旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅲ 白鳥座域決戦(ヤマトⅢ)

 

 アルファ星第4惑星から白鳥座にかけての宙域はヤマトとダゴンが血みどろの戦いを繰り広げた舞台である。ストーリーのボリュームも何と5話も費やしている

 その割には中身のない戦いだが――考察しよう、パート2

 

  

 

 白鳥座域決戦・ロス第154惑星域戦

 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第17空母艦隊
 戦力:戦闘指揮艦1、戦闘空母3、2連3段空母1
 指揮官:ダゴン将軍


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 展開

 第10話――団船長の気象観測船を囮的に攻撃し撃沈したダゴン。そして、ヤマトはまんまと誘いに乗ってしまう。

 敵発見は双方同時、ヤマトは直ちにコスモタイガーを2部隊発進させ一方でダゴン艦隊も艦載機部隊を繰り出して迎撃。第一会戦は見事ヤマト航空隊に軍配が上がった者の、2連3段空母の迅速な補給に後れを取ったヤマト航空隊は発進できず裸で空襲を受ける羽目になった。

 このままでは座して死を待つのみ――ヤマトは小ワープでこれから退避を試みた。ところが、その前に機関が損傷してしまう。ダゴンはなおも攻勢を仕掛け……その攻撃に敵わずヤマトは徐々に白鳥座の赤色イオン流に押し込められてしまった。

 

 第11話――幸いにも気流を突破したヤマトだが、直後に空襲を受ける。これを瞬間物質移送器による空襲と判断した真田さんだが、イオン流突入の過程で砲塔基部が損傷した状態ではヤマトも打つ手がなかった。更に艦載機発進口まで攻撃を受けて全く打つ手なし。

 パルスレーザー砲を手動で動かす奥の手を発動し、空襲を耐えて小惑星の陰で態勢立て直しを図る。そこへダゴン艦隊が接近、これを鹵獲しようとヤマト上空へ展開し降伏を勧告する。ところがヤマトは降伏する気などさらさなく、通告猶予の直前に砲撃を開始。正面に展開した第1戦闘空母、右舷に展開した第2戦闘空母、左舷に展開した第3戦闘空母、上空に展開した2連3段空母がそれぞれ主砲と副砲、煙突ミサイルで見事に返り討ちに遭う。ダゴンの旗艦も機動力を見せてミサイルを大方回避したものの、被弾。対艦戦闘能力の低いこの艦はワープして逃げるほかなかった。

 

 

 描写の妥当性

 ヤマト側は別に不思議な行動はしていない。団船長の思いを踏みにじったわけだが――ドメルの言葉を借りれば、使命感をくすぐられた状態「安直なヒューマニズム」を見事にダゴンに利用されてしまった

 

 一方でダゴン側はただの愚か者

 2連3段空母の艦載機だけで攻撃したというのは全く持って意味不明かつ非合理的な描写。戦闘空母3隻で2連3段空母1隻分だと仮定しても、艦隊の半分の航空戦力を端っから使わないという愚かさ、しかも大抵は全機発進は原理的に不可能なのだから必然的に2連3段空母の搭載機の半数程度しか繰り出せない。出撃し、損害が出ればそれだけ航空戦力は刻一刻と縮小されてしまう。

 挙句、部下の歯の浮くようなおべっかにまんまと載せられて艦隊を前進させる愚行しかも、ヤマトが明らかに不穏な動きをしているのに気が付かない

 で、艦隊を見事に消滅させられる。こいつは本当に愚か

 ヤマトを勝たせたいばっかりに、印象的なシーンを作りたいばっかりにご都合主義をやらかしたとしか言いようがないだろう。脚本家も書いてて「おかしいなぁ~」とか思わなかったのだろうか

 

 

 意義

 愚か者にまともな艦を渡しても無駄にするだけ、戦果は望めない。以上

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:戦闘空母3.2連3段空母1
 地球側損害:特になし

 

 

 

 ダメダメダゴンにだって執念はあるのさ! 

  白鳥座域決戦・第二会戦

 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第17空母艦隊
 戦力:戦闘指揮艦1
 指揮官:ダゴン将軍


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 展開

 第11話後半――白鳥座イオン流からワープして退避したダゴン旗艦。これを追って直ちにワープしたヤマト。だが、その先は白鳥座名物のブラックホールだった。 

 ダゴンはヤマトがワープアウトしたのと同時に牽引ビームを発射、これによってブラックホールへと叩き込もうと試みた。ダゴン最後の作戦である。

 

 ダゴン艦が放った牽引ビームは見事ヤマトに着弾。さらにブラックホールを前にダゴン艦は分裂し、両サイドからヤマトを引っ張り上げる。

 一方でヤマトは波動エンジンを全速回転させ、波動砲口をエンジン噴射口代わりにして逆噴射を行う。しかし、これでも振り切れない。また、ショックカノンやパルスレーザーもブラックホールの重力に捉えられてダゴン艦に当てられない。そこで真田さんは、ブラックホールに吸い込まれる途中の小惑星めがけて波動砲の発射を提案、これによって牽引ビームを振り切ろうとした。

 この計画は見事的中、ダゴン艦は爆発の衝撃派にもまれて互いに衝突し牽引ビームを保持できなかった。そしてそのままダゴン艦はブラックホールの中へとぐるぐる回りながら消えていった。

 

 

 描写の妥当性

 ひとつ前の戦闘がダゴンの壊滅的な無能を晒したため、サシの勝負なのに盛り上がりに欠ける。多分、どうせ碌な事にならんだろうと

 

 それはそれとして――ブラックホールの超重力を振り切れるダゴン艦の推進力の強さは驚くほど。加えてあの牽引ビームがブラックホールの影響を受けず、ヤマトの推進力でも振り切れないのは驚異的。牽引ビームは下手な武器より強い逆に言えば、ヤマト2のちくわ惑星で見たあの電磁拘束も同等より幾らか劣るぐらいの強度という事だから、あれも結構驚異的だった――ガミラスの科学力やべぇな。

 ガトランティス戦役においてちくわで一度、似たような状況での戦闘を経験しているためヤマトクルーは逆に対処しやすかったかもしれないゆえに、波動砲の反動を利用して脱出する等のはヤマトクルーなら気が付いた事だし、確実にガルマン系のダゴンは知らなくて当然。あの流れになるのは妥当だろう。

 ダゴン艦が2隻互いに衝突したのはアメリカンクラッカー的でご都合主義に見えなくもないし、アメリカンクラッカー的が故ある意味合理的な描写ともいえなくもない。

 

 正直、ダゴンざまぁ以外に言葉がない

 

 

 意義

 ヤマト側は――昔の手法もやりようによっては今も通じるという事が判った。つまるところ、温故知新。

 ガルマン・ガミラス側は――ダゴンが死によった。お荷物が消えよった、これで戦闘が順調に進む。以上

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:戦闘指揮艦1対
 地球側損害:特になし

 

 

戦闘考察Ⅱ アルファケンタウリ周辺域(ヤマトⅢ)

 

 アルファ星第4惑星から白鳥座にかけての宙域はヤマトとダゴンが血みどろの戦いを繰り広げた舞台である。話のボリュームも何と5話も費やしている

 その割には中身のない戦いだが――考察しよう。

 

 

 

 アルファ星第4惑星奇襲戦

 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第18機甲師団艦隊、バーナード星第1惑星前進基地
 戦力:前線基地ミサイル陣地、第18機甲師団艦隊(戦闘には未参加)
 指揮官:ダゴン将軍


 地球側参加部隊:ヤマト、アルファ星第4惑星警備隊 
 戦力:戦艦1、警備艇多数

 指揮官:古代進、警備隊長(氏名不明)

 

 展開

 第7話――ダゴン艦隊の襲撃を受け、SOSを発信したアルファ星第4惑星に援護の為に寄港したヤマト。そこで目にしたのは散々に攻撃された各施設の惨状。

 ヤマト自身も第11番惑星域で受けた損傷もあり、これを修繕すべくドック入りをし、一方で乗員に対しては半舷上陸を認めて惑星上の警備活動も同時に行った。

 クルーらが立ち寄ったバーにて、偶発的に発生した乱闘の最中――突然どこからともなくミサイル攻撃が開始される。悪い事に砲術班の数がそろわず、現状の乗組員だけでこれに対処しなければならなかった――しかし、警備艇の犠牲と弾幕を張ることでこれを凌ぐことに成功。

 乗組員を収容したヤマトは直ちにミサイル発射地点へと出撃した。

 

 

 描写の妥当性

 ストーリー展開上、バーでの喧嘩が必要だったかは疑問しかもあれ、副長と艦長が放置――後でバーの主人に通報されたらこれは二人とも懲戒ものだろう。あれを許すのは、昭和だけ……平成だろうが令和だろうがその次だろうが、許されないだろう。昭和の時だって、憲兵隊にしょっ引かれただろう。あの喧嘩は誰が現場に居合わせたにしろ、即時押しとどめるべきだった。

 そもそもストーリー展開的にもなきゃ無いで構わない、むしろ無い方が妥当なレベルの描写。別に第一作で沖田艦長とサシで話し合った時のように、ちゃんと話し合えばいいだけなのに無理に挿入し、無理に古代と島の和解エピソードに仕立て上げた

 無理に次ぐ無理がたたって意味のない描写になってしまった。と言えよう。

  

 戦闘の中身だが――警備艇が出動している分、第4惑星の基地には空きが出ているのだからそこにコスモタイガーを突っ込んでおけば有機的に出動できたはず。突っ込んでおいたコスモタイガー隊を緊急的に発進させて要撃させれば警備艇を無駄死にさせることもなかったし、シーンとしても華があった。大体、敵襲があると判っているのに、惑星援護に向かったのにもかかわらず、肝心のヤマト自身が警戒態勢を解くとは何事か古代は馬鹿なのか?

