旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス兵器群 メダル―ザ ――対拡散波動砲決戦砲艦――

 

 

 メダル―ザとは、第18話にて登場したシリウス方面軍旗艦でありバルゼーが指揮下に置く第一機動艦隊の総旗艦である。

 見た目、性能、登場タイミングのその全てが、それまでのガトランティス艦艇とは異なり、地球戦役の為に建造された新造艦であると目される戦闘艦だ。

 個人的には見た目が嫌い。あまりに今までの戦闘艦と類似性がない。ガミラスの戦闘艦としてもいまいち見た目に類似性がない。が、性能は大好き。多分、ガトランティス艦の中で一番好きな性能。

 

 

 

 諸元、不明

 大戦艦より一回りほど小さい戦闘艦であるということ以外は全く不明。目算で全長280メートル、全幅100メートル程度か。でも確定しようにも情報が足りない。挙句ゲーム版でもまさかの設定なし。

 アンドロメダの対抗馬がそれって、ちょっと手抜きじゃないですかね?

 ちなみに海外では艦名は〈Medaruusa〉と表記される模様。こっちも、手抜きというかもっとカッコいい感じで音を表せなかったんでしょうかね……。

 

 

 武装傾向と防護力

 メダル―ザは火炎直撃砲キャリアの特務艦ないし試作艦である。と、結論付けられるだろう。全長280メートルのアンドロメダと同等の艦体に、火炎直撃砲発射機構1セットと大口径砲2門と、武装はあまりにも少ない。詳しく見ていくと――

 

 この艦の主兵装は当然ながら火炎直撃砲であり、これは火炎直撃砲の要であるプラズマ砲1門と連動した瞬間エネルギー移送器二基によって構成される。火炎直撃砲はこの艦の火力の中核でありかつ、艦の全長に対して非常に大きなウェイトを持つ。

 一方で自衛火器は艦首連装固定砲台1基のみ。確かに、の砲は地球艦隊のショックカノンよりも5倍以上の火線を見せており、少なくとも3メートルほどの砲口を持つだろうから、直撃すれば主力戦艦も瞬殺は十分可能なはずだでも数が決定的かつ致命的に少ない。また、対空兵装などの弾幕用の火器が一切ない為に艦載機の類に接近された場合は無防備になってしまう。

 

 旗艦である為に護衛艦艇が周囲にあるから問題ないのかもしれないが、万が一を想定していない設計と言わざるを得ない。大戦力を平気で投入できるガトランティスであるからこそ、恐れずこの設計ができた。という事にしておこう。

 

 

 もう一つ特徴的なのが、大戦艦と同等の速力を持つ点と、それまでのガトランティス艦艇とは比較にならないほどの強力な装甲を備える点。

 特に、装甲の堅さは恐ろしいまで。乱気流中にたまたま瞬間物質移送器の部分を狙撃された際は損傷を負ったが、それ以外に部分に関しては数隻の地球艦隊のショックカノン集中砲火を一隻で一定程度まで耐えた。他に類例がないほどの堅さであり、アンドロメダのショックカノンはヤマトと同様なのは確実である為、ヤマトとの直接対決でも十分耐える見込みがあった、そう結論付けられるだろう

 

 これらの性能は、快速によって敵を射程圏内に捉え続け、万が一敵艦が突っ込んできた場合にも速やかに退避。場合によっては敵の砲戦距離が想定より長かった場合も生存率を高め、艦隊のとれる攻撃の選択肢を温存するため、と理由づけられるだろう。

 

 

 

  艦隊における立ち位置

 この艦は火炎直撃砲のキャリア艦であり、恐らく試作艦その特殊性や配備した演算器機の高性能を以て旗艦の任を受けている。であるならば不安になるほどの軽装も理解は可能。対空兵装ぐらいは必要だし配備しとけとは思えるが、対艦兵装が不足している点は仕方がない。敵艦とは接近しないことが前提なのだから。

 

 要は、対拡散波動砲戦闘艦だ。射程圏外からバカスカ火炎直撃砲をぶっ放し、拡散波動砲を封じる

 

