旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

第二期地球艦隊・宇宙空母②――その立ち位置・運用――

 

 

 地球艦隊を史上唯一の勝利に導いた武勲艦。それにもかかわらず、全長やらなんやら全てぼやっとした設定しかないのが宇宙空母である。
 基本、艦内描写で全長をおせっかいにも再設定してきていたが、今回はそれが通用しない。だって全長が判らないから。そこで、空母らしく艦載機の収容能力を焦点として考察してみたい。

 

 

 仮に
 仮に、“ほぼ全通型”といえるアングルド・デッキにした場合は460メートルの艦体の容積のうちかなりの部分を艦載機収容に割くことが出来る。3階分の24メートルを確保し、後は全長と艦幅をもとに計算して……300メートル級の格納庫を設けると、機首を舷側に向けて縦に21機が3列3段、合計216機分の容積を確保できる。2段でも144機でマルチロール機をこれだけ積めるのは非常な魅力。

 超弩級正規空母と言えるのではないだろうか。
 艦容だが、PSゲーム(私やった事ないので諸兄のファンアートでしか見た事ないが)の主力戦艦改級攻撃空母を参考というよりそのまま利用するのが一番理に適うだろう。ショックカノンは長距離砲戦が出来る以上、一定程度対空砲としても使えるし波動砲も存置しておいた方が仮に敵戦闘艦に襲われたとしても安心だ。故に、艦橋を右舷に寄せて張り出させ、多少飛行甲板を左舷にも張り出させる。
 別に216機も収容する必要はないので100機分ほど削っても構わないだろう。大体、ガトランティス戦役前後という区間を区切ってしまったならば、逆立ちしたって無理。妥当なラインで常用100機、最大搭載数200機として、搭載できたはずの50機分のスペース11万7600立米をパイロットの居住区画や燃料その他に振り分ける。

 

 想定データ

 全長:580メートル
 全幅:150メートル
 全高:169.4メートル
 飛行甲板長:460メートル
 飛行甲板幅:130メートル
常用機数:100機(+補用機数:50機)
最大搭載機数:200機
主機:波動エンジン1基
補機:補助エンジン4基、小型補助エンジン4基
武装:艦首拡散波動砲1門、3連装衝撃砲塔2基、6連装大型艦橋砲1基、4連ミサイルランチャー2基、対空パルスレーザー砲連装2基、同3連装2基。
(戦斗空母のデザイン画には無いが、パルスレーザー砲を連装で飛行甲板下に10基ぐらいあっても問題ないだろう)

 

 では、“ほぼ全通型”はどこに編入するかといえば本隊に突っ込んで強力な艦隊防空任務が考えられるだろう。あるいは、前衛に先立っての予防的な空襲、前衛が打撃を与えた敵基地や艦隊を踏みつぶすための絨毯爆撃が考えられる。集中運用すれば、えげつないほどの能力を発揮するだろう。
 どちらの場合にせよ、艦載機数が確保できるかがネック。

 ここが全通対航空戦艦、どちらがより使いやすいかの決め手になるだろう。あくまで、地球艦隊に余裕が出来た時、でなければならないが。


 全通であった場合、一隻当たり200機を最大と仮定してパイロットは600人。仮に第一航空艦隊よろしく6隻を用意したとすれば、3600人が必要になる。これでは予備戦力が無くなる為、ローテーションを組む為に3個艦隊ほど用意したい。つまり、パイロットは大体1万800人が必用となる。

 アメリカ軍も空母を一個艦隊に集結させることは現代では無い事だ。だが、本気で戦争する場合、3個艦隊ほどを呼び寄せて当該国へ攻撃を仕掛ける。

 要は臨機応変な集中運用が必要。

 

 さて……艦を用意するとしても航空戦艦タイプと違い、少々工程が複雑なため工期がかかることが予想されよう。1隻失うだけで結構な損失なため、あまり前線には出したくない……

 

 

 艦載機運用のために―全通版―

 空母というものは大量の航空機を擁し、これを運用しなければならない。空っぽの機体でも飛んでくれるならば、武装を自分で生み出してくれるならば、そんなことは必要ないが……あり得ない話。だから当然武装も燃料も大量に搭載し、適宜艦載機群に補給しなければならないのだ。


 本気で空母にするならば10回は補給したい。全通設定で216機フルで積みこんでしまった場合、1728万リットル=17280トンが必要だ。体積でいえば1万7280である。しかしこれだけ積んでおけば10回以上補給が出来るのだから積んでおいて損はない。

