第二期地球艦隊・巡洋艦――砲雷専門艦――
巡洋艦はコアなファンの多い艦だ。
2202に登場しなくてブチ切れたファンも多かろう。旧メカコレは抜き甘かったりと結構酷評だったり、そもそも劇中でも散々な目にあっていた。
そんな巡洋艦を考察してみたい。
――データ――
艦級名:不明
全長:180メートル(ないし190メートル)
全幅:31.9メートル
自重:6,000トン級(ないし25,000トン)
主機:波動エンジン
武装:艦首拡散波動砲1門、連装(20.3センチ)衝撃砲塔3基、舷側3連装(20.3センチ)衝撃砲塔2基、艦橋後部連装パルスレーザー砲2基、艦尾8連装重火器、舷側下部4連装魚雷管2基、舷側上部3連装魚雷発射管2基
カラーリングは2色が基本。グレーをベースとして波動砲口、主砲とインテーク部とノズルコーンの先端が白に塗装、さらに艦後部中央凹部のリングを黒に塗装している。また、艦橋と回転アンテナは白く塗られている。
色違いに第21話に登場した、土方総司令揮下の巡洋艦の数隻に前部艦体が緑がかった濃紺で、白塗装が省かれ、波動砲口と前部インテークがクリーム色に塗られて、更にノズルコーンは不明瞭だが黒っぽい護衛艦的塗装の艦も存在する。一方、ヒペリオン艦隊に投入された巡洋艦は多分、塗り忘れなのだろうが、ほぼ明確に主砲の白色塗装が省かれている。
艦級名などは特に設定されておらず、ただ単に巡洋艦と呼ぶ。一方で海外では〈Hood〉と呼ばれ分類はBattle Cruiserになっているらしい。
巡洋艦とは――現実の話
そもそも巡洋艦とは何か。
一つのポイントとしては航洋性、もう一つは高速運動性があげられる。任務としては通商破壊や船団護衛、哨戒であるとか植民地警護など、重量級の戦闘艦とは正面から戦う事はせずひたすら格下を地道に潰していくのが基本。
日本のような財布事情の苦しい国や、たまに現れる英国面は準主力艦級の巡洋艦を欲したが、大抵の国や設計者はハードの能力はそこそこにして数量であるとか運用法であるとかのソフトでカバーした。
現在は、任務による違いというよりも艦が大きいか小さいかの問題で種別が決められる傾向にある。
まとめると、遠洋まで余裕で行って帰ってこれて、いつでもどこでもそこそこ戦闘を行える艦。先制攻撃出来れば、敵艦を撃破できるし、失敗すれば沈む前に快速で逃げる。相手が強敵なら会敵も避けるが、格下なら喜び勇んで八つ裂きにする艦だ。
萌芽は帆船時代に遡る。快速で航洋性を維持できる程度の戦闘艦をざっくりまとめた戦い方や任務による分類として巡洋艦はあった。艦種として存在したかと言えば、それは否。蒸気船の時代においては詰める火砲が幾らか向上し、数を限定することで一門一門の能力を上げることが段々と主流になっていく。
これにより装甲の必要性と主力艦との差別化の必要性が発生してくる。
〈シャノン〉は英海軍最初の装甲巡洋艦と言われる。正確には装甲帯巡洋艦だけど。これは端っから最悪快速を犠牲にしてもいいから装甲と火力を担保した航洋型戦闘艦だ。この時代、主力艦は遠洋では満足な活動が行えないものも少なくない。結局、ネルソン級からまともな艦が建造されていくが……〈シャノン〉はその先鞭をつけたといっていい。
主力の装甲艦が大洋を駆け回るのではなく戦場にどっかりと腰を据えるのに比べ、装甲帯巡洋艦は主力艦の代わりに大洋を駆け回る。幾らか廉価な戦闘艦。
装甲帯巡洋艦は装甲巡洋艦の親みたいなもので、どちらも艦の全周に装甲を施した――戦艦よりは軽量小型安価というかなり高価で有力な戦闘艦だ。
ただ、装甲巡洋艦は主要部は更に装甲を厚く施しているため、その防御力は装甲帯巡洋艦とはレベルが違う。装甲巡洋艦は装甲に使う鋼鈑の性能が上昇し、軽量で高い防御力を実現できるようになったため、快速を維持しつつ重装甲が実現できた。ミニ戦艦と言ってもいいぐらい強力なものが多数存在する。主力艦より少し安い程度の大変高価な戦闘艦。
