事を招いた。

 思い出してほしいのはシャルバート教信者は本来平和を愛し平和を希求する存在だろう。だのにこの加害者傾向の強さは一体なんだと。傍観者も同罪というのであれば、まだ理解は出来るが一方でその方向へ考え方がシフトしていくとだんだんと選民思想になり平和思想とは必ずしも同じ着地点にならなくなってしまう。彼らの願いや言葉に平和の文字が溢れれば溢れるほど、彼らのを平和から遠ざけ加害傾向を強調してしまうのだ。物凄く残念だけど。

 

 宇宙に一般的に存在するシャルバート教信者は残念ながら――ただ単に現状の打開のみを望む、教義に忠実ではないタイプのシャルバート教信者。宇宙の愛とかを叫んでいたヤマトクルーが、彼らの何に共感してしまったのか

 彼らはさらば宇宙戦艦ヤマトで見た、普遍的かつ包容的宇宙の愛とは残念ながら一致しない存在としか言いようがない。これを悪と呼ぶかといえば、そこまでではないが……シャルバート教信者はかなり独善的な行動をしがちである。なのであるのだが、なぜだかヤマトクルーはシンパシーを抱いてしまった。無茶な感じが強いように思われるのだが……。

 

 まあ、長老はヤマトの護衛に感謝しているから、彼に関してはシャルバート教の教義に対して概ね誠実といえるだろう。ボラー連邦の兵士にも哀悼を捧げて欲しかったが、それがない分……長老には少々失望

 ただ確実に一ついえる事は――この巡礼船エピソードはヤマトⅢという作品には必要な演出だったかもしれないが、ストーリー展開上では無かったらなかったで構わなかった普通にハーキンスとの戦闘をたっぷり描いても、問題なかったはず

 例えば、基地建設に邪魔な原住生物を虐殺するハーキンス艦隊に鉄槌を下すヤマト、でも何の問題もなかっただろう。原点回帰的なヤマトⅢであれば、マンネリとか使いまわしなどではなくリスペクト・オマージュとして評価可能なのだから。

 個人的にはこっちの方が見たかった。

 

 

 

 ハーキンスとの初戦

 無事巡礼船の修理を終え、送り出したヤマト。しかしそこへ、ベムラーゼ首相の命を受けたハーキンス率いる第8親衛打撃艦隊が現れた。

 

 ハーキンス艦隊の出動理由は、ベムラーゼ首相が命じた予防的措置目的はヤマトの進軍阻止である

 ヤマトの目的地である惑星ファンタムは、困ったことにガルマン・ガミラスとボラーの勢力圏のはざまにあり、たどり着くにはどうしてもボラーの勢力圏に近づかなければならなかった。この脅威をベムラーゼ首相は大きくとらえた。故に、ヤマトの‟進軍”を阻止をすべく、隣接地域に展開しているハーキンスの第8親衛打撃艦隊に出動を命じたのである。

 

 高速艦艇を招集して編成されたハーキンス艦隊は2部隊に分かれ、巡礼船とヤマトを同時に仕留めようとミサイル攻撃を開始。これに対し古代はコスモタイガーで巡礼船を護衛、他方で自艦も波動爆雷弾幕を張り敵艦を射程圏に捉えると同時にショックカノンでこれを砲撃。

 ほどなくして、足の遅い巡礼船はハーキンス艦隊に捕捉されるが、これに対してコスモタイガー隊はミサイルサイロを中心に攻撃を加え見事に誘爆をさせ、艦隊を殲滅。更にヤマトも自慢のショックカノンで敵艦を全て撃ち沈めた。

 

 足の速い艦が他になかったのかもしれないし、結構昔から運用されている艦なのかもしれないが少なくとも劇中では初登場のデストロイヤー艦を集中投入するという――ハーキンス、あんた思い切った事するね。役立たんかったらどうするつもりだったんだい? よく言えば柔軟で明るい脳みその持ち主ともいえるが

 無論、ヤマトと戦うには少数で対峙するには距離をとることが大事だし、多数で対峙するなら火力が必要。デストロイヤー艦は艦砲がタイプAと同格レベルで、その上にミサイルを有しているから、遠近両用の武装を持った対ヤマトには持って来いの戦闘艦といえるだろう。また、ヤマト相手という前提条件を無視すれば、二手に分かれたのも無理はない。

 ――うん、これは戦闘考察でも述べる話だと思う。何が言いたいかと言えば、ハーキンスの行動・判断は合理的で妥当ではあるが、随分アグレッシブという事。保守的な自分からすれば、彼のような戦闘指揮は出来ないなと思った次第。

 

 そして、この一連の戦闘でヤマトはハーキンス艦隊を撃破。デストロイヤー艦は結局、役立たんかった。というか、ウィークポイントを見事にコスモタイガー隊に突かれてボコボコにされてしまう。ありゃ勝てんわ。ハーキンスは教訓を得られただろう。

 立ちはだかる敵を撃破したヤマトは探査を続行、一方で巡礼船も無事に大宇宙へとシャルバート星を求める遠大な旅へと赴いた。

 

 

 ストーリー展開上の意義としてはまず、初めて見る宇宙船を修理してしまうヤマト技術班の優秀さの描写。ヤマト技術班の能力の高さを推測・考察する上で役に立つと言えるだろう製作陣は思ってもみなかったかもしれないが、ファンはこういう所に目が行ってしまう。

 

 次いで、クルーと巡礼者の交流。この交流を通して、ヤマトの悲壮感や任務の困難さと、一方で完遂するという決意を強調したと言える。ただ、これは誰に感情移入するかによって、受け取り方が異なる可能性が高い

 もし、シャルバート教に同情的な視聴者であれば――シャルバート信者は一部の暴力的信者のせいで全体が弾圧されるいわれのない苦難を生きている。理想郷を求めて、聖地を求めてただ愚直に旅を続ける愛おしくさえある哀れで純粋な一団。という表現が出来るだろう。また、彼らに同情的なヤマトクルーの姿勢もまた、当然至極の事と見えるだろう。

 もしデスラー総統やベムラーゼ首相に感情移入している視聴者ならば――古代君の反応は非常に白々しいというか、意味不明というか。だってシャルバート教はテロリスト予備軍なのだもの。行政権者としては、容易にテロリストに転化するような集団を野放しにはできない。だから弾圧もある程度は、警察権の行使として妥当でさえある。

 このシャルバート教に対する否定的な見方をすれば――古代君は、ただ単に感受性が強すぎてシャルバート教に入信しかけの青年、にしか見えない。

 

 私は後者の受け取り方以外できない。総統支持だから。

 

 

 シャルバート教の教義がガバガバで、信者の行動があまりに残念過ぎて、あんまり効果的な演出にはなっていない。少なくとも、シャルバート教の平和を希求する存在としての表現が曖昧かつ相反しており――これ、狙ってやっているならば、人間の本質を抉るのであれば……非常に深い。恐ろしいほどに深いといえる狙ってない気がするけどね。  

 私なりに正直な表現をすれば、このエピソードはあまりにシャルバート教信者に同情的過ぎる意味不明なほどの贔屓

 意図的に悲壮感を演出しすぎて、他のシャルバート教信者の暴力的行動を一緒に見させられている視聴者にとっては……必ずしもシャルバート教は同情すべき対象ではない。なのにどんどん古代君は彼らに同情していくのだ。神の視点である視聴者からすれば、全く非合理的な展開だ。視聴者を没入させたいのならば不自然な点はすべて取り除くべき、それがこのエピソードは不完全。

 加えて、ストーリー展開上はあってもなくても構わないエピソードである為……ますます何で挿入したのかが不明瞭。ラスト近辺のシャルバート長老のご発言の薄っぺらさを考えると、あんまり深い話とも思えないし。

  結果、エピソード全体が消化不良になってしまったこれがヤマトⅢの限界なのかもしれない

 

 

 これ、私は嫌いなエピソード。最後に白状してしまった……。

 

 

ストーリー考察Ⅸ 太陽制御失敗――壮烈・フラウスキー少佐の死!――

 

 

 黒田博士の残念な太陽冷却計画に比べフラウスキー少佐の太陽制御計画は素人目に見てもかなり筋の通った内容だったはず。しかし、失敗してしまった。

 ご都合主義というか、ストーリー展開上は当然ここで失敗しなければならないのだが、それを言ったらおしまいなのだが、結論ありきの展開を擁護だの合理的な説明などしたくはないのだが……

 だが、しかし、まるで全然説明をこじつけられないレベルではない! ように思われる

 初っ端からこじつけって暴露してしまったが――今回はフラウスキー少佐の太陽制御計画を考察したいと思う。第18話

 

 

 

 太陽異常増進

 なぜ人類にとって破滅的なこの現象が起きてしまったのか、その原因を考えなければならない。いや、直接の原因はダゴンがぶっ放した惑星破壊ミサイルのせいだ。それは分かっているその話ではなく、なぜ太陽の燃焼が異常増進したのか、そのメカニズムの話ダゴンが使用したミサイルは一応プロトンミサイルの類とされている。

 ここを読み解いておかないと、起きた現象の想定のしようがない

 

 つまり、予想される燃焼異常増進が起きたメカニズムは――命中したプロトンミサイルが核に突入、各内部の水素が陽子と結合し瞬間的に重水素を、その重水素が更に陽子と結合=水素を大量消費してヘリウム3を大量に形成する。

 この急速な反応により水素の量が核において、局所的ないし全域に欠乏。欠乏した事により周辺のヘリウムを核融合燃料として活動を続行する。

 ただ、通常の水素核融合中だった太陽は核周辺に核融合を安定させるだけのヘリウム量があるとは思えない。仮にプロトンミサイルがもたらしたヘリウム生成量が不十分という重ねての不幸が生じた場合……急激な上に不完全なヘリウム核融合への移行が行われたと言える

 核が水素核融合が中途半端になって不安定化、ヘリウムの集積が中途半端で燃料供給が不安定。この水素核融合に戻ることも、ヘリウム核融合で安定することもできないような終点の見えない変化が、核の収縮が不全・重力の減衰をもたらす。核の不安定化、特に重力の減衰が相対的にせよ発生したならば、恒星の対流層における燃焼と膨張を抑えることは不可能になるだろう。だろうというより、確実