 艦載機用の武装は一層の事トマホークを前提として――意味不明だけど――少し大型に見積もって2.16立米だからこれを1機当たり大体4発程度搭載する。故に1機当たりは8.6立米、おまけして10立米。216機が10回出撃できるだけの爆装・雷装は2万1600立米となるだろう。
 合計3万8880立米。

 

 コスモタイガーⅡは単座と三座タイプがあるが全て三座タイプと仮定。パイロットを3人×100機ないし200機分確保する。つまり、個人スペースを300人から600人分である594から1188立米を確保しなければならない。整備要員もほぼ同数を確保したいため、スペースも同等を確保する。また、空母は現代では旗艦任務を行う事が多く、その際は司令部要員も載せたい故、多少多いかもしれないぐらいを用意して行う必要が有るだろう。


 ヤマトは艦載艇が多様だったが、主力戦艦改装空母では余裕がなかった為に省かざるを得なかった。しかし、正規空母ならば多少は積んでおく必要が有るだろう。想定としては現代の空母がヘリや特殊な航空機を積んでおく感覚に近いだろう。

 ニミッツは通常の打撃力以外にも偵察や輸送にレシプロ機あるいは特別仕様機を14機、対潜ヘリ8機を上限として航空団に編入しているから。これを参考に、この宇宙正規空母も8隻分ぐらいは確保しておきたい。

 ヤマトの時にテキトーに計算した値4万8000をあてはめると……つまるところ、必要な燃料・武装・人員搭載に必要なスペースは8万8000立米となる。150×20×30メートルの立方体に相当するだろう。

 問答無用で収容可能でしょうな。

 

 

 

 地球空母の立ち位置、運用
 地球防衛軍にとって宇宙空母はどんな立ち位置であろうか。


 一つはコスモプレーンの“タクシー”つまり運び屋の可能性が言及できる特に航空戦艦タイプはこの可能性が高い。

 ずっと前提として述べて来た地球防衛軍の防衛プロットつまり、同等の敵に対しては基地を背後にして交戦し優勢な敵に対しては遅滞戦術で足止めして味方全戦力集中するというものに合致した艦と言う事。

 


 例えばガミラス残存勢力が復讐しに太陽系圏内に突入したとしよう。

 冥王星を再度占領すべくガミラスは艦隊を投入する。当然、地球は反撃すべく基地駐留艦隊を出撃させ、これを迎え撃つ。この冥王星基地駐留艦隊は巡洋艦駆逐艦で構成された快速の水雷戦隊であることが第18話で描写されている。他方、仮にガミラス艦隊があの“ドメル艦隊3000隻”に幾らかの空母を編入したものクラスだとすれば……相当な戦力である。

 冥王星基地の水雷戦隊は、敵前衛を成すであろうデストロイヤー相手ならば無双できるだろうしかし、ドメラーズクラスになると少々苦しいだろう。また、艦隊として防空力が中途半端な冥王星基地艦隊ではガミラス側が艦載機攻撃を開始した場合はかなり苦しい。


 そのため、艦隊は冥王星圏内へと退き、基地航空隊や基地の長距離射程砲(ミサイルとかロケットの事です)の援護を受けつつ反撃の機会や増援を待つ。
 だが、3000隻クラス相手に高々数十隻の水雷戦隊と高々数十機の基地航空隊や数十門の基地砲台でどれだけの事が出来るかは疑問だ。三段空母が10隻いた場合、ざっくり1000機あまりが最大で飛来するだろう。第6遊動機動部隊の航空戦力の比ではない。仮に数次に分かれて一度に300機程が襲来か。

 

 

 空自の飛行隊は1個部隊につき定数20である。

 1個航空団は大体2個の飛行隊を隷下に置き、合計40機。アメリカ空軍は昔は1個飛行隊24機体制で今は18機程が定数らしい。1個戦闘航空団は2個飛行隊を有するのが大体だから36機。どの自衛隊や空軍でも基地には1個航空団と複数の補給部隊や通信に防空隊(航空機ではなく、対空兵装を装備)を有している。

 

 

 冥王星に複数の国家――例えば英米日印アフリカ連合――が戦力を拠出したとして、4個航空団を用意できたとしよう。全く根拠はないが。計算上160機程になる。全機が上がればいいが、緊急的には半数も発進させられれば大成功ではないだろうか。だとすると、数的に言えば腰入れて征服しようとしている相手に正面から戦うには足りない。


