旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス兵器群 不遇な機体たち―T-2陸上迎撃機―

 

 T-2が何のことか、2202から入ったファンは丸っきり何のことかわからないだろう。さらばを最後に見てから相当な年月が経っているオールドファンは喉元まででかかって――結局出ない。ヤマト2しか見ていないオールドファンもまた、2202ファンと同様に丸っきり何のことかわからないだろう。

 

 T-2とは、ガトランティスが派遣する惑星表面の侵攻ないし守備を司る格闘兵団に配備された陸上迎撃機である。

 

 しかし、T-2は正直全くいいところなしの戦闘機である。ザバイバル率いる突撃格闘兵団ヘルサーバーの唯一の航空戦力を成していた。が、殆どと言っていいほどコスモタイガー隊に敵わなかったのである。
 そんな機体だ。マニアか私のような変質狂でなければT-2なんて名称だって頭に入らないだろう。それぐらいにいいところなしの機体なのだ。

 


 ――データ―― 

 名称:T-2(英語版:Tempest)

 種別:陸上迎撃機
 全長: 21.6 m
 全幅:16.1 m
 最大速度:マッハ10
 搭乗員 :2名
 武装:フェーザー機関砲4門、光体機関砲8門

 

 三発円盤翼機とでも呼ぶべき形。見た目はどストレートに巨大な箱型尾翼を付けてプロペラを取っ払ったXF5U“フライング・パンケーキ”だ。搭乗員二人で、別に爆撃任務も後方射撃もできないのに、なぜかコックピットは前後に二つ。しかも分離するらしいグロスター ミーティアの改造版F8 プローン・パイロットもこんな感じのシステム。分離はしないと思うが。反対に、T-2は寝そべって操縦はしないと思われる。
 見た目的にはナチスドイツやアメリカっぽいキちゃってる雰囲気、どう考えてもインパクトが凄いのだが……活躍ほとんどしていないのだから印象に残らない。

 

 


 機体形状
 円盤翼機は全翼機と大体一緒。見た目の雰囲気が違うだけで基本的な構成要素も利点もデメリットもほとんど同じ。もっと言えば、胴体翼機も同じだが、採用される目的が微妙に違う。これらが優先するのは揚力の生み出しやすさ、余計な部品の無い故の著しい抗力の低減だ。一方で不安定な機体である為、結構面倒な操縦を強いられる。

 そんな円盤翼を採用したのがこのT-2だ。

 長大なラムジェット的エンジンを3発搭載して速度を通常のジェットエンジンより加速を上げ、T字尾翼を二つ繋げた箱型尾翼としたことで機体形状を変更せずに尾翼の効きを向上させた。
 これにより、速やかな加速による大気圏突破と胴体翼機的性質による再突入の容易化が可能になった。

 

 となればいいのだが、いろいろと問題があったりする。

 T字尾翼はその形状から、機体の大分後方へ設置することが可能で、これによりモーメントアームが長くとれる。だから操縦性を高めることが出来るのだ。しかし、その位置が一方で問題になってくる。

 操縦性を向上させてくれるT字尾翼だが、これは迎え角が大きくなる=機首が上を向いてしまうと、正面から見ると丁度主翼が尾翼に覆いかぶさってしまう。つまり、主翼のせいで尾翼がキャッチできるはずの気流は乱れるわ遮られるわで、機体の安定に寄与できなくなってしまうのである。ディープストールとかいう現象らしい。

 

 このT-2陸上迎撃機は困ったことに円盤翼機であり、普通の航空機より圧倒的に面積が広い。幾らか翼の前方を切り詰めているため、少しはましだろうが――ちょっと上を向いただけで大分尾翼に干渉してしまうのだ。これだったら、機体下部に小さめのⅤ字尾翼であるとか、あるいは逆Y字にして機体上部は垂直尾翼だけにする、とかの方が理に適っているだろう。

 無理やり説明を付けるならば、着陸時に必要距離を極限まで短くするため、ダウンフォースの発生を狙ったか。いや、意味わからん。
 また、エンジンが中途半端に翼部に埋まっているため、多分排気が翼にダダ掛かり。これはかなりヤバいぞ……

 

 


 地味にすごい能力
 でもT-2にだっていいところはある。つまり、大気圏離脱と再突入能力だ

 陸上迎撃機であり、いくらテレザートが中心部以外大気の薄い惑星であったとしても、地表面から重力圏離脱が出来るというのは恐ろしい性能だ。どの空間においても徹底的に密閉性が保たれ、エンジンは十分に発動できる。しかも、上がってそのままでは話にならないから下りる必要が有る。

 大気圏離脱は単純に段々と大気圧が減るのだからそれほどのことはないが、大気圧が増大し続け圧縮による抵抗を受けなければならない再突入は勝手が違う。パイロットだけが再突入するなんて不可能だし、再突入の為だけに一々宇宙母艦を出して回収し大気圏内に戻ってから再度発進させて基地に戻すなんて効率が悪すぎる。だとすれば、機体自体に再突入能力があると考えるのが妥当だろうだろう。