 

 更に指揮系統の描写も整合性に欠ける真田副長がヤマトにいるのだから、敵惑星上ではないのだから艦長と島副長にはその場でとどまってもらい、ヤマトは緊急発進して真田副長を中心に機動戦をすればよかったしその方が妥当な展開だったはず。古代と島は何がしかの方法で地表からミサイルを迎撃するとか、発射点を探るとかしてもらえば、彼らにも十分見せ場が出来ただろう。

 それにもかかわらず、古代と島の帰還を前提とした指揮を開始するものだから整合性がとれないわ、警備艇は沈むわ、ダゴンに押されに押されてしまうわの大惨事わざとヤマトが劣勢になる様に展開を調整したのかな? と疑いたくなるほどの‟逆”ご都合主義展開と言えよう

 

 

 この作品は第一作の脚本に参加していた山本暎一氏が脚本と監督に参加しておられるが、それゆえか人物に対してフォーカスが強いのがヤマトⅢ。第一作と同じく、戦闘描写が人間ドラマに押され気味なのもヤマトⅢの傾向。

 いうなれば、山本氏の脚本では人間という存在の限界と同時に輝きを描き出すという特徴がある。であるから、なのかは不明だが……指摘していいのか怖いが……以前までの作品であんなにうまく戦闘指揮をしていた真田さんが、突然平凡な指揮しかできなくなっているところ、これが非常に疑問でむしろご都合主義

 2199でも似たような雰囲気というべきか、イズムが感じられ――逆にご都合主義に思えた。あれと同じというか、その起源といえる……かもしれないシーンといえよう。

 

 

 要するに――この一連の戦闘はご都合主義を廃したように見えて逆に、無茶なほどご都合主義的な演出とストーリー展開。結果として全く無意味な試みになってしまった

 そもそも副長が二人という非合理的な設定を冒頭にぶち込んで居る時点でヤマトⅢの整合性はお話にならないレベルだが

 

 

 意義

 ガルマン・ガミラスのミサイルが惑星間の長距離射撃が可能という驚愕の科学力が判明。加えて太陽系近縁部までガルマン・ガミラスの勢力が接近しているという事が判った。これが地球側の意義だろう。

 ガイデルにとってはこのタイミングがダゴンを見切るベストタイミングだったはずだが……。

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:特になし 
 地球側損害:警備艇多数、ヤマト損傷、基地施設

 

 

 

 バーナード星第1惑星誘導戦

 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:バーナード星第1惑星前進基地、第18機甲師団艦隊所属駆逐艦(旗艦)
 戦力:新反射衛星砲機構1、第18機甲師団艦隊(戦闘には未参加)
 指揮官:ダゴン将軍


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 展開

 第8話――ミサイル発射源を追ってバーナード星域に到達したヤマト。同時並行的に新惑星探査及び、たまたま遭遇した山上一家を保護――そこへ明後日の方向から突然閃光が走る。

 ヤマトは敵襲を受けたのだ。

 この第一波攻撃を探査より帰還中の古代たちが目撃。閃光の発射速度、軌道およびその傾向から古代はかつて冥王星で対決した反射衛星砲ではないかと考えた。

 

 第9話――反射板搭載機が小惑星デブリに紛れてヤマトの周囲を滞空、これに向かって新反射衛星砲を連続発射しヤマトを徹底的に攻撃するダゴン。しかし、敵状探査を続行した古代が新反射衛星砲のからくりに気が付き、反射板搭載機を撃墜。さらにコスモタイガーの増援が到着するに及んで反射板搭載機を全機撃墜。ダゴンも馬鹿では無い為、早くから護衛戦闘機を飛ばしていたものの、これも撃墜されてしまった。

 さらに深く敵状を探る古代は反射衛星砲の砲台を発見し、これを撃破。更にヤマトを誘導して一気に反撃を図った。しかしダゴンも、残存砲台の全てを投入し直接砲撃を敢行、更に惑星破壊ミサイルをぶっ放してヤマトを消滅させようと試みる。しかしショックカノンによって砲台は多数損傷、更に高空へと上昇することで直接砲撃の損害を軽減――そこで波動砲を発射。偶然タイミングの一致したダゴン側の惑星破壊ミサイルを巻き添えに基地を破壊。

 ダゴンは旗艦を駆って必死に逃げるほか術は無かった。

 

  

 描写の妥当性

 やだよねぇ、山上さんちのおっちゃん。ああいう人って結構どこにでもいるけど、周りを振り回している自覚があるのかないのか……。自覚があっても迷惑だけど、無かったら最早害悪なのではないのか……。

 

 第一作のバラン星で見たように、古代君は馬鹿だが愚かではない事の方が多い

 つまり、反射衛星砲に気が付いて当然だし、衛星を探してもなくて周辺に変な機体があればそれを疑うのは当然。これが元凶とわかれば一斉攻撃するのもこれは当然だろう。これはご都合主義ではなく、妥当な描写。

 

 

 ダゴンの悪い癖は、詰めが甘いところ

 今回も同じで、ヤマトが射程離脱を目指して上昇したからといって手ぬるい攻撃をする必要は無い、反射衛星砲の直接砲撃を続ければよかった。また、ヤマトをどうしてもつぶしたいと思えば、かつて冥王星前線基地司令シュツルがやったように艦隊を前進させて圧迫すればよかった。でも、それをしなかった。

 つまり、ダゴン勝つためにやるべき事を、全く行わなかったのであるそりゃ勝てんわい

 

 かつてヤマトに立ちはだかったシュルツは機転・応用が利かなかったが、非常によく練られた作戦を慎重に進めたドメルは性格が悪いというか、性根が腐っていたが――それでも意表をついて効果的に艦隊戦を行う軍師だった。

 だが、ダゴン――やっぱりこの人はパワーで押しつぶす他に作戦を立てられない無能さんだったのかも

 

 

 意義

 新クルーとベテランクルーが共同歩調を取れた事、バーナード星第1惑星は人類の移住先には適さないというのが判明した事、ガルマン・ガミラスの前進基地を消滅させたことが意義。

 ダゴンは自分の無能さに気が付ければよかったが、それが出来なかったので、彼にとってこの戦闘の意義は無かった。

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:前進基地消滅、第18機甲師団艦隊主要艦艇全滅
 地球側損害:特になし

 

 

 

 

戦闘考察Ⅰ 第11番惑星境界面戦(ヤマトⅢ)

 

  偶然太陽系にワープアウトしたラジェンドラ号。そこへ通りがかったヤマトが退去を勧告するが、大破したラジェンドラ号にはそれだけの能力すら失われていたのである。そこでヤマトは防衛司令部と相談の結果、ラジェンドラ号を海王星ドックへ回航させ人道支援の範囲内で その修理を行う事とした。

 ところが、ダゴン艦隊はラジェンドラ号を追って太陽系へと突入。更に地球を含めた挑発的な通信を送る。しかし、ラジェンドラ号が動けない事は動かしようのない事実であった……。

 

 

 

 日本アルプス遭遇戦
 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第18機甲師団艦隊所属駆逐艦
 戦力:駆逐艦
 指揮官:氏名不明


 地球側参加部隊:日本アルプス秘密ドック防空隊 
 戦力:中型雷撃艇多数(ヤマト航空隊搭乗員による操縦)

 指揮官:古代進、加藤四郎

 

 展開・描写の妥当性

 第3話――ラム艦長率いるバース星守備艦隊に意外な苦戦を強いられたダゴン艦隊。しかし、絶対にバース星守備艦隊を殲滅しなけらばならない彼らは、体勢を立て直すためにワープで退避を試みるバース星守備艦隊に喰らい付いて続々とワープを敢行。

 たまたま隣接していた太陽系へと幾隻かがワープアウト。敵味方で同時に同空間へとワープアウトして差し違える中、一隻のガルマン・ガミラス駆逐艦が強行的に地球へと降下を試みた。

 

 勝てると思ったのか、駆逐艦の艦長はそのままどんどん降下。一方でヤマトと地球防衛軍司令部はこの事態に面食らって一時対応が遅れる。

 しかし、ヤマトの任務の重大さを考えれば、相手が不明であっても撃沈すべし――コスモタイガーを操るヤマト航空隊のパイロットたちは雷撃艇に乗り換えこれを迎撃、見事撃沈に成功したのである。

 

 さて……これは駆逐艦が悪い。通信ナシでいきなり降下だもの。外交関係ゼロなのに威力偵察だものそりゃ、迎撃されるわい

 確かに、無警告で迎撃した地球だって奇襲的に駆逐艦を攻撃しているから、問題っちゃ問題。とはいえ、あの駆逐艦艦長の感じからすれば、知らない敵に対して「引き付けて、一気に撃滅せいっ」なんて言っちゃうぐらいだから――通信しても、しなくても結果は同じだっただろう。

 明らかに敵意を持った威力偵察に対し、強硬手段で排除するのは何ら問題はない。

 ただ、防衛司令部の意思決定プロセスが……ちょっとまずかった

 

 意義

 地球の近くで大きな戦闘が起きているという事が判った。前途多難である事がはっきりしたのは、腹積もりが出来て、意義があったと言えばあっただろう。

 ガルマン・ガミラス駆逐艦側からすれば――知らない敵に接近されるべきではない、という事だろう。戦訓を汲める人がいればいいが、多分いないでしょうね

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:駆逐艦1 
 地球側損害:特になし

 

 

 

 第11番惑星境界面戦
 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第18機甲師団艦隊
 戦力:中型戦闘艦多数、駆逐艦多数
 指揮官:ダゴン将軍

 

 バース星側参加部隊:バース星守備艦隊(残存)
 戦力:戦艦1(ラジェンドラ号)
 指揮官:ラム艦長


 地球側参加部隊:新惑星探査特務艦ヤマト 
 戦力:戦艦1(ヤマト)、コスモタイガーⅡ多数

 指揮官:古代進

 

 展開

 第5話――海王星ワープアウトしたラジェンドラ号。黒煙と紅蓮の炎に包まれ、うらぶれた姿で宇宙を何とか進む。そこへ通りがかったヤマトは、ラジェンドラ号に対して退去を勧告した。ところがラジェンドラ号にはそれだけの余力がなかったのである。

 そこで、防衛司令部は同じ軍人のよしみとして、24時間以内・人道支援に限ってラジェンドラ号を海王星ドックへと率いれ補修を許諾した。

 ラジェンドラ号を指揮するラム艦長は無骨だが柔和な軍人であった。彼の口から語られた天の川銀河の戦乱に驚愕する古代。ここで初めてガルマン帝国の存在が語られる。

 

 そこへ、くだんのガルマン帝国が差し向けたダゴン艦隊が現れる。彼らは丁寧かつ断固とした態度で10分の猶予の後、ラジェンドラ号引き渡しが実現しない場合は地球への直接攻撃を通告した。しかし、ラジェンドラ号は動けない。ラム艦長が代わって交渉に当たり、地球側猶予期限の8時間後に必ず海王星ドックを離れて公海において決着を付けると宣言。ダゴンもこれを受諾した。

