旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

第二期地球艦隊・主力戦艦②――生まれながらの旧式艦――


 主力戦艦が限定的な用途の為の戦闘艦であると前回述べた。

 今回はヤマトとアンドロメダという二隻の戦艦との性質の違いを明らかにし、その存在についての背景を考察してみたいと思う。

 

 

 

 おさらい、基本性能 

 データ
 全長:242メートル
 全幅:45.8メートル
 自重:54,900トン(ないし59,400トン)
 主機:波動エンジン1基
 補機:補助エンジン2基
 武装:艦首拡散波動砲1門、3連装衝撃砲塔3基、6連装大型艦橋砲1基、ミサイルランチャー10門、対空パルスレーザー砲連装2基、同3連装2基、5連装艦橋砲1基、
固定式4連装舷側砲塔2基。

 このうち確認できる武装は――
 艦首拡散波動砲1門、3連装衝撃砲塔3基、6連装大型艦橋砲1基、4連ミサイルランチャー2基、対空パルスレーザー砲連装2基、同3連装2基。
 艦載機発艦口と見られるスリット状の開口部が並列で艦尾艦底部に2つ。

 

 カラーリングはベースとして他の艦艇同様グレーが基本。波動砲口と艦前部インテーク口がクリーム色に塗られ、波動エンジンノズルはなぜか赤。ただし、第21話に登場したヒペリオン艦隊旗艦は、主砲の前盾がクリーム色に塗装されている。多分、旗艦仕様という事なのだろう。

 艦の前半部は八角形の波動砲口に合わせた矩形、後半部の艦体2/3程度はほぼ円筒に近い形態。その継ぎ目に当たる部分には特徴的なインテークが設けられ、不格好さを減衰させている。アンドロメダのそれとは異なり、殆ど側面武装の無い形態で補助エンジンも2基のみ。艦橋の形状は基部から二段目まではアンドロメダと共通であるが上部の形状は完全に趣が異なり、大型のアンテナ類が複数据え付けられている。

 

 


 主力戦艦―“海防戦艦
 主力戦艦は太陽系圏内において活動する事が基本の艦であり、艦隊決戦に最も重要な波動砲を確実に送り届けるキャリアとしてのスペックが要求されていた

 その根拠は艦載機収容能力の明らかな欠如にある。

 242メートルの艦体は全てを格納庫にするならば相当数の艦載機(正確には艦上機)を運用し得るが、砲力と同居できるだけのキャパシティはない。そもそも、現実に260メートルだと艦載機運用が不可能と各所で言及さえているヤマトより更に20メートルも短い主力戦艦に大きな艦載機運用能力があり得ようはずがないのだ。

 

 ヤマトの戦いをみて確実なのは、単独行動をしようとするならばその手足となる大規模な艦載機群が必要という事だろう。単独行動でなくとも、艦とは推進方式と速力の全く異なる艦載機による艦隊防空は確実に必要。主力戦艦はこれをクリアできていない。クリアできていない戦艦を太陽系圏外に一歩でも出してしまえば恰好の的にしかならないだろう。

 ただ、建造時期を考えてみて欲しい。ガミラス戦ないし復興の途上という最もデリケートな時期に主力戦艦は生み出されたのだ。防衛軍司令部の性能要求は恐らく戦闘能力はガミラス艦を上回ることが最低条件に近かっただろうし、ヤマトを参考にすれば容易にそれを上回れるだろう。設計図を一定程度流用すれば、設計期間も簡単に短縮できるだろう。

 ともかく地球を守る強力な盾を早急に仕立てなければならなかった。


 

 主力戦艦に求めらる能力と、当初から省かれたであろう能力は次の事が想定できる。

 1、ヤマト以上の長射程砲を最低でもヤマトと同数の砲門数
 2、ヤマトと同等の機関
 3、ヤマトと同等以上のレーダー等の探査能力
 4、艦載機運用力
 5、パルスレーザー砲・ミサイル・魚雷

 

 これらの設計はヤマトをベースとして技術革新を行えば実現できることと、ヤマトの設計から単純に削除すればいいだけのものとがある。

 1と2と3はヤマトの設計をベースに多少の技術革新で一発で解決

 4は単純に艦載機運用機構を削減するだけ。資材も軍人の母数が不足している以上、専用の艦載機など運用できるはずがない。舟艇を少し載せられればそれで十分。

 5に関しては、主力戦艦は波動砲を要としてショックカノンを主軸にした戦闘を想定する。太陽系圏内であれば、敵航空戦力は味方航空戦力に対処を任せればそれでいい。パルスレーザー砲は不要。一部誘導弾はヤマト舷側のミサイルランチャーを半外付けにして艦内容量を食わずに統合・設置。

