旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス兵器群 駆逐艦


 今回の主役は、古代君に宇宙駆逐艦なんて呼ばれた艦。

 さらばではデスラー艦隊を構成する艦として派遣されたが、ヤマトを釘付けにするために犠牲に……。“シンエイカ”が親衛艦なのか新鋭艦なのかは判然としなかったが、登場が遅かったのでウルトラCで両方の意味もあり得る。

 ヤマト2でも登場は意外と遅く、本格的な登場は何と第19話において第11番惑星兵站基地駐留の第25戦闘艦隊の一隻として登場した。

 

 この結構インパクトのあった戦闘艦について考察してみたい。

 

 

 ――データ――

 艦級名:不明
 全長:132メートル
 全幅:59.4メートル
 自重:4,800トン
 武装:機動ロケット兼用10連装回転砲塔艦首上部1基、同砲塔艦首底部1基。機動ロケット兼用8連装回転砲塔艦上部2基、同砲塔艦底部2基。機動ロケット兼用8連装小型回転砲塔艦尾2基、機動ロケット兼用6連装回転砲塔艦前部舷側2基。艦橋基部8連回転砲塔1基、艦上部10連装回転砲塔3基、艦体下部後方8連回転砲塔8基、艦体下部4連装対空回転小砲塔16基、同砲塔艦橋基部4基、ミサイル発射管4門


 デザインは中型高速空母を反転させたような姿というのが最も妥当な表現だろう。

 白く塗られた円錐風の上部艦体に大型の回転砲塔を単独縦列に並べ、緑色の下部艦体にまんべんなく大型から小型の回転砲塔を配置。下部艦体前方にあの蜂の巣レーダーを目の様に設置している。艦橋は中型高速空母のそれと同じといっても過言ではない。カラーリングこそ違うが、やはり中型高速空母に類似した姿と言える。

 艦級名あるいは艦名は劇中に一度も登場せず、名前のその片鱗すら見せない。一方で海外はそう言う所は手が込んでおり、ボードゲームなのか何だか知らんが〈Storm〉というクラス名で呼ばれているらしい。

  つーか、砲塔多くね? ミサイル兵装少なくね?

 

 

 駆逐艦の能力


 さらばで見せたように、攻撃力はかなり高い。あのヤマトの装甲を文字通り蜂の巣にしてぼこぼこにしたし、ヤマト2においても第11番惑星上空で大戦艦と舳先を並べてほぼ同時に射撃を開始していた為、殆ど同じ砲撃力を有していると言えるだろう。

 他方、耐久力は他のガトランティスと変わりがないし。普通に一発ショックカノンがぶち当たっただけで艦体が上下の二分割になってしまった。

 機動力はかなり優秀で、瞬間物質移送器を用いての奇襲では一撃離脱戦法をこなせるほどの快速を見せつけた。

 

 だが困ったことに、大戦艦が駆逐艦の上位互換と言え得るほどの機動力を持つせいで若干印象が薄い。しかし、この駆逐艦はバランスの取れた有力な戦闘艦である。

 そう論ずることが出来るだろう。

 

 

 ただ、一つ大きな疑問がある。

 それは砲塔の数がいくら何でもちょっと乗せ過ぎ……これだけ小さい艦体にこれだけ詰め込むと一門一門がかなり小さくなってしまうだろう。
 レーザーや粒子砲の収束の想定では磁力を大抵用いるが、その磁力の拘束がかなり強力であったとしても――どうだろうか。確かに収束率が高ければ粒子兵器は能力が高まるだろう、実体弾ならば内圧が高まらなければ話にならない。その意味では砲口が小さい方が良い気もする。

 が、戦艦並みか少し射程が短い程度の艦砲を備えているのであれば、それを基準に全長や砲塔数を設定し直す合理的な理由がある――という事にしておいてください。
 

 


 そこで、幾つかのパターンで数値を設定し直してみる。

 1、何も考えずに3倍設定
 そのものずばり、〈ヤマト世界は数値を大体3倍にするとちょうどいい〉理論に基づいた数値設定。つまり、全長396メートル・全幅178メートル。

 2、砲を基準に
 砲を戦艦並みと考えての比率からの計算。数値の採取は全てメカコレや劇中からという何とも言えない想定。つまり、全長642メートル・全幅262メートル。

 3、大戦艦との比率を基準に
 劇中では大戦艦の大体1/3程度に描かれていた為、単純に割る。つまり、全長381メートル、全幅171メートル。

 