 これは太陽にとってはさほど、危機的な状況ではないが、人類にとっては温度が2度や3度は兵器に上昇してしまうからこれは地獄。

 

 現象として、太陽が一気に大幅に年を取ったようなもので、取り返しがつかない。その反面、現象が落ち着いたのちは人類にとっては非常に長い間再びの安定期が訪れる事が見込まれる。ただ、落ち着くまでの間は人類は急激な地球地表面の温度上昇に対応せざるを得なくなる対応不可能なほどの温度上昇だが。

 といった事が想定可能。

 

 

 或いは、汲み上げ効果が強制的に引き起こされたのか

 惑星破壊ミサイルは明らかに普通のミサイルとは異なり、容易には爆発しないはず。この強力なミサイルが、恒星表面の対流層を引きずって内部まで到達、挙句爆発して磁場を乱して本来太陽の質量では起きないはずの現象を数々引き起こしてしまった

 正確にいえば汲み上げ効果とは全く別物なのだが、形式として構造として類似しているため、汲み上げ効果と表現した

 この現象においては当然、一部の対流層は元来起きない核融合の影響で燃焼し膨張するだろう。内部への新物質の流入や磁場の乱れで一時的に重力が弱まり収縮が膨張に抗えなかったのかもしれない。局所的であっても、質量に偏りが生じてしまえば――当然重力も偏りが生じるだろう、磁場も思いっきり乱れるだろう

 そうなれば、核で生じた重力が対流層の燃焼・膨張が制御できる道理など無い

 

 割と強調したいのは、核には十分な量の水素が残っていたという点残っていたのだが、対流層が核融合し得る圧力と熱を持った層まで到達してしまった為に、その流入量分の不測の核融合と燃焼が発生、膨張してしまった

 一つだけで説明する必要は無く、いくつかの要因が重なることで太陽が膨張してしまった。と言うような流れの話。前述の想定の場合は太陽が強制的に老化させられてしまったが、こちらは別に老化したわけでは無く、ただ単に火に油を注がれただけで核のヘリウム核融合の段階迄は至っていないとみていい。

 

 

 何が一番妥当なのか、正直……文系でも頭の悪い方の私にはわかりかねる。ちゃんとした経過や推定は、ガチの天文系の方の考察を願いたい。

 

 

 

 フラウスキー少佐の太陽制御計画

 これは黒田博士の計画より明らかに見込みがあった。これはフラウスキー少佐の計画を読み解けば簡単にわかる事だが、それ以前に――基本的な傾向として、ガルマン・ガミラスは太陽を制御できると思っていた節がある。

 例えばダゴンやガイデルは、恐らく太陽の核融合異常増進を観測できたであろうはずなのに、地球占領をもくろんだ。総統の別荘にでもと思っていたらしく、それを考えれば太陽ぐらい制御出来るというのがガルマン・ガミラスの統一見解なのだろう。

 

 フラウスキー少佐の計画だが――真田さんの確認、藤堂長官が大統領に報告した内容によれば、第一段階としてアステロイドベルトで岩塊を採取し、他方で磁気シールドを展開して放射熱をシャットアウト。

 第二段階としてアステロイド岩塊を水星軌道まで誘導した後、スイングバイあるいは十分な助走を以て加速させて太陽へ発射、黒点から内部へ突入させる。岩塊突入後、太陽内部のヘリウムが噴出する直前に太陽核融合プラズマ制御装置を搭載したプロトンミサイルを突入させ反応を制御する。

 プランは描写の読み解き方によって二通りあるが――

 

  

 ①:ヘリウム核融合安定化

 恐らく、フラウスキー少佐は太陽の核の中にはすでに水素はないと判断したのだろう。故に、もはや水素の核への投入などという時間を巻き戻すような方法は取れないだから、あくまで核のヘリウム核融合の早期安定化に努めた方が太陽制御がしやすい

 最も簡単で確実な方法をとるべきだ、そう考えた。

 

 合理的な判断だろう。

 太陽の核の状態が判断しがたい為、水素を核に投入して効果があるかは不明。仮に投入出来たとして安定化までに時間がかかってしまっては地球人類は死滅してしまう

 だから、現在進行中のヘリウム核融合を促進させ、核を安定化することで恒星表面の燃焼による膨張を制御できる重力を核に取り戻させる。核が安定せず、核の重力が弱いから、恒星が膨張してしまう。だから適切な核の重力を取り戻させることで、恒星自身に膨張をやめさせる

 肝心なのはプラズマ制御を行う事で、これで核融合を管理下に置く。プラズマ制御装置付きのプロトンミサイルとはいえ、そう簡単に核に到達できるとは限らないし、急速な反応の結果ゆえに十分なヘリウム層が確保できていない可能性も考えられる。

 故にアステロイド岩塊を用いて先に突入させることでプロトンミサイルが独力で重力や圧力を突破する負担を軽減させ、かつ核に燃料補給を行う。これでプロトンミサイルが安全に核へと突入し、懸念されたヘリウム不足も解消可能。そしてプラズマ制御装置で核融合を――仮に過剰であれば、これを抑制。低いレベルで推移すれば、これを刺激して促進させる。そうして核の安定化を目指す。

 

 単純明快というか、非常に分かりやすい。要件として設定する必要が有るのは岩塊の性質で、上部マントル起源の物質や長期間太陽風にさらされた岩塊などのヘリウムを多く含む岩塊である必要が有る。

 微妙に齟齬が出るのが、岩塊を突入させる方向を調整すれば、全球的な変化が生じるのでない限り、磁気シールドを展開する必要が有ったのか、多少疑問。仮に内部の燃えた状態のヘリウムが外部へ噴出しても、太陽嵐が周囲にもたらされたとしても、地球に直撃しなければ問題ないのであり、わざわざシールドを展開するほどの事かといえば……多少疑問。

 

 

 ②:核への水素注入による水素再核融合

 プロトンミサイルに岩塊を纏わせていた。この部分に着目すると――この岩塊は恐らく、核に何としても注入したい水素の材料と推測できる。

 まず、蛇紋岩などの水の作用を受けて内部が水素を含有する岩石(蛇紋岩の場合は、かんらん岩内のカンラン石が水と作用してできる)。そもそもケイ酸塩は化学式でいえばSi(OH)₄で水酸基(OH)をもろに含んでいる。その系統の鉱物は結局のところ何らかの形で水素を含んでいると言えるだろう。或いは2015年に東大の研究者がスティショフ石中に水素原子が中性な形(H⁰)で存在する――後からもぐりこんできた中性水素原子をこの石がキャッチする――可能性を示した。

 結論から言えば、石の中には水素が含まれているという事。ヘリウム以上に簡単に見つかる。フラウスキー少佐はこれを利用したんじゃなかろうかと、説明が可能だ。放映当時も十分、蛇紋岩の生成過程は知られていただろうから、石の中に水素があると判った上での描写・設定は可能なはず。

 

 岩塊を突入させる、その過程で太陽自身のパワーを以て岩塊を分解し、水素を取り出す。太陽の猛烈な圧力をもってすれば容易に分離できるだろう、これが第一段階。太陽の内部まで岩塊付き惑星破壊ミサイルが到達できれば、やって出来ない事はないはずだ。喪失した物質を再度投入するのだから確実に一時的とはいえ核は不安定化し、重力が小さくなる事は確実だが、これをプラズマ制御装置を以て反応の規模を誘導――そして水素再核融合を促進・安定化。これが完了すれば、次第に太陽の膨張が収まるはず

 若干時間がかかる可能性があるし、磁気シールドを展開して一時的な膨張による地球への熱の到達を阻止しなければならないため、少々難しい。

 

 描写からすれば多分こちらの可能性が高い――気がする。

 モニターの図解に加えて、一時的な太陽エネルギーの強烈な放射を防ぐためのシールドを展開したが――水素注入の際の一時的な重力の縮小に対応するためと説明できる。

 初めから安定化を目的とし、核或いは核層にヘリウムないしその材料の投入を行う計画ではこのシールドの必要性は薄く、作戦開始と同時に燃焼・膨張の鈍化が期待できる。反応が大きければ大きいほど、スピードが速ければ早いほど早期縮小が見込める。

 

 妥当性を持たせるには、恐らく核を一時的に不安定にさせてしまう水素投入の方が整合性確保が容易だろう。効率がいいかは微妙なラインだが。

 

 

 

 失敗の理由――前提――

 多分、着弾したミサイルの本数が判らなかったのではないだろうか。また、地球の示したデータが信用できなかった核の状態把握や恒星表面の観測に何らかの不備があり、実際と大きな齟齬があった。

 これらの理由があって、取るべきではない作戦を採用してしまい失敗してしまった。そう説明できるだろう

 

 ダゴンの事だから、多分というか確実に何本惑星破壊ミサイルを使ったか、という事までは報告しても何本着弾したかについては報告していなかっただろう気にも留めていなかっただろう。ガイデルの東部方面司令部の体質からして、これは妥当な推測。

 だって、第11番惑星のあれほどまでに無様な戦いぶり――普通はダゴンは降格だ。なのに、その地位にあり続けたという事は、ダゴン大本営発表ばりの戦闘内容を報告していたに違いない。きっと、記録映像も編集したのだろう。演習の時に取った記録とかも使って。

 その程度で、隠蔽できる失態。裏を返せばその程度も見破れないガバガバ査定。そんな部隊じゃ、正確なミサイルの遺失本数など判るはずもない

 

 

 もし、フラウスキー少佐が着弾したミサイルを多く勘定していた場合は――これは惑星破壊ミサイルの効果を過大評価してしまっていても不思議はない反応するミサイルとそれに伴う反応現象は、当然の事ながらミサイルの本数に依存するはずだ。実際より多くの本数を想定したならば、核の水素残量は実際より少なく計算されてしまう。逆の想定をしたならば、当然に推定結果は逆になる。