 一方で真田技師長はラジェンドラ号の損害状況をみて副砲数門のみの戦力では、ダゴン艦隊に勝てないと進言する。しかしラム艦長は「無駄死にはさせない」とだけ語り、有余時間いっぱいまでの補修を受けた後、出撃した。

 

 海王星ドックを離れ、宇宙を進むラジェンドラ号。ダゴン艦隊は海王星からずっと射程堅持のまま追跡をしていた。そこで古代はコスモタイガー隊を発進させ、これを護衛。ヤマト自身も後方に位置して、領土内では一切手出しさせないよう陣形を張った。

 第11番惑星――地球の領土の境界線に到達するラジェンドラ号。機関をフル回転させ、境界を脱したと同時にワープを試みる。他方で、そうはさせまいとダゴンは直ちに砲撃を開始した。更に、領土内での発砲に抗議したヤマトにすら砲撃を加える。

 

 ここでヤマトは応戦、コスモタイガー隊も攻撃を開始した。しかし、大量の戦闘艦艇を前にヤマトも苦戦。ヤマト攻撃に気を取られたダゴン艦隊の隙をついて離脱を試みる――はずなど無いラジェンドラ号。なけなしの副砲を以てダゴン艦隊を砲撃、自身の戦闘を最期まで続行する覚悟で戦闘に参加した。

 途端に集中砲火を受けるラジェンドラ号。ラム艦長がヤマトへ通信、感謝と‟戦線離脱”の謝罪を述べると……ほどなくしてラジェンドラ号は爆発、宇宙の塵となった。

 

 目標であったラジェンドラ号を撃破したダゴン艦隊だが、すでに彼らの標的はヤマトへと移っていた。何としてもヤマトを撃破しようとするダゴン艦隊に対し、弔い合戦を挑むヤマトは持てる手段をすべて使う。

 一時、艦上方へ離脱するように見せかけダゴン艦隊を引き付け、十分に引き付けたと同時に錐もみ状態でコースターン。主砲、副砲、煙突ミサイルを乱射し、追ってきていたダゴン艦隊を片っ端らから撃滅。

 この猛攻にたまらず、ダゴンは副官に命じて全艦に指令し1号艦から3号艦までを旗艦に随伴させ、残りの部下を捨ててワープした。

 

 戦闘も最終盤一隻、ガルマン帝国の名に懸けて何としてもヤマトを仕留めようと手負いの駆逐艦がヤマトに突っ込んでいった。駆逐艦艦長は「諸君、よく戦った……デスラー総統万歳」と最期の言葉を残して戦死。

 しかし、部下たちは艦長の弔い合戦とばかりにヤマト艦内へ突入し白兵戦を敢行した。幸いにも食堂付近に突入したことで、戦闘は比較的容易に進む。しかも炊事部が迎撃に当たったのだから、戦闘班による戦闘とは大きく違う。ところが、ガルマン側も決め手に欠け、ヤマトクルーには続々と応援が駆け付け劣勢へ……ついには全滅してしまった。

 ヤマトはガトランティス戦役以来の大ピンチを何とか退けたが、しかし平田ら炊事部の面々が犠牲になってしまったのである。

 

 

 描写の妥当性

 ラジェンドラ号側の行動には何ら不思議はない

 特に、公海に出ると同時にワープで逃げるというのは名案だろう。ラジェンドラ号が太陽系から離脱すれば、ダゴン艦隊は必ず追跡してくる。そうすれば地球でダゴン艦隊がたむろする理由はなくなる。つまり、公海に出ると同時にワープで逃げることが地球に迷惑をかけず、バース星に帰還できる唯一の方法だった

 一方で戦闘に参加したのも、ラジェンドラ号が太陽系に進入しなければ発生しなかった戦闘にヤマトを巻き込んでしまった。自分だけ逃げる不義理をラム艦長がどうしても許せなかった、本国の名誉にかけて戦ったに過ぎない。

 仮に逃げた場合、味方の士気に確実に影響するし、祖国バースに地球という余計な敵を作ってしまう危険性もある。そもそも逃げる前に撃沈させられる危険だって少なくなかった。つまり、まともな人間であればあの場合はどうやっても戦闘に参加する他なかったラム艦長でなくとも、同じ判断をせざるを得なかっただろうが、特に堅気のラム艦長にはほかの選択肢など考えられるはずもなかった。それを判っていたからこそ副官も艦長の命令を支持した。

 実に普通の合理的なストーリー展開だろう

 

 

 防衛司令部としてはラジェンドラ号に敵意がない事が判っているのだから打ち払う理由はない。確かに迎え入れる必要性はないが、うまくいけば天の川銀河で起きていること――アルファ星第4惑星への攻撃など――について聞きだすことが出来ると予想が出来た。

 しかも、ラム艦長率いるラジェンドラ号はアルファ星第4惑星への攻撃を行った側ではなく、それを防いでくれた側の艦隊という事は記録を見れば即判る事

 これらを考え合わせれば、藤堂長官のラジェンドラ号の海王星ドック寄港許可は極めて合理的で妥当な判断

 

 

 ヤマトの護衛行動も、順当

 コスモタイガーの攻撃力から言えば、水雷艇に近い扱いでラジェンドラ号を援護するのは当然だし、ヤマト自身がその後方についてダゴン艦隊主力からの攻撃を防ぐのも、古代君にしては名采配といっていいだろう。

 ラジェンドラ号へ攻撃を始めた時点でダゴンが協定違反をしたのだから、これに対して攻撃を開始するのも当然だし、第11番惑星軌道内は明確に地球の主権の範囲内である事は確実だから何の遠慮もなくダゴン艦隊を打ち払えばいいだけ

 ただ、相手の数が多かった故に護衛任務は結果的には失敗してしまった。さらにラジェンドラ号自身、あの損傷であの数を相手にしては……むしろ良く持ちこたえた方だろう。

 ストーリー展開的にも、戦闘の合理性的にもラジェンドラ号爆沈は避けられなかった

 

 その後の戦闘も割合にまともな展開を見せる。意外な事に。

 いったん上昇してそれから降下するという行動は、結果として敵艦隊の一部を引きはがして事実上の各個撃破に持ち込み、敵艦隊より高速で動くことで敵艦隊に対して最大の火力をたたきつけることに成功した。

 要は陽動+各個撃破これは結構すっきりした戦闘内容だし、結構まともで……何なら見事

 確かに他の提督なら別の反応をしかねないが、しないともいえない。殊、ダゴンに限って言えば――彼はガルマン・ガミラスの中でもあんまり指揮の上手い方ではない。そんな将軍に対し一隻だけで挑んだというのが、逆にうまく作用したと言えるだろう。

 

 白兵戦においては、あれはヤマトにしては無様ではあったが――炊事部は本来戦闘には参加しない。それでも、他部署へ敵を侵入させなかった身を挺した防戦は見上げた根性。よく戦ったと言える。

 ついでに言えば、何だが島君の操艦が下手だった気もするが、相手が何が何でも突入する意思があったのだろうから仕方がない面も多い。

 ホント、食堂以外に突っ込んでくれればよかったのだが……

 

 

 ダゴンに関しては第11番惑星域を脱するまでどうして待てなかったのかと聞きたい。高圧直撃砲でワープとほぼ同時に射撃できれば、一発は当てられただろう。最悪取り逃がしてもバース星を包囲しておけばいい。何故そうしなかったのか……。後々の事を考えれば、変な事をして地球の参戦を避けるのが得策だったはず

 そう思わなかったのなら、ダゴンの状況認識や戦力把握の能力がポンコツという事になる実際ポンコツだから、地球を巻き込んでも問題ないと思ったのだろう。ひたすら傲慢で詰めの甘い――威厳のいの字もないドメル将軍な彼だからこそ、ある意味妥当な描写物凄く悪い意味で、妥当

 

 仮に公海上であれば、ヤマトはこれ参戦する理由がない。この状態でヤマトが参戦してくれば、ガルマン・ガミラス側に地球征服の大義が生まれる。また、ラジェンドラ号を袋叩きにでき、返す刀でバース星を征服できたはずだ。

 それなのにダゴンが余計な事をしたおかげで、ガルマン・ガミラスは地球に対して道義的に劣勢となってしまった。何かあった際に地球連邦政府から総統府へ何ぞの請求書が届いた場合、総統は何ぞ代償を支払わなければならないだろう。好意としてではなく、義務として。

 

 デカい態度取ったくせに、びびって逃げたのも情けないぞダゴン

 ヤマトが離脱すると思って追ったのは仕方がないとして、あの猛反撃で面食らったのも仕方がないとして――それで逃げるか普通? 挙句、味方艦隊に対して離脱を命じなかった。味方艦同士が援護しつつ離脱は別に不思議ではないが、それは全艦がスムーズに離脱するために必要な事であって、自分が生き残る為にやる事ではない

 ダゴンは指揮官として責務を果たさなければならなかった。全艦に順次退避を命じて、しかる後は勝手にさっさと逃げればいい。なのに、旗艦の為にわざわざほぼ全艦隊が居残りさせ、全滅させたなんて指揮官として話にならない

 

 

 駆逐艦の艦長に関しては、あれ多分機関部が損傷していそうだから多分逃げられなかっただろう。割と自己犠牲的なガルマン・ガミラスの軍人からすれば、祖国の為に艦隊の為に、帰れないならヤマトを葬るまで――実にガルマン・ガミラス軍人らしい行動最後に部下にねぎらいの言葉をかけたのも涙を誘う

 一方、部下たちも最後まであきらめずヤマト内部に突入し、勝利をもぎ取る為に最後まであきらめなかった。これは果敢な戦い方で軍人かくあるべし

 ガルマン・ガミラス魂、ここにあり。といった具合である彼らはダゴン艦隊の中で唯一真剣に戦った人物なのかもしれない

 

 

 意義

 地球連邦にとっては、バース星に恩を売れた事とガルマン・ガミラスがそんなに強い敵ではないという事が判明したのが大きいだろう。

 ダゴン側にしてみれば、地球にも侮れない軍艦がいるという事が判った。しかも地球は兵器の質としても存外に強力。策を練って練り過ぎることはないと、分かっただけでも収穫だろう。

 バース星は……ラム艦長という偉大な指揮官を失った。その代償は非常に大きいが、彼の心意気が一時とはいえヤマトをバース星側に引き込む事になった。つまり――意義はあった。だが、あまり大きなものではなかったといえる。

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:中型戦闘艦多数、駆逐艦多数  
 バース星側損害:戦艦1

 地球側損害:特になし

 

戦闘考察S バース星守備艦隊VS第18機甲師団艦隊

 