装甲巡洋艦は各国で運用思想が大きく異なり、日本の場合はとにかく準主力艦として火力を重視、反対にロシアは日露戦争までは航洋性を重視した設計だった。つまるところ、艦隊決戦の戦力補完か、通商破壊かに戦場を選別した結果である。どちらの戦場に対しても、ベースとしての設計は十分適合するものであり、少々性格を強調するだけでよかった。
なお、装甲巡洋艦は重巡洋艦と大して縁がない、無関係に近い存在。
装甲を主要区画にのみ施した防護巡洋艦と言うものも存在する。
装甲帯巡洋艦が速力も防御力も砲力も全てどっちつかずと判明。装甲巡洋艦は極めて質の高い軍艦だが、いかんせん高価でイギリス海軍と言えども植民地警備に多数を割くことはできない。装甲巡洋艦の性能を妥協すると、結局敵に競り負けて元も子もないからうかつに性能を下げられない。
そんな中、快速を維持する為に割り切った装甲にした廉価な戦闘艦が誕生する。これが防護巡洋艦だ。形の上では後代の集中防護方式と同じ方式。チリの〈エスメラルダ〉つまり我らが〈和泉〉が世界初の防護巡洋艦と称される。敵とは出来るだけ戦わず、警備だけが任務。しかし、敵に襲われた時は一矢報いるだけの牙を備えた、決して侮るべきではない戦闘艦だ。
装甲巡洋艦も防護巡洋艦も快速と航洋性を維持し、前者は火力を後者は経済性を重視した存在と言えよう。これで近代戦闘艦黎明期の双璧を成す艦が出揃った。
ただこの平衡はすぐに崩れる。
1880年代の速射砲の性能向上により防護巡洋艦が、主砲の大口径化によりWWⅠで装甲巡洋艦がそれぞれ戦力外通告を受けた。少なくとも同格以上の対艦戦闘には顔すら出してはならないという事態になってしまった。挙句、1922年のワシントン条約で軍艦の保有量が制限されてしまう。
装甲巡洋艦はトン数を食う癖にあんまり役に立たず、他方で防護巡洋艦は対艦戦闘には役に立たないがトン数は節約できる。……装甲巡洋艦に引導が渡された反面、防護巡洋艦には光明が見えた。
以降、新たな価値を見出された防護巡洋艦は最新鋭の装備や装甲方式を採用し軽巡洋艦として成立。この軽装巡洋艦の考え方をベースに、海軍全体の火力の穴を埋める形で重巡洋艦が発生。そのうち、兵器の性能向上によりこれら二種の巡洋艦は統合されミサイル巡洋艦としての姿を現す。
防護巡洋艦は、こうして次の世代にその遺伝子を残した、そう言えるだろう。
結局のところ、帆船時代に長距離航行というアウトラインを刻まれ、装甲と砲の力学の間で発展と分岐・衰退を重ねた艦と言えるだろう。他の艦種にもおおむねあてはまるが、一概に言えるほど単純な戦闘艦ではない。
現在では艦の排水量によるところが大きいが、それでも一応名称はしぶとく生き残っている。
巡洋艦――地球防衛軍の場合
翻ってヤマトの巡洋艦だ。
こいつは明らかに重巡洋艦。何なら巡洋戦艦といっても構わないかもしれない。
巡洋艦の装備する砲は連装砲塔3、3連装砲塔2基の合計5基12門。しかも8連装の何かしらが装備されている。えげつないほどの投射力を有することは間違いない。火力面での懸念は割合に小さい艦である為、砲がどう考えても中口径以下にならざるを得ない事。とはいえ、多数の砲を装備している事は投射力の担保になるであろうから、エネルギー供給が安定できるならば問題ないだろう。
一方で雷撃能力もえげつない。合計10門の魚雷発射管を備えているため、そう何度も機会は訪れないだろうが、接近して敵艦を射角に捕らえた場合、極めて大規模かつ有効な雷撃が行えるだろう。
唯一欠けているのは対空火器。これは間違いない。連装パルスレーザー砲が艦橋に二つばかりというのは話にならない。主砲が対空両用砲でも無ければ、デスバテーター以外には通用しないだろう。
どの艦にしても、単独で会敵は避けるべきだが、この手合いの能力特化系艦はその傾向がより強い。対空兵装が駆逐艦や護衛艦より劣るというのは、単独で外に出すにはあまりに危険。
この振りきれた設計は、理由の付け甲斐がある。