 間違った想定の元にはじき出した、正しい数値では数値上正しくとも実際には正しくない数値その数値を用いて決行した作戦は、偶然が奇跡的に起きない限りは当然失敗するだろう

 

 思い出すべきはガミラス時代。

 バラン星で運用していた人工太陽。これは、その距離からしてたとえ遮熱シールドを展開していたとしても、元々非常に小さく温度が低かったと考えられる。多分、あれは赤色矮星かそのあたり。つまり、理論はおおむね共通しているとはいえ、本物の太陽とはモノが異なり、勝手は違うだろう――が、実際に太陽を目にするまではどの想定も確実では無かった。

 ガミラスは質量の小さい恒星の制御の経験はあった。しかしその経験に依存してしまった結果、予想より質量が大きかったか大きくなった太陽の制御に失敗してしまった。という事か。

 

 

 

 どちらにせよ、これらは太陽表面の物質の傾向などが正確に観測できれば避けられたかもしれない事案だ。しかし、失敗してしまった。

 その観測失敗の理由は――

 フラウスキー少佐からしてみれば、地球側が示したデータを信用する可能性は低い。地質学のプロ:ヘルマイヤー少佐の行動からして、ガルマン・ガミラスの科学者は唯物史観的な、自分の目で見るまでは判断しないタイプの人が多いと言える

 まして、サイモン教授を政治的なパワーを使って追放した黒田博士の報告や、その追放を容認した連邦大学の天文台の報告など――一般人から見ても怪しい。フラウスキー少佐は、そんな報告書を丸のみするほど愚かというか、お人好しな人物ではないだろう。それが、まずかったかもしれない

 

 例えば、日本のように性善説を旨とする人であれば、どんなに統計だのにインチキを加え書類を改ざんする政権の報告であったとしても、命にかかわる事柄であればまさか隠蔽や改ざんはあり得ないだろうという判断を下す。

 データのとり方とかを気にする真面目な人は、それでも話半分程度には信用するだろう。しかしながら、これは先に述べたように性善説だし、同族だからこその面も大きい。全く知らない、まして国や民族の違う集団が出したデータの場合、その信用度は……どんな評価を受けるだろうか?

 

 だとすれば、フラウスキー少佐が地球側が示したデータを笑顔ですべて却下したとしても不思議はない。地球人とガミラス人のメンタルはさほど際はないし、似たような判断をしたとしても不思議はないだろうし、もっと言えば彼には地球側の報告を却下する権利がある

 ただ、それが間違った結果を生んだ可能性は否めない。仮に、たまたまフラウスキー少佐が観測をした部分やそのタイミングではヘリウム核融合が安定していないことを示していたかもしれない――可能性として、全くのご都合主義とは言えない展開だ。

 

 

 

 失敗の理由――現象――

 フラウスキー少佐の太陽制御計画とその後の太陽の反応を考えると、ひょっとして異常増進の正体は、強制的な汲み上げ効果的な作用によるものではなかったのだろうか。一時的な質量と磁場の偏りと、これらに伴う重力と膨張の不均衡

 本当は比較的短期で現象が収束した可能性があるものだったのかもしれない。人類にとっては非常に長いスパンだが、宇宙規模でいえば割と短いと言える。

 

 だとすれば、フラウスキー少佐の太陽制御計画は、安定化に向かいつつあった太陽を、核の水素融合をまさに異常増進させてしまい急速に核が燃料を使い果たし、本当にヘリウム核融合に移行。その過程で再び異常増進してしまった

 という事になるだろう。完全にやるべきことの正反対をしてしまった

 

 現象を整理すると――ミサイルの太陽突入直後は温度が下がったし、太陽の大きさも元に戻った直後に、計画前よりも大きく膨張し、高温になってしまった

 これは、核に燃料が投入された事によって、核融合が進むことで収縮が急速に深化、だから膨張を一気に抑えるだけの重力が核に発生した。しかし、元々安定化傾向にあった核にわざわざ燃料投入したことで、実際活強制的に異常増進させてしまい――そうなれば当然、核の水素はなくなる。水素がなくなったらヘリウム核融合に移行するし、一時的に核の縮小傾向は小さくなり、しかし対流層などでの燃焼は維持されているのだから膨張してしまう。

 ヘリウム核融合が安定化するまでは、そう時間はかからないはずだが、人類にとっては非常に長い期間であり、結果的に失敗という事になってしまった

 

 

 リトライの可能性

 もう一度フラウスキー少佐が同じ計画を発動すれば、成功の見込みはあるだろう。フラウスキー少佐が想定した状態に太陽が変化したのだから、むしろ最初の状態よりも制御は簡単なはず。

 

 しかし、前身国家であるガミラスと地球の関係や、一度大失敗をしてしまったという事実を鑑みれば、リトライのチャンスはないといっていいだろう。

 地球連邦の現場指揮官たちがそれを容認したとしても、200年経っても200年前から進歩していない地球人類の事だから、不必要なまでにヒステリックに騒ぎ立てて、フラウスキー少佐への責任追及やガルマン・ガミラスの排除が世論の主流になるだろう。それが世論だとすれば、地球連邦の首相や大統領も逆らうのは難しい。仮に二人が政治家として低レベルであれば、元来政治家はプロであって市民を説得するのも一つの仕事であり能力なのだが……多分、あの二人だと無理。

 

 結局、首相と大統領のどちらが上か未だに判然としないし。ガトランティス戦役の時もそうだったが、議会があるのかないのか、責任内閣制なのかどうなのか、大統領は儀礼的存在なのか実際的な統治者なのか、わからない。そりゃ最終的な命令権者は大統領なんだろうけどさ。

 緊急時は多分大統領が指揮を執るのだろうが平時は全く不明瞭。地球のこの中途半端な体制を見てしまえば、フラウスキー少佐が何となく地球のレベルを下に見たとしても、わからないではない。

 エピソードラストで判る様に、そもそもリトライの決定的に必要な要件が欠けてしまうゆえに、永遠に叶わない想定だが

 

 

 最期

 先ほどから述べているように、前提条件がずれてしまっては完璧な作戦もうまくはいかない。

 太陽の制御は一時的に成功したものの、しかし直後に温度は再上昇し以前の状態よりも事態は悪化してしまう。整合性を取るならば、人間の物差しからすれば悪化していた状態(そりゃ視直径2.5倍じゃねぇ。…。)だが、実際は安定化傾向に向かっていた太陽を、強制的に状態を変化させたのだから、無理が生じるのは当然だろう。

 安定化傾向を不安定にさせてしまった。恒星の一生を一段階、前進させてしまったようなもの。地球人類にとってはまずい状況。

 

 磁気シールドを突破するほどのプロミネンスとコロナが目前に迫り、急速転舵でこれを離脱する工作船団。

 しかし、フラウスキー少佐は帝国の威信を背負った計画の失敗を重く受け止めていた。非常に責任を感じていた。だから彼はその責任を身をもってとるべく、その場にとどまることを決意する。そして彼は総員を退艦させた後、進路を反転し太陽に突っ込んでいった。

 太陽の熱が迫る中、必死に真田さんがフ脱出するよう少佐の説得を試みる。

 実際、色んな意味で真田さんの言う通り、不可抗力であったが――その説得もむなしく。総統へのある種の詫びと、古代への謝罪、そして「私も美しく甦った地球をこの目で見たかった」という最期の言葉。

 

 あまりにも責任感が強すぎる。構図から言えば、ヤマト2のアンドロメダと共に都市帝国に突入した土方総司令にも似た壮烈さ。

 滅びの美学というべきか――是としがたい行動だが、しかしながら否とするにはあまりに惜しく、潔い最期であったガミラス軍人ここにあり、という奴である。

 

 

 太陽制御失敗は詳細に検討すれば、別にご都合主義というほどの内容ではない、これは保証できる。

 しかしながら古代君の自然はすごいんだ、人間は及ばないんだと言うような説教のせいで演出マターなエピソードであることがはっきりと分かったそのため、せっかくのそれなり存在していたストーリー展開の妥当性も、質が徹底的に下がってしまったと言える

 それに、フラウスキー少佐が前提の設定をミスっただけであり、修正を加えれば十分機能するはずの計画である。本音を言えば人間がちっぽけな存在という点は同意できるが――だからといって制御できそうなものも、古代のセリフにあったように自然凄いや宇宙凄いで片付けるのはどうかと思う。そりゃ売り言葉に買い言葉で総統も宇宙制覇を宣言するって。おかげでエピソードラストのしんみりした雰囲気が台無し。

  

 ご都合主義的展開や、偏見じみたユートピア思想など、ヤマトⅢらしい要素がぶち込まれたエピソードといえる移民本部オペレーターのセリフにあるが、「やはり」って何だよ……失敗前提かって。このセリフを必要と判断して挿入してしまうという製作陣の意識とは……ヤマトⅢの深層における残念さが表出した事例と言えるかもしれない。

 

 

 

 唯一救いになるのは、雪がお悔やみの言葉を述べた事。それに加え、責任を取った人間にはそれ以上の責めを負わせないガミラス時代からの伝統が今も残っていることが見えた

 この一連の描写は、これはヤマトシリーズの世界観を堅持した描写としていえ、大変素晴らしい。ここは手放しで評価したいと思う。

 

 

ストーリー考察Ⅷ ガルマン・ガミラス本星――ヤマトの問題児たち――

 

 

 第15話でハゲガイデルにとっ捕まったヤマト

 艦内はお通夜状態、意気消沈。ところが、ガイデルやフラーケンが自信満々でヤマト捕獲をデスラー総統に報告した所――いつ私がヤマトを襲えといった!と総統は激怒。手にしていたグラスは床に叩きつけられてしまう。

 さらにいつ捕獲しろといった! オリオン腕最辺境の恒星系には手を出すなといったはずだ!と重ねて激怒される。そして最後には呆れられて、ヤマトとの通信をつなぐようにガイデルは指示されてしまう。

 普段のあのもったいぶった調子があだとなり、総統の機嫌を極限まで悪くしたガイデル。非常に屈辱的な事に、ガルマン・ガミラスまでの道中をヤマトに案内する役目を仰せつかるが――彼の立つ瀬は全く無かった。

 ざまぁ哀れガイデル

 

 

 あれ? 御前会議で話出てなかったっけ?