 ヤマトⅢの冒頭は全く地球が関係なかった。地球の預かり知らぬところで大規模な総力戦が繰り広げられていたのである。

 その中で天の川銀河の命運を左右する一戦――後に地球に関わることとなるバース星を巡った大決戦が発生していたのだ。 

 

 

 

 第一会戦(ペルセウス腕辺境域戦)
 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第18機甲師団艦隊
 戦力:中型戦闘艦多数、駆逐艦数十隻、惑星破壊ミサイル母艦4
 指揮官:ダゴン将軍


 バース星側参加部隊:バース星守備艦隊(主力) 
 戦力:複数個艦隊(総数20前後)

 戦力内訳:戦艦タイプA/タイプB多数、大型空母多数
 隷下部隊:前衛艦隊(大型空母旗艦)、後衛艦隊

 総指揮官:ラム艦長

 

 展開

 第1話冒頭――ペルセウス腕、バース星よりはるか前方にて激突した両艦隊。ダゴン艦隊は鶴翼の陣に近い散開体型で前進、他方でラム艦隊は偃月にちかい突撃隊形でこれを迎え撃った。

 戦闘はダゴン艦隊が口火を切って砲撃を開始、応じる形でラム艦長も砲撃を開始。猛烈な打撃戦となった。序盤はラム艦隊がダゴン艦隊を圧倒――戦況を一挙にひっくり返すためダゴンは惑星破壊ミサイル母艦を前進、直ちにミサイルを発射し小惑星ごとラム艦隊の主力を無理やり粉砕した。

 この際、一発が軌道をずれて宇宙を漂流していったのである……。

 

 描写の妥当性

 先頭序盤、鶴翼の陣で翼包囲を狙ったダゴンを正面投射力と速度・突進力でラム艦長が押し切った形である。実際、シリーズ通して一貫してどうもボラー艦の方が火力は高いらしく、バース星守備艦隊の数は明らかにダゴン艦隊と同等の隻数をそろえて来た――それを考えれば、ダゴン艦隊が劣勢になるのは仕方がない

 これを覆すための戦術として惑星破壊ミサイルをぶっ放したダゴンは、あの性格も鑑みれば選択として当然だろう

 

 惑星破壊ミサイルを止めようとするタイプAの姿は、まるでガンダムみたいな展開だったが、身を挺して押し留めようとしたのも、これは妥当。実際には押し出されたのかもしれないが……。

 惑星破壊ミサイルが全量反応を起こしてしまえばえげつない爆発力に巻き込まれて艦隊は消滅してしまう。後方の惑星まで到達しなければ、恐らく反応量は不十分なものになっただろう、そうなれば艦隊はかなりの部分で被害を免れる。それを狙ってタイプAが決死の体当たりを試みたが――敵わなかった

 ダゴンの発言と若干食い違うが、後方の惑星ごと、ではなく普通あのミサイルを発射するならば後方の惑星を狙うべき

 

 この戦闘に参加したバース星守備艦隊は、恐らく赤い大型空母を旗艦とする前衛艦隊と〈ラジェンドラ〉を旗艦とする主力艦隊惑星破壊ミサイルに対し決死の覚悟で立ちはだかった後衛艦隊の3個艦隊が見込まれる。

 前衛、および後衛は大損害を受けたとみて不思議はない

 

 一方でダゴン艦隊も意外と損害を受けていたと思われる。ダゴンの計算上、容認できる損害を超える打撃をラム艦隊が繰り出した結果、「意外にやるじゃないか」的に惑星破壊ミサイルを発射したのだろう。とダゴン艦隊の状況と、ダゴンの表情の描写から十分説明が出来る。

 

 

 意義

 バース星守備艦隊にとっては、ガルマン・ガミラス――正確にはダゴン艦隊と戦うには正攻法で戦っては敵わないという事が意義だろう。決戦兵器の威力が段違いなのだから。やはり、保護国のモンキーモデル艦隊の悲哀といったところか。ただし、副次的な効果として、ダゴン艦隊に惑星破壊ミサイルを使用させたことでバース星自体への攻撃を未然に防いだともいえる。

 ダゴン艦隊側は、手を抜いたり侮ったりすればせっかくの優勢が引っ繰り返されかねないという戒めになった。

 

 ガルマン・ガミラス損害:中型戦闘艦多数、駆逐艦多数 
 バース星側損害:戦艦タイプA/タイプB多数、大型空母多数
 

 

 

 

 第二会戦(バース星前面域戦)
 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第18機甲師団艦隊
 戦力:中型戦闘艦多数、駆逐艦数十隻
 指揮官:ダゴン将軍


 バース星側参加部隊:バース星守備艦隊(主力) 
 戦力:数個艦隊(約30前後)

 戦力内訳:戦艦タイプB多数(おそらくタイプAも含む)、大型空母多数
 隷下部隊:なし

 総指揮官:ラム艦長

 

 展開

 第2話中盤の出来事。ペルセウス腕周辺部で大損害を受けたバース星守備艦隊は一路本国へ帰還し、戦力を再編。一方でダゴン艦隊はこれに喰らい付く形でバース星前面域まで突入しこれを粉砕しに掛った。

 ダゴン艦隊は二手に分かれ、ラム艦隊はこれを無視して全力で前進し迎え撃つ。戦闘の経過の如何は不明だが、激戦が繰り広げられ大型空母の多数と戦艦の多数が撃滅されてしまう。

 しかし、ダゴン艦隊はバース星への直接砲撃を諦め、バース星周辺域を占領して孤立を狙う飛び石作戦を敢行。ラム艦隊は一定程度バース星守備の役割は果たしたのだった

 

 

 描写の妥当性

 恐らく、ラム艦長は練度が一段低下した艦隊を率いていただろう。その場合、艦隊運動はあまり多くを期待できない。練度が低ければ艦隊運動は単純な突撃しかなくなる可能性が高い一方でダゴン艦隊の第一波砲撃をかわす事が出来れば反航戦の性質上、振り切ることも不可能ではない。振り切れれば、ダゴン艦隊が追撃戦に移りバース星から引き離すことが出来る。そうすれば母星の安全を守りつつ、死力を尽くして戦う事ができる。

 他方、ダゴン艦隊の行動もこれ当然で、ボラー艦艇は一通り砲を旋回できない。出来てもタイプAの艦首ボラー砲1門のみ。射角も大してない故、ガルマン・ガミラス艦は圧倒的に有利。火砲の自由度を最大限に生かすため、ダゴン艦隊は左右に分かれて両舷から側面攻撃した。バース星も攻撃できるし、敵主砲も避けられて一石二鳥。しかる後に追撃戦に移行、敵艦隊後方に付いて執拗に艦尾へ攻撃を集中する艦隊運動を行えば一方的に撃破できる

 

 と、両者の行動を説明する事が可能。これは結構まともな描写というか戦闘展開といえるのではないだろうか。

 

 

 意義

 先に述べたように、ラム艦長からすれば、バース星をダゴン艦隊の直接砲撃から守った事が一番大きい

 

 他方、ダゴンも珍しく、まともな判断――自艦隊を最も有利な位置へと動かす差配は、間違いなくダゴンがもぎ取った勝利と言える。これは意義が大きい。

 それでも徹底抗戦してくるラム艦長。彼はたとえ中途半端な戦力であってもまとめきれる、バース星の盾であることがよくわかった。つまり、バース星を陥落させるにはまず、目指すはラジェンドラ号を撃ち沈める事。これがはっきりしたことも結構意義が大きい。

 

 ガルマン・ガミラス側損害:中型戦闘艦多数、駆逐艦多数 
 バース星側損害:戦艦タイプA/タイプB多数、大型空母多数

 

 

 

 

 第三会戦(アルファ星第4惑星前面域戦)
 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第18機甲師団艦隊
 戦力:中型戦闘艦多数、駆逐艦数十隻
 指揮官:ダゴン将軍


 バース星側参加部隊:バース星守備艦隊(主力) 
 戦力:数個艦隊(約30前後)

 戦力内訳:戦艦タイプB多数(おそらくタイプAも含む)、バルコム艦型戦闘空母
 隷下部隊:なし

 総指揮官:ラム艦長

 

 地球側参加部隊:アルファケンタウリ警備隊 
 戦力:戦闘衛星多数(レーザー砲衛星+ミサイル衛星)
 隷下部隊:なし

 指揮官:不明(最高司令官は藤堂防衛司令部長官)

 

 展開

 第3話中盤及び第5話冒頭――バース星を超えてアルファ星第4惑星へ攻撃を加えるダゴン艦隊。突然の攻撃を受けた地球連邦政府防衛司令部は直ちに周辺域の戦闘衛星を集結させて戦闘を支え、同時に出撃させた惑星パトロール艦隊・3個艦隊によってこの危機を乗り越えようと試みた。

 そこへラム艦長率いるバース星守備艦隊が到着。副官の退却という意見具申を退け、ラム艦長は直ちに砲撃を敢行、砲撃戦となった。ダゴン艦隊はこれに応じて攻撃対象を第4惑星からバース星守備艦隊へと変更、猛攻撃を加える。

 全力の攻勢を試みたラム艦長だったが、すでに艦隊の質からして劣勢な自軍ではダゴン艦隊に敵わず。最後まで攻撃しつつ、しかし直ちにワープで戦闘域を退避した。

 

 

 描写の妥当性

 敵に後ろを見せるのは卑怯だが、敵を後ろから攻撃するのはいいのか。という疑問があるとはいえ――まあ、レーダーがあるのに使わない方が悪いか撃たれて初めて気がつくって、ガルマン・ガミラスのレーダー要員は一体何をしていたのか

 

 ラム艦長からすれば反撃の絶好の機会であっただろう。実際、第一波攻撃は成功した。あの第一波砲撃で結構な数のガルマン・ガミラス艦を仕留めた。だが、ダゴンが本腰を入れて反撃をしてからでは分が悪く、早い段階でバース星守備艦隊は撤退に移った。

 ダゴンも、あのままアルファ星第4惑星を攻撃していたら正気を疑われるが、さすがに反転。幾ら射角が広くとれるガルマン・ガミラス艦でも、敵の主砲に比べれば後方に指向できる砲の威力は限られているのだ。直ぐに艦隊を反転させ腰を据えての迎撃を試みたのは至極当然。

 ダゴンもラム艦長も双方ともに、至極当然の艦隊指揮をしたといえるだろう。今回責められるべきはレーダー要員。

 

