旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

第二期地球艦隊・宇宙空母①――武勲艦、そのスペック――

 

 

 第18話にて初登場を果たし、第20話にて中核戦力として大戦果を挙げ、地球艦隊を史上唯一の勝利に導いた武勲艦。しかしながら第21話にて僚艦や主力艦隊の幾隻かと共に白色彗星によって戦没した悲劇の戦闘艦でもある。

 これほど濃ゆい存在にもかかわらず全長やらなんやら全てぼやっとした設定しかないのが宇宙空母だ

 名称も日本では特に付けられることなく、ただ宇宙空母と呼ばれるだけ。海外ではクラス名なのか艦名なのかは判然としないが〈Lexington〉と呼ばれ、結構人気な模様である。


 基本、艦内描写で全長をおせっかいにも再設定してきていたが、今回はそれが通用しない。だって全長が判らない上に艦内描写も不十分だから。

 そこで、空母らしく艦載機の終了能力を基準として再設定してみたい。

 

 

 


 とはいえ、考察しようにもその材料が劇中のみ。しかもヤマトと比較したくともちょうどいいアングルがほとんどない。そこで、今回はフェーベ沖の作戦成功に必要なスペックから逆算するようにして数値を考えていきたい

 まず、空母としてデッドラインを設けよう。これ以下では空母とは呼ばないという最低限の艦載機搭載数だ

 


 結論、ヤマト航空隊40機は下回りたくない。

 打倒、ヤマト

 


 主力戦艦やアンドロメダの記事に書いた通り、ガトランティス戦役直前に地球は拡大路線に転じたと考えていいだろう。また、惑星間の空白地点での戦闘に主力戦艦等の限定的な能力の戦闘艦を派遣するのは多少の不安が残る。航空戦力を派遣できないという事は常に受動的な防衛にしかならないからだ。

 そこで新しい航空戦力の母艦を造る必要性が生まれる。

 積極的な防衛、或いは太陽系外への進出アンドロメダの補助や、現有戦力の機動力強化する手段の必要性。これを果たすには航空母艦が必要だ。他方、いづれの場合でも航空戦力の空白地帯へ進出しなければならない。とあれば、出来るだけ艦自体の戦闘力を上げておきたい。

 

 主力戦艦、これは高い砲戦力と何よりも拡散波動砲という最強に近い兵器を装備している。完璧に近い対艦戦闘力、この艦こそ安全なキャリアとして高い利用があるのではないだろうか。後方の戦闘力は割り切った戦闘スタイルを確立できれば、無ければ無いで構わない程度。載せるにふさわしい。

 

 

 

 運用能力はおそらくヤマト準拠だろう。他にはアンドロメダしか参考にならないが、これは戦闘データがない為参考にはならない。

 

 宇宙空母の艦載機格納スペースは当然、あの取ってつけたような後部飛行甲板を設けるしかない。元来の対艦戦闘力を残したままに艦載機運用力を付与するには、外付けをするほかないだろう。少なくとも、地球人ならこの手合いの考え方をする。

 伊勢型戦艦や〈アイオワ〉再就役案における空母化、これらはいづれも艦橋前部から艦首方向は全て戦艦そのままで、艦橋後部から飛行甲板と格納庫を設けるデザインだった。別に日本人が、というわけではなく地球人皆こんなデザインを考えがちだったりする。

 

 原作設定値で艦載機を積みこむ。

 コスモタイガーⅡの寸法は縦17メートル横8メートル高さ3メートルで、整備を見込んだ必要な空間は縦21メートル横14メートル高さ8メートルの立方体とする。容積にして2352立米。


 他方、飛行甲板は艦全長の半分弱だから仮に2/5強と仮定。だから元の艦体が全長が242だとすると120メートル強程度を占め、補助エンジンも含んでしまうが艦幅70メートルで高さが20メートルぐらいが数値としては妥当か。

 とすれば、容積は16万8000立米、71機を積みこめる計算になる。ただ、これはギチギチに詰め込めるだけ詰め込んだ数値なため、妥当性に欠ける。数値から言えば縦には8機で横には3機で2段と配して48機。別に縦5機、横5機で2段でも――何なら高さを少しプラスしてレコードの様に縦15機横5機1段の75機でも構わない。どの置き方にせよ40機から50機の間ならば余裕を持って格納可能という事だ。

 