 圧力に対する抵抗もさることながら、熱に対しての抵抗は死活問題である。機体の一部でも溶けたら一発爆散必死であるからだ。速やかに周囲に熱を発散する表面塗装と、断熱素材の併用――口で言うのは簡単だが、実現するのは極めて難しい。それを消耗品と言える迎撃機に施すのだからこれは結構金のかかった兵器と言えるだろう。

 この耐熱性能がある為に、エンジンの排気がどれだけ翼に掛った所で気にもならないのかもしれない。

 

 


 劇中の活躍
 かなりまずい結果だった。ヤマト接近に際し、速やかにスクランブルしたものの……コスモタイガーの大編隊の前におおむね惨敗してしまった。第一会敵時こそ互いに派手に火花を散らしあったものの、ものの数分でコスモタイガーに制圧されてしまったのである。
 一方で、コスモタイガーの撃墜に成功した機体もあった。サッチウィーブよろしく、一機がコスモタイガーの注意を惹きつけてもう一機が背後に回る事で見事に撃墜に成功したのだ。だが、残念ならそこまでだった。

 

 


 問題点―T-2配備すべきか否か―
 テレザートは大気の薄い星であることは、外殻に降下した空間騎兵隊がヘルメットもとい宇宙服を着用しているから推測できる。

 だが、別の惑星での作戦はどうだろうか。T-2は大気の薄い惑星だから大気圏離脱も再突入も簡単であった、などというのでは話にならない。この機体がそのレベルの性能であれば、大気圏内のみに限定してあのデスバテーターやイーターⅡのような強力な対空戦闘力を持つ機体に任せればいい。あれなら敵に機先を制されても十分挽回できる亜d労。


 そういった攻撃力として上位互換の機体が存在している以上、先に上げたどこで有用なのかわからない尾翼等のあんまり意味のない設計と合わせ、採用する必要性が下がる


 このようなマイナス点を覆せるのはやはり、極めて高い耐熱・耐圧性能だろう。


 地表面から重力圏外までの極めて広い作戦環境を持つことで高い即応力を基地戦力に保有させることが出来る。実際の空戦能力はかなり疑問符が付くが、しかし機先を制すことが出来れば防空任務の一段階は十分。あとは敵機に喰らい付いて、大気圏まで急速降下した空母からイーターⅡなりデスバテーターなりがスクランブルするまで持ちこたえればいい。そうすれば、圧倒的な格闘能力・制空能力を持つ両機種が速やかに敵機を駆逐するだろう。


 テレザートでのT-2のまるっきりの敗戦は、基地戦力や戦略が不十分であったことに尽きる。
 第一に迎撃に当たるゴーランド艦隊は見事に壊滅。テレザート自体が乱流に囲まれた天然の要害に近い存在である為――機動部隊を付ける必要なく、むしろ常に即応体制がとれるミサイル艦の方が相応しいとゲーニッツやサーベラーが判断したと説明できる。だが、残念ながらゴーランド艦隊は敗戦
 ヤマト接近を受けてT-2は直ちに発進したが、デスバテーターとタメを張れるコスモタイガーにかなうはずもない。もっさりした機体で3発機でエンジン構造が他の機体とは明らかに違う。そんな機体でコスモタイガーを迎撃なんて……。しかも掩護射撃も陽動も何も無し。

 機体形状の違いを説明付けるならば、デスバテーターやイーターⅡ以前の機体であるとみることが出来るだとすればかなり型落ち……。そんな機体で勝てるわけもない。

 


 ズォーダー5世大帝期における戦闘艦艇の外観上の、艦種別の緩やかなディティールの違いを理由づけるには5世大帝期は技術の転換点にあったとすれば合理的だろう。

 その中にあって、T-2は信頼性は高いが大分古い機体であった大気圏内外の境界と言う突破しにくい空間を突破する、広範な活動域を確保する、それがT-2の元来の目的であったとする。であるならばテレザートで見せた活動はまさに合致するものだ。恐らく大気圏再突入はデスバテーターもイーターⅡも不可能だろう。その不足を補うのがT-2の存在意義であれば……基地配備も不思議ではない

 ただ、基本的な攻撃力や運動性能がすでに時代遅れでどうにもならなかった。
 そうであるならば、あの散々な結果は当然と言えるだろう。そしてまた、合理的な描写とも言えるだろう。

 

 

 熟慮なのか、図らずも設定なのか――いづれにしても、ガトランティスの設定や描写は実は合理的で重層的である。その重層さを見せてくれているのがこのT-2 ではないだろうか。

 出来れば、

 今日からT-2陸上迎撃機の名前を憶えて欲しい。