 忘れがちだが藤堂長官。彼も至極当然な指揮を行ったといえる。

 無理とわかっても一応戦闘衛星を集結させた。これはダゴンが本気じゃなかったおかげで結構持ちこたえていた。また、ダゴン艦隊の規模から3個艦隊を同時に派遣したのも当然。過剰というほどの反応ではない。3個艦隊で勝てたかという点については陣容が不明なため判断に苦しいが、アルファケンタウリ駐留がトロール艦である為拡散波動砲という最強の初見殺しな決戦兵器を搭載していると予想できるため、十分効果はあったはず

 

 結論、みんな結構普通の行動だった。 

 

 

 意義

 天の川銀河で大規模な戦争が起きており、地球も標的になり得るという事が判ったことが地球にとっての意義。即応体制があんまり即応体制になっていなかったことが失敗であり、これが判明したことは大きな意義を持つ――はず。

 バース星守備艦隊にとっては千載一遇のチャンスだったが、失敗。仕方がないといえば仕方がない。一方で明らかにダゴン艦隊が自分で第3勢力を戦争に引きずり込んでしまった――これは、バース星守備艦隊にとっては、うまくいけば味方が増える絶好の機会。立ち回りをうまくすれば起死回生が望める。

 ダゴン艦隊にとっては利用価値の高い惑星国家が周辺にあるという事が判明した事、バース星守備艦隊主力のほとんどを撃滅に成功し、バース星征服が容易になった事。唯一の失敗は肝心のラジェンドラ号を取り逃がした事だろう。

 これらがそれぞれにとっての意義及び失敗といえる。

 

 ガルマン・ガミラス側損害:中型戦闘艦多数、駆逐艦多数 
 バース星側損害:戦艦タイプA/タイプB多数、大型空母多数 
 地球側損害:戦闘衛星大多数

 

 

 

 そしてここから、本格的に地球が銀河系大戦に巻き込まれてい行くのである……。

 

 

ストーリー考察XⅣ 太陽系帰還――ラストエピソード――

 

 

 ハイドロコスモジェン砲を受領したヤマトは一路、亜空間ゲートを通って太陽系へ急ぐ。地球人類には、もはや時間がない。急げヤマト。

 第25話、ラストエピソードである

 

 

 

 亜空間を通り高速航行、太陽系へと帰還したヤマト。防衛司令部へと通信を入れると、藤堂長官以下、熱波にやられ崩壊寸前の様子であった。一刻の猶予もない――ヤマトは直ちに前進、太陽圏へ突入しハイドロコスモジェン砲発射準備に掛った。

 だが、その時だった。発射直前――突如としてボラー連邦艦隊が太陽圏へと侵入してきたベムラーゼ首相率いる機動要塞と親衛艦隊である。

 この突然の敵の出現にハイドロコスモジェン砲の発射を諦め、迎撃態勢に入るヤマト。だが、圧倒的な艦隊戦力に加え機動要塞が放つブラックホールの威力は絶大。地球の最期に贈られたボラー連邦からのプレゼントを前にヤマトは身動きが取れなくなってしまったのである。

 プレゼントってお前……これは割と修飾の多いベムラーゼ首相らしい腹の立つ洒落の効いた発言

 

 

 そこへ何と、青い巨艦に率いられた緑の大艦隊が駆け付ける。デスラー親衛艦隊の登場だ

 親衛艦隊は間髪入れず全砲艦を以てのデスラー砲一斉射撃によりベムラーゼ艦隊を消滅させた。この援護の隙に太陽制御をと――総統はヤマトの援護を買って出たのである。

 ――再会は勝利の後で――

 

 

 

 意気揚々と機動要塞を目標にデスラー砲第二波が繰り出される。

 動けず光芒に包まれる機動要塞――だが、その姿は全く損傷を受けていなかった。束になって襲い掛かったデスラー砲が、機動要塞には全く通じなかったのだ護衛艦隊を粉砕することはできたが、肝心の機動要塞には一ミリも傷がついていない。バリアか、或いは特殊装甲か……100門近いデスラー砲が束になっても貫通できない要塞相手では、ハイパーデスラー砲とてその威力は保証できなかった。

 これは全てはベムラーゼ首相の策略だった確実にデスラー総統を仕留める――機動要塞、これがベムラーゼ首相の決め手だったのである太陽系こそ相応しいしい決戦の場だったのである。

 

 

 ベムラーゼ首相はデスラー総統の性格を完璧に把握していた。つまり――

 自らが引き起こしたといえる友人の星の危機に、総統であれば必ず駆け付ける。ボラーの大艦隊がヤマトを追っての事であれば、ますます総統が駆け付けない理由はない。デスラー総統ならば、自らの身を危険に曝してでも、ヤマトのため、地球のため、そしてガミラスの名誉のために迷わず戦いに来る

 総統と闘う上で、絶対に避けなければならないのはガルマン・ガミラスの領土内での戦闘。これは自殺行為である。他方、ボラー領土内では当然ながら総統とて警戒する以上、戦闘にならない。これでは誘う意味がない。

 ガルマン・ガミラス域から総統を無理やり引きずり出す、それも味方=ボラーが勝てる範囲の戦力程度に護衛を縮小させなければならない。つまり、この二つの要件を満たす戦場は他ならぬ太陽系圏内しかないのである。太陽系圏内で戦闘を行えば、ガルマン・ガミラス領土外の条件を満たし、かつシャルバートから太陽系圏内への強行軍を強いることで同行する戦力の漸減を図ることが出来るのだ。しかも、自軍は機動要塞を中心として戦力展開を行う。

 敵将を討ち取るにはベストに近い作戦である

 

 言ってしまえば――首相が述べた通り、総統をおびき出すのが目的であり、地球の運命などたいして興味はなかったのだ。無論、目障りなヤマトが苦しむさまを見るという一石二鳥だったかもしれないが

 

 

 

 まんまと引っかかった形の総統に対し、「罠にはまったなデスラー君」ベムラーゼ首相は勝ち誇った笑みを見せた。 

 だが、総統がこの程度で動揺するわけがない。

 散々スターシャやサーベラーやメルダーズの嫌味攻勢に鍛えられたのだ。たかが独裁政権の首相ごときの発言にダメージを受けようはずはない。

 総統は目を伏せ、不敵な笑みを浮かべる。「念のため伺っておきたい――あなたのお葬式は何宗で出せばよいのかな? ベムラーゼ君

 恐らくアニメ史上に残る名煽りで返しベムラーゼ首相を激怒させた

 

 

 この辺りは実際の戦争ないし戦闘に当てはめるならば、首相から総統への降伏勧告のやり取りと表現できるだろう。

 五稜郭の戦いやシンガポールの戦いなど、歴史上いくつも行われた戦闘とそれに関わる降伏勧告を例に引くまでもなく、普通に行われる事。首相と総統のやり取りは、内容が目を引いており悠長にも思えるが、ご都合主義とかの非難を受けるとは思えない。

 一方で何宗、という点に関しては――日本語の翻訳過程でニュアンスに齟齬があったという事である程度説明はつくだろう。知ってる? シャーロックホームズの古い本だと彼、麻雀してるんだ。多分、ポーカーを翻訳する過程で麻雀になったと思われる。で、ロイヤルストレートフラッシュと思われる最強の役が天和になってたりする。

 或いは、なっちの翻訳。彼女の翻訳も訳した気持ちもわからんでもないけど、そりゃないだろうという訳が多い、というのと同じ。

 という事でこじつけたい。

 

 

 煽られたベムラーゼ首相は瞬間湯沸かし器の如く激怒。首相・怒りのブラックホール砲乱射デスラー親衛艦隊の背後にいくつものブラックホールが生成され、その超重力に艦隊が捉えられてしまう。

 残念ながら機関能力の劣るガルマン・ガミラス艦にはヤマトや特別仕様であろうデスラー艦のようにブラックホール砲の重力を脱せられるほどの推力は出せなかった。次々とブラックホールに飲み込まれ、艦隊は見る間に数を減らしていった。

 さしものデスラー艦も、ブラックホールから脱出するのに精いっぱいで、機動要塞に対して攻撃するタイミングが作れない。続いて、機動要塞から発進した戦闘機隊が猛然と火ぶたを切ってヤマトを攻撃し始めたのである。コスモタイガー隊を繰り出して必死に防戦するが、依然として劣勢。

 ――戦線は膠着してしまった――

 

 

 

 総統は戦局をひっくり返すため「何年私の副官をしている」とハイパーデスラー砲の発射準備を命じる。だが、タランはそれを制しブラックホール砲の対処を意見具申した。

 確かに、ブラックホールを何とかしなければ発射体制には入れない。ブラックホールが消滅しても次のブラックホールを放たれてしまっては永遠に発射体制には入れないのだから。

 これ、総統ファンにとっては地味に名シーン延々とタランを忘れていた製作陣だが、最後の最後でその大失態を挽回する演出をぶっこんできた。無茶な命令を戒める部下、具申を受け入れる上司。デスラー総統がただのカリスマのヤベェ奴ではないという事を表現した見事な描写である。

 

 

 一方その頃ガミラス艦隊の踏ん張りを背に制御のため太陽に接近しハイドロコスモジェン砲の発射体制に移ろうとするヤマト。だが、何とハイドロコスモジェン砲の格納カプセルが開かない。思わず土門は飛び出して確認しに向かった――ってお前の仕事じゃないだろう。

  不用意に甲板に出た結果土門はボラー艦載機の銃撃を受けて負傷してしまう。

 悪い事にそれを友達の揚羽が目撃してしまう。即死では無いとはいえ多分、助からない……友人の避け得ぬ死に、やけを起こした揚羽はコスモタイガーで機動要塞に突っ込んでいった。ただひたすらまっしぐらに突っ込んでいく揚羽。猛烈な対空射撃も構わず、開口部に突入――ルダ王女の幻影を見ながらの最期だった。

 

 考えてみれば揚羽と土門はシリーズ冒頭・第1話から仲が良かった

 土門は揚羽がコスモタイガー隊配属になった際もうらやんだが嫉みはせず、あくまで古代にその怒りの矛先を向けていた。同じカートでアルプス秘密ドックに向かったし、第7話じゃ留守の戦闘班に代わって主砲を二人で操作して迎撃任務に当たった。第12話以降もバース星での囚人騒ぎに二人で関わったり、惑星ファンタムを探査してみたりと非常に馬の合う様子。カッとなりやすい土門がなぜか揚羽に突っかからない、他方揚羽は元から他人に突っかかるタイプではないし育ちを鼻にかけることもしない、二人の衝突のし得ない関係性。軽口叩いて嫌味なくゲラゲラ笑い合うほど。これに加えて第12話や第19話、第21話などで見せたように二人の価値観は概ね似通ったもの。