スペックの性格
まず、主力戦艦の記事でも述べたが、地球防衛軍のアンドロメダ搭乗までの基本方針は太陽系圏内での活動に限定し、太陽系を死守する事と言える。
この前提が成り立つ場合、守勢に回った場合や通常の警戒における防空は一次的には基地航空隊の任務であると言えよう。巡洋艦には単独での対空能力は皆無に近く対処できないし、航空隊の支援があれば単独や少数での迎撃は不要であるためだ。
では艦隊を、地球防衛軍を構成する艦としての巡洋艦の立ち位置は何か。恐らく、砲撃力の補完だろう。
主力戦艦は拡散波動砲と大口径主砲により遠・中距離における大きな攻撃力がある。しかし、それが近接戦闘でも有効かといえば、手数が足りない危険がある。ミサイルや魚雷も数が限られるため、2から3回使えば多分弾数はなくなってしまうだろう。まして、奇襲された場合は前方遠距離の敵と任意の方向で妨害してくる近距離の敵の二つを同時に攻撃しなければならない。
当然、火力が分散してしまう。
だから、一門でも手数を増やしたい。
射程圏内=中近距離での射撃のみを前提として警戒・砲撃を行う巡洋艦。しかも誘導弾の手数も豊富――痒い所に手が届くような、持って来いの艦といえよう。当然、駆逐艦で編成された水雷戦隊も持ち前の砲力で十分味方の援護も、共に雷撃を敢行することも可能だ。
例えるならば、日本などが求めた攻撃型装甲巡洋艦。あるいは大火力重巡洋艦だろう。戦列を補完する準主力艦としての立ち位置が、この巡洋艦ではないだろうか。
では、艦隊の防空は誰が行うか。
惑星近傍空間であれば当然基地航空隊が考えらえる。また、空母を後方に配して直掩させるという方法もある。これはどちらも航空戦力による迎撃た。
他方、火力での迎撃はどうすべきか。これは駆逐艦に任せるという案があろう。防空駆逐艦という考え方は第二次大戦頃からあり、駆逐艦やフリゲートであるとか専用の巡洋艦がこの任に当たった。主兵装は両用砲で、これは対艦戦闘も対空戦闘も出来る広い仰角と高い速射性に加えて旋回速度も当然早い小口径砲である。
正直、両用砲にも賛否があることは事実で、対艦を重視すれば弾が重くなって対空射撃に適さないし、対空を意識すれば対艦攻撃能力が低下してしまう。だから万能というわけでは無い。両用砲を用いず、高角砲と副砲をどっちも載せる例もかなりある。それは運用面でもある程度カバーできるし、するべき点だが。
ゆえに、変に両得を狙わなければ大丈夫。駆逐艦を防空重視で対艦戦闘能力を多少減じても、雷撃能力を確保できればお釣りがくる。巡洋艦の火力が高ければ、これが道を切り開く形で背後に続く水雷戦隊を雷撃位置まで連れて行けるだろう。駆逐艦の防空力が高ければ、どうしても脆弱な対空戦闘から不安要素を排除し安定的に対艦攻撃が行えるだろう。
相互補完にちょうどいい。巡洋艦は駆逐艦の、駆逐艦は巡洋艦の弱点を補い、この2艦種が戦艦の能力不足を補い。艦隊を構成する艦として巡洋艦も駆逐艦も分業出来てちょうどいいのではないだろうか。
この場合は両艦種とも一水戦的立ち位置か。護衛のプロフェッショナル。
水雷戦隊の旗艦としての能力は、日本人としてはどうしても気になるところだ。二水戦のような突撃部隊を嚮導できるかという事である。
答えは多分、出来る。
指揮能力であるとか情報収集能力は当然、パトロール艦には劣るだろが、旗艦任務を行えないほどではないだろう。単なる推測だが。
重巡洋艦が直接水雷戦隊を率いるのは過剰じゃないか、という問題もあるが重巡クラスが率いれば敵が大型戦闘艦であっても敵側の砲撃を惹きつけあるいは、砲撃によってその反撃力を封じられる。同時進行的に味方駆逐艦が雷撃を行い決着をつける、という方法がとれるだろう。かなり、損害を負いそうな作戦だが。そもそもこの巡洋艦の雷撃力も馬鹿にならないため、先制攻撃を加えて相手を多少黙らせるということも出来るだろう。まして、パトロール艦が若干ふがいないスペックなのだから、巡洋艦に代わりを担ってもらうほかない。
