第二期地球艦隊・パトロール艦――多芸無芸――
皆さんは、古代進の乗艦以外でそんな艦が印象に残っているだろうか。
じみ~に記憶に大きな爪痕を残している艦と言えば、パトロール艦を挙げる人も少なくないのではないか。
何といっても護衛艦の次に登場した地球防衛軍の新鋭艦であり大型艦だ。しかも撃沈された状態での登場、ヤマト艦長着任後に冷静沈着な指揮を見せつけた土方竜が旗艦として第11艦隊を率いていた戦闘艦である。「この艦では奴らには勝てない」のガトランティス戦役Verともいえよう。
ヤマトクラスの戦闘艦でなければガトランティス艦隊には勝てないだろうという印象を視聴者に刷り込んだのがこのパトロール艦である。
基本情報
――データ――
艦級名:不明
全長:150メートル(ないし180メートルから190メートル)
全幅:26.6メートル(ないし31.5メートル) ←アンテナ込み、実質21メートル
自重:5,900トン(ないし23,500トンから25,000トン)
主機:波動エンジン
武装:艦首拡散波動砲1門、連装(15.5センチ)衝撃砲3基、舷側3連装魚雷発射管4基、ミサイルポッド4基
搭載艇:脱出カプセル(内火艇)ないし連絡艇(『ヤマトIII』第18話)
着艦口は艦橋前方にあるオランダ坂の下付近の艦体部分。
カラーリングは複雑で、波動砲口と艦中央部のインテーク口、艦橋及び回転アンテナと主砲が白く塗装されている。また、艦体はグレーと濃紺で上下を大別されている。後部艦体中央凹部のリングは黒く塗られ、アンテナ先端が赤く塗られているのも特徴だが、これらすべては第11艦隊旗艦〈ゆうなぎ〉限定のカラーリングだったりする。
第21話でヒペリオン艦隊を構成する汎用艦は、主砲と艦中央部のインテーク口、艦橋の白色塗装は廃止され、艦橋の上部脱出ポッド?だけが白く残る。
劇中では〈ゆうなぎ〉が第11艦隊旗艦として登場したが、艦級名は結局不明だった。一方海外では〈Konigsberg〉というクラス名があるらしい。個艦名かもしれないがそこまではよくわからん。
その役割――防衛軍の運用という意味。映画の中における演出という意味ではない――は何だろうか。無論、パトロール艦=哨戒巡洋艦と英訳されているように、偵察や哨戒が任務なのだろう。しかし、劇中では割と普通に艦隊旗艦というパトロール艦艇とは異なった運用をされていた。ここを考えないうちは、艦の全長設定が妥当であるかどうかの判断や劇中の描写が妥当であったかは判断できない。
その前に、軽量級巡洋艦についておさらいしておきたい。
軽量級巡洋艦
厳密な艦種ではなく、トン数が軽いとか装甲が薄いとか武装が少ない――そんな非主力の巡洋艦をざっくりまとめたイメージとしての艦系だ。
軽量級巡洋艦の代表格は哨戒巡洋艦つまり哨戒艦というのは領海や沿岸などの防衛や平時においては主に救難活動に当たる。類似に通報艦と言うのもあり、こちらは更に戦闘から遠ざかった艦種といえよう。通常の巡洋艦や装甲巡洋艦とは異なる存在だ。
これらは、いつでもどこにでも出動できるように高速である事や高い航洋性を兼ね備えた戦闘艦で、あんまり攻撃力を重視されない傾向にある。要は防護巡洋艦の亜種みたいなもの。ただ、防護巡洋艦にすら防護のレベルが達していないものもある為、一概には言えない。
無論、哨戒艦というくくりにのみ焦点を置いた場合は違った見方もできる。つまり、国防という意味での海防任務に重きを置いた場合は、通常の戦闘艦に匹敵する戦闘力を有した艦であることも多い。かつての第一線の戦闘艦が旧式として実戦に向かないとなった際に内地防衛に回されるという事もしばしばあった。海防艦である。
現代において哨戒専用の艦艇を建造する場合、重武装な物はあまりない。コルベットとかフリゲートと呼ばれる。
確かに、もっとレベルの低い、小型高速の舟艇なんかも沿岸で運用される。これらはミサイルみ高速艇とか呼ばれて高い攻撃力を有するが、事実上の魚雷艇で警備と言うより迎撃任務が主。しかもミサイルを打ち尽くせば後はただのボート……。機銃しかなければ水上警察の警備艇と変わりはない。