 戦争では他人を殺すことも非常に精神的苦痛というが、それ以上に苦痛なのが友人との戦場での別れという話がある。まして親友レベルであればその苦痛はなおさら。揚羽が自暴自棄的な復讐行動に出るのも、わからんではない。

 

 

 揚羽の突入で機動要塞の一部が破壊され、防衛システムに損傷が生じた。地球の少年が咲かせた美しい花。機動要塞を葬る恐らく唯一のチャンス、総統は間髪入れずハイパーデスラー砲を発射。デスラー砲とは段違いの光の束はまっすぐ機動要塞に向かい、光芒の中にベムラーゼ首相ごと全てをとろかした。

 続き、ヤマトも瀕死の土門によって発射体制整ったハイドロコスモジェン砲を以て太陽を制御。土門は太陽が静まっていく様を見ながら、最も信頼する古代に抱えられながら息を引き取る。そして揚羽もルダ王女の元に還っていった。

 

 

 

 

 まあね、いつもの通りの巨大幻影。ご都合主義というか、アレな演出である。とはいえ――

 ヤマトクルーも第19話でマザーシャルバートの幻影を見ているのだから、それだけ精神的に極限状態だったといえるだろう。また、古代とその恋人である雪に関しては、特に目をかけていた土門と揚羽を一度に失う悲劇をまさに経験中。この極限状態ではせめて揚羽にとっての幸福が遂げられるようにとの思いが強くなっても無理はない。

 要は、一種の集団ヒステリー。これで説明は十分だろう。これ以外の説明は超常現象じみすぎて宗教色強すぎてしまう。この手合いの話は私が嫌なため、私の個人としての見解ではあまり好きではない事ははっきり申し上げる。

 

 このエピソードで救いようのないご都合主義は、最後の土門のヘルメットを脱がせたシーンだろう

 宇宙の場合、極低温状態であるのだが太陽圏ではむしろ灼熱でプラズマの圧力激しく大変な環境。ヘルメットをかぶっていてこそ、遺体がきれいでいられるのだが……。

 他は意外にもご都合主義は目立ったものはないといえる

 

 

 

 

 ――まとめ――

 ヤマトⅢという作品、そのラスト。これは第一作の冒険や寓話、さらばの悲壮感。これらをテイストとして組み合わせたような最後と評価できるだろう。また、モチーフとして新たなる旅立ちなどを挿入し、ヤマトファンが通して楽しめるポイントをいくつも挿入した内容と言える。

 ただ、お説教に過ぎる。

 命をとしても平和を守れだってさ……。戦うというのは動物の本能だし、一人の人間が命を賭しても非暴力不服従を貫くならばまだしも集団全体が貫くのは難しい。それを理想とするのも、非常に独善的。

 

 つかさ、なぜ自らが被害を受ける前提で話が進んでいるのか――自らが加害者になる可能性は全く考えないのか? シャルバートもヤマトクルーも。この点は、はっきり言って思想的なご都合主義。ヤマトⅢはストーリー展開より、そのバックボーンや登場人物の考え方の方がご都合主義と言えるだろう。これは物凄く致命的で、説得力に欠けるし、視聴者の心に訴える深みも欠如してしまう。

 これに加え、別に死ななくても成立したであろうラストエピソード。エンディングの絵を先に組み立てたようなストーリーまで合わさってしまっているから始末が悪い。

 確かに、俯瞰してみれば、ヤマトⅢはうまく纏まったような雰囲気を醸し出してはいる。が……あんまり作品として深みは……消化不良も甚だしい

 

 

 

ストーリー考察Ⅹlll シャルバート星到達――さらばルダ王女――

 

 スカラゲック海峡星団域で激闘を演じたヤマト

 激戦を切り抜けたものの、地球人類を救う見込みはない――しかし、ルダ王女はシャルバートへの道を示してくれた。この一縷の望みに、ヤマトは賭ける。第24話の話である。

 

 

 

 あらすじは――

 星に偽装した亜空間ゲートを通りシャルバート星へ到達したヤマト、これを追って来た総統。両者はシャルバート星の今の姿を前に、それまでの誤解を解き和解するに至った。

 そこへ、総統を追って突入してきたゴルサコフ艦隊。シャルバート星を作戦圏内に収めると同時に艦隊、艦載機隊を前進させ惑星表面および展開中のデスラー親衛艦隊へ猛烈な攻撃を加えた。

 

 ヤマトはコスモタイガー隊を繰り出し、ボラー艦載機群を迎撃。古代ら上陸中のクルーもまたボラー降下兵を迎撃、シャルバート星防衛のために戦闘を開始した。しかしシャルバート人が戦う事はなく、ただ運命に身を任せるのみ。

 そこには一切の武器を封印し一切の争いを追放した、いわば不戦の誓いを立てたシャルバート星の信念が働いていたのである。

 

 この腹立たしくもいじらしい平和への徹底追及に感銘を受ける古代。

 他方、古代の姿今までの航海、揚羽武。ルダ王女もまた地球人から一種の感銘を受けていた。だからこそ彼女は、かつて封印した超兵器をヤマトに託すことを決意した。

 天の川銀河で唯一、太陽制御が可能なハイドロコスモジェン砲。これを受領するヤマト、人類の明日への希望が蜘蛛の糸で繋がったのである。だが、一方で揚羽はシャルバート星の王女であり次のマザーシャルバートであるルダ王女と別れなければならなかった……。

 と言うような話

 

 

 牧歌的な、しかし優雅でもあるシャルバート星。大切なルダ王女を奪還・護送してくれた事に対しシャルバート星はヤマトクルーを最大限の敬意を感謝を以て迎える。

 そんな彼らに対し――なんと土門が、シャルバート星を第2の地球として占領しようというヤベェ提案をするシーンがこのエピソードの見どころ。

 しかも、古代まで同じ事を考えていたのだから恐ろしい。お前ら修業が足りんぞ……。まあ、いわゆる魔が差したという奴であり、直ぐに考えを改めるからまあいいか。

 

 

 そこへ総統がシャルバート上空に艦隊を率いて現れる。

 シャルバート星といえば、かつて天の川銀河を統べた宇宙最強のシャルバート帝国の本拠地。全宇宙に広がる強力な一神教であるシャルバート教の総本山である――総統はてっきり超近代都市が広がっているかと思ったのだが、時代の隔たりを考えても面影ぐらいあると思ったのだが……一切ない

 これはさすがの総統も相当に驚いたらしく、更に傍に控えるタランもシャルバート星のあり様にあっけにとられた。

 確かに、聞いていた話と大分違うものね

 

 古代とのやり取りの中で、シャルバート星は戦いを放棄し、どうも実際に武器らしい武器を全て抹殺したという事が判明する。シャルバート星は今現在、丸腰なのであると。

 デスラー総統は丸腰の相手を攻撃するほど、野暮な男ではない

 デスラー総統はあくまで天の川銀河最強の軍事国家シャルバート帝国、その首都星たるシャルバート星を懸念していたのであって、その面影刷らない牧歌的な田舎惑星に過ぎない今のシャルバート星を征服する必要など全くなかった。ガルマン・ガミラスの強敵になる要素が皆無な星に攻撃を仕掛ける意味など無いのである。

 漢・デスラー総統はむやみやたらに征服を繰り広げているわけでは無い、それを忘れてはならない

 

 攻撃の意思はないという総統の言葉を聞き、これを信じる古代。ここに、惑星ファンタムで生じた総統とのわだかまりも解決し、八方丸く収まった――地球人類の移住先がないということ以外は

 

 

 そこへ、奇襲攻撃を仕掛ける無粋なゴルサコフ参謀長

 攻撃部隊を二手に分けてシャルバート星の直接攻撃と、シャルバート星上空に展開するデスラー親衛艦隊を同時攻撃を開始した。本人曰く、電撃作戦。艦載機群の機銃掃射と降下兵の銃撃――情け容赦のない攻撃を加えたのである。ボラーって割とちゃんと戦略を立てて攻撃してくるから侮れない

 

 散々に荒らされるシャルバート星。しかし、シャルバート星の人々は武器を持って戦うでもなくただ叫んで逃げ惑うのみ、中央の宮殿においてもボラー降下兵の襲撃を受けてもただ長老が「やめなされ!」と叫ぶにとどまった。人々は撃たれるままに撃たれ、血が流れる。しかし、シャルバート星は反撃をしなかったのである。

 戦うのはヤマトクルーのみ。ボラーの攻撃はヤマト本隊にも及び、ヤマトはこれをパルスレーザー群で撃墜。同時にコスモタイガー隊を以てこれを迎撃。

 他方、大損害を負ったデスラー親衛艦隊。ゴルサコフ艦隊本隊の接近を受け、新型デスラー艦は艦首を廻して照準を合わせる。直後、総統・怒りのハイパーデスラー砲発射。その赤い光芒の中にゴルサコフ艦隊をとろかしたのだったヤマト史上、デスラー砲が初めて敵艦隊を葬った記念すべき一撃であるデスラー総統万歳

 

 ヤマト、デスラー艦の活躍によりゴルサコフ艦隊は壊滅し、シャルバート星の危機は去った。

 

 

 

 この辺りのシーンでヤバいのが、守る為に闘ってくれているヤマトクルーの行動を〈あなたたちが勝手に戦っているだけ〉というように表現した事

 ちょっとそれは薄情じゃないかい、長老。まあ、恩義に感じていないわけでは無いようなことが後でそれとなく語られるため、まるっきり非常識という事ではないのだが

 久しぶりの戦闘を前にアドレナリンが出ていた、気が立ってたという事で片付けておいてあげましょう。たとえ本気で感謝していても、マウントを意図せず取ってしまったり、言わなきゃいい攻撃的な一言を口に出す人はどこにでもいるわけだし。人の事言えないけど……。

 

 

 ではなぜ、シャルバート星は反撃をしなかったのか

 それはシャルバートが非暴力不服従の決意を固め、武器を捨てたからである――って、待ってほしい

 シャルバート星が今まで安全だったのは亜空間に隠遁していたからでしょう。仮に強固な意志を以て非暴力不服従を決めたとしても、少なくとも、現在のシャルバート星を形作る住民にその決意は見られない。