妙高や最上が駆逐艦と共に突撃するような雰囲気か。(やっぱりイレギュラーな気がする)
ともかく、巡洋艦は極めて特定能力特化な設計である。
また、活動域は主力戦艦や駆逐艦と共に太陽系圏内に限られるという推測は論理的であろう。
数値・スペックを再設定する
設計を改良するならばどうするか。過剰すぎる砲門数の削減ではないのだろうか。
あまり複数口径が混ざるのはよろしくない。〈永遠に〉や2199よろしく実体弾を用いるとするならば、一回り程度しか違わないのに一々複数口径(砲口も含めた広義の口径を指しています。以下、そのつもりで)に合わせた砲弾を積むとなると、一口径当たりに割り当てられる積載砲弾数は当然少なくなる。何トン投射したかの総量で敵が沈んゲーム方式ならばいいが、口径が異なれば貫徹力等が異なる為、全砲を撃てば撃沈できるという単純な話ではない。
粒子砲の類であっても、口径の違いによってエネルギー充填に差が出来てしまえばそれだけ砲ごとの射撃速度も異なる。砲戦距離も異なる。だからおおむね同じ目的ならば口径は統一すべきなのである。
口径にはそれぞれ長所と短所があり、考えなしに組み合わせると大惨事になりかねない。
これらは対空機銃の数を用意できないため、対艦と同時に対空も視野に入れなければならない。だから旋回性能を上げ、砲自体の重量を出来るだけ低減する必要が有る。砲弾を重くして対艦に重きを置くか、軽くして速射性を高めるか、この判断を間違うと使い物にならない砲が出来上がってしまう。
中口径砲は小さめな方は速射性が重要であり、上部構造物をぼこぼこにして敵の能力を削ぐ方向が一つ。とにかく、相手を砲弾の雨で圧倒する。
大き目の方は中間砲とも呼べ、これは貫徹力を重視し、格上相手だろうが同格以下だろうがぼこぼこに穴をあけて打ちのめす。主砲の補完的性格の強い砲だ。
大口径砲は当然戦艦クラスの巨大艦でなければ積めず、そうでないパターンは砲艦になってしまう。
いづれにせよ、その巨大な砲力で同格以下――つまりほとんどすべての艦種を撃沈する任務を負う。貫徹力を確保するには口径を出来るだけ大きくして、旋回速度も速射性はある程度で我慢しなければならない。だが、大質量を長射程に放り投げる事が出来、射撃性能によっては中口径砲を使用せず海戦を終了することも可能。また、砲弾によっては対空射撃にも寄与できる。
と、軍事にも兵器にも素人な私でもこれだけ口径の違いで現れる特徴を述べられるのだから、専門家ならもっと簡単かつ大量に享受してくれるだろう。
何が言いたいかといえば、砲は口径によって性格が異なり、他方この巡洋艦艦体にはバラバラの口径をそれぞれ十分な砲門数揃え、運用し得るだけのキャパシティはないという事。
ヤマト世界で主砲弾は実体でなければ無尽蔵である。エネルギー伝導管の損傷とかの緊急事態が起きなければ。しかし、口径による砲戦距離や射撃速度の違いはあるらしい。だから現実の口径による砲の性格の違いから逃れられないのだ。
しかも、切羽詰まる可能性の高い電力供給事情も加味しなければならない。唯一判明しているのはエンジン出力は確実に主力戦艦以下。下手をすれば大幅に下回るという事だが――そこまで大きな出力を持っていないのに、どうやって多数の砲を使用できるエネルギーが確保できるのだろうか……。
戦艦のそれよりも確実に小型、補助エンジンもついていない巡洋艦が、全砲を発射した場合ひょっとすると一発当たりの威力が減じたり、そもそもエネルギー不足になったりする可能性というのは思案してしかるべきだろう。
全砲射撃にエンジンキャパギリギリが付いて回るというのはどうにもマズイだろう。
多分20センチ砲ぐらいの艦砲だろうが、公式自体が設定を決めていないのだから、仕方がない。とはいえ、簡単な推測と言うか……無きゃ無いで何とかなりそうな砲の抽出は指摘できるだろう。
例えば艦首下部の主砲塔は、いらないんじゃァないんだろうか?