 正直、着艦口から進入した場合、一切駐機スペースがないのはいただけない……となると、一段目を全部ないしほとんどを着艦口兼駐機場にして24から30機ぐらいが丁度いいか。それだけ余裕を持たせても、着艦と駐機が同じ空間というのは危険だろう。

 しかも、ヤマトと同じ方式の場合は平時格納庫が爆雷装備をする上で非常に足手まとい。あの立体駐車場形式でミサイルを積ませるのは簡単では無いだろう。割り切って全部飛行甲板に上げるか着艦口で積ませるほかない。

 これでは動線が乱雑になってしまい、何が起こるか分かったものではない。

 うまく管制をすれば問題ないのだろうが、心配の種ではある。しかも原作の推定設定値では。それを防ぐための方策が取り得ない……。

 

 

 つまり、危険性の排除が不十分だが軽空母クラスの艦載機運用力を持つことが十分可能という事。

 原作設定値のままでも。

 

 

 データ推測

 全長:260メートル
 全幅:60メートル
 飛行甲板長:120メートル
 飛行甲板幅:70メートル
 常用機数:24機(+補用機数6機)
 主機:波動エンジン1基
 補機:補助エンジン4基、小型補助エンジン4基
 武装:艦首拡散波動砲1門、3連装衝撃砲塔2基、6連装大型艦橋砲1基、4連ミサイルランチャー2基、対空パルスレーザー砲連装3基、同3連装2基。

 


 軽空母ないし中型空母として、30機が確保できているのは魅力である。

 劇中では5隻、実際に作戦行動をしたのは3隻。艦載機の投入総数は概算で90機だ。それなりに妥当性のある、数値設定と言えるだろう。いつ、管制失敗して能力を喪失するか分かったものではないが。

 

  とくに、宇宙空母が艦載機の“タクシー”であるとすれば、実にちょうどいい機数だし、構造と言えるだろう。

 単独で戦闘的な運用をするならば、戦闘空域ぎりぎりで艦載機を先行させてあらかじめ敵をいたぶり、撃ち漏らした敵を拡散波動砲によって粉砕する。艦載機は常に全力投入が基本で、第二次攻撃隊を繰り出しつつ第一次攻撃隊を収容し、発進後にさらに攻撃隊を仕立てると言うような事はしない。

 フェーベ沖で見たような戦闘スタイルが、この空母の攻撃的な利用。と、説明が付けられる。

 

 

 如何なる場面でも生存が期待できる、丸裸になっても大丈夫な空母。

 極めて贅沢な要求をそこそこクリアした、割り切った使い方の空母。

 この方針を満たすには、原作設定値でもスペックは十分だろう。全通甲板型にするのはむしろ、せっかくの多機能性を阻害してしまう。だから、航空戦艦の形態にした。と結論付けられよう。

 


 いや、にしても艦載機少ねぇな。

 

 

 艦載機を確保できなかったとあれば仕方がないが、それでも最大5隻というのはやっぱり不足というほかないだろう。少なくとも、完全武装したプロキオン方面軍の空母66隻を葬るのにはあまりに少ない。

 3隻最大に積んで40機とした場合でも120機故、これでは真珠湾攻撃の1/3程度にしかならない。5隻で150から200機ではやはり、このままでは全艦を集中投入しなければ航空戦力としての価値は限定的になってしまう

 直掩には十分かもしれないが、敵の大艦隊を仕留めるにはかなり苦しすぎる数字だろう。しかも、前述の全く解消されていない危険性を排除するには、どうしてもキャパシティを拡大する他ない


 とすると、2.2倍をして無理くり艦体を拡大しても、妥当性を欠くことはない。

 ここでようやく、妥当な艦全長の再設定を行う余地が出てくる。

 

 

 数値の再設定。

 以前に想定した主力戦艦の妥当な全長=2.2倍設定、460メートルの場合は、単純計算で全長264メートル、艦幅も157メートルと、十分なキャパシティがある。加えて、幾らか元の主力戦艦より大型に見える点も考慮すると、多少ならば全長を伸ばすことが可能だろう。


 まず、正規空母並みの能力を持たせるならば常用70機は割り込みたくない。最大100機は欲しい。最大70機であることと常用70機である事には大幅な溝があり、前者は70以上はすべからく露天係留となる。一方後者は100までは艦内に格納しうるという事だ。あくまでし得るという範囲だが。
 艦全長460メートル中、艦全体に対する飛行甲板は先ほど述べた通り長さ264メートル、幅約157メートルだからこの範囲内に収まるようにしよう。