 仮に接近戦になったとしても、重装甲で生存性を確保して地球主力艦隊の行動を徹底的に阻む。そのための戦艦であり、それ以上の事を求めるべきではない戦艦。

 メダルーザの全長は280メートル程度であろうが、艦の大きさ自体はガトランティス的にはさして大きいものではない。仮にこのブログで常々用いている3倍値設定であったとしても、840メートルほどと、むしろ小型でさえある。

 これは徹底的に能力を特化させた結果、そう表現できるだろう

 

 

 

 艦全長の明確化 

 一方、火炎直撃砲キャリアというたった一つの兵器に割り当てられた艦体としては、大型ないし妥当ともいえるかもしれない。数値的には小型に見えなくもないが、箱としては十分なはず。

 一方で、そのエネルギー供給に疑問がなくはない。瞬間物質移送器とプラズマ砲の同時運用にかかる分を同時供給できるのか。

 

 必要な装備・区画は――第一に火炎直撃砲に用いるプラズマ生成用の物質。これを大量に積みこんでいる可能性は高い。無論、星間物質を吸引して生成する可能性もあるが、それでは不確定要素が多すぎで、あまりにも使用場面が限定されてしまうため、ちゃんと積みこんでいるとする方が妥当だろう。

 積みこむ物資は……例えば、アルカリ金属と水の化学反応のような激烈な反応を起こす物質。積みこむのがこの類であった場合、被弾は避けねばならない。被弾して保存機構に異常が発生するのは、艦がの喪失に繋がりかねないため……これは、マズイ――何としても、艦全体への誘爆を避けねばならん。

 水密区画の様に気密区画を多数設けてその影響を徹底して封じ込めねばなるまい。となれば、必然ないし副産物的に重装甲となってしかるべき。

 

 

 もう一つは巨大な量子コンピュータやレーダー装置やプラズマの形を整える為の磁気発生装置等。これを載せねばなるまい。というか、メダル―ザの根幹を成す装置。

 スーパーコンピューター量子コンピューターを物理的に比較しても性能差から大した意味はないが……今は亡きかの有名なスーパーコンピューター〈京〉理化学研究所のホームページだのを見ればわかるが、計算棟は延床面積1万平米に加えて熱源機械棟の延床面積2000平米がその運用に最低限必要。しかも階高+1.5メートルの深さ=5メートルぐらいの階高を見込まなければならない。必要な電力は20万キロワット(=20メガワット)、関西電力からの電力購入に加えて6,000kWガスタービン発電機が2基でこれを供給する。苫小牧発電所出力25万キロワットとほぼ同格の電力が必要であるのだ。

 これらを組み合わせる為に計算器機と発電設備を平置きにすると、前者は100×100メートル(5万立米)後者200×100メートル(高さを25メートルほど見込んで、50万立米)を必要とする。〈京〉が利用できるだけの空間と電力があれば、量子コンピューターなら余裕で何十倍も上回る能力を発揮できるだろう。それが量子コンピューターの売りだし。

 プラズマ発生に関して電力は大して必要ないが、磁力は別。キャノン製の1.5テスラで25kVA(2万5000VA=25kW=25キロワット)を要する省電力MRIがあるが、発電量は6kWの太陽光パネル4枚分とほぼ同等。電力消費が凄いのか凄くないのかわからないが……。プラズマと磁力展開用に発電所を20万キロワット級を一つ用意しておこう。

 

 整理すると――索敵と解析、空間の測量等に余裕をもって10万立米。長手160メートル幅70メートル高さ10メートル。発電部としてわずかに余裕を持たせて100万立米。長手200メートル短手100高さ50メートル。

 原作設定描写だと、地球人が考え得る発電やコンピューターの形式という前提だがメダル―ザはハコとしてちょっと小さい地球人の考える形式で想定して何の意味があると言われたら正直困るが。他方、3倍設定へと拡大した場合は余裕。当たり前だが。