 現に安全をゴルサコフ艦隊に脅かされた際、人々は思いっきり逃げ惑っておびえ隠れるだけだった。

 〈武器を持たない平和〉という実現する直接的に自分の身を危険に冒さなければならない。その覚悟がなければならない。

 しかし、銃撃を受けた住民たちは、覚悟が明らかに足りない様を晒してしまったのである。本当に、ルダ王女と長老以外は無様なもので、見るに堪えない醜態をさらしていた。――まあね、市民のあの逃げっぷり、あれが普通の反応なんだけどさ

 

 どうやら彼らの行動を見るに、シャルバート星首脳部と一般人の間に、平和に対するレベルとか覚悟に大分溝がある様に思われる悪い言い方をすれば、首脳部が極端な非暴力不服従にのめりこみ、市民の安全確保を完全に放棄した。と表現できるだろう。統治者失格どころか、逮捕モノである

 

 

 

 争いごとを嫌いすぎてシャルバートの民をボラーにみすみす七面鳥撃ちさせるという、とんでもないことをしでかした首脳部

 しかしながらヤマトクルーが争いを楽しんでいたわけでは無いという事も一応理解していた。他者のためにその身を危険にさらしても守るというのは、これはまた別の形の平和への道ともいえる。

 という事で、ルダ王女は地球人類の未来に宇宙の平和を託してみることにした。つまり、明日を地球人類にプレゼントしてくれようというのである。彼女の案内でヤマトクルーはシャルバート星の王墓群のある渓谷へと案内された。

  いやいやいや……このストーリー展開はご都合主義だろうて。話の風呂敷、畳めてないって。

 

 

 シャルバート星の王墓はまるで水晶の結晶のような形状で、非常に巨大だった。いうなれば、金象嵌の黒御影石の墓石である。

 古墳やピラミッドと同等の規模であり、それがいくつも密集して作ってある。マンパワーがあまりないようで、技術も中世レベルが基本のシャルバートにおいて、このような巨大な構造物はなぜ……その疑問は、王墓の内側にあった。

 

 つまり、これら王墓は王墓であって王墓ではない超兵器の収容庫・封印施設だったのである

 ハイペロン爆弾や惑星破壊ミサイルといった破滅的な超兵器群がしこたま詰め込んであったのだ。かつてのシャルバート帝国の残滓である。

 これだけの兵器がありながら――だが、シャルバート星の人々は気が付いたのである。宇宙制覇など、どれだけ続けても広大すぎる宇宙を制覇するなど土台無理な話。征服事業は、宇宙に戦禍をまき散らすだけに他ならない。終わりの見えない闘争……そこには虚しさしか存在しないのである。だからシャルバート星は一切の武器を王墓の中に封印し、惑星そのものを亜空間の向こう側へと移し隠遁したのである。

 

 

  まあ、戦乱を避けるには……逃げるのは常識的な判断。物理的に戦乱から距離を置けば、それは当然戦乱を自ら呼び込まない限りにおいて、避けられる。もっといえば、この方法以外に現実として戦争を避けるべく取るべき手段はない

 とはいえ、である天の川銀河を強力な軍事力で制覇した国が急に覚醒して隠遁したら、その方が余計に戦乱を拡大させてしまうのではないだろうか平和を希求し、平和があまねく銀河にもたらされることを願う割に、それとは正反対の事を行っている感が強い

 しかも、長老やルダ王女はこの徹底した平和への希求=非暴力不服従を地球にまでそれを要求するような発言をしている。

 さすがに、地球に対して今すぐ武装を放棄しろなどという跳躍理論の過干渉はしなかったからまだマシだが……シャルバート星の諸君、君らも天の川銀河ハビタブルゾーンに星を置いてから同じセリフを吐いてほしい。死んでも滅んでも構わないと、高らかに宣言しているのだから、直ちに武装を全て実際的に放棄して、行動に移してほしい。それと、末端の信者の過激な行動や、明らかな教義の読み間違えをちゃんと抑制してほしい。

 と思った次第。

 

 結局、シャルバート星も武装自体は放棄してなかったしね

 そりゃ、宇宙を破壊しかねない存在に対する抑止力とか、技術の流出を避ける為、とか色々理由は付けられるのだが……冷めた目で見ると、フィクションの中ですら結局非暴力不服従武装蜂起は実現できないのか、それが当然のような形に描かれているというのがなんとも情けないというかなんというか……こんなとこにリアリティを仕込まなくても。

 挙句、よくある末端の信者が教義を深く理解する前にテキトーな理解で行動して他者を踏みつけにしたり、洒落にならん点もまさかのリアリティ抜群で描いてしまう。評価すべきところでもあるのだが、一方でそこまでリアリティを出すと、いわゆる神の視点で作品を見ることになる視聴者が個々の登場人物に感情移入しづらくなる気がする……。

 

 ともあれ、である。ヤマトが誕生した理由は、あくまで地球人類生存のためであり他者を滅ぼすことが前提ではない。という事を明確化したエピソードであり、平和というものが実現した際には初めてヤマトがその任を解かれる。という事を想起させるのだが……残念ながら色々と白々しい部分が出て、残念エピソードとなってしまっている感がある。

 熱意とか人類に対する期待・希望は伝わったんだけどねぇ……。

 

 

 

 

 おっと。危ない、危うく記事を締めくくるところだったこのエピソードのもう一つの中心はルダ王女と揚羽の別れである

 ルダ王女はシャルバート星の次期女王であり、それは次のシャルバート教の教祖を意味する。ルダは揚羽のルダには成れないし、揚羽はルダの揚羽には成れない。揚羽は、レガリアを捧げた祭壇に登るルダ王女を見守る事しかできなかった。

 

 非常に感動的な情緒的なエピソードである全力で分かりやすく、かつ直接的に表現をすれば映画〈ローマの休日〉のオマージュといえるだろう。全く同じ構造の登場人物とストーリー展開である。いわば、”コスモ・ローマの休日”。

 だが、残念ながら――前のエピソードで2か月をすっ飛ばしてしまった結果、揚羽とルダ王女の間にどんな心の触れ合いがあったのかわからない。スカラゲック決戦で二人が接近したかといえば、信仰告白ぐらいで、他には特に挿入シーンがないのだ。ムードを盛り上げるに足るだけの出来事が一つもなく、これでは……二人の別れに……全く感情移入のしようのない話になってしまった

 これは非常に痛い。せっかくの感動シーンなのに、もったいない

 

 

 

ストーリー考察Ⅻ 激戦! スカラゲック海峡星団

 

  

 第23話――ルダ王女を迎え入れ、あれから2か月。探査予定最後の星、スカラゲック海峡星団β星に到達したヤマト。

 

 しかし、この星は酸素含有量が少ない上に嵐が頻発しており、どうにも住めそうにない。ヤマトのモニターに映し出されるβ星の荒漠たる地表。真田さんがたまさかに見つけた構造物――それは北アメリカ船団と共に地球を発進した護衛戦艦〈アリゾナ〉だった。だが、砂に埋もれたその姿。生気の全くない様子……。

 降下して調査を開始したアナライザー、雪、土門。足元を見ればそこにはアリゾナのクルーの白骨死体があった。どうやら、地表は恐らく何がしかの腐食性のガスあたりを含んでいるらしい。或いは嵐には硬度の高い微細鉱物でも含まれているのだろう。そうでなければ、たった数カ月で人間は白骨化し服もボロボロになるなどありえない。

 このような環境では人間はおろか、どんな生物も生息できるようには思えなかった

 

 そして、護衛戦艦アリゾナ……。 土門らの調査により、アリゾナはボラー連邦に撃沈されていたことが、放射能測定で判明した。また、アフリカやヨーロッパの船団が遭難したことが雪の口から語られた。

 この際に検出されたボラーチウム100放射性物質炸薬的に使われているのか、劣化ウラン弾の様な弾殻に用いる金属なのかは不明。ただ、アフリカ船団やヨーロッパ船団への攻撃にも用いられた点から、ボラー連邦の軍事においては一般的な物質なのだろう。これらの観測が成されたという事を、希望的に見ればアフリカとヨーロッパの船団はひょっとすると一部でも地球圏内に帰還出来たのかもしれない(そうでないとボラーチウム100と比較する試料が〈ラジェンドラ〉とか、ヤマトが被弾した物質とかごく一部に限られてしまう)。

 そう考えると、〈アリゾナ〉ら北アメリカ船団はかなり強力なボラー艦隊に襲われたと見え、運がなかったとしか言いようがない。護衛戦艦の中で一番強そうだったしね、〈アリゾナ

 

 

 

 移住すべき星がないボラーの手が迫るという最悪な状況の中、何と惑星ファンタムの一件で禍根の残るグスタフ中将が登場。さらに彼はルダ王女の引き渡しを要求、従わない場合は臨検すると予告した。

 しかし、古代はいづれの要求にも「答えは、NOだ」と返答、これによりやむを得ず一戦交えるかと、状況は危機迫った。

 

 って、臨検でいいんだ、グスタフ中将。臨検を拒否するならば、撃沈するという――割には戦闘準備に移っただけ。どうやら中将は実力行使にかなり抑制的なお方らしいどうやら、好戦的な性格だとしてもせっかちでは無いらしい

 考えてみればグスタフ中将、加えてハーキンス中将は共に、約2か月もヤマトを野放しにしていた。2か月も野放しにしていい敵とは思えないのだが、事実上野放しになっていたのである。せっかちな人間がそんな悠長なことをするはずはない。

 まあ、ハーキンス中将の場合は巨大艦隊を統率しなければならない以上、行動に機動性が失われても仕方がない。また、途中で〈アリゾナ〉ら北アメリカの探査艦隊を仕留めていたから、遅れたのかもしれない。その場合、幾らか行動がごゆっくりでも仕方がないだろう。

 

 

 そんな、紳士・グスタフ中将。

 どんな勝算がったのかは不明だがヤマト側が攻撃態勢を整えるのを待っていた節がある。総統の通信という邪魔が入ったのもあるが、しかし先制攻撃を仕掛けようという行動は一切取っていない

 どうやらこの人、本当にヤマトと正面から戦いたかったらしい

 なんだろうね、このガミラス軍人らしい――物凄いなつかしさ。砲戦距離も500宇宙キロと設定しているため、何がしかの飛び道具を使うつもりもなく、徹底的に砲撃戦を目指していた模様。ここまで紳士だと逆に、ちゃんと正面からヤマトと戦わしてあげたかったよね……。

 

 