  図体デカくしたから、めっちゃ簡単だろうけど。

 

 

 コスモタイガーⅡ1機当たりの格納スペースは幅広にとって縦21メートルだから機首を舷側側に向ける形で配置すれば18機分は確保できる。一方で同機は横14メートルを収容として、目いっぱいだと7機になる。取り得る階高は44メートルであるから、5段ほど収容できる。合計630機。

 これだと本当に目いっぱいで着艦口付近まで待機する機で埋まってしまう。まして、装甲等の厚みを全く考慮していないため、想定には使えない値だ。ただ興味がわいて計算してみただけ。

 ここから格納庫を出来るだけ安全にしていく作業に入る。

 

 装甲をどのくらいとるべきかは正直、不明。

 〈大鳳〉、〈信濃〉やイラストリアス級は飛行甲板を90ミリの装甲板を擁する。側面防護も100ミリほどの装甲板を以て防御に当たるし、特に元が戦艦である〈信濃〉は270ミリの分厚い舷側を持つ。装甲板だけでなく、当然甲板自体の構造も必要なため、単純に1メートルですむはずもなく格納庫天井にも装甲板を張りたい。結果、飛行甲板上と甲板下と格納庫床でそれぞれ3メートルは絶対に装甲板用空間となる。更にこの宇宙空母は駐機場を内部に設ける仕組みな為、格納庫の床と天井にも装甲板を合計2メートル張り付けたい。

 装甲で1段分が確実に埋まる。加えて側面も5メートル以上は装甲で埋まる。中空装甲なんてものを設ければ更に厚みは増えるだろう。少なくとも1列分は減らさざるを得ない。が、これで実体弾の直撃にも決して脆弱ではなくなる

 

 着艦口から連なる駐機場は当然、1段分をフルに用意したい。もう1段分も戦闘には供さない平時の整備場として活用したい。これらを戦闘中は前者を着艦に専念、後者を駐機・整備に専念させてしまえば、着艦・収容・整備・発艦の動線は非常に安定かつ独立したものになるだろう。

 

 装甲1段、駐機1段、整備1段、格納2段と割り振ることが出来る。

 当てはめてみよう。

 
 コスモタイガーⅡの機首を舷側側に向ける形で配置すれば16機分は確保できる。横列は余裕を持たせて4機。取り得る段数は2段だから1段64機、2段の合計は124機。これならば常用100機クラスのスーパーキャリアといえるだろう。

 艦体からすれば随分能力規模が小さい気もするが。

 仮に、これらの想定が妥当性を得たとすると、次のようなスペックになる。一部、キリのいい数字に繰り上げた。

 

 

 全長:530メートル (戦艦部260)

 全幅:160メートル

 全高:169.4メートル

 飛行甲板長:270メートル(格納庫部180メートル)

 飛行甲板幅:140メートル(130メートル)

 常用機数:80機(+補用機数20機)

 最大搭載機数:124機

 エレベーター:2基 

 主機:波動エンジン1基

 補機:補助エンジン4基、小型補助エンジン4基

 武装:艦首拡散波動砲1門、3連装衝撃砲塔2基、6連装大型艦橋砲1基、4連ミサイルランチャー2基、対空パルスレーザー砲連装3基、同3連装2基。

 

 これで、中型空母か正規空母クラスの能力を宇宙空母に付与させられたし、付与させるのに必要な全長を割り出せたのではないかと思う。

 無論、問題がないわけでは無い

 この想定で一番問題なのは、艦の動力機構に問題が発生した場合は一発で運用能力が無くなる事。立体駐機であるため、カタパルトまで持っていけなければ発艦出来ないのだ。

 着艦口付近の機体は容易に発艦可能だが、奥の方の機体は艦内でエンジンを思いっきり吹かすという事をしては危険。稀にあるアンラッキーショットで着艦口から敵弾が飛び込まないとも限らないが、その場合は木っ端みじんになりかねない。

 

 

 弱点としては、実際の空母でも大して変わらないが。

 

 

