旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス超兵器 白色彗星―宇宙最強の超兵器―

 

 

 

 宇宙を巡る白く輝く巨大彗星。

 進路にあるすべての星を枯らす悪魔の星か、

 あるいは人間が創り出した偉大な機構の覇者か。

 

 

 宇宙戦艦ヤマトにおいて、伝説の作品とは何か。
 答えは『さらば宇宙戦艦ヤマト―愛の戦士たち―』である。

 宇宙戦艦ヤマトにおいて、最もエキサイティングな作品は何か。

 答えは『ヤマト2』である。

 

 両作品を特徴づけるものは何か、それは他ならぬガトランティスの存在が理由に挙げられる。あのヤマトを完膚なきまでに叩きのめし、地球を絶望と滅亡の淵に追いやったのは大帝星ガトランティスをおいて他には居ない。最強ともいえた地球艦隊に正面から戦いを挑んだ唯一の勢力。

 そこで、今回はその大帝星ガトランティスの拠点であり最大の兵器である白色彗星について考察してみたい。

 

 

 

 白色彗星について
 白色彗星―超重力によってまとめられた高速中性子と高圧ガス渦巻く巨大彗星。
 白色に発光しつつ長大な楕円軌道を描きながら宇宙を周回し、さらばでは明言されなかったが、ヤマト2第15話においては地球の半分ほどである6600キロと大きさが設定されている。速力は120万宇宙キロとされた。事実上の移動性中性子星ではあるが、長く尾を引く外見は彗星に他ならない。

 これは単なる移動する特異な中性子星ではない。内部に都市帝国を抱えた人工天体である。この都市帝国はなんとシュワルツシルト半径内部に存在しており、つまりそれに対抗できるだけの重力制御を可能とするのである。そして何万光年もの範囲でその重力波を飛ばし、同時に侵攻艦隊の基地として機能するのだ。

 そしてこの白色彗星こそ大帝星ガトランティスが自らを彗星帝国と呼ぶ所以である。

 

 この白色彗星は超エネルギーを内包した、それ自体が攻撃兵器であり、防護兵器でもある。分厚い高速中性子と高圧ガスの帯は通常兵器はおろか、質量兵器すら受け付けない。また一度崩壊しても再建は十分可能であり、それにかかる時間は決して長くない。

 テレザート星のような居住可能なほどの大型岩石惑星ですら十分破壊しうる能力を備えており、しかもその全質量が転化された爆発を至近距離受けても、回転ベルトに損害を負った程度に抑え込めるほどの対エネルギー性能の高さを誇る。
 つまり、波動砲クラスの超兵器を保有しかつ、白色彗星の弱点を正確に知る勢力以外は決して敵うことはないのである。

 

 地球への侵攻理由は非常に明確。

 さらばでは純粋に進路上に地球が存在し、そこに生命が満ち満ちていた。それが理由。地球が無条件降伏を黙殺した結果、ガトランティスにとっての存在価値が著しく低下したため白色彗星を以て踏みつぶすつもりだった。しかし、ヤマトによる波動砲発射によってこれは阻止された。

 ヤマト2において、それは全宇宙を我が物とするガトランティスのプロットが故であり、第一話にてズォーダー大帝は数十億の地球人の奴隷化を希望。これによって辺域への侵略の拠点を地球に築くのが最大の目的であった。基本的にはさらばよりも地球の価値を高く評価しており、都市帝国崩壊まではまだ占領の意志が存在していた。

 

 

 

 速力について

 前述の通り、速力は120万宇宙キロとされる。ただし第3話速力を20パーセントほど増しているため、通常の進行速度はもう少し遅い模様。でなお、この時点で地球まであと46日と言う地点にまで迫っていた。テレザートの位置は明言されていないが、ここから120万宇宙キロの速度で46日前後を走破した地点にあるという事が推測できるだろう。これはテレザートまで30日を見込むヤマトど同等に近い性能であり、実際ヤマトはテレサがテレザートを以て白色彗星に立ちはだかってくれなければ、その重力圏に捉えられてしまっていた。

 一方で第一話において白色彗星は地球から約50万光年の位置にあり、これをガトランティス時間にして6660時間で走破する予定だった。約75光年毎時の速力となる。1光年=9.5兆キロであるから、キロに直すと約715兆キロ毎時となる。ここから算出して1宇宙キロは7億1500万キロとなろう――が、これは戦闘中のそれと大いに齟齬が出てしまうため、航行用の宇宙キロと戦闘用の宇宙キロが異なる単位であると説明しなければならない……。