 ヤマト死守を命じた総統の通信が終わると、突如としてハーキンス率いるボラー・第8親衛打撃艦隊が出現。ヤマトに対して高速接近、ルダ王女の引き渡しを要求する。

 ハーキンス艦隊はグスタフ艦隊の捕捉圏外ないし、遠方でワープし通常航行でヤマトに急速接近したのだろう。こようなパターンで接近してくる敵艦隊を補足できた艦隊はヤマト史上でも多くはない。

 

 丁寧な態度だったグスタフ中将とは異なり、2回目の面会である事もあってか、「従って――」という印象的なカットインから登場したハーキンスはこの上ない高圧的態度でルダ王女の引き渡しを要求し、従わない場合は破壊すると警告した

 これに怒った古代は「断るッ!!」と要求を拒絶。ハーキンス艦隊は宣言通り直ちに砲撃を開始、これにより戦闘が始まった。

 

 しかし1対凄い数、しかも平野での戦闘これではいくらヤマトでも勝てるはずもない

 一縷の望みはグスタフ艦隊だが、古代のマインドからしてガルマン・ガミラスとの険悪な情勢も相まって援軍を頼めない。

 これがハーキンス中将の不敵な笑みの理由だったといえるだろう。彼が古代とグスタフ中将の通信を傍受していた可能性は十分にある。

 

 

 宣言通りハーキンスは攻撃準備を命令、直ちに砲撃戦を開始した。第一斉射にさらされたヤマトはコスモタイガーは速やかに繰り出し、グスタフ艦隊の前面に展開してこれを牽制。他方でヤマトは艦首を廻して的を小さく、自慢の主砲を以てハーキンス艦隊と戦う――も劣勢。コスモタイガーをボラー艦隊の攻撃に回せないのがかなり痛かった。

 徹底的な砲撃を加え、デストロイヤー艦やタイプAらを撃沈し続けるが、圧倒的な戦力差は埋まらない。猛烈な砲撃を受けてヤマトは反撃と言えるだけの反撃を出来なかった。

 

 このままではヤマトが沈む……総統の命令を遂行すべく、グスタフ中将はヤマトの援護を開始。ヤマトの前面に割り込み、自艦隊の全門を以てハーキンス艦隊に対して攻撃を浴びせかけた。

 だが、圧倒的な戦力差は全くといっていいほど覆せない。グスタフ艦隊を牽制していたコスモタイガー隊もハーキンス艦隊攻撃に回り猛攻を浴びせるが、ヤマトの劣勢は変わらない。

 

 このままでは味方艦隊も無駄死にになってしまう

 覚悟を決めたグスタフ中将。彼はヤマトとハーキンス艦隊の間に割り込むだけでなく、舳先を向けて前進――艦隊を前進させて体当たり突入を敢行した。コスモタイガー隊をどかせ、砲撃を捨てて次々と突撃してくるグスタフ艦隊。

 敢然たる突撃に対し、ハーキンス艦隊はうまく対処できず次々と沈む中……グスタフ中将もヤマトとの通信の後、ハーキンス艦へと突っ込み、惑星破壊ミサイルが起爆。

 この大爆発を以て第8親衛打撃艦隊の排除に成功した。

 

 

 グスタフ中将の決断は、無謀な決断であると言わざるを得ない。古代の言う通り無茶である。しかし、デスラー総統の命令の遂行には体当たり突入以外に方法はなかったといえるだろう。 

 グスタフ艦隊の砲戦距離設定が500宇宙キロ、ハーキンス艦隊は450宇宙キロである為、幾らかグスタフ艦隊の方が射程は長い。が、旗艦の決戦兵器は一発のみのミサイル、護衛にはあんまり役に立たない大型戦闘艦と、戦況を覆すには数の足りない中型戦闘艦――総数が15隻程度……これでは勝てない。まして、グスタフ中将が武者震いするほどの巨大艦隊相手には全く不足である

 故に、ハーキンス艦隊を粉砕するにはその陣中央での惑星破壊ミサイルの起爆が絶対条件だろう。だが、グスタフ艦の単艦突撃では突入が成功する見込みはない。

 僚艦の体当たり突入の支援を以てして初めて実現できる、乾坤一擲の作戦それが体当たり突入だった。他に手段はない止めてもどのみちあのタイプの指揮官であるから、部下が引っ付いてハーキンス艦隊に突入した可能性もあるにはある。

 

 戦闘考察でも述べたが、総統への忠誠心高いグスタフ中将。「私も一度は、ヤマトと正面から戦ってみたかった」という最期の言葉に表されるように、彼は軍人というよりも武人といった方がいいようなメンタル。極めて果断に富む彼だからこその行動・決定と説明する他ないだろう

  シリーズ初めの方に登場したラム艦長が戦闘宙域から退避しない決断をしたのと同じ、グスタフ中将だからこそできた判断という事になる。

 ラム艦長と同じく、えげつないほどカッコいい最期だった。

 

  例えるならば――SPQRの最後の意地を見せるため、オスマン帝国軍に突っ込んでいったコンスタンティノス11世パレオロゴス・ドラガセス。あるいは日本の名誉にかけて米空母機動部隊に一矢報いんとした山口多聞中将

 彼らが下した決断は無謀で結果的に成果は少なかっただが、他の手段が正しいとは限らない中、彼らなりのベストバイであった事には間違いない

 これと同じことである。

 

 

 

 

 続くバルコム艦隊戦このあっけなさは、ハーキンス対グスタフの大決戦に比べれば戦闘描写は圧倒的につまらない

 ヤマトが結構頭のひねった攻撃を浴びせかけた事と、小惑星帯での戦闘というバルコム艦隊側が圧倒的に不利な状況を鑑みれば、勝利があっけないのもわからんでもない

 わからんでもないが——全力で考察をした場合にようやく見えてくる話であってぱっと見はどっから見てもご都合主義

 

 

 このシークエンスで面白かったのはバルコム提督。彼のセリフ全部

まだ戦力は残っておるか?」の高飛車な問いかけや古代の返答に「気の強い子だ」であるとか「我が主力艦隊は前衛艦隊の5ヴァイの戦力だ。最後まで言わせるな」などの面白セリフはボラー連邦の他の司令官に比べてかなり表情豊か

 ハーキンスの「従って――」カットインより面白い。彼は彼で、前落に何を話していたか気になるが

 

 考えてみれば、かなりきつい口調で「用件を聞こう」という古代の返答は確かに、気の強い子だ。冒頭の「やっとのことで」というような、グスタフ中将をディスるような言い回しをしてしまった結果、古代の逆鱗に触れてしまったのだろう。

 バルコムのルダ王女の引き渡し要求に古代は「くどいッ! 如何なる理由があろうとNOだッ!」と完全拒否。確か星巡る方舟にも似たようなシーンがあった気がする。これも気の強い返答だ。

 

 

 やはり注目すべきはバルコムの反応。

 古代ブチ切れ返答受けたは「もうよいッ! 通信を切れッ」とちょっと動揺したような表情を見せ、その後10秒以内の攻撃を指令するなどの過剰な反応。10秒で攻撃準備完了しても大した意味があるようには思えないのだが……

 この数字を強調したり語尾の癖が強かったりする彼の性質は何となく某ディオ・ブランドーに近くさえある。

 印象深い悪役としてはヤマトシリーズ最高峰の司令官かもしれない。挙句、小惑星帯から撤退することもなく、バルコム艦が早々に撃沈されて機能不全になり艦隊が全滅。この最期はザ・小物と呼ばずして何と呼ぼうか。一方で、小物臭が強いのに、なぜか何となく小物に見えないのが何とも不思議である。

 

 

 うっかり戦闘に焦点を当ててしまったが、ストーリーを中心に見た場合、焦点を当てるべきは……艦内でのルダ王女と揚羽の急接近に焦点を当てなければならない。

 だが、はっきり言って、描写としては大した接近ではない

 ただ単に揺れる艦内で、座っていてもふらついてしまう体幹の弱い王女様を、優男の雰囲気全開で体を支えかばうイケメン御曹司という――それ以上でもそれ以下でもない内容。吊り橋効果か。

 そして苦境において救いを求め、シャルバート教に入信する揚羽。その姿に、そしてヤマトの激闘に心打たれたルダ王女は――って入信したら途端に話が前進するって何それヤバい新興宗教じゃないっすか……。しかも、散々実在するとほぼ確定していたのに、なによりルダ王女の存在自体が証明なのに、「へぇ? シャルバート星は実在の星なんですか!?」と驚き揚羽君。意味が分からん反応である。

 

 

 まあ、何はともあれ、揚羽君の信仰告白のおかげで、シャルバート星への道が開かれたのであった

 うん、随分の急転直下でこれはご都合主義としか言いようがない擁護できんっつーか、したくない。いいのかなぁ……こんな不気味というか、信仰のみにすがったストーリー展開、スケジュールマターな話で……。

 グスタフ中将のカッコいい最期が台無しである。

 

 

 以下、超絶・個人的見解。

 多分ではあるが……2199のユリーシャは多分コイツ、ルダ王女。ルダ王女の影響を極めて強く受けた、いわばルダ王女を2199ナイズした存在がユリーシャだろう。

 ヤマト第一作は地球人類がほんの少しの他者の協力と、圧倒的な愚直なまでの努力を以て、ただひたすら生きる為に――その努力が出来る存在かどうかを、スターシャは14万8000光年・往復29万6000光年の旅路という試練を与えたのである。旅路はあくまで試練であって、試験ではないイスカンダルに到達した時点で、ヤマトや地球は試練を乗り越えた事になり、コスモクリーナーの受領する資格者となれるのである。

 それを2199は試験とした、ゆえに試験官が必要だった。ルダ王女は間違いなく試験官であり、ユリーシャあるいは2199におけるスターシャもその意味においては同質の存在と言えるだろう。私権と試練――多分、認識の差か何かなのだろうが、私個人の見解として必要のある修正点には思えなかった。全体が試験と言えたあの2199の内容というかストーリーの傾向は、旧作の本質とは思えないのである。多分、製作陣は狙ってやっているのだろうし、それが製作陣なりの旧作に対する解なのだろうとは思う。が、私は同意しかねる

 何なら、2199より、2202の方が旧作の本質という点に対して迫れていたような感がある。無論、2202は外観的には全くヤマト的ではないし、描写に関して言えば旧作の良さやリメイクの合理性も全く無い。が、人間の醜さというか、はかなさや弱さなど、こちらは2199よりも色んな意味で割と迫れていた気がする。

 好意的に見ればね?

 

 繰り返すが、これは個人見解。