 全長840メートルの場合、前半部の400メートルにおおむね収まる。コンピューター部と専用発電部を直結させてしまえば、それだけスペースの無駄がなくなるだろう。排熱がものすごい事になるけど。容量的には問題はない。艦後部に燃料だの何だのを全部突っ込んで……設計のしようがないが、まあ――大丈夫だろう。

 

 これでも収まらない場合は最悪、超大型空母=格納庫内描写基準の6倍設定を用いれば、こんなに頭を悩ます事もない。1.68キロの超巨大艦になる故にいくらでも……

 正直に言うと、兵装以外は一切のデータがなく、ストーリーが進んでから急に思いついたアンドロメダの対抗馬としか表現できない。

 ものすごく頑張ってあれこれ話をでっち上げたけど……私のような文系には難しい……

 

 

 

 建造に至るまで
 登場自体がご都合と言えるが、それではつまらない為真面目に考える。


 よく言われているし、私も気に入っている設定でこの瞬間エネルギー移送器はガミラスの技術である、というものがある。

 実際に2代目デスラー艦はガトランティス謹製だし、これには瞬間物質移送器が2基搭載されている。この艦の建造に当たって、同盟国とはいえ圧倒的なパワーバランスの差があるガミラスとガトランティスでは、瞬間物質移送器をブラックボックス化はできないだろう。

 総統と大帝の仲の良さと、総統の性格から考えても、ブラックボックス化は考えにくい。常識で考えると恐ろしいが――あの人達、国家の運営を結構ヒューマニズムに落とし込む傾向があるから……。

 

 

 メダルーザ以前のガトランティス艦隊の傾向として、速度は十分だが射程が短いという事。これがあげられる。しかも装甲は大して厚くない。

 打撃力はどいつもこいつも高く、駆逐艦ですらヤマトを蜂の巣にした。が、守勢に回ると木っ端みじんになる。圧倒的多数や奇襲であれば全く問題のない傾向だが、少数での戦闘になると、数隻程度の戦力差は誤差の範囲となってしまう。


 まして、波動砲に比定できるような射程の長い大火力砲はなかった。つまり、ガトランティス第7話の時点で把握していたアンドロメダとその拡散波動砲という鬼門に対して、ガトランティスは対抗手段を持っていなかった

 唯一、対抗しえたのは白色彗星だが――これは最終手段である

 

 

 何故、拡散波動砲が鬼門であるかといえばアンドロメダの艦橋パネルの映像を根拠に――直径5万宇宙キロ前後の圧倒的効果範囲と11万宇宙キロの長射程である。しかも、さらばではカウント5秒程度で発射と速射が可能というおまけまでついていた。

 これはどう頑張っても、ガトランティス艦隊の前衛部が壊滅してしまう。

 

 火炎直撃砲ナシでの拡散波動砲の対抗戦術としては、バルゼー総司令が見せたように長大な突撃隊形を組むことぐらいであろう。出来るだけ長くして前衛の犠牲を織り込み、被害範囲を自軍優位に調整。この体制で最大戦速で地球艦隊に突撃、無理やり混戦に持ち込んで大量の衝撃砲をぶっ放す。最悪、主力艦隊をおびき出すためヒペリオン艦隊とわざと挟み撃ちされる必要もあるかもしれない

 

 しかし、撃たれてしまえば結局大損害は免れない。また、長大な突撃隊形の場合、砲力を集中投射しようとしても前衛部しか戦闘に参加できず全力を発揮できない。むしろ、驚異的なショックカノンによって“各個”撃破されてしまうだろう。場合によっては砲戦に撃ち負けたあげくに戦力の基幹部で拡散波動砲をお見舞いされてしまうかもしれない。艦隊は壊滅必至だ。

 

 

 全く対抗策がない――そこへきてのデスラー総統の手土産、瞬間物質移送器。使わない手はない
 何といっても、観測可能距離が攻撃可能範囲となるのだから、圧倒的なアドバンテージとなる。火砲そのものの威力は自分たちで担保すればいいだけ。

 