 他方、第18話ではテレザートでの屈辱を晴らすべく地球攻略作戦の正式な発動を宣言。それに伴い、速力を3倍の360万宇宙キロへと増速を命じた。そのためかなりの速力まで白色彗星は耐えられると思われる。

 また、21話ではワープを敢行。おそらく地球から8.5光年ほど離れているシリウス恒星系周辺域に届くか届かないか程度の位置であろうから、10光年程度が妥当な距離と言えよう。

 整理すると白色彗星は速力100万宇宙キロを通常とし、適宜増速を行う。最大幅は不明だが、360万宇宙キロ程度は問題なく増速・航行が可能。また、ワープ性能は概ね10光年を見込む。

 

 

 

 

ガス体の生成
 ガス体の生成想定として、供給源と制御方法を確定せねばならない。この二つの要素が揃って初めて、白色彗星の形成についてそれっぽい理論を構築できるのだ。
 まず、供給源。
 ストーリーの冒頭において真田さんが白色彗星をクエーサーとして紹介した。これで高速中性子が常に放出されている事は確定である。そこで、まずクエーサー中性子星)について簡単に説明したいと思う。

 

 中性子星巨大な質量を持った恒星――オリオン座のベルトにある星みたいなやつ――がその最終局面において超新星爆発を起こす。星はどんな星でも内側に向かっての重力が働くが、巨大恒星はそれが極端に強い。これに対抗するのが核融合によって放出されたプラズマであるとかのエネルギーである。
 しかし、その核融合をするための燃料が無くなり、プラズマが生成できなくなると当然、内側に向く重力に対抗する事が出来なくなる。構成の中心は金属によって構成されているが、この金属もまた核融合するほど弱い原子のつながりではない。そんなやわな原子であれば構成に謎ならない。が、当然中性子を放出する。つまり、崩壊はする。
 この崩壊が進むと中心は空洞状態となり、それまであった内側へ働く重力に見事に敗北し、内側への重力が強力に働くようになる。で、物質が消滅したわけでは無いから色々な物質がこの重力が全周から全てを圧縮する形となり、このコアに対する圧縮が反発して外へと向かい超新星爆発が起きる。このさい、圧縮されて誕生するコアこそが中性子である。

 

 

 文系の私にはよくわからん。

 長々と語ってみたが、つまり中性子星は縮退星というブラックホールや異種星、白色矮星と同じタイプの星である。重力が強いが故、光を逃さないブラックホールと反対に重力が故に光を放出する対照的な存在。普通、40キロ未満の直径である。

 普通、中性子星の脱出速度は 1/3 c で 表面重力は7×1012 m/s2(=70兆メートル毎秒毎秒)質量は109 t/cm3(=100億トン毎立糎)。

 地球と同程度の直径を持つのは白色矮星(白色彗星の原案)だったりする。


 とにかく、この中性子星もまた普通の惑星の様に層状の構造になっている。核は中性子から別のものに変化しつつある中性子マントルに当たる部分に中性子過剰核が大量に存在。さらに上に各種の原子核やらで出来た地殻や大気が存在する。中でも中性子過剰核は極めて不安定であり、白色彗星の想定にはかなり有用なので覚えておいて欲しい。

 


 では本題。
 白色彗星のガス体の供給源は何か。それは星間物質であり、あるいは惑星の残骸が想定できる。
 これらに含まれる原子は、都市帝国が働きかける重力により崩壊し、中性子過剰核として生まれ変わる。この中性子過剰核を適宜崩壊させることで高速中性子とガスを噴出させ、白色彗星を形成する――のではないだろうか。


 制御方法は何か、それは重力を用いていると考えられる。というより、他に方法がない。また、制御方法であると同時に、ガス体の生成方法でもある。

 重力の発生につき、思い付きで一つメモ。
 星の形成過程は実は不透明である。考えてみると、煮えたぎった物質は大抵膨らみ、外へと逃れるように運動するが、ある時点からこの反発が内側に向くのだからイマイチ理解しがたい。だが、原子が冷えた事によって収縮するように結びつきを強固にし、コアがなまじ球形に形成されたことにより反発するのではなく内側に向かって圧力を生じた。
 この圧力空間に存在するものは体積に比べて質量が莫大となるのは予想がつく。この体積に比べてあまりに莫大な質量が時空間をゆがめ、ブラックホールのそれの様に引き込む力を発生させる。
 あまりの高温ゆえ少しの温度低下でもこの現象が起き、反対にあまりの質量であるため冷えたといっても高温状態が維持されている――やっぱりわかんねぇ。