舷側砲も連装に抑えるとか、いっそ廃止してケースメイト式に単装砲を設置するという方法もあるのではないだろうか。艦尾のアレも4連程度に減少させる。
他方、主砲を3連装にして減じた分を少しは取り返すとか、素直に艦体を大型化して兵装も多少大型化して打撃力を担保するとか色々あるだろう。
仮に砲の数を減らした場合、連装砲塔4基8門ないし3連砲塔2基+連装砲塔2基10門となる。口径が違う以上、単純比較はできないが、倍近い全長の主力戦艦は9門の主砲を持つ。うまくいけば同等、悪くても半分の火力は維持できよう。
元来の砲門数12門から4から2門は減るが、一門当たりの確実な稼働や威力向上が出来るならば8門でも十分ペイできるのではないか。艦尾砲はパルスレーザー砲のような速射小口径砲という事にして、近接戦闘に備えるか。
懸念は他にもある。
艦尾砲も艦首側砲塔も艦橋を挟んでそれぞれ前方、後方の100度程度が死角となる。しかし、これら軸線上の砲塔は全て下方へは180度近くの大きな死角を持つ。艦底部の主砲塔は上下が反転。他方、舷側砲塔は残念ながら舷側へ艦橋鉛直方向直角に近い角度=真横から侵入した敵艦は対処できない。
この巡洋艦、まんべんなく死角が存在するのだ。
射撃管制にしてもまるっきり射角・威力・砲門数・指向可能方向の違う砲群を一個の管制システムで処理させることが合理的かは疑問。複数に分割する方法も視野に入るが、あの小さな艦体にどれだけ詰め込めるかははなはだ疑問。
仮にAIだの量子コンピュータは余裕だとしても、艦長は人間だ。まんべんなく死角のある艦では、切り捨てる方角も決め難いだろう。最適な迎撃角度も設定が難しいだろう。改修するにも装甲を分厚くするべき箇所が複数に及び、結局人間の手に余る。
ビジュアル的には舷側砲塔は巡洋艦最大の特徴だが、場合によっては活躍の最大の足かせになるかもしれない。
やはり、どうしても打撃力を向上させたいならば、古臭いがケースメイト方式にして艦の水平方向への打撃力を確保するのが一番だと思われる。結局、直上・直下方向への襲撃に対処できなくなるが。
魚雷は減じる必要はないだろう。1門当たり2発程度を予備とすれば、
42発を抱え込んで敵と対峙する。かなりの雷撃力だろう。何なら、反対に増やしてもいいかもしれない。全発射管を4連にして、更に舷側砲を日本軍風――つまり現代風な――3連装発射管にして射角を余裕で調節できるようにしても良いだろう。砲と異なり、誘導弾は発射装置をどこに設置しても問題ない。合計22門の発射管を持つ重雷装艦である。他方で砲は6+8ないし、削減して4+4に減少するが威力と速射性を担保出来れば大きな問題ではない。
これなら、外観はほとんど変更なしで一通りの不安を排除した合理的な設計に出来るのではないだろうか。
対空パルスレーザー砲が全然数が足りないのは不安だが、もとより別の艦と艦隊を組ませるから脅威は除去できる。艦載機ゼロというのはいただけない気もするが、パトロール艦と本当に意味で役割がかち合うし、やはり元から基地航空隊や他の大型艦の支援を受けるのだから問題ない。
まあ、舟艇用の作業台くらいはどこかに格納しておいても、損はないだろう。
全長は伸ばしても伸ばさなくても、いづれにせよ妥当な長さに落ち着けることは可能。と、このブログでは結論付ける。
日本の重巡洋艦は青葉型までは185メートルであった。イギリスはついぞ180メートルを超えなかったし、アメリカもウィチタ級までは185メートル程度。大体が8インチ(20センチ)砲を備えていて、である。また、現代における巡洋艦格の新鋭〈まや〉なども艦の電子戦や管制システム関連に関わる容量を170メートルの艦体の中に収めている。