 ガトランティス(原作設定値を無視すれば)艦の大きさを無理して小型化しない事で航洋性と汎用性、快速を獲得してバランスの取れた設計を実現してきただからこそ転送の有用性はまるっきり埒外だった。大量の僚艦と共に敵に接近し、火砲をぶちかませば普通に勝てた

 が、拡散波動砲という最悪の相性の武器が登場しては、事ここに至ってはそんなデカい口を叩いている暇輪ない。

 

 粒子、重力、反物質、生体工学等の各種技術に秀でたガトランティスならば、大火球様のプラズマ程度は問題なく創り出せるだろう。今まで利用しなかったのはプラズマが簡単に四散してしまい、磁力で拘束したとしても、古代の海戦よろしく突撃しなければならない。普通の利用では、肉薄した際の衝角と同じく一種の最終手段。少なくとも、接近しがたい地球艦隊相手には危険な手であることは断言できる。

 このデメリットというか、プラズマの兵器利用の難しさを克服できれば当然兵器利用し得る。その克服する術がガミラスの瞬間物質移送器だったと合理的な説明が出来るだろう。

 

 射程距離ゼロのプラズマ火球が、観測範囲内全域を射程に収められるようになれば、それも敵艦の目の前に転送できればこれほど有用で敵にとって恐ろしい兵器はないだろう。比類なき火力、ぜひとも欲しい

 火炎直撃砲があれば常に攻勢をかけられる。推進部とプラズマ生成部の動力提供を、二つに分けてしまえば最大戦速で驀進しながら火炎直撃砲をバカスカぶちかまし続けることが可能だ。 1発当たりの効果が限定的でも確実にアウトレンジ攻撃が出来るならば、その方がガトランティスのニーズには答えられる。艦隊全体を安全圏へと置いたまま攻撃を行う、ベストな戦闘経過だ。

 

 ガミラスとの交流がなければ、メダル―ザは完成し得なかった。また、アンドロメダの存在がなければ、建造の緊急性は一切ない。

 大量建造するには間に合わない。また、大量建造して意味のある艦なのかを検討する時間もなさ過ぎて問題。しかし、土星決戦に投入するのが大前提の対拡散波動砲決戦艦であれば、必要最低限の機能で妥協しても何の問題もない。

 これら前提を踏まえれば、メダル―ザは完璧に近い設計と砲を備えていると言えるだろう。

 

 

 

 メダルーザの有用性・運用――正しく使う為に――

 いや、別になかったらなかったで、シリウス方面軍クラスの艦隊ならば十分数で押しつぶす事も出来よう。自艦隊を速やかに散開させて包囲すれば、拡散波動砲は最大威力を発揮できないまま、地球艦隊は押し潰されるのを待つだけ。大デスバテーター隊の支援があればより、確実。

 しかし、大損害は免れない。簡単な戦闘にはならないだろう。

 比較的慎重な性格であるズォーダー5世大帝がそれを許しただろうか?

 

 そもそも優秀な軍人ならば、最大の決意と最大の戦力投入で最小の損害に抑えつつ最大の戦果を挙げようと努めてしかるべき。

 その意味ではナスカやゴーランドも理解はできる。前者は気合が足りなさ過ぎだし、後者は詰めが甘すぎたが……。

 

 つまるところ、艦そのものの有用性より、使い方や使いうる場面への導入の方が重要かもしれない。

 まず、地球艦隊を出来るだけ遠ざけて動かさせないことが必要だ。その前段階としてバルゼー総司令は第二艦隊に衝撃砲の発砲許可を出したといえよう。

 これは地球艦隊が接近しての砲雷撃戦を忌避する要因となったといえる。つまり、ヤマトの報告と異なり大戦艦が有力な打撃力を有していることが判明し、ショックカノンの優位性が揺らいでしまった=拡散波動砲による先制的範囲攻撃を行う以外に地球艦隊は安全を最低限度すら担保出来なくなったのだ。確実に通用とすると思っていたショックカノンが、より威力が上の砲をガトランティスが持ち出してきたのだから、土方総司令としては接近するのはできれば避けたいと考えて当然だ。