 ただ、上記の発想あるいは、重力子を仮想的に創り上げ、元から数学的・信号的な存在として形成した重力子に任意の数値を入力することで重力が任意の場所に出力される……
 とか、そんな感じで重力を形成することで、ガトランティスは白色彗星を形成したという説明をしたい。

 


 若干繰り返しで申し訳ないが、ガス体形成手順は次の通りと推測する。
 白色彗星はその内部に都市帝国を抱える。むしろ都市帝国の外周を取り巻くように形成されているというのが正しい。
 都市帝国を囲む外周には中性子過剰核の濃密な滞留層を想定する。この過剰核は本来勝手に崩壊し続けるが、重力で力を加え続ける事で一応の安定を見せる。都市帝国内部には、恐らく強力な重力制御装置ないし電磁波発生装置なりが設置されていると考えておかしくはない。これらを利用して内部に拘束する重力を発生させ同時に、都市帝国に中性過剰核や滞留層が持つに至った重力を電気的反発を以てその作用を帳消しにする。さらに外周に重力制御装置なりを設置し圧力を内側に加える事でこの過剰核を維持する。
 
 白色彗星のガス体は中性過剰核によって構成されるとする。この中性過剰核は圧力が無くなると勝手に崩壊するため、常に重力で拘束する必要が有る。ただ、自動的に崩壊させ、粒子レベルの損害を与えるという手段にもなりうる。つまり、重力の展開する方向を正面方向に向けることが出来れば、まず超重力によって対象物を粉砕しその残骸を中性子で粒子レベルまで破壊することが出来るという事だ。
 チリ一つ残さずという事である。

 過剰核は簡単に崩壊してしまうため、これを重力制御装置で留めるが、その効果範囲外の過剰核崩壊は止めようがない。全周をくまなくカバーする必要が有るかといえば、かなりの速力を有する白色彗星が側面からの強力な攻撃を受ける可能性はなく、真後ろも同様。恐らく敵は前面に立ちはだかる形で対峙するだろう、つまり前面に装置を集中させて配置する方が理にかなう。が、先ほど述べた通り重力制御の範囲外の過剰核は勝手に崩壊し安定していく。ただこれは止める必要性が低く、むしろうかつな接近を阻止する防御壁として使いうる。このような装丁をした場合、中性子と共に存在する高圧ガスはさしずめヘリウム当たりとなる。

 

 文系としては、これぐらい科学っぽい説明が出来れば十分だと満足している。


 さて、
 この想定であれば、中心核=極点はかなり安定した性質を持つと思われ、ここを発進口とするのは不自然ではない。渦の中心点を設ける事は不自然ではなく、濃密な質量と重力を持つに至った白色彗星の場合は時空間に対する干渉力をある程度持つ可能性が想定できる。つまり、真空に見えて主に時間が足を引っ張る形で濃密な水中を進むがごとく抵抗となり、渦巻いて紡錘形に形作る方が進みやすいという理由付けが出来る。だが、ここに波動砲を撃ち込まれた場合は挽回のしようがない。自分たちで攻撃用のガイドを引いているようなもので、阻むものがない。

 

 

 

白色彗星の威力

 言うまでもなく、超重力にある。ヤマト2で真田さんが説明していた通り、太陽系よりも何万光年も離れていながら前方に重力波を飛ばすことが出来るほどの強さを持つ。また、小惑星は当然としてテレザートや地球も粉砕し得るだけの圧倒的な重力場を展開できる。白色彗星は中性子星としては通常の165倍の大きさであり、破格どころではない。全部ガス体であり、内部が相当に空洞であったとするならば80倍程度に収まるのだろうが、それでも異様なほど巨大。中性子星の磁場は10の6乗テスラともいわれるから、白色彗星の磁場ははてさてどれだけになろうか……。