 艦載機運用のために
 パイロットや燃料のスペースを確保せねばならない。 

 ニミッツ級空母は8000トン=800万リットルを航空燃料として積載できる。かつての搭載機F14は約9000リットルで、現在のF18は約8000リットル。すごい実際を無視した単純計算で888機分の燃料補給が出来る為、全体に対して9.8回補給活動が出来る。現在は72機体制である為、14回は全機に補給できる。


 つまり、本気で空母にするならば8から10回は補給したい。

 余裕を持って150機想定とした場合、1回で120万リットル=1200トンが必要だ。体積でいえば1200立米である。だから8回給油のためには960万リットルだから9600立米ほどを確保したい。

 艦載機用の武装は一層の事トマホークを前提として――意味不明だけど――少し大型に見積もって2.16立米だからこれを1機当たり大体4発程度搭載する。故に1機当たりは8.6立米、おまけして10立米。150機が8回出撃できるだけの爆装・雷装は1万2000立米となるだろう。


 艦載機用の燃料と兵装で合計2万1600立米を消費――消化。
 ソース不明、自分で計算すればいいだけだがちょっとずるして伝聞を紹介すると、大和では一人当たりの床面積が3.3平米で普通の日本艦艇の1.5倍ほどだったらしい。3.3平米といえば一坪=2畳。高さを60センチ程度として寝室というか個人スペース(つまり寝床)は1.98立米ぐらいになる。

 コスモタイガーⅡは単座と三座タイプがあるが、多めの値を取れば多少多い事はあっても少なくなる可能性は少ない為パイロットを3人×150機分確保する。つまり、個人スペースを450人分である891立米を確保しなければならない整備要員もほぼ同数を確保したいため、スペースも同等を確保する。また、空母は現代では旗艦任務を行う事が多く、その際は司令部要員も載せたい故、多少多いかもしれないぐらいを用意して行う必要が有るだろう。合計で大きめに見積もって約3000立米。

 

 

 必要なスペースは総計2万5000立米――つまり、100×25×10メートルの空間を確保できればいい。64機分の格納庫を潰せば全く問題なく積みこめる別に丸々潰す必要はなく、艦体のどこかに乗組員用のスペースや航空燃料用スペースを確保できれば、格納庫の減少を最小限に抑えられる。前者も後者もシューターやポンプで送り出せばいいだけ。だから常用60の補用20は割と妥当な数値だと思う

 原作値設定でも積みこめないことはないし、大体30機設定だから1/3確保できれば十分。

 意外と大したことない容量だった。

 

 

 

 最大の困難:機関

 私にとって一番の疑問は、実は艦載機搭載量ではない。
 機関配置である。

 劇中の描写、白色彗星のワープアウト直後に引きずられて主力艦隊と舳先を並べる事無く沈んでしまった。一方で主力戦艦には損害が無く、他方で巡洋艦はパラパラと吸い込まれてしまっている。またその際、巡洋艦は無傷のヤマトを大破に追い込んだ歴史上ただ唯一の一隻となった。


 なぜこんなことが起きたのか。


 巡洋艦も宇宙空母も吸い込まれたのだから、第11番惑星で幾らか損傷しているヤマトも吸い込まれてしかるべき。しかも巡洋艦との衝突後は機関室に火災が発生して確実に推力が落ちているにもかかわらず、白色彗星の重力場から離脱に成功した。

 また、火炎直撃砲やメダル―ザ最期の主砲斉射で至近弾を受けているアンドロメダらがヤマトとそう変わらない位置を航行していたのに全く支障はなかった。


 白色彗星の重力場の強い影響範囲に宇宙空母が位置していたとしても、そんな危険な場所、白色彗星は前進しているのだからすぐにアンドロメダら主力艦隊もその影響圏に収めてしまうと考えるのが論理的だろう。にもかかわらず、問題なかったという事はエンジンノズルの形式――あるいは推力の生成方式の違いによって生まれた理由づけるのが妥当ではないだろうか。

 

 

 巡洋艦はノズルコーンを設置した特殊なエンジンノズルを有している。

 これと類似した形式の補助エンジンを、宇宙空母は備えていた。

 

