旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

第二期地球艦隊・護衛艦―汎用フリゲート―

 

 

 護衛艦は劇中、アンドロメダに先んじて登場した新型の地球防衛軍艦艇である。

 若干、贔屓の引き倒しな感のある艦。劇中はほとんど登場しないのにもかかわらず、最初に登場する艦だから最初にデザインされたおかげで、どっからどう見ても他の紡錘形艦艇のベースラインになるという――ヤマト製作陣の「それってどうなんだろうか」な製作方針というか、製作過程の具体例ともいえるかもしれない。

 護衛艦が最初に設計されたと物語上設定してれば、挽回できなくもないけど。
 

 

 

 

 デザインと性能

 

 ――データ――

 艦級名:不明
 全長:112メートル(ないし113.3メートル)
 全幅:13.9メートル(ないし14メートル)
 自重:3,600トン
 主機:波動エンジン
 武装:艦首波動砲1門(ないし大口径衝撃砲1門)、連装(12.7センチ)衝撃砲3基、舷側三連装魚雷発射管4基、連装パルスレーザー砲4基、艦首ミサイル発射管2門

 

 大変すぼまった紡錘形、艦体に対して大型の艦橋とレーダー。大型の主砲に対空用らしきパルスレーザー砲を備えた規模にして比較的高い攻撃力を有する地球艦らしい艦艇。艦首の砲口は大型ショックカノンなのか波動砲なのかは意見が分かれるところ


 フリゲートに相当する艦として想定されたデザインという事らしい。任務も確かにフリゲートと同様の遠洋まで航行して船団護衛を行う(=航洋護衛)を行っている。また、現代においてもフリゲートは所詮艦隊の火力としては脇役でしかなく、劇中でも土星等の決戦には参加しなかった。

 ちなみに海外ではFrigate〈Airone〉と呼ばれている模様。

 

 

 フリゲートとは、元来攻撃力を犠牲にして高速性能にキャパを振った小型艦艇の事である。もうちょい攻撃力を増したのが巡洋艦だし、もうちょい早くしたのが“水雷艇駆逐艦ではない駆逐艦”だ。

 


 懐かしの戦列艦が主役だった時代、フリゲートは戦隊同士の連絡や陸との連絡を担い、あるいは船団護衛や襲撃を行った。間違っても戦列を組んでの戦闘はしないし、決戦時は絶対に近傍海域に退避する。フリゲート同士であれば当然戦闘になるが、出来れば同等の艦とだけ戦いたい

 歴史上、優勢な敵と戦ったフリゲートも何隻かいるが、それはそのフリゲートの艦長がおかしい極めて勇敢で戦闘的あった稀なケースである。フリゲートは基本、戦闘艦との戦いは避ける。


 戦列艦も戦艦も消えた現在においては、金持ち国家は空母を艦隊の中核に据えている。一方、そこそこ金持ち国家は巡洋艦クラスを中核に据え、これらが対艦打撃力の中心となる。では、金のあまりない国はどうか――これらの国は対艦打撃力の中心を駆逐艦が担う

 ただ、駆逐艦の設計は普通の国以上に命がけとなる。

 仮に対艦戦闘にキャパを振りすぎると、敵艦隊撃破以外の任務にはオーバースペック過ぎるし、水上艦以外との戦闘には非力になる。一端に対地攻撃能力を付与すると対艦戦闘が不安になり、しかも建造費が割高。対空・対潜水戦闘と対水上戦闘とは性質が異なり画一化は困難。まんべんなく能力を持たせればそれだけ、個の能力が不足する。

 そんな艦ばかりを集めてはややもすれば、攻撃ばかりで敵の襲来に対して無防備になってしまう。建艦方針がブレてしまえば、せっかくの金を無駄にしてしまう。

 