 だが、ここで背後から5隻の宇宙空母が現れただろうか。

 空母から発進した100機あまりがガミラス艦隊を急襲した場合。別に艦隊相手でなくとも敵編隊への攻撃が出来たのであればどうだろうか。予想しない方向からの攻撃や、仮に飛来する方向が判っていたとしても挟撃されたならば。かなりきつい状況になるだろう。速い段階で170機ぐらいが戦闘に参加できれば、基地自体の損害を最小限に抑え、艦隊と基地砲台とで連携して迎撃が出来るだろう

 味方も損害を負う事は確実だが、地球艦隊の集結と冥王星軌道への集団ワープをするだけの余裕を創りだすことは可能なはず。

 

 あとはもう、全艦マルチ隊形からの拡散波動砲で一発粉砕なり、危険を冒して砲雷撃戦に突入するなりすればいい。何なら宇宙空母は全機を無理やり発艦させた後もう一度“タクシー”業務を行えば、400機を冥王星空間に輸送できる。しかる後、空母自身も自慢の拡散波動砲や主砲をお見舞いしてやればいい。

 戦闘中の冥王星を除き――月面ないし地球本星、火星、木星の4衛星、土星の4衛星、天王星海王星のそれぞれの基地に冥王星と最低限同等の規模の航空団を配備しておいたと仮定する。天王星海王星の衛星がどれだけ基地化されているのか不明だが、3つぐらいとしておく。根拠はない。


 太陽系全体で基地は17(冥王星を除く)が最小予想数と言えるだろう。

 全部で2720機。2012年の戦闘用航空機の保有数でロシアは1793、中国は1600強、アメリカは1435機を数える。そこから考えれば明らかに弱勢だが、これだけの機体を稼働させるのに8260人がパイロットで全て単座で計算したため3交代制を維持しつつ3座機だと考えると……2万4780、整備員を考えると更に倍の4万9560人は絶対必要になる。艦隊乗組員は中型艦以上で1万人ちょっとを必要とするのだが、こちらと合わせるとも結構な数になってしまう。駆逐艦護衛艦に必要な人員や艦隊の整備人員は計算から省いているため、これを考慮に入れて概算で9万人ほどか。
 ガミラス戦役直後を考えると、基地航空隊は3000機弱が精いっぱいだろう。


 さて、宇宙空母は5隻全艦必死こいて輸送に当たれば150回ほどで完了する。発艦自体は20分程度で十分だろう、1回当たり収容だ何だに3時間ぐらいか。750時間だから 31日強かかる。(1カ月くらいは弾数が保てるだろうという事が言いたかっただけで、意味のある計算ではありませんでした。すいません)戦闘がミッドウェー海戦のような丁々発止で10時間続いたとすると、うまくいって3回の輸送つまり600機運べるだろう。味方航空戦力は劣勢であることには変わりはないが、好き勝手させない程度の戦力であることは確実。

 冥王星基地にくぎ付けにして、航空戦力を以て徹底的に抵抗している間に主力艦隊を結集させて背後を襲えば、多分3000隻と言えども十分撃滅できるだろう。

 

 

 3000隻の艦隊と言うのはヤマト史上屈指の戦力であり、ボラー連邦以外にあまり類例がない。そもそも論として1艦1艦がかなりの戦力を持つヤマト世界では、例えば銀英伝の様に万単位の艦を結集させる必要はないし、集めてしまうと逆に波動砲や白色彗星、ブラックホール砲だのの超兵器の餌食になってしまう危険が生じる

 いわば、空腹のサメを前にして大出血しながら海に飛び込むようなものだ。

 別に“親居る虎穴に裸で突っ込む”でも“ワムウと影踏み鬼で遊ぶ”でも“No.30呼んだはいいが、残りライフ3桁でスタンバイフェイズを迎える”でも、何でも構わない。

 言いたいことは、巨大艦隊を集め、数に任せて突っ込むのは、自分で危険に突っ込んで返り討ち必至という事。

 殊、ヤマト世界においては意外と賢い選択ではない。まして火炎直撃砲やデスバテーターのような相手を圧倒できる兵器を擁していなければ、話にならない。

 


 だから、地球を落とすには拡散波動砲も通用しないほどの想像を絶する大艦隊を派遣して踏みつぶすか、地球連邦に正式に宣戦を布告したのちに艦隊決戦を誘導する必要が有る。全地球艦隊が集結している地点に奇襲攻撃をかける場合以外は、太陽系圏内において敵側は攻撃側にもかかわらず戦力如何に寄らず常にイニシアチブを地球に握られ、艦隊を繰り出しても時間がかかればかかるほど地球艦隊が集結するため勝ちづらくなる。