一方、普通の哨戒艦はヘリを積んだり揚陸艇を積んだりと哨戒や侵攻阻止の手数を持ち、武装は軽量で正面切って敵の外洋型戦闘艦と刺しでやり合う能力はないが、長い間同一ないし近接海域で粘ることが可能。単艦じゃ危険だけど。
また平時の海上警備という面においては、白バイ隊とヘリ部隊に移動所轄署の機能を合わせたようなもので、多様な任務に耐えられる。これ、結構重要。
一方で偵察巡洋艦というものがある。
何となくパトロール艦に抱いていたイメージはこちらだと思う。高速と高い航洋性で遠隔地を含む領海を哨戒し、あるいは敵地に隣接した場合は足を延ばして敵情を探るのが偵察巡洋艦の任務だ。
が、高速という事は軽装甲になりがちという事で、基本的にはやはり防護巡洋艦の亜種の任務特化艦。攻撃力には注意を払ったが、基本は高速に重きを置いてあんまり航洋性を重視しなかった。つーか、いざとなったら駆逐艦を率いて敵に襲撃をかける戦闘スタイルって……
この時代、技術革新の嵐とアイディアの嵐で各国海軍は手探り状態だったといっていい。ほとんど同じ任務なのに別々の艦種が存在したり、絶滅したはずの艦種が復活したりと極めてややこしい。
これら偵察巡洋艦をいくつか艦級を建造・運用した結果、賢明なる大英帝国海軍は「普通の巡洋艦でいいじゃん。何なら駆逐艦大きくしようか?」という答えを得た。
前者の答えが後に軽巡洋艦になる。航洋性に重きを置き、我慢できる程度の速力を付与したのが巡洋艦。足回りは駆逐艦、胴体は巡洋艦、攻撃力は折衷。航洋性があってそこそこの武装があるから駆逐艦の襲撃程度ではびくともせず、偵察も通商路確保も可能な遠隔地派遣艦だ。
後者は嚮導駆逐艦。大型の駆逐艦で司令部施設を多少載せられる。正直、単純な大型駆逐艦としか表現し様がなく、嚮導という言い方を公式がするかしないか程度。
他方で、偵察任務特化型。つまり偵察巡洋艦の発展形――と考案者は明言してたのに周りが無視して大惨事――として生まれた艦がある。それが巡洋戦艦。
戦艦並みの攻撃力で敵の警戒部隊を蹴散らし拠点へ接近して情報を収集、敵主力が動いた場合はさっさと逃げる。追いすがる高速艦にはテキトーに主砲をぶっ放して全速力で逃げる。これが巡洋戦艦。速力と攻撃力を確保するため、装甲など……。
この考え方は別に間違っておらず、強力な戦闘力を持たない偵察部隊は、敵の最も機微に触れる情報を収集することはできず、偵察部隊なのだから敵を壊滅させるべくの潜入任務などする必要はない。これを海上に当てはめただけ。歩く英国面フィッシャー提督の名案だ。英国面とは必要な新機軸を既存のモノで代用するから英国面であって、使えないものを好んで創るという意味ではない。
有り合わせで造ろうとするから変な事になるんだけど。
ここまで説明すれば、巡洋戦艦は決戦にどっぷり首を突っ込むべきではないと誰でも理解してくれるだろう。戦列を組ませて洋上を行進したとして、戦うべくはせいぜい装甲巡洋艦程度。同格相手では余程優れた射撃管制と適切な距離が確保できなければ大惨事は免れ得ない。まして格上相手では話にならない。
なのにビーティーさん、あんたって人は……。
あの充実したイギリス海軍でもこの手合いの艦艇に苦慮していた。ロシア帝国海軍でもフランス海軍でもアメリカ海軍やイタリア海軍でも同様。清や日本においては分類はしたものの、結局任務に当たれる艦艇は全部投入という――艦種関係ない作戦展開も往々にしてあった。
これで、この哨戒や偵察任務の戦闘艦の設計・建造が非常な困難を伴う事が判ってもらえただろう。
パトロール艦の立ち位置
では、ヤマトのパトロール艦はどんなものか。描写の中で合理的説明を求めてみる。それがこのブログの趣旨だし。
劇中の描写としては、イギリスが考案した元祖偵察巡洋艦の立ち位置が相応しいか。