 では艦隊防空や対潜はどうすればよいかといえば……そこで護衛任務を主とするフリゲートにお呼びがかかったのだ。

 フリゲートを造るには比較的小型の船体を用意し、軽量級の火器や少数の非対艦系ミサイルあるいは魚雷を乗せ、十分なレーダーとデータリンクシステムを追加すればもう完成。出来ればヘリも載せたい。こうしてスペックを満たしたフリゲート防空、対潜の中核として飛び道具に対する艦隊の盾、ひいては海軍全体の盾として機能するのだ。

 

 仮に駆逐艦を方針を以てその性格を限定したとする。しかし、フリゲートに対空ないし対潜能力を集約させれば駆逐艦の能力が偏っていたとしても艦隊として充実した戦力をして運用が可能

 また、能力の偏った駆逐艦が船団護衛に付くのはあまり賢い選択ではないし、決戦に供する戦力が足りなくなる。が、フリゲートが護衛の役割を担えば専門職による護衛で船団の安全を確保可能だし、数の足りない駆逐艦をわざわざ出す必要も薄れるだろう。

 これは金持ち国家も貧乏国家も大海軍も小海軍も関係なしに、デメリットを減じてメリットを享受することが出来るのだ。

 日本もこれから該当する艦を大量建造する計画があったりする。

(FFMの事。実際にはDEの後継)

 

 

 似たような奴にコルベットという艦種が存在する。こちらはフリゲートよりも小型で戦闘力が小さく、沿岸警備であるとか艦隊の雑役をこなす。
 近現代においては手数が必要な対空任務が行えるほどスペースがない為、同じく手数の足りない潜水艦との格闘が主な任務である。沿岸域が活動範囲である為、航洋性能や居住性能は別に重視する必要はない。

 コルベットの基本的な兵装は小口径の主砲とミサイルや魚雷を幾らか載せ、機銃は各国の要求によって載せたり載せなかったりする。ヘリも載せたり、載せられるけど固定では無かったり、そもそも載せられなかったりする。

 つまり――結構流行に左右されて、実際はこれといった明確な基準はない。

 欲張りな国はコルベットフリゲート並みの能力を要求していたりする。

 

 

 

 護衛艦、その立ち位置
 翻って地球防衛軍護衛艦。この艦は結構重武装である。

 ガミラスの復讐の恐怖と差し当たっての地球の守り。主力戦艦ら大型戦艦を建造する前の段階を担う地球の希望――と言っても登場の時点では過言では無かったはずだ。恐らく、艦体の規模からいって第二期地球防衛艦隊建設の一番艦の栄誉を担ったと考えて無理はない。

 

 ただ、今となっては拙速な設計だったかも……しれない。

 対艦戦闘に能力を振り過ぎている感があることは否めないし、それ以前に、性能が若干迷走気味に思える(エンジンの出力如何で評価は大きく変わるが)。中途半端に口径が大きかったり、武装過多が懸念材料なのだ。

 

 

 主砲は小口径砲である。と言っても、艦体が小さく積みこめるエンジンは恐らく小型。エンジンが小型である以上出力に疑義が出るだろうし、出力に疑義が出る以上は速射性も威力も疑問。しかも艦体の割には大き目にも見受けられる。これでは艦載機を撃つには若干遅く、戦闘艦を撃破するには威力が足りない可能性があるだろう。一般にフリゲートに要求される防空任務は正直……的のデカいデスバテーター相手でなければあまり期待できないだろう。

 一方で口径が小さいとはいえ波動砲を装備している――か、戦艦のそれを圧倒的に上回るショックカノンを有しているため、会敵時にうまく立ち回れれば対艦戦闘も十分行えるだろう。そういう意味では時間限定で戦艦並みの能力を持つと言えるかもしれない。同時に、高い艦橋とデカいアンテナは多分、データリンクできる程度の能力を期待できるであろうから、フリゲートに限らないが、集団であれば十分運用できるはずだ。

 

 フリゲートは元から積極的に艦隊戦に参加する艦ではない。が、防空任務等で引き連れて損はないはずの艦だ。だが、どうにも……この護衛艦は艦隊戦で連れまわすには能力が足りない危険性がある。

 

 