 

 これで、地球艦隊の前進をおおむね抑えた=拡散波動砲以外の攻撃法を封じたといえるだろう。
 後は普通に火炎直撃砲を使えばいい。彼我の距離を常に観測して拡散波動砲の射程圏外にとどまれば、一方的に叩くことが出来る。

 


 肝心要は火炎直撃砲である。メダル―ザがそれ以外を搭載する必要性は低い。むしろ、火炎直撃砲を運用するための最大限必要な装備を搭載することこそが自衛に繋がるのだ。味方艦隊が生存していることが、自艦の安全につながる。

 メダル―ザに求められるのは周辺に対する探査能力が一つ、もう一つは火炎直撃砲のプラットホーム性能、そして最後が防護性能である。これだけあればいい。

 

 火炎直撃砲の能力を最大化できる作戦、これに投入する事がメダル―ザという戦艦を最大限活用するための、正しい方法である

 

 

 21話後半、艦隊が壊滅したのちメダル―ザは最期の反撃に移った

 その際、アンドロメダやその周辺に位置していた複数戦闘艦から集中砲火を受けたが、それでもしばらくの間は耐えていた。艦橋部の耐久性能も高く、物理的な損傷はほとんどなかった。機械的なオバーロードなどでの感電死や爆死はあり得ただろうが、ショックカノンの貫通等の直接的影響とは言い難い。

 最終的には、バルゼーはマントを燃やしながら最期のセリフを吐いたのと同時にメダル―ザは爆沈した。しかしその時点までは、艦内空調を含む艦の機能は概ね維持し続けたと評せるだろう。その他の機能もかなりの部分維持できていたと考えられる。


 決戦兵器のキャリア艦が砲弾一発で沈むのは最悪の事態であるうっかり斥候兵に仕留められては話にならない。個艦戦闘能力を削減してでも、防護に性能を振り分けるのは当然の話といえよう。

 


 興味深いのは艦首固定砲だ。たった2門ながら、ショックカノンの火線の何倍もの太さの砲撃を繰り出した。艦隊の先頭に立ちながら決して危険地帯に足を踏み入れず、仮に接近されても撃破し得るだけの通常砲力を備えた艦。

 見方によっては欲張りな性能かもしれない

 

 メダル―ザは火炎直撃砲キャリア艦であると同時に、旗艦任務専用艦という見方もできるかもしれない。元々指揮任務艦として建造された艦や工作艦として建造された艦を仕立て直したという可能性もあるかもしれない。そう考えても楽しい。

 

 
 メダル―ザの要、火炎直撃砲とは何か。
 23万8千宇宙キロから準備を進め、22万宇宙キロで砲撃を開始。以降は連射を繰り返した。見るからにしてプラズマ火球であることに疑いはないだろう。ずっとその前提で考察をしてきた。
 詳細な考察は個別記事にて言及したいと思う。

 

 

 

 建造日数の推測、そして求めた理由

 ヤマト2のあやふやな時間経過を元にすると、メダル―ザ建造には50日程度しかかかっていない。多分、これは複数の要因を重ね合わせるともう少し長く設定可能だろう。


 火炎直撃砲は、デスラー総統を保護した時にすでに新兵器の構想の中にあったかもしれない。が、必要性をどれだけ感じていたかは大いに疑問。しかし、デスラー総統に接触し、ガミラスの技術に触発されて本格的に開発に乗り出したと考えても不自然な点はないだろう。

 ロングレンジ攻撃の手段がデスバテーターだけ、というのは代わる戦術が存在しないという致命的状況を現出させてしまう。出来れば早急にデスバテーターに代わるロングレンジ兵器を完成させたい。当然、ガトランティスには転送以外の基幹技術が揃っているのだから障壁は少ない。現場は結構な意気込みを以て開発に当たったと想像できる。

