旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス兵器群 デスバテーター ー傑作攻撃機ー

 

 デスバテーターはヤマト史上最強格の攻撃機であり、ほぼ最大の艦載機。それがデスバテーターである。また、ガトランティスのバイオミメティクス的兵器群の中でももっともその傾向が顕著な機体である事も特筆すべきであろう。

 

 


 ――データ――

 名称:デスバテーター(英語版:Scorpion)
 種別:艦上攻撃機
 全長:48.1メートル(27.5メートル)
 全幅:41メートル(ないし21.8メートル)
 最大速度:マッハ10
 搭乗員 :5名
 武装:12連装回転砲塔1基、20ミリパルスレーザー砲片翼6門・計12門、胴体下部ミサイルラック8基、胴体下部ミサイル弾倉=大型ミサイル2基

 

 もしアメリカの軍用機命名規則に則った制式名称を付けるなら……AF-Cあたりになるだろう。物凄く重武装で物凄く巨大である。

 基本的にカブトガニと同じ形状で、以上でも以下でもない。頭胸部が白、腹部と尾剣がグリーンに塗られ、棘の代わりの噴射口のみ黄色だ。一見してガトランティス兵器の特徴である蜂の巣が無いように見えるが――実は機体下部前方にノズルのようなものがあり、そこにあったりする。

 注目すべきは機体翼部と機体外下部に噴射口が別々の形状で存在している点。描写をしつこく詳細にみると、大気圏内では機体外下部噴射口を利用しているシーンがある。一方で宇宙空間では機体翼部噴射口を利用しているシーンがある。つまり、一個の機体に二つの推進機関が存在しており、最も効率のいい推進方式を適宜採用できるという事がいるだろう。だからと言って地球のような濃密な大気圏への突入が出来るかは不明だし、シーンとして存在していない。多分無理。

 

 

 デスバテーターの魅力


 この攻撃機の特徴は圧倒的な攻撃力と機動力を実現させた事だ。
 この機体の攻撃力は半端ではない。まず、8本抱えたミサイル。ヤマト2の第一話では3発か4発程度でちゃんと駆逐艦を中破ないし大破させた。また、ヤマトも無事ではない。さらばの冒頭ではもっと攻撃的で、パルスレーザーで地上を機銃掃射するわミサイルバカ撃ちするわ、挙句大型ミサイルはキノコ雲をぶち上げる。数機のデスバテーターから発射されたものだろうが、それでも一発当たりの威力は艦載機の用としては破格であろう。

 

 格闘能力も基本的にかなりのモノである。ヤマト2で勇んで飛び出してきた古代のコスモゼロを軽くあしらい、第9話でも加藤が手を抜いていたとはいえコスモタイガーとドッグファイトを繰り広げた。18話でもデスラー総統が脱出に使った戦闘機であるイーターⅡに追いすがったし、大惨事を現出してしまった20話ではそもそも発進が出来ていない状況だった。このことからきわめて強力なコスモタイガーと同等以上の格闘能力があるといえよう。

 

 加えて

 デスバテーターは堅牢性も高く、ヤマト2の第6話で不用意にヤマトに接近した機体は爆散したが周囲に群がったデスバテーターは大きな被害はなかった。まして11番惑星守備隊が運用した地上要塞砲は全くお話にならなかった。納期が迫った故の単なる手抜きの可能性もあるが、堅牢さを示す描写と好意的にとることも可能である。
 また、さらばでコスモタイガーの銃撃を受けた地上要撃機は被弾後爆発したが、デスバテーターは超大型空母の滑走路上で銃撃を受けても離陸失敗してひしゃげた程度。地球艦隊のショックカノンやパルスレーザーを受けた後でもひらひらとイーターⅡとぶつかり合うなど、簡単には爆散しない。コスモタイガーですら銃撃を受ければ当たり所によってはたちどころに爆散してしまうが、デスバテータにはそういう事はほぼない。

 

 格闘戦、雷撃戦、地上爆撃、その全てをこなす極めて強力な艦載機であることは間違いないだろう。

 


 では、この成功の原動力は何だろうか。
 多分、無理せず大型化した点にあるだろう。

 

 


 機体全長の妥当性


 幅40メートルの艦載機って一体何者だよ
 確かに爆撃機として幅40メートルはあり得る数字である。ロシアのTu-160は翼幅55メートルだし、アメリカのB-52ストラトフォートレスB-1ランサーいづれも40メートルを突破している。その意味では……普通。だが、これらは普通の地上発進の戦略爆撃機である。

 とはいえ、デスバテーターも能力的には戦略爆撃機並みの能力(過剰な攻撃力ですね)を持つ。攻撃力から考えればあながち数値として間違っているわけでは無い。

 だろうが……艦載機として……過剰すぎるだろう。
 大型艦載機としてはA-2 サヴェージA-5 ヴィジランティA-3 スカイウォーリアーなんてものが20メートル前後のアメリカ軍艦上攻撃機として存在する。基本的に重量のかさむ魚雷を主兵装とする以上、爆撃機やまして軽装の戦闘機より大型になるのは当然といえば当然。

 