さらばではパトロール艦〈ゆうなぎ〉が第11艦隊の旗艦として登場、ガトランティス先鋒部隊と交戦した。これはまさに偵察巡洋艦に与えられた任務といって差し支えない。また、バルゼー率いる第6遊動機動隊の出撃まで太陽系圏内でのガトランティスの活動はなく、活動開始後はすぐに土星決戦のシーンに移行するため出番がない。
だからこそ合理的な説明と言える。作品冒頭ですでにパトロール艦の役割は終了しているという事だ。正面切っての決戦にはパトロール艦は能力不足。
ヤマト2では”偵察”はヤマトが勝手に行っているため、偵察任務をパトロール艦が担う必要はなかった。また、元来は安全を確保するために運用されているのであろう監視衛星が太陽系圏内各所に配置されていたため、やはり出番はなかった。
土星決戦においては偵察巡洋艦の二つ目の効果目的である戦闘任務で登場――これは任務上快速である必要性があった為適所と言えたが……
これらの描写は、敵情を偵察し場合によっては味方駆逐戦隊と共に敵に突入して打撃を与えるという偵察巡洋艦の設計・運用に合致する。また、ガトランティスに全然敵わなかった理由としても説明できよう。
偵察巡洋艦が途中でさじを投げられたように、小規模海軍の黎明期ならば有力だが、大規模海軍に偵察巡洋艦は中途半端過ぎて不要。このパトロール艦は巡洋艦や主力戦艦の数が揃った時点でお役御免と言える。
……無きゃ無いで良いんだよね、この艦。
旗艦としての運用も、幾らか疑問が残るだろう。
仮に駆逐艦が防空任務を担い、巡洋艦が主力戦艦の砲撃力を補完し基地航空隊が直掩を行うと想定した場合、偵察艦として編入するのは自然。だが、艦隊を率いる余地が極めて薄い。当該任務を行える艦艇は幾らでも存在するのだから。
少なくとも、太陽系外縁部の防衛という危険地域での活動で火力の足りないパトロール艦が旗艦を担うのは不安。第11艦隊の旗艦という任務はそれこそ主力戦艦やアンドロメダが行い、パトロール艦には偵察艦としての役割以上のものは期待すべきではなかった。
では、駆逐艦や巡洋艦で構成された艦隊を直律する場合はどうか。雷撃力は大したことない、軽装甲であろうし砲力も巡洋艦に比べて幾らか劣るパトロール艦が果たして戦列を組めるだろうか。少なくとも先頭を切って戦場を突っ走るのは難しいといえる。素直に、巡洋艦に旗艦任務を任せた方が無難だろう。
という事は、戦場の遠いところで戦闘指揮をするほかない。
では、哨戒艦や軽巡洋艦であればどうか。
今度は能力不足が露呈する。
まずもって艦載機ナシはまずい。艦の哨戒範囲以上の哨戒が出来ないというのは“艦隊は基地航空隊と共にある”という想定があればこそ問題ないともいえるが、哨戒艦艇がそれを自ら切り捨てる選択は非常に不合理。
しかも、さらばの時点では脱出用の内火艇以外の設定はなかった……せめて偵察機の整備用スペースぐらいは設けるべきでしょう。それに哨戒艦なら舟艇の2隻ぐらいは積んでおきたいが――設定にはそれが無い。
索敵能力が高い艦艇による艦隊旗艦任務は取り立てておかしなことではないが、前線に出るのはどうしても不安。火力と防御力の低さが気になってしまう。やはり太陽系外縁部の守備は荷が重すぎたといえるだろう。
意外にも2202だとちゃんと連絡艇を積んでいるため、哨戒艦としてのセオリーは踏んでいる。ここはちゃんと評価したい。
一般配置図を示さずに設定に言及しただけというのはどうかと思うが。
瑕疵の無い反面、どっちつかずの特徴のない設計……その結果パトロール艦が、哨戒でも偵察でも能力不足になってしまった。そう説明できるだろう。
この微妙に迷走した設計でパトロール艦が現実世界に現れたとして、どれだけ活躍できるか、どれだけの任務に適応できるか、極めて疑問だ。
パトロール艦には出来れば……後方で指揮専用艦として活動してほしい。指揮戦闘艦だったならば、十分な火力と十分な通信能力と一応の物理的連絡能力を備え、力を十二分に発揮してくれるだろう。
艦載機を積め!