 という御指摘もあろう。しかし、よーく思い出してほしいよーく、よーく、思い出してほしい。そうすれば……確かに御前会議ではオリオン腕最辺境の恒星系の話は出てはいなかった、という事が判るはず。オリオン腕自体に対する進出は許可されていたが、最辺境の恒星系はそれに含まないという見方も可能で、ガイデルが勝手に総統の発言を拡大解釈したと言える。

 霞ヶ関文学みたいな、詭弁に近い屁理屈だが。

 

 正直な話、普通はガイデルやダゴンの性格を考えれば、勢い余って太陽系あたりまで進出していても不思議はないのだが……。総統に早めに気が付いていただきたかったが……。

 ただし根本的な話として、結論というか前提として――予め言い含められたことを、勝手に拡大解釈して半ば無視したガイデルの方が悪いし、報告をせずに思わせぶりな口ぶりで中途半端な事をのたまい続けたこのハゲが諸悪の根源である

 この件に関しては事前の予防策には乏しく……御前会議等でガイデルを問い詰めたならば、彼の面子をつぶしかねない。ガイデルの性格上、余計に事態を悪くしかねないし、衆人環境での叱責は人心掌握術としては下策。つまり、総統に打つ手があったかといえば疑問で、ガイデルの誠実さに期待する他なかったともいえる。

 まあ、幾ら総統でもすべてを完璧にこなすのは不可能だろう。加えて、あのプライドの高い総統がヤマトクルーに平謝りだったのである。これで十分、贖罪完了であろう(我ながら大甘裁定)

 

 

 

 第16話――ガルマン・ガミラス本星へと迎えられたヤマト。

 土門や揚羽がぴーちくぱーちくうるせぇが、コイツは地球の歴史を知らんのか極めて正直かつ単純な感情を発露させるつまり、二人ともガルマン・ガミラスとのし烈な戦闘の結果、完全に彼らを悪と捉えていたのである

 判らんではない。しかしながら真田さんの言う通り、戦うべき理由があったのがガミラスにとっての対地球戦役。次いで民族の名誉をかけた戦いがガトランティスの同盟国としての戦役参戦。そしてイスカンダル援護の為のヤマトとの共闘……これらを知っていれば、普通に考えれば、デスラー総統がまさか本気で地球の敵となるはずが無い事は判るはず

 

 一般論として、戦争指導者は平和の破壊者としての見方はあるかもしれない。だが、戦争が必ずしも破壊のみをもたらすかと言えばそうではない。

 平和とは何か。これは秩序と安定と言い換えることが可能だろう。平和、或いは秩序と安定は明るいイメージを持つ言葉であるが、これが実現する場面は必ずしも開明的な世界とは限らない。

 抑圧的な共産主義警察国家はある意味、その存在の前提が秩序と安定やその希求だし、ブラジルのマフィアやタリバンですら独自の秩序を以て所領を統治し安定を一定程度実現している。しかしながら、これらを平和とは普通呼ばない。もっと、開明的な社会体制を背にした平和を周辺社会は求めるだろうし、それらを知った内部の人間も求めるだろう。

 退廃的社会体制を打破するため、開明的な社会体制を求める闘争は、これは通常革命と呼ばれ、明るいイメージで語られる。だが、結局のところ血なまぐさい争い、と冷めた見方もできるだろう。

 

 つまり、宇宙に戦乱をまき散らすことと平和を希求することとは別に相反しないという事を言いたかった。

 (秩序と秩序の闘争を戦乱、全てを統べる新秩序が平和であると仮定した場合)。大体の平和は戦乱の後に生まれ、平和の中で生じた軋轢が次の戦乱を生む。その戦乱を平定してこそ新たな平和が生まれる。という事。

 そもそも論として、地球の新惑星探査は開拓を目的としたもの。人類が居なければ、他はいいのか? 当該惑星の生態系を変えてしまうかもしれない、むしろ変える可能性が大なのに――これは一種の侵略それを是認しておきながら、総統を避難するという行為はあまりに偽善的過ぎる。他者に手を差し伸べるタイプの偽善行為ではないため、徹底的に誰も得しない偽善

 

 それに加えて、指導者が謝るという事がどれほど困難を極めるのか、これは有史以前から2020年、そして恐らく23世紀初頭にかけても同じことだろう。まして相手は銀河の盟主を自任するデスラー総統。それを考えれば、指導者が目の前でしかも明らかに年下相手に部下の不始末を平謝りしているのだ。それを見れば、全面的とは言わずと言えど、有る程度は水に流せるはずだ。流して当然というか、そうしなければ実社会においても話が前に進まない。

 そりゃ、肉親を失った土門は無理だろう。これは当然だし、仕方だない。肉親を二人ともいっぺんに失い、それを一年と経たずに忘れろだの、水に流せは酷だ。彼に関しては別。

 

 

 他方、少なくとも古代は水に流した。かつての戦役で肉親を遊星爆弾で失い、更に歴戦を共にした平田まで失ったのに。

 確かに土門にとって平田は尊敬できる先輩だった、スパルタ無しで根性を叩きなおしてくれた大恩人といえる。しかし、それならば平田と同期の古代はよっぽどつらいはず。恐らく、あのガトランティス戦役の生き残り18名を構成する一人であろうし、つまるところ古代にとって最も親友といって差し支えない間柄であろうと考えられる。また、第11番惑星域での戦闘で散った平田を除く多くの部下たちは、ウラリア戦役を生き抜いた間柄でもある。皆、古代にとっては土門にとっての平田以上に親しく、失い難いクルーだったはずだろう。

 古代と土門の経験の差といえばそうだが、苦しい先輩の気持ちを考えれば、しかもデスラー総統は古代の友人――であるならば、わざわざ面と向かって苦言を呈するのは慎むのが当然だったのではないだろうか。不満を持つのは当然かもしれないが。

 

 これは私の個人的な見方であるが……どちらかといえば、古代の方から歩み寄ってその心情をくみ取る、という方が演出としても行動としても効果的だし好意的に感じられただろう。

 

 

 

 まあ、観閲式(軍事パレード)に招待したのは総統の悪手だったね

 その軍事力によって危機に瀕している人たちの前に、威風堂々たる軍団を展開するのだから。威嚇と取られても仕方がない――というより、敵に対する威嚇が目的の半分だもの。

 これは総統とヤマトクルーの認識や考え方の差がナチュラルに現れたシーンで、うまい演出

 

 

 普通、建国記念の祝典には軍事パレードがつきものである。そもそも軍事パレードはどんな国においても普通に行われるものだ。別に特別なものではない。

 永世中立国オーストリアだって陸軍閲兵式はある。戦争を捨てた我らが日本も建国行事とは別ではあるが、陸海空自衛隊の閲兵式はある。自由と民主主義の国アメリ、平等を旨とする共産主義の本拠地中国伝統と現代の入り混じるインドでも軍事パレードはある。

 他者にとっては確かに、自国の戦力或いは防衛力は脅威に映るだろうが、自国民にとっては当然安心材料以外の何物でもない。これを誇示する、当たり前中の当たり前。

 

 言い方は悪いが……本来は過剰反応するヤマトクルーの方がおかしい。だって自分たちの乗って来た艦は敵艦隊どころか惑星に大ダメージを与えることが出来る極めて強力な武器なのだから。軍事力の行使自体に関しては、お前が言うな状態。

 

 ただ、アレルギー状態になっているヤマトクルーに見せたのは確かにまずかっただろう。返す返すもこれはまずかった。ここは総統の特別の配慮があっても良かったかもしれない。アレルギー状態の土門を連れて行った古代にも非はあるが。

 

 

 

 

 そして、ガルマン・ガミラス最大の事件が発生し、シリーズ中最大のヤマトクルーの偽善的なセリフが発せられる驚きのエピソードへと移る。

 第17話である

 

 初めて、ヤマトの艦橋へと足を踏み入れたデスラー総統

 沖田艦長の碑に膝を折り――そしてヤマト発進の理由を尋ねる。本当に知らなかったらしいが、ヤマトが発進することは地球の危機であると、今までの経験上わかっていた総統。彼は古代から地球の状況を知らされ、その償いをするために太陽制御を申し出た。

  この際の奇妙なストーリー展開として、古代がこれを好意として受け取った事があげられるだって、すでにデスラー総統は償いとして、申し出ているのだから、好意として受け取る余地があるようには思えない。うーん……人の話聞いてるのかこの青年は。あと、土門のバカが自力どうのこうの――自力で出来てないから、ヤマトが出撃する羽目になったんだろうに。大体、地球を救えるという最大のチャンスと、ただ人類が不確定な望みにすがっている現状のどちらを取るかという選択の時に最悪な選択をしようというのだから話にならない。

 南部は元から頭が砲弾で出来ている人間だから論外、そりゃあ、あいつは土門に同調するだろう。残念ながら総統の話の筋を理解しているのは真田さんだけだし、彼の頭の中では初めからリスクの検討段階に入っている――さすが真田さん。そして、感情ではぎこちなくとも、取るべき手段を頭で理解しているのは佐渡先生と古代‟夫妻”と島ぐらい。こちらも、さすがにヤマトのリーダー格だけはある。

 

 

  非常にストーリー展開がもどかしさと矛盾と余計な描写・セリフにあふれているが……これは序の口であるこっから先がひどい話、とっ散らかった話の本番なのだ

 

 総統府で古代進は、なぜ強大な科学力を平和のために使わないのかと問う。

 気持ちはわからんでもないしかし、総統が答えたように現実問題としてボラー連邦の脅威が目の前に迫っているのだ。挙句、二人+雪とタランが一緒にいるそのタイミングでボラー連邦のワープミサイルがガルマン・ガミラス本星へと飛来する。物凄く間の悪い事に、太陽制御工作船団の発進間近という時だったから最悪。