 要求性能を満たすため、デスバテーターが相当な質量を持っているとしたならば、エンジンの大出力化の必要性に伴い機体の大型化もあり得る。無重力であるからと言って、作用反作用の法則は依然として残るのだから、物を動かすにはそれ相応の力が必要。であるならば――

 

 デスバテーターが大質量である→エンジンは大出力が必要

 エンジンが大出力である→機体強度的に工夫が必要

 機体強度的に工夫が必要→機体は概ね大型化する

 大型化する→デスバテーターの大質量化→以下ループ

 

 そういう事である。

 


 多段式の地対空ミサイルであるナイキミサイルはモノにもよるが……12から10メートル程度、重量は1トンから4トン程度と結構幅がある。であるにせよ、8発を積むという事は最低8トン、最大32トン――これに加えてポラリス並みの大型ミサイルを2発積み込む。ポラリスは16トン、ポセイドンは29トン、トライデントに至っては33トンだから間を取ってデスバテーター搭載大型ミサイルを1発25トン程度と想定すると、2発で50トン。合算すると58から最大82トンとなる
 最大値80トン+機体自重(恐らく80トン近く)だから合計最大約160トンを飛ばす必要が有る。最低でも140トン。

 武装の搭載量から言えば現実の世界で飛んでいる通り、40メートル以上の翼幅は必要になるのかもしれない

 

 


 機内描写としてヘリコプター並み

 偵察タイプは一式陸攻並みと言ったところで、ヤマトシリーズの描写にしては割と狭い方に入る。先に上げた例えは一通り20メートル強程度である為、デスバテーターの幅が40メートルだろうが27メートルだろうが、描写との整合性は取れるだろう。元の設定がかなり大型ゆえに。
 また、武器は大型ミサイル以外は機外にぶら下げる為、機内容量は必ずしもミサイルに占拠されているわけでは無い為、エンジンに割くなり居住性に割くなり相当余裕を持った設計と評すことが出来るだろう。

 多分、ヤマトメカにしては珍しく推進機関の燃料にもよるが――機体全長がかなり現実的な数値になっている。

 

 

 驚異的なスペック

 攻撃機だけあって搭載能力は極めて高い最低56トンから最大82トンと言う搭載量はつまり、これは機内外合計・最大搭載量56トンのB-1と同格以上という事になる。艦載機の一機一機が戦略爆撃機並みの搭載力を持っているというのは魅力と言うよりもはや恐怖。しかもそれが何百機も飛来してくるのだから地獄を超えた光景だ

 たとえ27メートル想定だったとしても単純に半分で計算しするなら――28トンから41トン程度でやはり、最大搭載量22トンのB-2以上と言えよう。


 しかし、いくら驚異的な爆撃能力を持っていたとしても――宇宙空間にせよ大気圏内にせよ高い機動性を持たねば単なる的になってしまう。それを防ぐにはやはり戦闘機並みの格闘戦能力を持たねばならない。日本軍がやろうとして割合失敗し、現代各国が達成したマルチロール(多用途任務機)化である。

 そしてデスバテーターはマルチロール化できるポテンシャルを保有している。コスモタイガーと同格かと言えば微妙なラインだが、最低でもコスモゼロを上回る能力は有している。直撃はしなかったが、誘うような飛行をして最中にロックオンしてミサイルをぶっ放すなんて芸当をこなしているのだから格闘能力は高いと言えるだろう。
 デスバテーターの強みは他にもある。それは圧倒的航続力だ。さらばでは土星よりだいぶ遠方からデスバテーター隊が発艦したし、ヤマト2ではフェーベ沖から発艦を試みていた。

 

 

 圧倒的航続距離は地球艦隊との決戦で披露されたし、披露されるはずだった。
 第9衛星フェーベは軌道半径1286万9700キロ、主要衛星の中で最外縁部を回る衛星だ。一方第6衛星タイタンは軌道半径122万1930キロ土星の衛星中最大かつ太陽系圏内でも2番目に大型の大気を持つ衛星である。

 両者の距離は差し引き1100万キロと遠大な空間が間に存在する。空母を中心としたゲルン指揮下のプロキオン方面軍は、この距離をデスバテーターに踏破させようとしていたのだ。しかも、位置によっては斜めに進まねばならず余計な距離がかさむし、空中戦をやる場合は余計に燃料がかさむ。もっと言えば、巡行速度で遠征するかと言えば疑問だ。いつコスモタイガー隊や地球艦隊に出くわすかわからない以上、どこかの地点で最高速度まで上げる必要性に直面する事だってあり得よう。だとすれば、余計に遠方までの航続距離を有していなければマズイ。

 概算して、最も小さい数値の航続距離は行って戦って帰って――最低でも2200万キロ以上の航続距離を有すると言えるだろう化け物か……

 

 

 他方、第8衛星ヤペトゥス(イアペトゥス)は軌道半径356万820キロ土星の衛星中3番目に大きい。フェーベとヤペトゥスの距離はこれもまた長大で900万キロと広大な宇宙空間が広がる。