 

 これらに加えて、元が移民船だった(かもしれない)ヤマトには必要だったかもしれない展望室も当然削減。無きゃ無いでいい第三艦橋も同じく削減無駄を徹底して削り、必要な能力だけを付与し、数を揃えやすくした。太陽系圏内という“内海”あるいは“沿岸”地域を堅守するための戦艦としては十分すぎるスペックではないだろうか。

 ヤマトほどの高性能艦は必要ない――むしろプロットに外れた艦として、存在自体が無駄に近い。

 

 

 

 

 防衛軍新プロット
 主力戦艦の限定的な能力設計で問題になるのは地球連邦が勢力拡大を指向した時である。“内海”のみを焦点に据えた戦闘艦である主力戦艦には艦載機が運用できない。自前の航空隊がないのにパルスレーザー砲がないのは痛い……。

 しかも、地球が保有するのは高々30程度の戦艦と80程度の巡洋艦だ。全艦拡散波動砲搭載艦であることは大きな戦力になるのであるが、広大な宇宙空間で果たして強力な軍勢と言えるだろうか。いくつかの遠征艦隊を仕立てた時、一体どれだけの戦力になるのだろうか……

 

 

 ガミラス帝国は冥王星前線基地だけでも数十の戦闘艦を配備していたし、銀河系方面所属の一艦隊でしかないドメル艦隊は一時期3000隻もの大艦隊だった。要塞も多数を擁し、地形やビックリメカをも利用した多彩な攻撃手段を持つ。

 

 大帝星ガトランティス常に数十の戦闘艦を集めて艦隊を編成、これの複数の連携を以て任に当たらせている。また、特務艦隊的な様相のものを除き、基本的に空母を同行させていた。大体、一隻一隻がやたらに巨大で準決戦兵器を積んでいる強力で凶悪な艦艇ばかり。数としては、バルゼー連合艦隊400隻が前衛艦隊としての目安か。

 

 暗黒星団帝国は中核たる“航空戦艦”ガリアデスやプレアデス、その盾の如く多数の巡洋艦護衛艦を配した大艦隊を仕立てた。しかも第一機動艦隊は方面司令部たる自動惑星ゴルバと連携を取って活動していたし、地球に来襲した黒色艦隊もまた、後方のゴルバ型浮遊要塞などとある意味で連携を取っていた。

 

 ボラー連邦は辺境惑星ですら多数の戦闘艦を擁し、本国主力艦隊はさらに上の何百隻もの戦闘艦を容易に集結させる。しかもコスモタイガーの攻撃がいまいち通用しないほどの堅牢さを持つ。個艦は能力が全て限定的だが、それをカバーし得る数を用意できるのがこの連邦。構成国にはモンキーモデルを渡す鬼畜っぷりも見どころ

 

 ガルマン・ガミラス帝国は確かに3桁を超す艦隊というのは中々お目にかかれない、意外と少数精鋭な艦隊編成だった。しかも気合で何とかしようとする節がある。ただ、ガミラス時代からのビックリメカへの注力は変わらず特殊戦闘艦艇を多数建造。しかも割と平気で惑星破壊ミサイルをぶっ放してくる。要塞や拠点となる惑星を確保して勢力拡大するのも特徴的。

 

 ディンギル帝国のみ、性格が異なり――母星を失ったこの国は全力を以て地球を征服しに来た。地球のそれと同じように事実上の重巡洋艦ないし装甲巡洋艦であるカリグラ級や戦艦たるドウズ級による砲戦艦隊と、水雷艇のみの水雷戦隊、空母一隻からなる機動部隊を保有する比較的勢力の小さい国家だ。実際、ボラー連邦とガルマン・ガミラスとの戦闘にも顔を出さなかった。その程度の国であり、ある意味で地球の写し鏡。どれも限定的な能力で数も地球と大して変わらない

 

 

 以上からわかるように領域を支配できる国になるには数が必要

 数が用意できるならば、中途半端な万能艦より何かしらの能力に特化させた艦の方が具合がいい

 数が用意できないのならば、一個恒星系に留まらざるを得ない。数が用意できないならば、小さな艦隊の能力を充実させ、それを最大限生かせる戦闘プロットを立てる必要が有る。適切な戦力育成に成功すれば恒星系を堅持することが出来るだろう。

 とはいえ、一個恒星系だけでは確実な生存圏の確保には至らないのも事実……。

 

 元来一個恒星系に留まらざるを得ないレベルの国家が、仮に外洋進出しようというのであれば――個艦能力を出来るだけアップさせねばなるまい。

 

 

 

 地球はその存立を確かなものにするためには、勢力圏を拡大しなければならない。

 その為では主力戦艦では能力不足……

 