 おそらく、一年は構想と試作にかけただろう。あるいは、本来はもっと長い時間をかけるつもりだったという事も言える。しかし、この時点ではまだ必要かどうか微妙なラインの兵器であった。将来的な導入に前向き、程度だっただろう。

 

 必要か微妙、あったらいいなという程度の兵器であった火炎直撃砲を、必要な兵器たらしめたのは他ならぬアンドロメダだ。

 7話で脅威評価を終えたアンドロメダ。この総旗艦が搭載する拡散波動砲は単なる決戦兵器ではなく、領域を支配しうる兵器である。それが艦隊の大型艦には全て装備されているというのだから恐ろしい。これでは小艦隊であっても侮れなくなってしまう。

 事実上、ガトランティスの現有戦力では対抗手段がないことが判明したのである。

 


 絶対に敵の有効射程圏に入ってはならない。

 これを実現する夢の兵器が火炎直撃砲をだったのである、そう立ち位置を明らかにすることができ。だから火炎直撃砲の製造には大して時間がかからなかったと考えて不足はない。少々無理をしても速攻で完成させただろう。


 メダル―ザも、必要な機器を搭載するだけのロースペックとすれば何も考えずに工期短縮して建造が可能であろう。

 ただひたすら装甲に注力して、余った重量ないし艦内容量をフルに使って、最悪の事態に備えた固定巨砲を据えた。急遽の建造も仕方ないだろうし、急遽の就役も不思議はない。

 もしかすると、メダル―ザのような拡散波動砲を封じることのできる戦艦を要求したのはバルゼーかもしれない。元ネタであろうハルゼー提督は、空母に随伴できる快速と強固な防護力を備えたアイオワ級戦艦を司令部の設置場所として求めた。

 完璧なオマージュとして、そこまで考えていたかは不明だが――しかしながらメダル―ザが急遽建造される理由が存在し、配備先がバルゼーの元という重ね合わせは、彼と彼の元ネタを考えれば、ご都合主義というよりもリアリティという表現が相応しいかもしれない

 

 

 

 残った唯一の疑問は建造場所であり、都市帝国内部であるのか、シリウス恒星系に築いた陣地であるかは不明。仮に都市帝国内部での建造であれば、ワープにワープを重ねたのであろう、結構な航行性能と言える。

 

 

 ――慎重な首脳陣――

 さらばにおいて、ズォーダー大帝は白色彗星を前進させることをいとわなかった。結構頑張ったバルゼーに対して「どけい!」と一喝して、白色彗星を地球艦隊前面に進出。一応それなりに戦闘力を残したバルゼーの第6遊動機動部隊に再度の強襲をさせたり、あるいは一旦海王星あたりまで後退し、呼び寄せた後衛をバルゼーに合流させるという方法もあった。

 これらの方針を採用した方が、白色彗星・都市帝国は安全。であるにもかかわらず前進させた。大帝、中々危ない橋を渡る。

 

 しかし、ヤマト2においては違った

 戦線の維持の為に前線との距離を詰める事はあったが、艦隊粉砕を前提としての前進をした事はなかったと言える。

 例外として、サーベラーがテレザートに向けて直進させたことはあったが――アレはあの女が調子こいたというのが一つと、大帝もテレサが本気で反撃するとは思っていなかったというのが原因。実際、テレサも島に恋をしなければずっと煮え切らない態度であったことは容易に想像できる。

 つまり、大帝は結構慎重なのである。白色彗星がワープしたのはバルゼー艦隊が反転する土方艦隊を追撃していた段階であり、負ける可能性は否定できなかっただろうが、負ける前提では無かった。その段階でワープしたという事は、大帝はバルゼーが地球艦隊全力を粉砕したのちに悠然と月軌道まで白色彗星を進めて降伏を迫るつもりだったと考えて矛盾はない。

