旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス兵器群 潜宙艦―最強の戦闘艦―②

 

 前回は潜宙艦の活躍や能力について考察した。

 今回は、その能力の妥当性や現実性について考察してみたいと思う。

 

 

  一応、ウィキを参考にしたデータを再掲。
 全長:118メートル
 全幅:45.5メートル
 自重:4,600トン
 主機関:無波動特殊推進機関(特殊無波動エンジン)
 武装:艦首宇宙魚雷発射管4門、艦尾宇宙魚雷発射管8門、固定式フェーザー砲12門、対空フェーザー砲4門

 

 

 まず、戦力として意味のある魚雷ないしミサイルの搭載本数を検討する。


 ガトランティスのモデルとされるアメリカ合衆国。彼らが誇る原子力潜水艦ジョージ・ワシントン級(就役期間1959年ー1985年)を例にとると、この艦はポラリスミサイル発射管を16基、魚雷発射管を6門とし搭載本数は12本。ポラリスは寸胴すぎて替えを積み込めないが、魚雷は1門当たり2発用意されているという事になる。

 

 これを参考に潜宙艦の搭載魚雷本数を推測すると…… 

 
 潜宙艦の場合、合計12門の発射管を備え、1門につき2発想定した場合は24発を備えるという事になる。割と現実的な本数だ。全長118メートルというのも ジョージ・ワシントン級より1.5メートル長いだけである。設計としては、現実にある潜水艦を宇宙空間に送り出したようなものだ。

 


 ここで、壁となるのが傑作攻撃機デスバテーター。
 こいつは8発のミサイルと大型ミサイルを2発抱えて敵に突っ込んでゆく。当該ミサイルは機体との対比から推察すると最大12メートル、最小6メートル程度とロングサイズの代物である。ドンピシャサイズとしてはソ連のSA-2ガイドラインアメリカのナイキミサイルがあるが、こちらは2段式の地対空ミサイル。多段式対空ミサイルって……

 潜宙艦はこの巨大ミサイルを計算上、デスバテーター2機分より更に4発多く搭載できる。つまり1隻で2.5分の投射力を持つという事になる

 


 ――無くていいじゃん潜宙艦。

 


 デスバテーターには圧倒的な機動性がある。しかもヤマトに捕獲された際は思いっきり攻撃を受けたが、コックピットのガラス以外に大きな破壊はされなかった。それほどに硬い。偵察型ならば、隠蔽性も描写からして潜宙艦と同格である。しかも、偵察艇ビードルの内部描写にあったように、デスバテーターは基本的に居住性がマトモなのだ。大型飛行艇クラスなのである。

 一方、残念ながら潜宙艦は機動性ゼロ。どう考えてもヤマト1stシリーズに登場した団子3兄弟ガミラスタンカー程度の機動力しかない。絶望的である。耐久性もデスバテーターと同等か、巨大でウィークポイントが存在する場合は下手をすればデスバテーターより脆いかもしれない。


 全く持って潜宙艦を採用する必然性がない。兵器としていくらでも代用品があるにもかかわらず採用し続けるのは……どうだろうか。

 

 このまま投げ出しては“はじめに”で2199や2202に「リメイクしたくせにまたご都合主義に戻ってますけど、大体原作にご都合主義は少ないですけど」と喧嘩を売った意味がない。

 2199や2202のベースからしての変更に否を唱えるには、原作にあった描写を実現できる妥当性のある数値を見付けなければ旧作ファンの名折れだ。

 よって、必然性を持たせるには設計しなおす必要がある。大体、ヤマトシリーズの数値設定はほとんど全てが中途半端な妥当性である。なんちゃっての、それっぽさ重視の数値設定なのだ。

 

 これより、全力で潜宙艦の妥当な数値への落とし込みを行う。


 

 多分、武装配置は通常動力潜水艦――例えば、ガトー級(就役期間1941年―1954年頃)とかと参考にしているだろう。さらばやヤマト2の放送時期から言えば、スタージョン原子力潜水艦(就役期間1967年―1993年頃)などが就役しているため、こちらの方が妥当なのかもしれないが。


 いづれにせよ通常動力潜水艦は魚雷発射管を8から10門を備え、24発程度を装填用に積み込む。原子力潜水艦は初期においてはほぼ同等の武装を積んでいたが、ロサンゼルス級以降はVLSを搭載しミサイル10基強を追加で積み込むようになった。最新鋭のバージニア級に至ってはトマホーク用のVLS12基に加え、魚雷30発以上の搭載量を誇るにもかかわらず全長を114メートルに抑えている。が、これらは単なる攻撃型潜水艦である。必殺に近い大型ミサイルであるトライデント弾道ミサイルを積み込めない。