艦載機はこの艦の特徴となり得る――というか、哨戒にせよ偵察にせよ任務上絶対積んでおきたいのである。積まなければならない。逆に何で積んでないのか。
格納スペースは出来るだけ多く積みたい。1機ではダメ。なけなしの1機に不具合や、格納庫に直撃段があったらたまったものではない。2機は最低欲しい。連絡艇の類も含めて4機分のスペースは確保すべきだろう。21×14×8メートルの立方体を4つ、組み込まなければならない。哨戒ならば艦載機は1機でも構わないが舟艇は2隻分ぐらいは格納したい。
格納か所の候補は3か所。
1、艦橋前のオランダ坂:幅12メートルないし5.5メートル、長さ15メートル、高さ6メートル→1機がギリギリ入るくらい。
2、艦橋下の円筒部:幅21メートル、長さ22.5メートル、高さ10.5メートルないし21メートル→2機ないし4機積みこむことが出来る。
3、突き出た艦底部エアインテーク:オランダ坂とほぼ同じ体積→オランダ坂格納庫と合わせて2機
妥当な所はやはり選択肢2であろう。が、ここもエンジンを積んでいたんじゃないんですか? というすごく素朴な疑問がある。凹部前方がエンジンで、後方がスーパーチャージャーで、ノズルに直結だと思っていた。手前味噌で申し上げないが多分、これが妥当な配置だと思う。
原作設定値のままだと上半分をエンジンに取られると仮定して、2機が限界の搭載機数となる。オランダ坂を合わせて3機で、ギリギリ運用に耐えられるラインに達するか。
そこで、例の如くお節介にも全長を再設定してみたい。余裕を持ったスペース確保を試みるのは無駄ではないだろう。
数値の再設定
初っ端からちゃぶ台返しをして申し訳ないが、哨戒巡洋艦としては、実は再設定の必要性が薄いパターン。すでにギリだが、艦載機や舟艇が載せられる数値な為である。
必要性としては主力戦艦らが大型化するならば、それに合わせて大型化させればいい、と言う程度。原作設定値のままで最大3機、常用2機だ。艦載機を1機にして2機分のスペースを舟艇とすれば最低1隻は格納できる。
だいぶキツキツの設計になってしまうが、ほぼ原作通りの寸法で哨戒艦としての要求を果たすスペックを詰め込みうるのだ。何気、大型艦。
だから、数値の再設定は純粋に艦橋内部の描写との一致のみに焦点を絞る。
巡洋艦のそれより一回りパトロール艦は艦橋――の指揮所が大きいのであるから、そこを加味しなければならない。巡洋艦も結構艦橋部大きいけどね。
艦橋の指揮所は図面だのプラモだのから推測すると、奥行きが6.7メートルで横が7.5メートル。艦内描写からすれば圧倒的に狭いが、数値的にはそんなに狭くない。もっと言えば、艦橋の指揮スペースは幅は別として普通、奥行きはそんなに空間を取らない。幅広さで奥行きの狭さをカバーしているともいえるか。
ともかく、どこもかしこも奥行きを広くとるのはヤマト世界特有の現象と言えよう。
描写に合わせるならば2.5倍して――(あ、全長180メートル設定でずっと話してます。150は多分無理)
全長:450メートル
全幅:78.75メートル (フィンを含む。除いて実質52.5メートル)
自重:知らん
搭載:偵察機最大18機、舟艇4隻。
円筒部艦載機収容スペースも幅52.5メートル、長さ56.2メートル、高さが26.25から52.5メートルとずっと巨大化。オランダ坂部分も幅30から13.75メートル、長さ37.5メートル、高さ15メートルとなる。
これならばオランダ坂部分で縦横2列2段で4機積めるようになるし、円筒部では縦2列横3列3段と、怒涛の18機搭載可能になる。前にも述べた通り、オランダ坂に常用3機で円筒部に複合艇の類を複数隻搭載するか、円筒部だけで全てを完結させることも可能。搭載舟艇や艦載機の数は自由自在となるだろう。
あるいはオランダ坂分部のみを格納庫として使い、2機2隻を搭載させる――この場合はヤマトⅢで見た長官専用艦の描写に合う。
(ちなみに、連絡艇が11メートル前後の場合、ヤマトⅢで登場した長官専用パトロール艦はなんと全長が720メートル、実質全幅78メートルとなる。デカすぎないかな、これ)
この収容能力はパトロール艦の探査能力を極限まで高めてくれるだろう。搭載する偵察機も、コスモタイガ-Ⅱレベルの能力であれば、ちょっとした直掩機としても使える。つまり、この艦の任務は――