 あのノズルコーン式のエンジンノズルは、中型艦以下の艦に装備されているもので、無人艦隊以降の地球艦隊は全てこの方式を利用している。沖田艦(つまり司令船225)の時代からある、多分地球の性能要求上相応しい形式なのだろう。何気、ガミラスと同じ形式。
 一方、戦艦群はみな開放型のエンジンノズルを有している。普通のロケットと同じ形式ともいえよう。何気、ガトランティスも暗黒星団帝国やボラー連邦も同じ形式。
 他方、宇宙空母は戦艦と同じ開放型のエンジンノズルだが扁平で、多数の補助エンジンを有している。小型ノズルを多数より集めるディンギル帝国の変則的なエンジンノズル形式に近いかもしれない。

 

 ここから予想されるのが、実は宇宙空母のエンジンノズルは波動エンジンとつながっていないのではないのかという事。

 箱として巨大でがらんどうであるはずの宇宙空母が、いくら艦載機を満載しても主力戦艦より重いとは思えない。

 全長として巨大で同じぐらいの艦載機を要するヤマトより、満載時の宇宙空母が重いとは思えない。にもかかわらず、ヤマトは苦労したものの白色彗星の超重力に耐えたし、主力戦艦に落伍はなかった。


 つまり、普通の戦艦と同じ推進形式であれば、あの距離の超重力には引きずられないという事。安全ではないだろうが。にもかかわらず、主力戦艦の改装をしたのであろう宇宙空母が引きずられるというのは――やはりエンジンノズルの形状を変えたのが失敗だったのか、そもそも波動エンジンに繋がっていなかったか、という事以外に妥当な見解はあまりないだろう。
 理由づけに宇宙空母が居たら都市帝国との戦いが楽になってしまうとか言う意見は却下。(STOPご都合主義)

 

 波動エンジンにつなげなかった理由は、あまりにエンジンノズル位置が下がってしまい、効率的な推力転換が出来ないという可能性がある。艦載機格納スペースは艦体にかなりめり込む形でなければ設置できず、エンジン関連部分を非常に圧迫する。ともかく、駐機場も格納庫も全て邪魔。直線でつなぐには配管を細くするか、屈曲させるほかない。

 サイドに取り付けた大型補助エンジンは先に述べたように、動力として幾らか確実性の低い巡洋艦のエンジンと同形式。

 

 

 これではエンジン出力が主力戦艦よりも劣るのは当然に近いだろう。巡洋艦より図体のデカい戦闘艦である空母が、巡洋艦より少し高い程度の出力では……白色彗星に飲み込まれてしまっても仕方がないだろう。
 貴重な航空戦力の拠点にそんな中途半端な推力形式なんてよくもまあ、と思う。

 だがこれで白色彗星に引きずり込まれた説明はつくのではないだろうか。

 


 最後に、艦容について
 先にも述べたが、艦容はそれなりに合理性があると説明できる。

 

 航空戦艦と言う発想は別に日本に限らず他の国にもある。例えばアメリカはアイオワ級を戦後に航空戦艦にしようとしたし、ジャン・バールライオン級戦艦なんかも航空戦艦の案があった。前半部を戦艦のままに残し、後半部を空母の様に滑走路を確保するという艦影・艦容である。戦艦と航空機は双方打撃力の塊であり、互いに互いを苦手とする相互補完の関係であるといえよう。これをニコイチで造ろうというのだから贅沢かつ無理のある考えだ。

  他方でそれなりの実用性のある選択肢として、航空巡洋艦というのは結構あるし実現している。例えばスウェーデンの〈ゴトランド〉や〈最上〉の2隻が航空戦艦と同様の形式で配備、それなりに有用性を見せた。他方、利根型や〈大淀〉等の艦体後部に格納庫や整備スペースを設ける方式は現在、ポピュラーな配置となっている。


 艦体の前半を戦艦とし後半を空母とした場合、載せられる機数は当然限られる。

 艦載機は主砲の爆風にさらされない場所が必要である。仮に強靭な現代の艦載機であったとしても、主砲の爆風にさらしておいて平気というわけでは無い。戦艦クラスの主砲の衝撃波をなめてはいけない。また、滑走距離が必要なため中途半端な長さだと限定的な機種の運用になってしまう。利根や最上や伊勢が好例。STOVL機があれば心配はないが、飛行甲板は耐熱などの処理を施さなければならない。

 航空戦艦はやって出来ないことはないが、だいぶ手間がかかる戦闘艦だ。

 

 