 脱出速度の計算は2GM/Nで、Gは万有引力定数、Mは天体の質量、Nは天体の半径だ。つまり、割と空洞な計算であったとして――白色彗星の表面重力は地球の3.9×12乗倍ぐらい? もう全然わからん。何となく計算が間違っている気がするが正しいとすれば少なくとも、光速1/3程度では脱出はかなり難しい気がする。もう、私には計算できない。

 少なくとも、この重力制御能力はゲーム版の自動惑星ゴルバ以上のものがあろう。一切内部への影響を排除し、一部を通路として設けられるような繊細な重力展開が可能であることは描写から間違いない。

 そしてこの圧倒的な重力を以て前面の惑星をバラバラに粉砕する。ブラックウィドゥ・パルサーのような破格の中性子星が意志を以て席巻しているようなものだ。

 

 

 多分、惑星を余裕で破壊できるだろう。

 今度は守り=どれだけの威力に耐えられるか、或いは耐えられたかである。

 

 

 1、テレサの攻撃

 テレザートが地球と同規模であった場合……その質量は6×10の24乗キロ=60京トン。反物質による対消滅が起きた場合、その式はE=MCの2乗だから……60京トン×30万キロ毎秒の2乗=5.4×10の30乗ジュールだと思う。

 つまり、白色彗星に対する攻撃の第一波は太陽が3時間にわたって放出するエネルギーと同じ程度のエネルギーをほんの一分の間に集中させたのと同じといえよう。何と恐ろしい女だ……

 

 2、波動砲斉射

 ヤマト2において、ヤマトの波動砲は威力がバカ上がりしている。

 第一作目では岩盤を含めた、オーストラリア大陸クラスの浮遊大陸を一発で粉砕した。威力を抑えての発射の可能性が十分あるが、それでも惑星を破壊できるか程度の威力。説明では宇宙を一個破壊できるとされるが……。

 が、さらば及びヤマト2では惑星を破壊できるだけの威力を持った破滅ミサイルに対して押し勝つが出来た。つまり、波動砲一発で惑星を破壊できる力以上のものがあるといえる。破滅ミサイルの威力が常識の範囲=惑星の質量3割を吹き飛ばせる程度、であった場合はその威力は大幅に減じられてしまうが――第1作目よりは大幅に威力が向上していると断言できる。

 

 主力戦艦と共に舳先を並べた巡洋艦はその全長からして、波動砲のエネルギー投射量は戦艦の半分ほどだろう。故に、土星決戦では無傷の場合に合計77門の波動砲が白色彗星の前に立ちはだかった。エネルギー投射量でいえば、21個ないし70個の惑星を破壊できるエネルギーが白色彗星を襲ったのである。

 惑星を破壊するには破滅ミサイルの記事でざっくり算出した余裕をもって破壊できるエネルギーが4TNT換算ゼタトン、1.8×10の32乗ジュール辺りだ。波動砲搭載戦闘艦合計280TNT換算ゼタトン、1.2×10の34乗ジュール程度だろうか。あるいは、その4割程度の112TNT換算ゼタトン4.8×10の33乗ジュール

 私の計算が合っていれば、テレサの攻撃のそれとは比較にならない巨大な威力だ。 

 

 

 

 テレザート粉砕を試みた際白色彗星は速度を上げて接近していた。惑星を破壊するためその超重力を前方に展開していたとみて構わないだろう。が、守りを固めようと思っていたかは疑問。特にサーベラーが陣頭を指揮を執っていたのだから、余計に無防備であった可能性がある。

 もし、爆発が全周から襲う形であればそれは白色彗星を包むように伝わったと考えられる。白色彗星は前方に対する影響力は非常に強いのだが、真後ろは大して影響はないとみて構わないだろう。必然的に重力を展開する必要性の低い後方からテレザート爆発のエネルギーが侵入して、ガス体が崩壊した可能性が見えてくる。直接エネルギーを白色彗星内部に流し込まれてしまえば、防護の前提から崩れてしまう。当然、都市帝国にも直接的な影響が出てしかるべきだろう。

 

 地球艦隊を迎え撃った際、すでにテレザート宙域でテレザートの全質量を反応させた対消滅のエネルギーにさらされた後である。白色彗星が人工生成物ならば、その生成装置があって当然。