 大戦艦の設定の妥当性が不明な状態では、2番目の想定の妥当性は担保出来ない。仮に、この想定が妥当であれば――大戦艦は1.5キロ前後の全長となる。

 一方、1と3はほとんど想定と算出値がかぶっているため、両者の差は誤差と言える。


 さて、約400メートル設定が妥当かは正直不明元が兵装過剰で艦体が小さすぎるため、それに比べればマシとは思うが

 まして600メートル超の巨艦に設定しなおす必要性もまた不明駆逐艦が戦艦レベルの砲戦距離を確保する必要性があまりない為である。

 ただ、単純とは言え全長を拡大した事で、砲塔数の明らかな過多を考えても居住区画分のスペースは確保できるようになったと言えるだろう。居住区画は当然ガトランティス人の身体寸法によって設計するだろうが、単純に巨大化した場合は相対的に居住区画が拡大する。確かに兵装も同時に同じ比率で巨大化するが、問題はないだろう。

 

 


 この駆逐艦の恐ろしいほどの砲撃力は、その運用に対して様々な妄想の考察ネタを提供してくれる点だ。

 


 駆逐艦とは本来、水雷艇駆逐艦(Torpedo boat destroyers)が元祖である。

 ウン億ウン千の超高価な兵器である戦艦を、高いといっても高々数百万の魚雷を積んだ数百万のボート如きに沈められてはシャレにならない。

 シャレにならない事が実際に起こりえるとなれば、予防策を講じる必要がある。と言うより、喫緊の課題となる。

 

 

 水雷艇を退けるにはどうすればいいか。

 元来は戦艦に対水雷艇戦能力を持たせればいいのだが、世の中そんなに甘くない。

 魚雷を防ぐ水雷防御網と言うものがある。水雷とは魚雷も含めた水中爆破型の兵器の事で、魚雷も機雷も含む。名前は勇ましくすごく心強いが、停泊時のみしか使えず、張ったままで出向すれば抵抗以外の何物でも無い。挙句、展開するのも畳むのも時間がかかり、網と言っても金属製の為……錆びる

 ならば小口径の速射砲をいくつか載せる方法はどうか――これは結構アリ。ただし、設置場所は出来るだけ高い位置でなければならない。そうでなければ射程を稼げず、魚雷を発射して空になった水雷艇しか対処できないのだ。装備しておいて損はないが、積極的な効果は望めない。

 いづれの方策にしても、受け身でしかも効果が薄い。

 これは面倒だ……。

 

 

 水雷艇に勝つにはどうすればいいか

 ならば、積極的に排除するしかない。排除できるだけの小艦が必要だ。
 水雷艇同等の機動性と、水雷艇を撃破出来るだけの戦闘力を持った艦。これさえあれば、水雷艇が戦艦の周りをウロチョロすることもあるまい。

 このために創られたのが、水雷艇駆逐艦である。

 

 

 これ、本当に使い勝手がいい。

 小型・快速・高機動・安価……最高だ。

 

 

 これだけ優秀な艦ならば水雷艇の上位互換として一層の事、魚雷も載せてしまおう――という事で水雷艇駆逐艦は各国でどんどん発展していった。そして水雷艇に代わる存在として、より広範な任務をこなす万能な小型戦闘艦として確立していったのである。それが駆逐艦 (destroyer

 主兵装は魚雷であり、日本のような駆逐艦すら重武装にする国以外は基本的に砲撃力はそこそこ程度で我慢する。魚雷で十分高い攻撃力だからだ。反対に、WW2辺りでは水雷艇より厄介な艦載機を退ける為、魚雷等の対艦攻撃力を削減して高角砲をしこたま載せた防空駆逐艦なんかも出現した。

 駆逐艦という存在自体のベースの設計やコンセプトが優秀で応用が利くからこそ、である。

 

 

  小型・快速・高機動・高攻撃力・安価……超最高

 

 

 

 翻ってガトランティス駆逐艦

 ガトランティス駆逐艦がなぜミサイルや魚雷を主兵装にしないのかは不明主兵装にしないまでもほとんどないって……

 説明を付けるならば――

 隠密能力に優れた傑作艦たる潜宙艦や、超大型艦攻デスバテーターといった雷撃能力の極めて高い兵器が存在するため、わざわざ駆逐艦の雷撃能力を向上させる必要はないのかもしれない。まして、破滅ミサイルを装備したミサイル艦の前では大抵の戦闘艦の雷撃力は無意味なものになってしまう。

 ガトランティスにおいて、すでに誘導兵器は飽和状態の装備なのかもしれない

 

 


 一方で、単艦の砲戦能力は意外と低いのがガトランティス
 大戦艦は確かに高い砲撃力を持つが、艦体の大きさゆえ大口径砲を搭載し得るという事もあるし、仕留めるという意味では準決戦兵器である衝撃砲によるところが大きい。