 弾道ミサイル搭載艦としては170メートルの巨体を誇るオハイオ級が最新である。(そろそろコロンビア級が建造開始になるか?)この大型潜水艦はトライデント用のVLSを24基備える化け物だ。加えて自衛用の魚雷発射管4門も備える。
 更に、改オハイオ級という戦略兵器削減条約の結果生まれたお化けミサイル母艦が存在する。VLA24基中22基をトマホーク用、残りを海軍特殊部隊SEALs用のロックアウト・チェンバーにあらためたこのクラスは、何と154発もトマホークが搭載できる。1基当たり7発装備という計算になる。

 潜水艦発射弾道ミサイルはずんぐりむっくりで、全長10メートル程度にもかかわらず直径が1メートルを超えてくる。トライデントⅡなどはとうとう全長13メートル、直径は2メートルを超えて来た。ここまでくると2列に並べて……艦幅は13メートルを欠くと色々まずくなる。
 一方でトマホークは5メートル強の全長で50センチ程度の直径である。だから3桁越えのミサイル装備が出来るのだ。

 

 
 潜宙艦の考察に戻る。
 デスバテーターは当然替えのミサイルを搭載することはできない。一々着艦して補給しなければどうにもならない――潜宙艦がデスバテーターに対して圧倒的優位に立てるのはこの点だ。この点を徹底的に追求すれば、存在意義のある戦闘艦になるのではないだろうか。

 


 当然ながら、改オハイオ級クラスの打撃力は欲しい。
 最大157発のミサイル投射、ロマンだ……。

 

 
 搭載ミサイル(魚雷)がデスバテーター搭載ミサイルと同等の大きさであるならば、オハイオ級をそのまま落とし込むだけでも24基の発射管に2発から4発分装填できれば――48発ないし96発のかなりの本数を確保できる。ただし、VLS方式であるため配置変更が必要。だって全部上向きなんだもの。

 潜宙艦の魚雷発射管の位置が旧来の潜水艦タイプであるため、古式に倣い格納庫を発射管付近に配置して魚雷を商品棚的に並べるて格納する他ないか。


 本当はモックアップを製作する必要が有るのだが、そこまでの能力は私には無い。故に、考察をするうえで……妥当な大きさというのがいまいち想定しがたい。


 118メートルでは小さい事は、大型兵装を多数積みこむには手狭というのはすでにアメリカ海軍やロシア海軍が実証してくれている。両国海軍の戦略級潜水艦は170メートルほどがあるため、やはり潜宙艦も原作設定よりかは大きくある必要があろう。
 つまり、先ほど例に出したオハイオ級は全長が170.67メートル、全幅12.8メートルある。世界最大だったタイフーン級(アクラ級)は全長175メートル、幅23メートルだ。

 

 これらを参考に、ざっくり180メートル級の艦として再設定すれば、ご都合主義など言われる事なしに十分な戦力として価値を見出せる戦闘艦になるのではないだろうか。

 

 

 ただ、忘れてはいけないのは潜宙艦は宇宙空間が戦場である。

 しかも、機関配置がかなり独特なのだ……

 

 

 まず、潜宙艦の動力部や推進部がどこかは厳密な言及はない。ただ、恐らく常時回転している艦中央部が推進関連機構なのだろうと推測が立つ。

 つまり、艦が動力部のせいで前後に分割されているのだ。

 人間一人程度の通路なら確保できるだろう。が、物資はほぼ確実に分割されてしまう。前部魚雷発射管と後部魚雷発射管のそれぞれで相当量の魚雷を備蓄しておく必要が有るだろうし、もし人すら通れないとなれば一々艦外へ出なければならない。

 物凄く不便だ。

 

 この問題を解決するには、艦中央部に出来るだけ空間を作らねばならない。

 ここで、全長の再々設定をする必要が出てくる。

 


 オハイオ級は艦の3分の1ほどが動力部である。ネットに流れている透視図等を参考に長さは55メートルほどを見込んでおく。先に述べた通り、一々艦外に出なければ艦前部と後部を行き来することが出来ない不便は何としても解消する必要が有る。

 内部に通路を設けるには方法を考える必要があろう。出来れば物資を行き来させられるぐらいの大きな通路を設けたい。魚雷がホーミング能力をなくしたが故の雷撃成功率上昇の可能性がある以上、前方と後方に魚雷発射管を設ける必要は十分に存在し、どちらかの魚雷が不足する可能性も十分に存在する。