まあ、彼女ら……艦橋大きいけどね。
それを鑑みると、180から190メートルだとちょっと手狭かもしれない。
主力戦艦を再設定した数値に合わせるならば、2.2倍の396メートルないし418メートル以外に選択肢はない。
これは原作設定値よりも艦橋が倍になる為、当然演算器機の積みこみは容易になる。何なら、演算器機を完全に艦内に格納して入力出力のみを艦橋のコンソールで制御する、と言う方式でも問題ないだろう。艦体拡大の必要性により説得力が付くかもしれない。
いや、180メートル設定の時点でも同じ形式の艦内配置だろうが、約400メートルの艦体であれば容量的に、今後数十年にわたっての演算器機の進歩に耐えられるのではないだろうか。艦の寿命を物理的にではなく、戦略的に伸ばすという意味で。
劇中の活躍
登場は第7話で第2、第3、第8宇宙艦隊を構成する艦艇として主力戦艦や護衛艦(らしき艦影)と共に第11番惑星へ。あるいは冥王星や天王星の基地駐留艦隊や外周艦隊を構成する戦闘艦としてその姿が見える。
ヒペリオン艦隊として参戦した艦艇は残念ながら大戦艦の衝撃砲の前になすすべなく全滅。他方、主力艦隊に参加した艦艇は隊列の乱れたバルゼー艦隊に対して、ショックカノンの威力をいかんなく発揮した。
しかし、白色彗星が突然ワープアウト。主力戦艦のそれに比べて非力だった巡洋艦のエンジンは抗えなかった。主力戦艦が損傷していようとしていまいと耐えきった反面、巡洋艦は数隻が落伍・白色彗星に飲み込まれてしまう。挙句ヤマトに追突し、シュルツ艦隊がついぞ成し遂げ得なかった、通常艦艇の中で唯一ヤマトを大破に追い込んだ戦闘艦となる。
残った艦艇はアンドロメダや主力戦艦と共に拡散波動砲を発射、ガス体除去に成功。だが、続く都市帝国の長距離攻撃に抗する手段を巡洋艦は持ち合わせていなかった。
結果、参加巡洋艦ほぼ全艦の喪失となった。
結語
主力戦艦と同様、太陽系圏内での活動が限定されている艦、そう位置づけられる。決して万能ではない能力特化型の戦闘艦。他の艦種と共にあって最大の能力を発揮する艦。少数精鋭で勢力圏を堅持するための最適な艦なのだ。
これは再登場したヤマトⅢで決定的となる。
はっきり言って、どうせ製作陣の思い付きか思い出しでⅢに登場したのだろう。
しかし、子細に考察すると意外に合理的な理由を付けられるのではないだろうか。
ヤマトⅢでは、今まで太陽系周辺以外に地球が勢力圏を伸ばせていないことが劇中で明らかになっている。しかも、強力な基地は一つも置けていないのだ。
説明するならば、ガトランティス戦役の結果、地球連邦のプロットが内向きになり、ウラリア戦役で更に人員や機材を失った地球防衛軍には外へと勢力を拡大する余力はないとするのが妥当だろう。
巡洋艦は元から太陽系圏内を堅守するための戦闘艦。ガトランティス戦役時に作りかけであったり、生き残った巡洋艦が艦隊再建のカギになるのは間違いない。一部新規に建造した艦もあるだろう。主力戦艦の再建は一旦あきらめ、差し当たっての守りとして基地航空隊や砲陣地と巡洋艦を中心とした水雷戦隊によって太陽系を守り地球復興に全力を尽くす。当然、通常の護衛任務は護衛艦に任せる。こういったプロットが想定できよう。
主力戦艦よりも作りやすく、主力戦艦と同様に能力特化で使いやすい戦闘艦だからこそ、巡洋艦がヤマトⅢで再登場できた。と、合理的な説明が出来る。
巡洋艦は、太陽系を堅持するための砲雷専門艦である。
2202なんてこの艦が一番活躍する、駆逐艦と共に巨大艦の群れに突撃して魚雷をぶっ放しまくるとか、砲雷撃戦で戦艦の前面や側面を固めてショックカノンの雨を降らせるとか、色々出来たはずなんだけどなぁ……