第一義的には惑星基地や艦隊の索敵範囲を超えた地点に足を延ばして敵情を収集する。基地航空隊や空母の先に展開し、軍の斥候として任をこなす。
第二義的にはアンドロメダらの代行で艦隊や方面、惑星基地の移動司令部としての機能を果たす。場面によっては後方支援、艦隊同士の連携の結束点。
特殊任務としてその圧倒的な収容能力を以て基地航空隊の護衛圏外や空母の無い艦隊の一時的な直掩。あるいは、重要艦船や負傷した艦艇等の強力な護衛。
と見る事が出来る。ベースとしては軽巡洋艦〈大淀〉。艦としての戦闘能力はあまり期待せず、多数の偵察機や情報収集能力による艦隊への貢献を目的とする。
つまり、火力ではなく、情報戦において力を発揮する艦と言える。
最悪、敵に襲われた場合は、艦載機や小型艦ならば砲と偵察機を戦闘機として出して戦うか、大型艦に遭遇した場合は速やかに拡散波動砲発射して牽制・撤退。
戦い方がなんとも巡洋戦艦っぽいが。
カラーリングが 護衛艦同様、他の戦闘艦艇と大幅に異なり複雑化している理由も、上記ならば説明が付けられるだろう。通常の戦列を組んで戦う戦闘艦ではなく、旗艦や斥候任務を請け負うのがこの艦。特殊任務=通常の戦闘艦艇の通常の任務もこなせるが、それはあくまで特殊任務。それを視覚的に捉えさせることは決して無意味ではない。
これで、パトロール艦のカラーリングが護衛艦とも巡洋艦とも異なる理由として合理的な説明になるのではないだろうか。
すごくすごく、どっちでもいい艦
つまるところ、いくらでも合理性を説明しようと思えば出来る。いくらでも非合理的であると説明しようと思えば出来のだ。
パトロール艦は困ったことに、少し設定に特徴を加えるだけで哨戒でも偵察でもどっちでも任務に適合し得る艦。艦首拡散波動砲は敵を撃破ないし牽制するのに十分な武装。これがある限り、哨戒でも強行偵察でも十分任務をこなせる。
仮にパトロール艦が哨戒任務であれば、この艦がフリゲートという事になり連座して護衛艦がコルベットという事になる。どちらも似通った任務と性能で、フリゲートよりコルベットの方が小規模、これもまた筋が通ってしまう。
仮にこのパトロール艦が偵察任務であれば、ほんの数隻しか登場していないというのも理にかなっている。確かに太陽系は狭いとは言えない。とは言えども、そんなにバカスカ偵察艦を造る意味があるはずはない。監視衛星が存在しているのだからなおの事。だからほんの数隻で十分。
これは何と評したらよいか、反応に困る……
ちなみに、
2202ではどうだったかといえば、手ぬるい改定と言わざるを得ない。
全長188メートル、全幅42.2メートル(実質は28.2メートルよりいくらか幅広)、連絡艇1機格納と、2202では改定されている。
前に述べた通り、哨戒任務であれば舟艇を複数搭載すべきであるし艦載機も舟艇とは別に必要である。まして、広大な宇宙空間を戦場とするパトロール艦にとって1機の連絡艇など……有用性に疑問が生じる。
また、第七機動艦隊がエンケラドゥス守備隊の目の前にワープアウトしたのは不運としか言いようがないが、はじめっからパトロール艦を視認できる距離で前方に置く艦隊陣形は疑問符が付く。
恨みがあって揚げ足を取る――という側面もあるが、論理的に考えて正直合理性に欠けるのが2202のパトロール艦であり、その運用。旧作のパトロール艦と同じ、中途半端……しかも悪い事に拡散波動砲ではなく、小型の収束波動砲搭載。たった一発で複数の敵艦を撃破できるのが拡散波動砲の最大の利点であり、それは小型と言えども敵の戦闘力を削ぐ程度には威力があるだろう。逆に、拡散波動砲を搭載しなかった合理的な理由を知りたい。
言っちゃ悪いが(正直、悪いとは思っていない)詰めがあまり甘いリファインだったと思う。
結語
さて、パトロール艦は極めてもどかしい艦である。
合理的な理由は付けようと思えばつけられるのだが、設計に軸足を置くと描写が一部説明できなくなる。描写に軸足を置くと今度は設計が要求を満たせていないことが判明してしまう。しかし、全体で見れば何となく説明が出来る。でも、説明しきれない。
これは、ややもすれば建艦政策の不一致という政治に落とし込むことも可能。政治闘争として描写以上に掘り下げるか、もっと感覚的に純粋にヤマトを楽しむのか、もしくはご都合主義として切り捨てるか。
ヤマトファンの楽しみ方によって、評価や立ち位置が変化する艦なのかもしれない。