 ただ、これらの問題は2201年の技術で解決できると考えよう。例えば――


 1、主砲は強力な電磁拘束によって軌道を確保するからショックカノンの発射はその他の艦機能に影響しない。
 2、巨大な艦橋が障壁となって主砲の影響は飛行甲板に及ばない。
 3、飛行甲板に人工重力が及ぶと推測したとして、それを振り切ればいいだけだから滑走距離はほとんど必要ない。反対に、苦労してコスモタイガーⅡを垂直離陸させる意味もない。
 4、飛行甲板は駐機場として利用できるため、構造物を置かずそのままに。長さは滑走に関係ない為制約なし。高高度から“落とせば”数分間の猶予がある為揚力を得て飛行できるだろうから、大気圏内でも滑走距離ほぼゼロで発進可能。危険だけど。


 と、あの形式の宇宙空母でも問題ないといえば問題ないと強弁できる。

 メリットとしては、空母と言う元来“もろい癖に高価で攻撃の要”という弱点を極限までカバーできるという事。護衛の艦艇も少なくて問題ないし、遠距離での攻撃は戦艦並み。艦載機運用能力は必ずしも優秀とは言えないだろうが、パイロットの熟練度によってはヤマトと同等の能力が期待できる。露天係留をすればヤマトよりいくらか多く載せられるのも魅力? といえよう。
 太陽系外へ進出する場合、前衛艦隊にこの航空戦艦を編入すれば強力な砲戦能力を有した――あるいは強力な航空戦力を有した砲戦艦隊として運用できる

 

 

 航空戦艦だからこそ有用。艦前部は主力戦艦の設計ほぼそのままで使える為、主力戦艦の建造と並行できるだろう。何なら、最初期の主力戦艦をバラして作り変えるという方法でも問題ないだろう。

 能力の小さい原作推定値であったとしても、1隻40機とすれば、1隻当たりのパイロットは最大で120人。5隻合わされば総機数200機、3600人の航空戦力となる。他方、戦艦としては拡散波動砲5門、3連主砲塔10基30門が用意できる。

 つまり、5隻を集中運用して空母1・戦艦3の小戦隊と計算上は同等と言えるだろう。戦艦部隊に編入してもこのタイプであれば砲戦能力を正面に対しては少しも減じる事無く、自分で自分の身を守れるため護衛を割く必要性は低い。
 この自衛能力の高さは極めて重要だ。

 

 

 空母はちょっと前にも述べたが、脆いのがいけない。

 海自OBの中や保守派の人間にも結構な人数がDDH いずもの空母化に疑問や懸念を抱いていた。これは仮想敵国と言える露中両国が潜水艦大国であり、ミサイル飽和攻撃を意図する傾向の戦略を立てる。そもそも、強力な艦隊を叩くにはミサイル飽和攻撃以外に方法はあまりないだろう。

 元々の〈いずも〉の時点でミサイル飽和や対艦戦闘が不安であったが、対潜ヘリを下してしまうと病院機能以外にあった唯一の取り柄である対潜能力を放棄する事になる。対艦攻撃のそれも艦載機に頼り切った方法、しかも場合によっては固定機がないということは、せっかくの護衛艦をただの箱化させる事に他ならない。

 〈ひゅうが〉の甲板強化ですでに十分だし、あるいは〈ひゅうが〉の拡大した護衛艦を建造する方が日本にとってはコスパリスクヘッジ的に正しい。なんなら空母や護衛艦より潜水艦の方を増やすべき。

 

 

 しかし航空戦艦ならばこのような懸念は不要。

 もっとも、人口が大量に減ったガミラス戦後の地球でパイロットを確保できるかは極めて不明確。この懸念を乗り越えなければ宇宙空母を多数配備することは非現実的であり、一隻沈むと大惨事になる全通甲板型の強力な空母は不安材料でしかないだろう。

 結局、艦そのものの性能よりもパイロットを確保できるかの方が問題だろう。実際、フェーベ沖には3隻しか空母を派遣できなかった。

 

 

 結論としては、全通型の大型空母はガトランティス戦役前後の地球では用意できないし、必要性も低い。

 他方、航空戦艦型の中型空母ならば砲戦力を維持したまま艦隊防空や航空機輸送等の様々な運用が可能であり、空母としてでなくとも有用と言える。多分、地球防衛軍が運用する空母として航空戦艦型が一番しっくりくるのではないだろうか。

 どんなプロットにおいてでも。



 

 

 (2020/10/08 冒頭文章の一部追加 ―主に欠けていた登場話情報―)