 仮にボラー連邦が無抵抗であるとか、物凄く繁栄した平等で貧しさとは縁のない平和な国で、総統がそれを乱してまで天の川銀河に覇を唱えたのであれば――これは古代にお説教されてしかるべきだろう

 だが、現実のボラーは見事なまでに暴政をしく抑圧的な国家。ビックリするほどソ連のダメな所を投影し、そのダメな所からもたらされるある意味での利点を合わせた、統治は安定するかもしれないが国民のより拠り所としての国家……というには、褒められた存在では無かった

 だから、総統は親戚の民族を開放し、そして総統に歯向かわない限りにおける自由主義の国家を建設したのだ。正直、色々先軍的国家に対しては思うところはあるが、ボラーの場合は首相には向かわない事に加えて利用価値が高い事という条件があるようで、それを考えればガルマン・ガミラスの方がまだマシ

 

 この前段階があり、かつ現在進行形で両国は戦争を継続中この後判明することなのだが、実は総統はいつか決戦をする必要があるとは思っていたが、今でなくてもいいという考えがあっただがベムラーゼ首相は違う。今すぐにでも状況が整えば決戦を行ってガルマン・ガミラスを滅ぼしたかったのだ

 これはどうやっても平和的な戦争の終局は無理だろう

  度々言及されるこの認識の差は、ベムラーゼ首相が指導者ではなく政治家で、デスラー総統が政治家ではなく指導者であるという事をうまく表現していると思う。

 

 なのに平和的に技術を用いろって、無理だろ少なくとも、差し当たっては。何なら、その差し当たっての先を見据えて総統は今戦争を行っている。詭弁といえば詭弁だが、古代の理念全振り要請も詭弁といえば詭弁。

 

 

 

 さて、ボラー連邦が突如として辺境から惑星間ミサイルをぶっ放し、ガルマン・ガミラス本星に対して猛攻撃を仕掛けてくる。これが現実なのだよ

 この絶え間ない攻撃を受けるさなか、メインコンピューターが損傷を受け、首都の防衛機能が一部ストップする。そのため、防衛システム回復までの間、海防艦を発進させてこれを防ぎ、システム修復に全力を注ぐこととした。

 一方で古代は太陽制御工作船団の援護の為に宇宙港へ向かう。その道中、シャルバート教信者の射殺シーンに出会った――これで古代の態度がなぜか急変する。

 そりゃ、ただの真面目な平和的な信者まで射殺なら、確かに地球人として眉を顰めても不思議はない。人間として当然の感情の発露だろう

 ところが、そいつは首都の防衛システムを木っ端みじんに破壊した男であるコイツのおかげで非信者が大量に命の危険にさらされ――場合によっては、同胞である隠れシャルバート教徒すら巻き添えにしていたかもしれないのだ

 挙句に逃げるという、どこぞの過激派の自爆より見苦しい。他人を巻き添えにしてまで主張すべき主張なんてあるのか疑問だが、せめて自分が死ぬ覚悟ぐらいしておけよ――なのにアイツは全力で走って逃げた。で、死に際にマザーシャルバート! などと……ただのテロリストじゃないか。しかも半端で卑劣なヤツ。

 

 

 ただのテロリストと、償いのために太陽制御を申し出てくれた上に真っ先に宇宙港の被害を心配してくれた国家元首。どちらの方に共感すべきかは、普通は……。

 古代君はどうも普通じゃなかったらしい

 

 他方、この一連のシーンで総統に対して宇宙港より自国民を心配しろという尤もな意見が出るが、よくよく見ればミサイルは初めの内は郊外に着弾していたこれは結構、要素として大きい

 ガルマン・ガミラスの都市計画は恐らく‟総統府クレーター”は中心に総統府を置き、周辺に宇宙港や行政官庁を置くという配置だろう。元からあまり人口的キャパシティのなさそうなあの星のあの地域――クレーター一つあたりの人口はせいぜい1000万人程度。宇宙港に全ての輸送を頼るというのは合理的ではなく危険なため、外縁部の山は多分、切通の類か地下通路があってしかるべき。全球的な交通網も恐らくあるだろうから、その接続部が外縁部にあるとみて構わないはず。この割と重要な地点を守る為に軍事施設が集中していても不思議はない。

 何が言いたいかといえば、行政官庁の周辺域が住民の居住区なのではないか。外縁部(郊外)は多少は住民もいるだろうが、エネルギー供給関連の施設であるとか、倉庫群とか交通の外部との接続部とかだろう。或いは、ヨーロッパの城郭都市に似たものであれば当然、最外縁部は軍事施設。少なくとも、物凄い数の住民が住んでいるとは思えないという事が言いたかった。

 そして古代がモニタールームを後にしたあたりから、総統府周辺までミサイルが到達するようになったのである。

 合理的な説明をすれば、ミサイルは元から全域を射程として必要に攻撃を加えていたが、防衛システムが総統府に近い順に危険を高く判断し迎撃していた――しかし防衛システムが破壊されたため、打ち漏らしかつ脅威判断の精度が鈍った。また、懐かしの駆逐型デストロイヤーが必死で迎撃したが、これも同じように総統府着弾が予想されるミサイルを優先的に攻撃したため、打ち漏らしが辺縁部に落ちていた。しかし圧倒されつつあったため次第に着弾地点が総統府の近くによって行ってしまった。と説明可能。

  つーか、ナチュラルに民間人に対して攻撃を仕掛けてくるボラー連邦の卑劣さ。首相ってあるぐらいだから元来は民主主義(共和制という意味)の法治国家であろうはずなのに。

 

 

 

 このエピソードで一番悪質なのは実は土門だろう。惑星破壊ミサイルを見過ごしてガルマン・ガミラスを爆砕してしまおうなんて――悪辣国家ガルマン・ガミラス帝国の臣民の命は彼にとっては、たとえ赤子や無垢な善人であってもゴミなんでしょうね

 古代君も古代君で、工作船の安全の話しかしなかった。部下にも自分にも教育がなってない。自分の大切な人を守る為だけに戦うのではない、それがヤマトの使命だとさらばやヤマト2で彼は学んだはずだ。今までも、それ以降もさすがにヤマトが原因で戦争が発生した事はない――現在進行形で悪化させているが。

 ヤマトは地球人類を守り、地球人を脅かすような、ゆくゆくは宇宙に混沌をもたらすであろう敵を粉砕してきた……一応は。ガトランティスにいたかは微妙だが、ガミラスやウラリアの一般人を多く巻き添えにしてしまったが、嬉々として殲滅したのではなく、相手が悪いとかうっかり予想できなかった結果だったり、わざと大量の犠牲を創出した事はない……一応は。

 それなのに今回は救う人間を取捨選択しようとしている。ヤマトの本質とは大いに異なる判断。踏みとどまったからよかったものの、危うくただの宇宙最恐の悪徳戦艦になり下がるところだった

 

 

 このエピソードのフィナーレを飾るのが、意味不明な古代君の捨て台詞

 波動砲、ヤマトの活躍のおかげでガルマン・ガミラスは救われた――というような表現が気に入らなかったらしい古代君は、いきなり「思い違いをしてもらっては困る」などと突っぱねた。バース星でベムラーゼ首相に噛みついた時も、首相が地球やヤマトがボラー側に立って戦闘を行った、と言うようなニュアンスの話をしだした時も同様の反応だったから、ある意味首尾一貫している。

 まあ、独力で戦えるのにわざわざ所属陣営を確定しても後々不利益になりかねないから、政治的な観点から見れば妥当な反応ともとれるか

 山本イズムなのか知らないが……これ多分、出渕監督をはじめとした第一作信者ファンに多い波動砲神話の最古の例ではないか、と思わせる反応。波動砲は平和のための人に向けない武器だ、的な話

 最悪だが、これはまだマシな方のセリフ。

 

 

 続く「武力のみを過信する事がいかに危険か、これで少しはわかってもらえると」というセリフ……って、君の指揮する宇宙戦艦は宇宙で一番武装を積んだ、武力全開の戦闘艦なのだが? お前が言うな的セリフの代表例だろう。それに、ガルマン・ガミラスの防衛網そのものは完璧だったが、内部に忍び込んだ下劣なテロリストのせいで、不安定になっただけ。古代君が哀れに思ったシャルバート教徒の仕業、なのである。

 機械を操る人間の力が大事、という意味ならば筋が通らないこともないが、そうするとシリーズ中に垣間見えたシャルバート教への同情であるとか、度々述べる自然の偉大さとかと相反する内容になりかねないため……人材育成に金をかけろと言うような話ではないだろう。

 多分、愛とか平和が武力より大事、という事を言いたいのだろうが……さらばで超巨大戦艦に突っ込んでいった彼ならば、物凄く説得力のある話になっただろう。悔しいかな、あの古代君に対しては非常に反論しがたい。しかし、破壊的な思考を持つシャルバート教信者に妙に肩入れしたり、バース星を全く顧みなかった古代君では全く説得力がない

 

 

 最後の最後に、したり顔で物凄くお説教めいたセリフだったが――全く説得力がないどころか、むしろ神経を逆なでするレベルの内容だった。

 ガルマン・ガミラス本星での出来事は、全編にわたってヤマトクルーが問題児状態だったエピソードである。

 

 

ストーリー考察Ⅶ ――指揮系統の混乱と卑怯・卑劣な異次元の罠――

 

 

 第14話――安直なヒューマニズムバース星を見事に滅ぼした宇宙戦艦ヤマト。彼らの背後にあの卑怯なキザ野郎が迫る。

 

 

 

 古代君が不意に土門に艦橋勤務を命じ、戦闘を監督させた時から意味不明かつ非合理的なストーリー展開が始まるのであるが――

 

 その前に、戦闘の内容をざっくりと振り返る。戦闘考察じゃないけど。

 考えてみれば、あのとっぽい副官の方がまともな人間。他方でフラーケンだっけ? あの艇長、自分の部下を嬉々として犠牲にする人でなし。彼のあの指示では伏兵の用をなさない、囮としても戦死を前提とした戦い方。他に幾らでも手段があるのに、わざと戦死を前提とした戦い方をするのは軍司令官として落第どころか人間として失格