 他方、フリゲートの主たる役割の護衛任務は結構期待できる。これ一本なら有用と断言できる。

 つまり、うまくすると戦艦並みの能力を発揮できる艦を護衛に充てるのだから、中々に贅沢できるというか安心であるという事。対空も対艦も誘導弾を多数擁しているため、集団で事に当たれば怖くない。そして、それを担保できるだろう、それだけの艦体の規模に纏められている。戦艦の半分以下の規模であるからして、大量建造してもかなり安く上がるだろう、すればするほど安く揃えられるはず。
 出撃させる場面さえ間違えなければ結構使える場面さえ間違えなければ。


 

 一応、殆どスペックの同じ2202ではどうだったかも少し触れる。
 配備されたのはエンケラドゥス守備隊と山南艦長率いる本隊の2部隊。

 エンケラドゥス守備隊に関しては、有する全艦艇を集結して迎撃したという説明が出来るだろう。何でパトロール艦を殆ど至近距離で先行させた理由とか、何でD級は拡散波動砲を撃たないのかとか、何で途中でお互いに砲撃をやめたのか、とかいろんな疑問はすっ飛ばす。ついでに、重力が強い土星本星に接近して戦うという不利を自らに枷て、コスモタイガ-よりエンジン性能が悪い事を露呈したりと……。

 で、本隊にも複数隻の護衛艦が配備されていたが、戦闘には参加せず。一体どういう……


 うがった見方だが、製作陣があんまりこの艦をお気に召さなかったのか、他の艦の方を目立たせたかったのか、気合の入っていないファンサービスなのか――まあ、あの規模のあの戦力の敵と正面切って戦ったところでたかが知れてるという見方もあろう。そういう意味ではまあ、仕方ないか。
 エンケラドゥス守備隊本隊が袋叩き似合っているのだから側面から支援に回るとか、相手が意外に艦載機攻撃を行わないのだから味方航空隊の支援の下に突入を行うとか、もっと頭使った展開はあったかもしれないが。

 

 

 劇中の活躍――再設計の必要性
 もう一度ひるがえって旧作ヤマトの護衛艦――劇中での活躍については残念ながら語るところはない。だって活躍してないから。

 さらばではアンドロメダとニアミスしたぐらいしか画面に出ない。もしかすると、進宙式の端っこで整備中の艦が映っていたかもしれないが、よくわからない。

 一方、ヤマト2に至っては全球停電に陥った時に艦首だけしか、画面に出ていない

 

 君、画面に出なさすぎだ。

 


 では、設計はどうか――メタメタな設計かといえば、合理的な面もある設計だ。側面に巨大砲塔を載せたりなんてことはしていないし、対艦載機と対艦能力を砲と誘導弾でバランスよく能力を付与しているのだ。

 武装過多なのは問題だが、魚雷は次弾装填不可と割り切り、乗員数を10名程度に抑えれば120メートル弱の艦体でも……何とかなるだろう。中途半端に高まった砲撃力が不安材料として残るが。

 ともかくとして、複数艦が集結して任に当たるべきだろう。であるならば、次弾無しでも速射力に問題があってもペイできる可能性が高い。なのに劇中に一隻しか出ていないのが大いに問題だが――映っていない後方や遠方で輪形陣を構成している想定しよう

 明確にしたいのは、この護衛艦の設計ベースラインは見事という他ない合理性・現実性を持っているという事。

 

 

 

 もし、手直しするならば……まず第一に艦載機なり連絡艇を収容したい。
 艦橋全部から2番主砲塔後部にかけての空間は、絶対別な運用をしているのだろうが、ここ以外に格納場所はない。この部分は比率からおおむね17メートルの長さが確保でき、幅も高さもギリギリでコスモタイガ-1機は何とかなる。羽を畳んだりの改修が必要だろうが。


 出来ることなら艦の全長を1.5倍か2.2倍程度にしたい。全長を倍にすれば格納容積を4倍に出来るため、それだけ容易に艦載機や舟艇を格納できる。艦以外に手足となる舟艇や艦載機があれば、船団護衛任務は極めて安定的に行う事が出来るだろう。より、フリゲートらしい設計となる。舟艇はあると無いとでは大違いなのだ。