 この有利な条件を最大化するのが宇宙空母の役割、この宇宙空母だからこそ非戦闘区域から戦闘空域へ艦載機を輸送するという作戦が発動可能なのではないだろうか。

 

 大戦中、21ノットとあまりに低速だった(だって機関を換装しないで客船時代のままだったから)大鷹型航空母艦は、船団護衛任務を行ったが一方で航空機を大量に南方へ運ぶ輸送艦の役割も果たした。
 つまり、発想として空母を輸送艦扱いするという事はあり得るという事。


 

 あるいは、素直に攻撃兵器としての性格。
 アンドロメダの記事で述べたが、地球連邦は太陽系外への進出を希望している節がある。この際、艦載機運用能力を持った艦は必要不可欠だ。

 コスモタイガーⅡは極めて高性能な戦闘攻撃機であることに間違いはない。これを用いることが出来れば、水雷艇は当然不要だし、駆逐艦……は駆逐艦なりの任務があるから別として、巡洋艦が無かったらないで十分ということになろう。たとえ太陽系圏内限定の活動域な主力戦艦を太陽系形外に引っ張り出すことがあったとしても宇宙空母が一緒ならば安心であるし、空母打撃群を形成した場合、空母自体が対艦攻撃力を向上させてくれる。

 艦載機“タクシー”よりも大いにアグレッシブな運用であるし、必要に違いない。
 つまり、地球の勢力圏拡大には不可欠なのである。

 

 全通にすれば集中運用してもしなくても航空戦力としてのスケールメリットを確保できるし、航空戦艦ならば火力を担保出来るためあらゆる場面に投入しやすい。どちらの形でもなんでも利用価値はかなり高い。

 なかったらなかったで対応出来るが、保有・運用しているという事は地球にとって取れる作戦の幅が広がるという意味では非常に有益であると言える。

 

 

 

 では、なぜ後に続かなかったのか。
 度重なる戦乱で人員が確保できなかった可能性が一つ。

 特に、我らガトランティスとの戦闘の後は先に概算した艦隊人員2万人ほどを失い、基地航空戦力も〈さらば〉でも〈ヤマト2〉でも相当数を喪失している。何より市民は恐怖を覚えただろう。パイロット数が確保できなかったとしても不思議ではない。


 第2に、勢力圏を拡大する方針を転換して、太陽系圏内を死守する従来方針へと戻したという可能性が考えられる。

 ガミラスやガトランティス、ヤマトからの報告で暗黒星団帝国と接触し、宇宙に多数の文明が存在していることが判明したのである。わざわざ外宇宙まで征服事業をして反感を買って逆襲されるより、全戦力を太陽系に投入してくまなく守りを固める方が、人類の存立に寄与するだろう。

 

 つまり、宇宙空母の必要性が薄れたのである。他の艦の方が緊急性が高まった、総言い換えることも可能だろう。
 必要のない艦を造って遊んでいられるほど暇も余裕もない。仮に再度建造されたとしても、1桁以内の隻数になるだろう。

 

 

 
 色々脱線してしまったが、宇宙空母は見た目や歴史上存在した航空戦艦の失敗――航空巡洋艦は成功しましたね――のおかげで固定概念的に有用性に疑問が呈される。

 ところが、特にはるな型護衛艦なんかは同じような艦容であるが、能力の不具合は聞かない。他の現代艦艇もかなりの艦の艦尾はヘリポートだ。失敗の他方、これら成功した“先達たち”もいるわけで、宇宙空母も同じように活躍が可能と思われる。

 

 ただ、トラウマ並みのほとんど敗戦であるガトランティス戦役において、なすすべなく白色彗星に飲み込まれたのは評価的に極めて痛い。

 パイロットも大量喪失してしまった。この状況では宇宙空母はたとえ新造されても活躍する環境を提供はされないだろう。また、今後人口が増えて兵員が増えない限りは決して艦載機に回す分のパイロットは確保できない。

 結論として、完結編以前の地球防衛軍ではガトランティス戦役時のみが、宇宙空母の運用できる環境だったといえる。
 復活編は登場し十分活躍できる環境が用意できていたはずだが、しかし大人の事情か大人の記憶力の問題で登場できなかった。

 

 

 頑張ったのだが、哀れ……

 ただひたすら哀れな、第二期地球艦隊のあだ花と言えるだろう。