 基本的に、ヤマト2のまともな軍人は慎重なのだ。 某ゲーニッツ氏や某サーベラー氏は違ったらしいが。
 

 慎重な行動と言えば、例えば――
 ゴーランドは気流圏の後方、テレザート前面から動かなかった。

 ザバイバルはセオリー通り、まとまった戦力投入を厳守した。

 ゲルンフェーベに隠れて艦隊を密集、通信を制限していた。

 バルゼー兵站を重視し、敵の脅威評価を的確に行い対処した。

 ズォーダー大帝も、征服に当たっての偵察を重視して艦隊を投入。

 

 これらは臆病ではなく、戦闘計画に必要な当たり前の慎重さだったといえよう。ただ、ナスカの情報が中途半端であったり、単純に不運が重なったりでその慎重さが全く功を奏しなかった。

 現実の世界でも例は幾らでもある。〈ツェザレウィッチ〉や〈フッド〉へのアンラッキーヒット、MO作戦に当たってのモロバレ暗号文と当日の海域が見事に晴れて居たり――一応、全部良かれと思った行動が全くうまくいかなかった例だ。 

 

 
 対拡散波動砲決戦兵器ともいえる火炎直撃砲。
 敗北の理由は、これも考察する必要があろう。技術的要因の考察は別の記事に譲る。

 今回考察するのはあくまで用兵上の要因である。結論から言えば――

 

 
 敗北はバルゼーの無策というよりも、緊急的に仕立てた兵器の限界・不安定さによるところが大きいのかもしれない。
 
 艦隊司令官クラスであれば、当然用兵に関して論文を書けるくらいの専門家であろう。戦艦乗りのからの叩き上げであれば、砲術に関しても専門家であることは間違いない。現実の世界にも結構ある話。

 実際、総司令としてのバルゼーは作戦の概要策定のみで空母の指揮は完全にゲルンにゆだねていた。最終的な作戦決定を除けば、門外漢は口を出すべきではないしまともな指揮官は口を出さない。


 恐らく、バルゼーも火炎直撃砲について多少は口を出しただろう。特に、運用面に関しては口を出しただろう。何より波動砲の威力や地球艦隊の充実を見た、彼が一番必要とした可能性がある。なぜなら――ナスカは論外としても、ゴーランドまで敗北するという事態に至ってもまだ地球を侮るとは考え難い

 

 しかし、バルゼーが設計でどれだけかかわっていたかは不明。

 砲というものや発射機構というシステムに関してざっくり理解はしていただろうが、自身で計算をしたりという事はしなかっただろう。何なら開発に関わった技術者をダイレクトに乗せてしまえば簡単。そもそも、艦隊司令がすべからく新兵器や新戦艦の設計が出来る人間である必要は、さすがにない。
 であるならば、弱点を完全に認識していなかった可能性がある。あるいは、弱点を軽視したか。

 

 確かに不用意に粒子の濃密な空間に突っ込んだことは責められるべきだ。

 だが、しかし火炎直撃砲の暴発まで彼の責任かといえば微妙なライン。別系統の技術を無理やり足し算したのだから、不具合が出てもおかしくはない。

 まして、まだ決着のついていない段階で拡散波動砲搭載の宇宙空母群を背後に背負っての戦闘になるのは避けたい。さっさと主力を片付けたかったと考えて“強行発射”を行っても無理はない。残念ながら、現実的に迫った敵と可能性の低い砲の不具合を天秤にかけたならば、当然前者への対処が先となる

 故に、バルゼーにすべての責任を求めるというのはかなり難しいというか、無責任

 


 火炎直撃砲は対拡散波動砲決戦兵器としてよく機能した。 
 メダル―ザはアンドロメダの対抗馬としてよく戦った。

 


 しかし、負けた。ご都合主義などという話ではなく、様々な可能性を加味した上で、全力を尽くした上での敗北と言える。土星決戦はアニメという枠組みどころかウォーシミュレーションの域にあり、その醍醐味を体現し、最も熱のこもった兵棋演習を画面に映した。そして、メダル―ザは土星決戦におけるダブル主演のうちの一隻。

 まさにアンドロメダと戦うためだけに生まれた戦闘艦。メダル―ザはその使命を、確かに全うしたのである。
 

 

 やっぱり見た目は嫌いだけど。