 

 欲張れば、艦体を拡大し相対的に兵装の規模を縮小。同時に底部砲塔を廃止して仰角や速射性・威力を高めて両用砲とする事で任務の幅を広げたい。

 が、抜本的な設計変更は必要ないだろう――これ以上の改修は多分、誰が見ても不要な自分の色を出したいだけのエゴと判断されるだろうし、それが妥当だろう。

 あんまり大型化してもフリゲートの取り柄の一つである手ごろさが失われてしまうため、妥当な設計案ではない。

 

 

 

 カラーリング、その理由
 最後にカラーリングについて考察したい。護衛艦のカラーリングはなぜか緑がかった濃紺ベースで艦首と艦尾がグレー、艦首とインテークにクリーム色の刺し色、ノルズコーンの先端は赤。考えてみれば、パトロール艦も近い色使い――色の数とか、塗分けという意味で――である。

 ひょっとすると、パトロールとか護衛とかの戦列を組まない艦を示すカラーリングと理由づけられるかもしれない。つまり立ち位置故のカラーリング。

 

 

 カラーリングを分ける理由は、例えば戦時中、識別線は序列の明確化とかの艦隊統率に有用であり、日本海軍は水雷戦隊(だけじゃないですよ)毎に変更しかつ序列順にマークを煙突に記した。もっとわかりやすいペナント・ナンバーはダイレクトに個艦を特定できる。喪失すればたちどころにわかるし、運動中にへまをやらかしか艦を個別に叱責することも容易。

 

 戦時中の日本海軍は識別線を廃止して塗りつぶしたことがあるが、しかしすぐに前述のような理由から復活させている。確かに、パッと見は視認性を高めてしまい、戦闘に不利に見える。多分、カムフラージュ出来には不利な場合もあるだろう。

 が、そういったデメリットを補って余りある――というよりも、視認性を低下させるメリットよりデメリットが大きかったから、識別線を復活させた。それが一番妥当な説という。
 

 


 なぜ地球防衛軍護衛艦であることを認識させるかといえば、やはり任務の違いという可能性が妥当な所だろう。

 カラーリング――つまり、任務の違いが明白になれば、それは対象の艦が艦隊にとってどのような立ち位置であるかを明らかにすることが出来る。仮に戦列を組ませた場合のどれほどの戦力になるだろうかという点も、自軍戦力が色として把握できある程度は想定できるだろう。

 戦争中、フリゲートに期待するのは船団護衛であるとか、弱勢な艦隊の防空、或いは無線封鎖中であるとか、妨害を受けている中でも確実に伝令を行う通報艦とかの任務だろう。この手合いの艦は単独では敵に反撃するのは難しく、そのため発見次第優先的に援護を行うべきだろう。

 

 通常の地球艦隊の艦艇とはかなり異なった運用が想定される護衛艦には、目で見て艦を認識する必要は決して少なくない。
 だとすれば、カラーリングが根本から通常の艦艇とは異なるというのはあり得る話……かもしれない。
 

 

 

 地球艦隊に欠けている能力を埋めるだけのスペックを持ち、恐らく最も簡単に建造できる艦種の一つであろう。もしかすると、地下都市でも建造できたかもしれないし、敵を追い払うに十分な能力を持った艦として緊急的に配備されたかもしれない。

 色々な妄想考察や想定が出来るだろう。仮にこの艦のスペックがお話にならないほど非現実的であれば、そんな考察は端から成り立たない。

 

 

 しかし、この艦にはリアリティがある。様々な想定に合致し得るだけのスペックを満たした、常識の範囲に収まる武装を載せている。想定し得る作戦場面とそれに合致したスペック――緊急的に計画・建造されたフリゲートとしてはかなりリアリティのある艦と言えるだろう。

 この艦に見えるように、この要所要所にみえるリアリティがヤマトの魅力であり、それを表現する極めて特徴的な艦と言えるだろう。