 

 

 新戦艦の登場

 アンドロメダの登場は、地球防衛軍の作戦方針というか、地球連邦政府の方針の転換と言えるかもしれない。


 アンドロメダ進水式で大統領は、何を勘違いしたのか地球は宇宙の平和を守るリーダーと宣言した。他勢力とまともに外交関係を結んだことすらない地球が、太陽系圏内にとどまっている程度の勢力が宇宙のリーダーなどというおこがましいにもほどがあるというか、大言壮語も甚だしい。

 しかも、この発言は考えようによっては平和を大義として地球の勢力圏拡大を狙うものという風にも取れる。

 

 アンドロメダの性能は、主力戦艦で示されたプロットに“遠洋”戦闘艦であるヤマトの要素をプラスした設計である。つまり、単艦でもある程度の活動が行える強力な戦闘艦だ。

 現状の地球に必要な戦闘艦かといえば、先ほどから述べて来た内海用艦隊としては過ぎたる物と表現できる。当然、将来的な事を考えてそのプロトタイプであればいつか登場した艦であることは間違いない。艦が艦載機運用能力を持てば、基地航空隊と合わせて強力な航空戦力になるし、場合によっては惑星の基地の全体をある程度削減して最も有望ないくつかの基地に注力することもできる。

 そして、他の星系への進出にも大いに役立つだろう。空母と組み合わせればこの上ない戦力となる。


 単純に、地球連邦が植民星を経営できるか極めて疑問である。それは別として、他星系への進出を考えた場合、建造中の主力戦艦では力不足であることは明白である。開拓した植民星の防衛には当然役に立つだろう。基地を中心とした影響圏内での戦闘が主な役割なのだから。しかし、アンドロメダや、ほぼ同等のスペックをもつ僚艦と共に他星系へ突入して作戦を行えるかは疑問。まして、単独行動や主力戦艦を集めただけの艦隊では心もとない。


 つまり、主力戦艦は時代遅れの戦艦であるのだ……

 


 イギリスの戦艦ドレッドノートは単一口径の主砲だけを乗せた、敵艦を一方的に叩き潰す事のみを使命として設計された革命的艦である。

 敵艦との戦闘について、日露戦争中に砲撃戦の方法論が大きく変わり、速射砲の進化で一舷射撃(砲の種類の如何に関わらず、敵に指向した舷の全砲を指定した敵艦に浴びせる射撃法)に疑問が呈され、他方マジの独立打ち方(各砲が砲手の任意のタイミングで砲撃する事)では効率が悪いという事が判明――というよりも確定。

 結果、艦橋で出来る限りの観測と情報提供と指示を行い、同一口径砲(事実上砲塔ごと)の斉射をまとめて行うのが一番効率がいいと結論付けた。どれか一つ、基準砲を定めてその砲に対するデータを他の方は修正して利用するという方法とか。多少の改良の寄りはあっても、大体一つの目標に砲を集中できるのならばその方が良い。

 フィッシャー提督はそう考えた


 「だったら、最初から口径を統一したらいいんじゃないのか」
 彼の頭の中の悪魔はそうささやき、彼はそれを設計に反映した。そうして誕生したのがドレッドノートである。

 

 何が革新的なのか。

 ざっくりいうと単一で多数の砲を一元的に管理して射撃する斉射を効率的に行うためだけの設計。この割り切った艦の性能、砲塔配置が革新的なのだ。

 砲口と口径が一致していれば位置の差で多少はズレるが、殆ど同一の射程を確保できる。敵よりも多数の砲を集中させられれば当然、アドバンテージになる。そのために多数の砲塔を積みこみ、無意味ともいえる中間砲を廃し、一応接近戦の為の副砲を備えた。

 

 このドレッドノートは以降に建造される戦艦の主砲について基本的な考え方を方向づけた。

 


 このドレッドノート誕生により、割を食った戦艦は数知れない。
 前半に就役した艦こそ先立って建造されたが、後半の艦はほとんど同時期の建造である前弩級戦艦キング・エドワード7世。もっとかわいそうなのが準弩級戦艦ロード・ネルソン級。こっちはドレッドノートのせいで建造が後回しにされて、建造中に時代遅れのレッテルを張られてしまった。これをタイシップとした薩摩型戦艦もあおりを食って旧式艦呼ばわりだし、リベルテやらダントン級も当然お呼びでは無かった。南米の軍事国家が買い付けた戦艦群も同様。

 