 

 通路を設けようとした場合、通常の戦闘艦の機関配置と同様で問題ないだろうが……間隔を大きくとる必要があろう。これで十分だが、面白味がない。

 異星人の艦っぽさを醸し出すため機関を艦体縦断面に円形に分散配置する、リボルバーのシリンダー的配置というのもありかもしれない。思いっきりウィークポイントになってしまうが、回転軸に当たる部分を通路とすることが出来る。また、複数分散するため、全ての機関を同期させる必要が有るが……これがまた難しい。

 

 

 さて、計算に移る。
 通路として直径4メートルほどの円筒を確保しておきたい。何なら10メートルほどを用意して魚雷の前後への機械補助を含んだ移送空間を確保してもいいだろう。機関部をオハイオ級になぞらえ直径12メートル、通路を4ないし10メートルを勘定して直径16ないし22メートルを総直径と計算する。長手方向は55メートルから別に延長する必要はないが、二つの機関が存在するとした場合は倍の110メートル前後を見込める。

 仮に機関部の体積は1万1052立米ないし2万896立米と計算できる。2763から4317立米が通路用の空間であり、7389ないし1万3507立米の機関用空間が確保できる。アクロバットな機関配置に余裕を持たせるため機関部の全長を多少伸ばしたとして65メートルを見込む。

 つまり、通常動力と隠蔽動力を合わせて全長130メートル、直径16ないし22メートル、2万2000ないし4万1600立米が機関部総量となる。

 もし、タイフーン級になぞらえるならば、総直径は倍になるしその他の数値も1.5倍ぐらいはするだろう。

 (別に体積まで計算する必要はないのだが、自分へのメモも含めて掲載)

 

 

 オハイオ級に限らず潜水艦の動力部は全長の3分の1程度を見込む為、そのまま当てはめる。宇宙戦艦ではあるが、通常の水上艦に類似する形状を保有し、各種のデータを参考にしていても不思議はないと説明づける(我ながら雑な根拠だが)。


 とすると、単純に3倍すると全長は390メートルに到達する。

 私としては、“基本的にヤマトの全長設定は3倍ほどにすると丁度”いいという持論があるのだが、今回は多むh根合致した事例と言える。

 

 武装搭載量だがミサイルの体積を全長12メートル、直径を0.7メートルとして計算、魚雷の場合はもう少し直径を伸ばして1.4メートルを見込む。体積はミサイル4.6立米、魚雷18.4立米となる。
 単純計算で艦首側の半分を搭載スペース1万1000ないし2万800立米(もう半分はレーダー等の電子機器)、艦尾側の半分を搭載スペース(円錐と計算して総量8708ないし1万6464立米の半分)4450ないし8200立米を合算すると、1万5450ないし3万7264立米が搭載スペース総量だ。全てミサイルとして計算すると3358本から最大想定8100本全て魚雷として計算すると839本から最大想定2025本となる。
 ただし、発射機構や次弾装填に関わる装置の分、艦自体の装甲を一切勘定していないため――全てミサイルとして搭載した場合の想定搭載数は1500本から約5000本(根拠なし)全て魚雷として搭載した場合の想定搭載数は500本から1000本(根拠なし)程度と考えられる。
 一方で居住スペースは円錐形の艦尾半分分を想定し、適宜スペースを設ける。

 

 これで計算上、最低でもデスバテーター50機前後分、最大で300機強と同じだけの戦力になる

 最大値であれば、中型高速空母1隻分の戦力が丸々ステルス性を発揮して敵の周辺へ潜入できるのである。これならば、強力な対艦戦闘能力を自衛能力(そのほとんどがステルス性に頼ったものだが)を備えた有力な艦種となる。

 中型高速空母の搭載機数を最小想定の200機弱とすれば、この時点で中型高速空母の攻撃力を超えられる。この想定については後日記事としてあげたいと思う
 複数隻配備すれば、さらば冒頭で出撃した中型高速空母分の戦闘力が宇宙の暗闇に紛れて接近し、寝首を掻くことになるのだ。

 再設定を行い大型化したことで、少数でも十分長期間の活動が可能な戦闘艦として合理的な姿を見せることが出来たと思う。

 

 

 現実的な設定を加えた事で、元来持つ驚くべき強力な戦闘艦としての存在がまごう事なく確立できた、そうい言えるだろう。

 

 