 

 伏兵は戦略的に価値のある事でありかつ、生存の可能性があるからこそ意味がある。囮だって、有る程度の生存性を確保したうえでの決行や、他に手段がないからこそ決行する。だからこそ部隊として囮にせよ、伏兵にせよ、能力が発揮できる。

 ところがあのガルマンスピッツだか何だか知らんが髭野郎、全く生存の見込みがない配置にしてわざとヤマトに攻撃させた。2号艦をヤマトの前へ、前のエピソードで喪失したはずの3号艦をヤマト後方に配置して、狙い撃ちさせたのだ。その隙を狙って亜空間魚雷をぶっ放す戦術――包囲して雷撃、直後に撤退し再び補足してから雷撃を行う。

 ヤマト側は潜航艇の捕捉に苦労し、また彼我の速力にさほどの差はない。つまり、そもそも論として、わざわざ包囲殲滅を狙う必要なんてない。普通に同航戦用の部隊と、待ち伏せして奇襲する部隊に分けて戦う方がよっぽど理に適っているのではないだろうか

 なんなら、包囲してしまえば的が小さい分、フレンドリーファイアの危険が高まる。であるのにもかかわらず、髭キザは包囲しての雷撃にこだわったのである。

 ひょっとして……コスモダート・ナスカ以来の愚将なんじゃないのかコイツ。ナスカは臆病な上に高飛車という作戦や采配の質を低下させる個人的要因があり、着眼点は良かったものの自分自身に振り回された感があった。だが――フラーケンは違う。ただ単に作戦立案能力が最低レベルで、ヤマトと自艦隊に無駄に損害を与えて楽しむサイコパス

 

 この戦闘で喪失した戦力は3隻、11隻ないし10隻中の損害であるから約3割の損耗率である。しかもヤマトが演出上もたらされた余計な設定の余波による指揮系統の混乱から、ド下手な戦闘を行った上でのことであるから、ヤマト2のようなまともなプロの仕事をヤマトがしていれば次元潜航艇は全滅していてしかるべき

 それで勝ったような面をしているから、どれだけ普段の損耗率が高いのかと気になるところ全体的に妥当な描写がない

 

 

 そして――やっぱりヤマト艦長は大けがするんだね

 コンソールが爆発して古代艦長、ケガとして表面にあるのは右腕だけだが、爆発の衝撃や感電だので重症に。そのおかげでヤマト艦内が浮足立って翌話で宇宙で最も愚かなハゲにとっ捕まってしまう。ちなみに、逆に有能なハゲはキーリング。

 

 浮足立った理由はひとえに指揮系統の混乱副長がどうやら同格という最悪な条件で二人もいるという、元から無理な設定のおかげで逆に混乱が妥当なものになるという不名誉な整合性

 島君は航海班であり、戦闘に対する造詣は深くはない。一方で真田さんは戦闘にも造詣が深いのだが、今は亜空間ソナーにかかり切り。戦闘に専属で差配できる人間が居ないぞ……。

 さらに、島君のミスによって事態はさらに混乱する。つまり、土門に戦闘を任せたままという事

 土門が戦闘の差配を出来ていたのはあくまで玄人の古代が居たからといって差し支えないだから古代が退場した段階で土門に代えて南部を登板、何なら波動砲でもぶっ放して次元潜航艇をビビらせてやるのが妥当なストーリー展開だったはず。にもかかわらず、わざわざ戦闘の差配が初めての人間にずっと、それもちょっと劣勢なのにも拘わらず戦闘を任せ続けた。確かにあのタイミングで土門を下げれば彼は傷ついただろう。しかし、100名からなるクルーの命には代えられない。なのに島君はクルーの命より荒廃の成長を取った……何という教育魂か。

 どうしてだろう、ここまで合理性の無い描写が完成させられるのか。

 結論から描き、展開を焦るから全くのご都合主義になり下がっている。

 

 

 まあ、ガイデルにとっ捕まったのは仕方がないアイツの要塞の機能が意味不明かつ非合理的なのが悪いのであり、島が問題行動をしたわけでもない。戦闘を差配する土門が今までの自分の活躍で浮足立っていた、太田が普段と違い役に立たなかった――等々色々アレな部分もある。そうではあるが、ガイデルの要塞の設計そのものの全くの合理性の無さに起因している。

 演出マターの展開。これはクルーがどんなにまともに雨後歌としても、ご都合主義で捻じ曲げられるのだから仕方がない

 

 

 

 

 と、冷静に徹底酷評している私だが、どっかでみた出渕監督のインタビュー(我らガトランティスの誇る潜宙艦に対し、不遜にもがっかりした旨を述べたもの)の裏返しのフラーケンdisも多分に含まれているため、非常にバイアスのかかった記事――というのは否めない。

 反省……。

 

 

ストーリー考察Ⅵ バース星到達、ボラー連邦との遭遇

 

 

 第10話の団船長のエピソードは、地球連邦政府の危機管理能力の欠如を表すエピソードである。また、ヤマトシリーズ史上度々見受けられる古代君の使命感の強さが仇になったエピソードでもある。

 そもそも論として、敵対勢力が存在し得る広大な宇宙を考えれば地球防衛軍護衛艦艇を張り付けても当然だったのではないだろうか。

 

 その意味では、幾ら最重要任務を任されているとはいえヤマトは――行きぐらいは護衛しても良かったんじゃないのかな? そんなに航路から外れないし、気象観測船は非武装だし、戦闘があった領域周辺での活動だし、その方が安全で互いにWin-Win

 だって、ここで見捨ててたら、知らせを聞いた宇宙開拓省は恨むだろうし、きっと船が遭難した理由をヤマトの行動に求めるだろう。あるいは、顛末を知った世論が「防衛軍が見殺しにした、ヤマトが見殺しにした」とか騒ぐだろう。弱ったことに、ヤマトの出動理由はこの時点ではまだ秘匿されているため、反論のしようがない為……

 護衛して損はなかったし、護衛終了後でダゴンに襲わせればエピソードの展開の差は最小で済んだはずなのだが……。

 

 団船長の態度にイラっと来たのは、神経が張り詰めている軍人という立場からしてわからないでもない。特に若者にとって年長者のあの系統の態度は、結構腹が立つ。

 団船長は悪い人ではないのだが、どうにもお堅い人で、その割にフィーリングを大切にする系の人これは、若人には非常に面倒に感じられる。相手に頭ごなしに否定的感情を想起させることもしばしばある――一方で誠実ではあるから、人物像に惚れ込む人も少なくないだろう。だからややこしい。

 それはそれとして。実際的にダゴン艦隊を発見し、その脅威を感じているのだから護衛してもらう権利があるだろう、しかしそれを正式な形でのオファーにしなかった。これは団船長の方に問題があると言える。

 だが、断ったのはヤマト。この先ダゴン艦隊がヤマトに攻撃を仕掛けてくる=どっちみち時間を割かざるを得ない事ははっきりしているのだから、少々の遅れなど最早問題にならない。それぐらいヤマトは派手にダゴンと戦争をしている。

 故に、護衛をしないという判断は、後々問題になる事が容易に予想されるのだが、それを受け止めるだけの根性があるんでしょう、ヤマトには――と、この程度の指摘にとどめておく。

 

 団船長にまつわるエピソードはある意味で、23世紀にまで影響を及ぼし続ける行政の縦割りの弊害と表現できるだろう。防衛軍も開拓省も連邦政府有機的な連携が取れず、結果気象観測船は遭難してしまった。一方で前途多難な道のりを決意の元に歩む青年たちと、それに感銘を受ける漢という関係性、これがエピソードの中核。

 中核を短時間で深く掘り下げる為に、幾らかの相互不信や行政の弊害を挿入することで、双方の信頼関係醸成の期間短縮に成功。視聴者に対し、団船長をロマンの分かる漢、武士とも評せるキャラクターと印象付けてその悲劇的な最期の演出効果を最大化させたと言えるだろう。

 原案であるとされる団船長クズVerエピソードにならなくてよかった

 

 

 

 

 話は飛んで――第12話及び第13話、バース星での出来事に移ろう。華麗なるダゴン艦隊の敗北は戦闘考察にて重点的に解剖します 

 

 ガルマン・ガミラス天の川銀河攻略が着々と進む中。

 他方で太陽の制御に失敗した地球連邦政府は、ついに星間移民を決断。直ちに計画を立案、移民船の建造を行い同時に、ヤマトを含む探査艦隊を天の川銀河5方面へと派遣し、新たなる母星を見つけるべく探査を開始した。

 

 

 その頃――うかつな行動に出るヤマト

 これまで散々利用可能惑星において何度も何度も敵対勢力からの攻撃を受けているのにもかかわらず何と彼らは全く警戒せずに探査目標の惑星へと接近

 思いっきり奇襲的迎撃を受けたのであるが、挙句にこれが強力で見事炎上してしまう。威力偵察かもしれないなどとほざいているが、かなり強力な攻撃……もはや負け惜しみではないのか……。そしてしっかり攻撃を受けた後に、名乗るという――

 なぜ、接近する前にさっさとなぜ名乗らぬのかおかげで要らぬ損害を受けてしまう

 なぜ要らぬ損害だったかといえば、探査目標であった惑星はバース星だったのだ。あのラム艦長が必死に守った母国だった。あの人、ちゃんと本国と緊密な連携を取ってたのね。そして、誤解がとけた後はレバルス隊長の旗艦に誘導される形でヤマトはバース星に降り立った。

 

 さて、今回ヤマトは初っ端から禍をまき散らすつまり、強制収容を発見し、ヤバそうだと認識した上でわざわざ立ち入ろうとするのである

 レバルス隊長から許可を受けて植物採取をしている最中にたまたま見つけた施設――で、警告を受けた途端に土門が「何だとォ!」と危うく一戦交えようという。ほぼ初めて外交関係を構築したといっていいバース星相手に、その内情を全く知らない状態で、ただひたすら地球人の正義感で介入しようという恐ろしいまでの暴挙。他のキャラクターも独善的だが、相手の行政を無視して一足飛びに介入しようとはしなかった。土門や揚羽の行動は彼らとの行動とも相反し、とがった正義感しかない言っちゃ悪いが、火のないところに火種を創って戦争をおっぱじめるアメリカと同じ感覚……。ヤマトシリーズのメッセージとは相反するもので、正直度し難い。