 現代でも、同様の事例はある。

 例えば――アドミラル・グネツォフを改修したに過ぎない遼寧はどう考えても時代遅れ。まや型もベースはこんごう型とそう変わらないし、あきづき型あさひ型もベースとしてはむらさめ型と大して変わらないため、時代遅れという言い方も可能。クイーン・エリザベス級も十何年も前に持ち上がった新規空母案をほとんどそのまま建造したに過ぎない。アーレイバーク級なんて一体何年……フライトⅡAリスタートとかフライトⅢって何だよ……。


 つまるところ、生まれながらにして時代遅れだの失敗作だのと言われてしまう船は結構あるという事。悲しいけど。

 

 
 アンドロメダ進宙式での大統領の高らかな宣言は地球の方針を拡大へと変更する一種の契機であろうし、当然建艦方針もアンドロメダを基準にした攻撃型の万能艦(一隻でダメなら複数隻で能力を補完)の建造に踏み切るだろう。ズォーダー5世大帝もそれを看過していた。
 アンドロメダの登場はその先鞭をつけるものという見方もできる。

 だとすれば、主力戦艦は30隻余りを建造し、地球の防衛に寄与したものの、ほんの1年余りで旧式艦のあつかいを受ける可能性が出て来たのだ。
 何と哀れな……


 

 主力戦艦、その活躍

 さて、活躍はどうだったか。


 さらばでは密集隊形によってデスバテーターの襲来に応戦、これを全滅に追いやった。しかし、空襲には耐えたものの潜宙艦の攻撃には対応できず、損害を負って落伍艦を出してしまう。しかし、第6遊動機動隊を撃破直後は相当数が残存、アンドロメダと共にマルチ隊形を取って白色彗星を迎撃する。

 だが、残念ながら力及ばず、ほぼ全艦が吸い込まれる結果となってしまった。


 ヤマト2では、より多数がより多彩な運用をされていることが判明。分艦隊の旗艦任務等を請け負い、地球艦隊を構成する中核的艦船としての位置を見せつけた。

 土星決戦において主力戦艦の一隻は前盾をクリーム色に染め上げ、ヒペリオン艦隊旗艦として参戦。シリウス方面軍の戦列かく乱を狙ったが、タイミングにずれが生じ主力との連携が全く取れなかった。結果、衝撃砲の幾度目かの直撃で爆沈。他方、土方司令率いる主力でも、火炎直撃砲の直撃で爆沈するなどの損害多数だった。

 が、反転反撃に際しては盛んに砲撃を加えて敵艦隊を僚艦と共に全滅させることに成功した。また、白色彗星のワープアウトに際しても出力のおかげで損害なくマルチ隊形を展開、ガス体を取り払う事に成功した。が……力及ばず全艦がフレームアウトしてしまった。

 

 面白いのが派生型として宇宙空母だ。これは別の時に記事をつづりたい。

 

 

 主力戦艦の悲哀

 主力戦艦は見た目や性能とは裏腹にあまりパッとしない立ち位置であり、画面上の活躍もアンドロメダには及ばない。考察してみると、優秀な艦ではあるがアンドロメダの登場により旧世代艦と判定せざるを得ない

 基本的に、妙にリアリティがあるぐらい歯がゆい戦艦。たとえるなら改装してもらい損ねたリベンジ級戦艦……


 しかしながら、あの独特の愛嬌あるデザインの魅力は如何ともしがたい。また、要求された基本スペックが高い為、元来は完結編までの時代に通用すると言ってもおかしくはない設計だ。


 しかし、理解されなければ意味がない。防衛司令部の方針が政治家や御用学者によって簡単にひっくり返されるのは如何ともしがたい。専門家とは言い難い文民によるシビリアンコントロールは、エゴの強い夢想家現役武官よりもタチが悪い面がある。

 もっと言えば、軍需産業だのの票や資金を持った民間に政治家や軍が弱いというのはどの世界でも共通であり不安事項だ。さらに言えば、時たま登場するビジョンの無い無意味な戦力拡張を行い、名を残したいだけの害悪な政治家など……不安要素は尽きない。実戦の意識の薄い高級将校や事務方も信用ならない。
 こういった無能というか、弊害を軍艦がかいくぐれるかといえば……答えはNO。優秀であるとか無いとか、関係ない……。


 仮に普通の感覚の持ち主が存在していたならば、きっと主力戦艦の有用性に気が付いただろう。巡洋艦駆逐艦といった補助艦艇も有用だが、しかし元来の海防戦艦や砲艦として主力戦艦を残しておいたのであればヤマトⅢで見たような惨事は免れたはず。主力戦艦の強力な火砲で、いざとなれば波動砲で十分激激できただろう。

 しかし、主力戦艦の価値を理解し得る艦長や司令官は――都市帝国の前に艦と共に全員戦死してしまった。

 これが主力戦艦、最大の不運と言えよう。