 ただし、敵に接近しなければならないため運用には細心の注意が必要である。中型高速空母であれば、母艦は敵から極めて遠い位置に退避させることも可能だし、南太平洋で2航戦がやったように、航続範囲外から艦載機を繰り出して母艦が全速力で迎えに行く戦術もできる。
 が、潜宙艦はそのようなアグレッシブな運用はかなり難しい。通商破壊や、宇宙空間に“陣地”を構築するような形で敵艦隊を迎撃するのがベターだろう。無論、艦隊に先行させて警戒にあたる空母打撃群の原潜と同じ任務も当然視野に入る。

 

 

 さて、もう一つの懸案――ステルス性の根源は何か

 に取り掛かりたい。

 


 光学迷彩の可能性が一つ、ペルティエ素子等による熱の欺瞞の可能性が一つ
 当然、防音性能は高いだろう。これらを組み合わせる事でステルス性を発揮していると考えられる。


 光学迷彩により目視や類似した観測方法を、自艦の背後=敵の観測点の延長線にある光景を艦表面に映像として見せる。それと同様の発想で熱欺瞞を行い、宇宙空間の“地形”に潜り込む音響も振動も当然、艦内部のそれは艦内部で処理し、反対に宇宙空間にあふれる音響・振動に紛れ込んで存在を消すことが出来るだろう。

 

 迷彩の仕方だが、光学迷彩は可能性として映像投影ではなく、イカの虹色素胞のような素子による映像の描き出しであれば利用価値と効果は高い。一方で熱欺瞞は別の素子による必要がある為、同時には難しいだろう。

 つまり、中途半端に全環境に備えるのではなく、状況によって明確に目的をもって欺瞞効果を切り替えるのである

 残念ながら、光学迷彩用の素子と電磁波吸収の為の素材とは性質が異なる為――同一の素材で構成できる、というのは少々ご都合主義に過ぎる。その観点から言っても十分リアリティのある仮定といえよう。

 


 ステルスの第一段階は戦闘宙域への潜入と仮定する
 ベースの艦体色を黒ないし濃紺として、電磁波吸収素材を表出させることで自然に潜入するのだ。戦闘開始前であれば、当然ながら電磁波を強く発したり反射したりする存在は自然にある恒星や惑星のみである。もしもそれ以外の電磁波の変調が見られれば、当然相手を警戒させることになってしまい、作戦が端から成り立たなくなってしまう。反対に、違和感ない程度の光学的欺瞞を成し遂げられれば、高度な、ゼロ距離でも視認できないような欺瞞は必要ない。


 ステルスの第二段階は直接の戦闘であると仮定する
 光学迷彩を実現する素子を電気的信号によって適宜表出させる事で、外観的に宇宙空間に溶け込むのである。この場合、電磁波的欺瞞の能力は落ちると考えられるが、混戦の最中にであるとすれば、もはやこの面からの欺瞞する意味はない。目視されないことを第一目標として、艦形が判明しない程度の欺瞞能力を確保できればそれで構わないだろう。あとは攻撃位置を例えば残骸に隠れて取れば、十分安全に攻撃できる。

 


 ステルスで勘違いされがちなのが、あまり電磁波を吸収すると反対に空白地点として反対にレーダーに捕捉されてしまう。

 一定程度、自然な反射によって紛れ込ませることが重要なのである。意外と、それなり程度の能力でも問題はなかったりするのである。一番必要なのは用兵側の脳みそなのである。

 

 潜宙艦で最も驚異的なのは、艦体のステルス技術よりも発射反応をかき消す能力

 ヤマトもアンドロメダも一度たりとも探知できていない。反応があれば、艦載機の飛来した方向から空母の位置を探る様に、敵艦を探し出すことも困難ではない。少なくとも方角は分かる。
 しかし、潜宙艦の前ではその方法は通用しない。発射の際に生じた高温のガスを艦内に吸引するか、冷却をすることで熱反応を低減させている。あるいは圧縮した空気等による燃焼を用いない低温を維持できる発射方法を用いているのかもしれない。
 いづれにせよ、攻撃に移った際の行動すら隠蔽できるのだから、恐ろしいとしか言いようがない。

 

 つまり潜宙艦はヤマト史上最強の戦闘艦の一隻と、結論付けられる。

 

 長々と二回に分けて潜宙艦を考察してきた。

 現実を交えた潜宙艦の意義やステルス能力とその根源。作戦能力や対艦攻撃力、それを担保できるだけの艦の体力。それが存在し得ると証明できたと思う(のは多分、私だけ……)