 挙句、艦内に戻った土門はバース星を精神文明の程度が低いなどと揚羽にのたまう決めつけというか、もはや差別である――彼らが一体何をしたのか、囚人とバース星とその関係性や事実が何一つ全く分かっていない段階での発言だ。それで、よくもここまで決めつけられる……救いようがない

 ラム艦長や一般兵とレバルス隊長の肌の色の差や、総督というワードを彼らが認識していれば、バース星の政治状況がどんなものかは判るはず。つまり、バース星側に収容所の如何についてバース星人は何ら決定権がないというのは明白なのだ。

 分かったその上での発言ならば、お前たちは一体何様のつもりか。18歳かそこらだとして、この程度は理解できるだろうに。

 更に彼らは、勝手にバース星の極秘探検をしようという。問題を起こしてはダメそうな星だと、危ない星だと自分たちで認識しているのにこの馬鹿二人

 

 

 この残念なヤマトクルーに引換え、この星の統治者であるボローズ総督至極一般的な人物だった

 ボラー連邦からの派遣された人物である以上、当然ボラー連邦を持ち上げた言い方をするのは当たり前。だからといって、地球に対して高圧的な対応を取るわけでは無かった。おおむね対等といえる関係性を彼の言葉から期待できた。

 WWⅡ中に少数見られた、まともな感覚で占領地域を統括する総督みたいな感じ。

 

 

 アル中ヤブ医者の飲み屋話は知らん

 正義ぶって他者を抑圧するのは地球上のすべての国が一度は通った道だし、地球連邦も『さらば宇宙戦艦ヤマトー愛の戦士たちー』で覇権国家然とした態度を見せたそれに、どうせ現在進行形だろうだって護衛戦艦は欧米列強=先進国由来の艦名しかないのだから。お前が言うな感がたっぷりである。

 加えて、バース星にとってはガルマン・ガミラスの脅威は事実である。バース星独力ではあれを退けるのは不可能だし、バース星住民がガルマン・ガミラス支配下でどれだけの自由を得られるのかは、未知数。

 力のない国が、どこかの庇護かに入るのは打算ではあるが、利口な判断である。それを織り込んだ上で大国は小国に接する。これの関係性は残念ながら、永遠に繰り返されるだろう。

 

 

 

  そうはいっても、バース星で最大かつ唯一の影が、強制収容施設であろうことは間違いない。

 主義主張の違う陣営との交渉の上で非常な懸念材料になる。治安維持的にも、幾らでも暴動の種になる収容所は非常な懸念材料。いつかバース星が自由を手に入れた時、収容所は完全に負の遺産となるのだから

 

 

 

 そして事件が起きる。囚人たちが騒動を起こし、電気柵を突破し何とヤマトに乗り込んだのだ――っておかしいだろよく、構造も何も知らない宇宙戦艦に簡単に乗り込めたね。群がること自体は不思議ではないが、一気に機関室を占拠されるとは――ご都合主義だろう挙句シャルバート星へ連れて行けとのたまい、機関部員の皆殺しをちらつかせる。にもかかわらず古代は彼らにシンパシーを感じてしまった。意味が解らん

 ひょっとしてこれ、素直に解釈すると……古代艦長は乗組員の命の安全より、自分自身の政治信条の方を優先してしまったという事になるのか……

 古代よ直ちに、地球防衛軍を退官してくれ。

 全宇宙のために

 

 

 この哀れな星は、宇宙の塵となる運命を背負っていた。ヤマトとかかわったばっかりに……この星を滅ぼしたのは誰か? それは古代進その人だろう

 第13話の話である――バース星守備艦隊は壊滅し、これを受けてボラー連邦本国は対策を打つ。つまり、本国はバース星を見捨ててはいない、同時に巨大艦隊を派遣できるだけの余力があるという事を示すため、ベムラーゼ首相直々の閲兵式を執り行うのである。正しい行動だし、物凄く強烈な政治的メッセージでかなり効果はあっただろう。

 だが、艦隊を増派・駐留させないのであれば軍事的には大した意味はない。この点の軍事的センスの欠如が気になる……。

 どうやらベムラーゼ首相、対応が後手後手で策自体の効果は薄いくせにやってる感を出す、そのための効果的な手を打つのはお得意らしい。まあ、やってる感を出すのが腕の立つ政治家の要素ともいえるし……危険地域を突っ走って、バース星に赴いたその度胸は評価するけど

 それはそれとして、首相来訪は平たく言って最悪のタイミングだった。だって、囚人の暴動とヤマトクルーの登場という、バース星にとってボラー連邦にとっても二大厄災とでも呼ぶべき事象が同時並行的に存在し……間の悪いお人だ。

 

 

 さて、イデオロギーで宇宙に戦争の種をまきがちな古代進と、逆らうものを認めないみみっちいベムラーゼ首相の取り合わせ……破滅は時間の問題だった

 

 当然、ベムラーゼ首相の対応にも問題はあろう

 地球をただバース星に味方しただけで、ボラー連邦の属国扱いという……自意識過剰も甚だしい。ボラー連邦も地球についてあまり情報がない中で勝手に属国扱いをしたのもいただけない。挙句、自前で独立を維持できるといっただけで反乱扱いなのは最早暴挙、狂気の沙汰。古代君とかに比べれば確かに、政治家らしいしそれなりに悠然とした態度を取っては見せたが……このベムラーゼという男、どうにも自身と国家に対して自意識過剰。そのくせ、反応がみみっちい――猜疑心が強いと言った方が正しいのかも。だから能力はありそうだがあと一歩、大政治家という感じではない。

 我らがズォーダー大帝の爪の垢でも煎じて飲んでもらいたい

 この面倒なおっさんの逆鱗に触れないようにするのはボローズ総督も大変だろう。事実、先ほどまでの紳士的な対応とは異なり地球に対して失礼な態度を取った。きっと心苦しかっただろう

 

 他方で、古代君たちが囚人たちの処分に首を突っ込むのも話が違う

 囚人たちがボラー連邦の法を犯したのは事実だし、地球でもいくら信仰に基づく行動だとしても、他者の身を危険にさらす行為は許されない。まして命を奪おうとしたのだから、話にならない。そんな彼らに寛大な処分を望むのはお人好しをはるかに超えて、愚かに近い。

 更に、仮に囚人たちを古代が逮捕して身柄を確保していたのであれば話は変わっただろうが、事実はそうでない。身柄を確保していれば、「我々の法を犯したのだから、我々が裁く」という事も、不可能ではない。しかし、囚人たちは一人残らずヤマトの手を完全に離れていた……。

 それなのにもかかわらず囚人たちの処遇に対して口を出すのは筋違いも甚だしい

 

 

 

 ドメルがかつて言ったように――使命感救世主のような気持ち、つまり安直なヒューマニズムこれが前面に出てしまったのが第13話だ

 この安直なヒューマニズムによってヤマトクルーはバース星と関係をこじらせる。更に古代は囚人の処刑を阻止するためにバルス隊長やバース人によって運用されている軍団を虐殺した。追手として出撃してきたバース星守備艦隊を迎撃し、すべて撃沈してしまった。これが引き金となってブチ切れたベムラーゼ首相はバース星ごとヤマトを破壊しようと大型ミサイルをぶっ放す

 おかげでバース星は消滅。無垢な市民も軍人も、派遣された本国人も流された囚人もみんな死んでしまったのである

 

 

 確かに、バース星守備艦隊に対する迎撃は仕方ないとしても……ヤマトはベムラーゼ親衛艦隊によるバース星攻撃を阻止しようとはしなかった。これは驚くほどの人道的問題で擁護のしようがない

 直ちにショックカノンを放つ、煙突ミサイルや艦首魚雷、パルスレーザーをぶっ放して迎撃できたはず。それなのに、全く行わなかった。転舵して囚人を救うとか何とかほざいた戦闘班長もいたが――100%間に合わない。そして市民はどするつもりだ。救う気なかったのか? 考え方として、残虐行為が行われているのを仮に知らなかったとしても周辺住民は知らなかったでは済まされない傾向にある。しかしそれで殺されるのはあまりにあまり。

 だが、古代は全く後悔していない様子。ただひたすら囚人にのみ……こういうのを自己投影とか言って、感情移入しがちだが、政治家や軍人はそういう事を極力してはいけないのだ。安直なヒューマニズムに流れてはいけないのだ。

 

 拘束を拒んだのは当然だが、それ以外の古代の行動は残念極まる行動としてはわからないでもないが作品として主人公としての行動としては全く相応しくない仮に作品を深く掘り下げる為にわざわざ、安直なヒューマニズムによって暴走した、ボラー連邦やガルマン・ガミラスの鏡写しの地球人を描くことで戦争のむなしさを表現した――という事であるならばわからないでもないが、それにしては古代が英雄じみた描かれ方をしている、土門や揚羽が純粋な人物として描かれているというのに大きな疑問が生じてしまう。

 要は、失敗演出。これじゃ古代が宇宙人一般をペットか何かのようにしか思っていない、ただの頭のおかしい冷徹ろくでなし。

 

 

 古代進が少なくともこのヤマトⅢにおいては人間としても軍人としても失格中の失格、ワーストクルーであることは断言できるだろう。古代進というキャラクターを、この描き方を続行してしまってはラジー賞も夢ではないレベルだ。

 ある意味逆説的だが、富山さんが頑張れば頑張るほど、技を見せれば見せるほど腹立たしいキャラクターとして成長してしまう。困った話である……。

 

ストーリー考察Ⅴ 山上一家、バーナード星の悲劇

 

 

 ヤマトⅢは乗組員の成長も描こうとしていたといわれる(単なる又聞き、未確認情報)。故に銀河系大戦の推移から言えば、枝葉といって差し支えないエピソードが度々差し挟まれていた。