 元から敵艦に近づかれてはまずい空母気が付かれてはまずい潜宙艦が高い砲戦能力を持つ必要はうすい。他方、ミサイル艦にいたってはミサイル兵装に振り切ってしまい、通常の攻撃兵器を一切保有していないと来たもんだ。

 つまり、戦列を組んで敵艦隊を正面切って戦える砲戦能力を備えた戦闘艦は大戦艦意外に存在しないという事。たった一艦種、致命的である。挙句、その大戦艦は常識的な砲塔の数に抑えているため……必ずしも敵艦に優位に立てるとは限らない。

 

 この勢力として致命的な砲戦能力の低さを補うのが駆逐艦とすれば、過剰なまでの砲塔搭載も説明できるだろう。

 大戦艦と共に戦列に組み込んで敵と対峙する、あるいは襲撃を受けた大戦艦に急速で接近し強力な援護射撃を加えるという運用をする。そんな想定が出来るのではないだろうか。実際、土星決戦でバルゼーが揮下の第一艦隊に対して命令したのも、大戦艦の背後を大量の駆逐艦で埋める陣形だった。

 


 駆逐艦とは本来戦艦と共に戦列を組む艦種ではない。

 帆船時代などは(当然駆逐艦など存在しないため、スループフリゲートと読み替えて下さい)敵艦隊との直接対決となれば、小艦艇は戦列から距離を置いて安全圏へ退避した。これは近代に入っても基本的に変わりなく、黄海海戦日本海海戦水雷戦隊も参加はしたが戦艦群同士の砲撃戦には参加しなかった。当然、第一次世界大戦においても同じである。


 ところが、ガトランティス駆逐艦装甲巡洋艦重巡洋艦のように戦艦と戦列を組みうる艦種として建造したのだ。中々にアバンギャルドというか、リスキーな事をするものである。

 小型の艦体では当然装甲は薄くなる。そんな危なっかしい艦に高攻撃力を持たせる、戦陣に加える――普通に考えればヤバい。一隻失えばそれだけ艦隊は砲撃力を失う事になるし、近接の熾烈な砲撃戦であれば失う危険性も高くなる。

 それでもガトランティス駆逐艦に重装備を施した。

 恐らく、大戦艦だけでは対艦戦闘と対空戦闘の双方を捌き切ることは無理だろう。確かに駆逐艦では砲のキャリアとして心もとないが、圧倒的多数を用意する事が可能であり、その濃密な弾幕によって接近してくる敵を打ち払う――対艦戦闘可能な防空逐艦としての存在を期待したと説明付けられるのではないだろうか。

 

 性質として似ているのは、アメリカ海軍のアトランタ級やウースター級だろう。特に、後者は対艦戦闘も行える防空艦であった。

 って、どっちも軽巡洋艦じゃん。

 

 


 この駆逐艦で興味深いのが機動ロケット兼用回転砲塔
 何で砲塔と推進ロケットが一つに組み合わされているのか、意味不明である。

 可能性としては、砲撃用のエネルギーを推進装置と兼用することで成立させていると考えられる。砲撃時にはロケットが使えないし、ロケット使用時は砲撃できない。結構まずい……その解消のために一体化させた。


 別な理由として考えつくのが、うまく両者の位置取りが出来なかったため。スラスターを設置するのにちょうどいい位置が、砲撃に使える位置にあるという最悪のパターンだった。という説明だ。これならば先のロケットと砲の機構併用する理由と矛盾はない。


 兼用砲塔に限らず、アクロバティックな砲塔配置はガトランティスだからできることだろう。ガトランティス艦の砲塔は無砲身で回転式な上、内部の砲口が自在に上下方向の射角を取れる為、搭載面の水平など関係ない。故に実現できることだろう。

 駆逐艦に限って言えば、特殊なロケット兼用砲塔の存在により極めてアクロバティックな運動を行えるという事だろう。これは断言できる。

 

 


 駆逐艦はリアリティという観念では少々不備のある艦だ

 あまりに搭載する砲塔が多すぎる

 艦体が小さければ当然、その有効性にも疑問が生まれる。例えばエネルギー供給の不足という事も考えられる。原作通りの砲塔数を担保するならば、艦全長を大型化する必要が有る。全長の再設定ないし、砲塔の間引きを行えば当然の如くリアリティを回復できるだろう。

 原作そのままでは幾らか問題があるが――しかし、運用目的・運用方法その双方ともに理に適っている

ほんの少し手直しするだけで臆するところのない完璧な架空艦になる。そう断言しよう。

 


 その点、もしもう一度リメイクするならば……2199の様に幾らか装備を整理した上での登場が相応しいだろう。艦を大型化しないならば、あの設定変更は理に適っているといえるだろう。(珍しいでしょ? リメイクヤマトを褒めたの)