 コスモタイガーはヤペトゥスから“2万の距離”から発進、プロキオン方面軍はフェーベの北3.0宇宙キロの地点で待機。正直、細かい距離は全くわからん。
 ここから推測してコスモタイガーの航続距離は行き来で1800万程度であると推測できる。特に偵察飛行であって、格闘を何度も繰り返す飛行は避けるはずなため……やはり巡行で1800万キロ+α程度であろう。

 少しコスモタイガーに有利な条件を付け加えるならば……フェーベは逆行軌道で大分傾斜した軌道を回る。しかもヤペトゥスとタイタンは大して離れていないが、ヤペトゥスとフェーベはかなり離れている。つまりデスバテーターがコスモタイガーより確実に長距離であると保証できる数値は高々400万キロ決して圧倒的ではない

 だが、21話で古代君が説明していた通り、ヤペトゥスからフェーベにかけての偵察ルートはヤマトもまた後を追う形で航行したであろう。そう考えると、案外コスモタイガーは長距離を飛んでいない可能性もある。あとからヤマトが付いてくるとすれば、真田さんもあまり不安なくフェーベまで足を延ばせた、あるいは、増槽で無理やり航続距離を伸ばした――そう説明が付けられるだろう。

 となると、やはりデスバテーターは圧倒的ではない可能性があるとしても、機体としてかなり優位な航続距離を持っていると表現できる。

 これは誰を贔屓したいかによるなぁ……

 

 
 つまり、コスモタイガーと比較して驚異的に長大かと言えば、意外とそんなことはないが、確実に上回る航続距離を有する。

 仮に南太平洋での角田少将のような戦術を取れば、120%の確率で相手の機先を制することが出来る。攻撃力も非常に高く、大気圏内でも宇宙空間でも十分に活動可能。
 これは間違いなく驚異的なスペックと言えよう
 

 

 


 劇中の活躍―実戦―


 最後に劇中の活躍を見たい。
 さらばにせよヤマト2にせよ、冒頭の破壊活動は巨大なインパクトを見る者に持たせただろう。しかもあのカブトガニフォルムは日本人になじむ形なのにもかかわらず、物凄く異星人っぽい。

 さらばではその後、土星決戦まで出番はなかった。残念ながらその出番でも大編隊で地球艦隊に襲い掛かったものの――その巨体が裏目に出てしまった。
 密集隊形で突撃を敢行する地球艦隊を雷撃したものの、なんとミサイルの射程圏外ないし作戦上の発射許可が下りる前にショックカノンの雨を浴びてしまった。しかもアンドロメダの1/7に当たる巨体は見事にショックカノンの的、そこそこ高い速射性と長射程を誇る地球艦隊の艦砲に前には攻撃すらできず。あるいは電子戦があったがゆえにミサイルをロケット的に使おうとして出来るだけ接近したのか……結局パルスレーザーの射程圏に入っても雷撃の機械はなかった。残念ながらいいとこなし。

 一方でもっとかわいそうな登場機体もある。護衛の“戦闘攻撃機”イーターⅡは地球艦隊司令が艦載機による迎撃を却下したため出撃した意味が、結果論とは言え全く存在しなかったこれはひどい

 

 ヤマト2では冒頭の不明惑星国家征服、第3外周艦隊襲撃、第11番惑星襲撃の任務をこなした。大活躍であり、あのヤマトを一時とはいえへこませた

 以降一時的に出番を失うも、タイタン前面域戦の前哨戦であるフェーベ沖海戦では大部隊が出撃を控えていた。ところが――直掩機を上げない、あるいは直掩機の交代の間隙をぬってのヤマト航空隊による奇襲、続く第1から第3空母より出撃した飛行隊による強襲を受けて機動部隊は壊滅。デスバテーターも緊急発進を試みたが、飛行甲板を優先的に攻撃したヤマト航空隊により発艦の術をすべて失い、どうにもならなかった。

 大人の事情と言う説明もできるが、それ以外の説明を付与するは幾らでも可能なのでまた別の記事に纏めたい。

 


 非常に高性能な艦上攻撃機であることは間違いない。極めて巨大だが、それなりに妥当性のある設定であり、一方で半分の大きさでもまた妥当性のある設定。描写と能力設定、運用もかなり合理的である
 しかし……戦術的には少々不運が続いた。
 さらばでは、端っから艦載機での攻撃をあきらめていた節のある第6遊動機動隊は特に攻撃に際しての支援も陽動もなしに突撃をさせた。

 ヤマト2では、偵察遊動艦隊は第11番惑星への攻撃とヤマトへの迎撃の2方面に戦力が割かれてしまい、結局ヤマト迎撃には失敗。決戦では発艦すらあと60秒のところでヤマトに阻まれた。

 

 傑作機であっても恵まれた環境や恵まれた戦場に投入されるかどうかは現実でも微妙な所がある。ガトランティスひいきとしては不本意な展開が多いが、しかしヤマト史上屈指の名艦載機であることは疑いようもないと言い切れるだろう。
 また、ヤマトが必ずしもご都合ばかりではない、それどころか簡単に合理的な説明を出来る査証になる極めて有力な艦載機でもある。
 それがデスバテーターだ。