 バーナード星での一件も同じだろう。

 

 

 

  第8話、バーナード星の山上一家個人的にはどうしても「てじな~にゃ」で一世風靡した山上兄弟を思い出す。はい、全く関係ない話でございます。

 前話にて、数次にわたり奇襲を受けたヤマトは、攻撃の起点をバーナード星域と推定。これを受けて直ちに発進、同星域へと進出した。

 

 第8話においてヤマトは、惑星探査の目標でもあった当該惑星に降下しその様子を探る。極寒の、希望の見出せない世界がパネルに映し出される最中、不明な通信を確認した。

 通信の正体を確認するために古代らはコスモハウンドを駆って惑星に降り立つ。そこで出会ったのは――この、ある意味気の毒な一家との出会いはヤマトクルー的にはあまりいい思い出では無い。結果的に奇襲を受けるきっかけを作ってしまった出会いでもあるし……正直、ストーリー展開上はいくらでも代替案を提示できるレベル。他方、演出的な目的はというと……

 

 

 と、山上一家の話の前に黒田博士の悪あがきをさっくり振り返る

 彼は太陽エネルギー省において、太陽から中継基地を経由し地球に転送されるエネルギーをマイナスに転化させて太陽に送り込む冷却作戦を敢行。

 これ、地味にまだ異常増進を認めていないだって、燃焼の異常増進は普通に考えれば恒星内部の“燃料”がなくなったから起きる現象のはず

 

 太陽に限らず恒星は、長い年月をかけ中心核がカスカスなっていくに従い収縮し温度が上がり、周囲に核融合で出来たヘリウムの層を形成する。最終的に内部の水素を核融合に使い切った時、今度はヘリウムの核層を中心にその周囲にある水素が核融合を始める=赤色巨星化。中心は以前から続く重力によってしかも核融合でのエネルギーがないからより収縮していくし、しかし縮むから熱は発する。で水素を使いヘリウムも核融合に使うと、中にはより重い元素による核が形成される。ここまでくると星が大きすぎて重力の統制が効かず、外縁部の水素などから成る‟大気”が逃げてしまい核が露出してしまい――白色矮星となる。

 太陽の8倍ほどの質量を持っている恒星の場合は、核融合による膨張と重力による収縮が繰り返され、核も依然高温を保ち反応が鉄になるまで融合が起きる。鉛が原子崩壊の最終形=安定形であるように、鉄が核融合した物質の最終形態=安定形である為、これ以上の反応は起きない。核融合が起きないという事は、膨張せずに重力が強まるという事でありしかも収縮するため熱が生じる。そこで光崩壊が生じ、それによって核がもろくなり重力を支えられず重力崩壊、超新星爆発を起こす。

 

 これを冷凍ビームでどうにかしようというのは根本から意味不明で間違った方策だろうそりゃ、差し当たっての期間は何とかなるかもしれないが、根本的な解決策ではないから常にエネルギーを照射し続けなければならない。そもそも恒星を冷やすってどんな発想だよ……。

 

 黒田博士の計画は、原理としては恐らく、レーザー冷却(ドップラー冷却)の一種をやろうとしたのだろう。原子の進行方向へ迎え撃つ形でレーザー光を照射し、その光圧によって原子の動きを止める。動きが止まればエネルギーを受けてはいるがしかしそれは温度とは関係なく、動かないという事はこれは冷却が出来ているという事。水蒸気はあっちこっち分子は動いて霧散する、水は自由に形状を変えるが霧散はさすがにできない、氷に至っては形状を変えられない。というように分子の動きは冷えれば鈍くなる。

 

 或いは陽電子ビームをぶちかます

 陽電子は正のβ崩壊で放出させるか、1.022 MeV以上のエネルギーの電磁波と電磁場の相互作用で対生成が可能と割と達成条件は簡単。空想科学ではなく実際に利用されている技術だ。問題はこれをどう利用するかという事で――黒田博士はきっと……量子電磁力学の何かしらの現象を用いて、太陽が発する光を陽電子にブチ当ていわばディラックの海にぶち込んで、太陽の核融合異常増進により発生したエネルギーを全部なかった事にしようというパターン。

 わかって話してると思う? 微妙なラインです。これが文系人間の限界解説

 ともかく、黒田博士のやり方は根本から間違っているという事が言いたかった。多分、この点だけは正しいはず。

 当然ながら、このダメダメな計画は大失敗してしまう

 

 

 

 さて、山上一家のエピソードに戻る。

 このエピソードを、ヤマトⅢという作品全体=マクロ視点で見ると一つの大きな問題にぶち当たる。つまり、この人たちのエピソード、本当に必要だった?という点だ。

 真田さんが疑ったように、怪通信をダゴンの謀略としてバーナード星域での戦闘のボリュームを厚くして古代の艦長としてのセンスを演出するエピソードに代えても、シリーズの構成上問題はないはず

 

 構成上は他のエピソードを用意しても問題ないようなエピソードをわざわざ挿入するという事は――おそらくだが、新天地を目指すヤマトクルーとの重ね合わせであるとか、ヤマトⅢという作品50話の中のメリハリとしての、作品としての厚みを増すべく挿入したエピソードという事になるだろうが、手段が目的化している。

 エピソードも登場人物も――バーナード星のエピソードは山上一家が明確にコンコルド効果に捕らわれてしまって、挙句に人の命を振り回したじーさまの行動が派手過ぎて感情移入できない魅力的な人物が登場しないのだ

 

 

 ちなみに、コンコルド効果とは普通はサンクコスト(埋没費用)効果と呼ぶ。直接的に述べれば、「これだけ頑張ったんだから今やめたらもったいないよ」という圧力の事だ。本人がそれに陥る場合もあるし、周りが陥って圧力をかける場合もある。非常に迷惑な話である。

 失敗が目に見えていたり、当初から目的がずれたりしてもお構いなしで突っ込んでいってしまう、しかもこの「もったいない」というのが大義名分化しているから厄介。

 

 

 山上一家は5年前からバーナード星第1惑星の開拓を行ってきた

 この5年という月日はじーさまを第1惑星に縛り付けてしまうのに十分な時間だっただろう。それに地球の財産はすべて処分しただろうし、じーさまの嫁はとうに亡くなっている様子。唯一の家族と思われる息子一家を引き連れての星間移住だから、地球に帰還するという考えは彼にないのはある意味当然。

 しかしながら星間ロケットを爆破したり通信機を破壊したりはやりすぎ挙句に地球人であろうことが容易に推測できる恰好のヤマトクルーに対して威嚇ではなく当てに行った射撃をくらわすとは何事

 結局のところ、このじーさまは目の前で息子が死にそうというのをずーっと、漫然と眺めていただけで手を打っていなかった。ここまでくると……感情移入はしがたい。そして息子の死を発端として突然湧いてきた望郷の念。

 色々山上一家にも事情があるのだから、早く帰ればよかったのにね。などとは口が裂けても言ってはいけない

 が、だからといって同情はしがたい

 

 

 この第8話を評価しがたいエピソード足らしめているのは、場所がバーナード星第一惑星であったという事だろう。

 ヤマトはエピソード終盤で新反射衛星砲の奇襲を受けるが、ダゴンバーナード星方面に潜んでいることは以前受けたミサイル攻撃で解析済み。また、バーナード星は探査目標である。

 要するに、山上一家との絡みが無かったとしてもどっちみちバーナード星には向かわざるを得なかったし、そこで戦闘になるのも物の道理という奴である山上一家が居なければ成立しないエピソードではないし、彼らの存在がシリーズ全般に決定的な役割を果たすこともなかった。挙句にじーさまのハッスルで感情移入はしがたく、演出的にも大したやくわりを果たしたとは思えない。

 だから、このエピソードの価値というものに大きな疑問が生じるのである

 

 

 

 ――番外的解説――

 エピソードの細部の話だが、ご都合主義に思われがちな突然の病状悪化――実は、これは意外と説明がしやすい。

 例えばガンは若年性だと結構早く進行する。若ければば若いほど、細胞の活性が高く病原体や悪性腫瘍も割に活発になってしまう。認知症も若年性は一般に進行が早いと言われる。

 

 故に、逆説的だが年齢が高いと体力的に手術がしづらいという事があるものの、ガンの進行は遅い傾向にあるという。認知症も種類によるが、一定程度緩やかな進行が期待できる。

 だからバーナード星第1惑星の風土病が年齢依存性の物で進行が速くなるのであれば、若い息子の方が致命的で劇症的になりがち。一方でじーさまの場合はどれだけ自覚症状があったのか不明だが、基本的に症状は軽い状態で長く推移しある時突然に重症になる。そして重症化した時点では手の施しようがない。

 風土病にり患したそのタイミング自体は、実際にはじーさまも息子も同時か、何ならじーさまの方が早くり患していた。

 と説明が可能なのである。

 

 

 ――エピソードを総括します。

  はっきり言ってじーさまのキャラクターのせいでトモ子さんと旦那さん(名前設定なし、この人が一番の被害者)に感情移入というより、哀れという感情しか抱けないこの一家は事情が特殊過ぎて、激情にまみれすぎてクルーと重ね合わせるにはあまりに不適格な存在わと言わざるを得ない。

 無理に重ね合わせようとするがゆえに、余計にセリフが白々しく聞こえてしまっている。基本的にヤマトⅢは感情移入がしづらい。ストーリー展開もとっ散らかって、残念至極……。その傾向が如実に出たエピソードである。

 

 このエピソードの必要性を強いてあげるならば、バーナード星系に隠れていたダゴン艦隊本陣に対し、ご都合主義過ぎないように、偶発的に最接近する機会を与え、新反射衛星砲の奇襲攻撃=ビックリ演出につなげた。また、多くなり過ぎた新クルー(女性中心)らを退艦させるきっかけを作った。

 これらは演出的に成功だと思うし、シリーズの整合性・共通性を見出せる。更に、結局宙ぶらりんであった看護師の皆さんを帰還させたのは、アニメーターの仕事を幾らかでも減らせただろうし、シーンも節約できただろう。

 これらの点は評価してしかるべきだと思う。