 この生成装置がテレザートで損傷を受けたとすれば、テレザート対消滅をはるかに超え得るエネルギーを正面から投射された。波動砲の集中投射に敵わず、生成装置がオーバーロードしてしまい、ガス体が取り払われてしまったとしても不思議はない。40日程度の時間差があるが、損傷自体が大したものでなければ――まして、バルゼー艦隊が地球艦隊を殲滅してくれているという前提であったならば大したことはないと捨て置いても不思議はない。

 基本的にゲーニッツやサーベラーは危機感が薄い故、見過ごしたとしても不思議はない。彗星帝国を取り仕切る高官としてどうかとは思うが。

 

 

 

 なぜ耐えられたのか 

 この異常とも思えるエネルギーをどうやって処理したのか。考えられるのは次の3つの方法だろう。

 

 1、異次元への転送

 一番雑な考察。超重力によって前面のガス体を球状に纏めてシュバルツシルト半径をキロ単位に拡大、これにより超曲面=事象の地平面を形成してエネルギーを落とし込む。

 

 2、太陽圏電流シート

 太陽圏電流シート=磁場。これを周囲に展開し、これにより白色彗星を保護する。新星の爆発と同等の電磁波でも放出できれば、十分に波動砲の威力を相殺できるだろう。

 

 3、力で相殺。

 6600キロの巨大中性子星。通常の330倍の――太陽の660倍程度の質量だが、少なめに見積もって……200倍程度だろう。重い事で有名な恒星であるピストル星と同程度のエネルギーと言える。だとすれば、力で押しつぶすという選択もあり得よう。

 

 

 

 白色彗星は、

 宇宙ではそう簡単に起きない反物質による惑星の完全消滅のような異常事態でも無ければ損傷は受けない。人工で引き起こしたのであれば、このような超自然的な力を発揮できる惑星国家を複数同時に相手にする必要はなく、避けるべき事態だ。準備を重ねて侵攻さえすれば、十分に避けられる事態であった。今回は『愛』と言う不測の事態に直面したまでであり、テレサの行動は全く想定外。

 一方で自身はブラックホールにわずかに及ばない程度の超重力を身にまとい、適宜威力を増減・投射面を変化させて宇宙戦艦から惑星を粉砕できる。比較的小さなブラックホールならば、脱出できる可能性さえあり、無敵に近いのである。

 

 

  

 白色彗星の弱点

  人間が造ったものに限らず、どんなものにも弱点はある。

 白色彗星にとっては渦の中心核が弱点であるが、恐らくここが艦隊の発進口として用いられると推測できる。さらばでは、ここにヤマトの波動砲という強力な別の渦を叩き込まれたため、渦の回転が維持できずガス体は崩壊してしまった。

 そもそも、渦の回転と逆方向の回転を渦の中心に叩きこまれれば、それが台風であっても相殺されて消滅してしまう。同じ方向の渦であったとしても、それが強力であれば渦の中心を乗っ取ってしまう。やはり台風でも結構見られる現象だ。

 ただし――実現しようにも、当たり前の事だが白色彗星のエネルギー量の前では簡単では無い

 

 さらばでは、拡散波動砲中心核を射抜く前で射程ないし超重力にはじかれ白色彗星の前面に拡散点が出来てしまった。その結果、拡散波動砲は手で卵を包むように白色彗星を攻撃することとなり、威力が全体に散って集中せず突破するに至らなかった。反対に白色彗星はうまくその力を後方へ受け流すことが出来たのであろう。また、ヤマト2とは違い地球艦隊はテレザートの爆発という一種偶発的な出来事による恩恵も受けられなかった。万全の体制の白色彗星を前にしてはさすがの地球艦隊も敵わなかったのである。

 ヤマトの攻撃成功は、先立つ地球艦隊の拡散波動砲の一斉射撃がなければ不可能であったといえよう。

 

 一方でヤマト2では側面からデスラー艦が搬出されたこともあって、白色彗星の全体が常に強力な重力を有しているというわけでは無い。考え方としては、前に述べた通り、必要に応じて前面に超重力を展開し、それ以外の場合においては彗星の形を保つ程度の重力で高速中性子と高圧ガスをまとめていると考えられる。

 故に、先の項目で述べたようにテレザートの対消滅などの予期しない爆発に見舞われた際はその処理能力を超えた事態となり、ガス体が崩壊してしまう可能性が急浮上する。

 そのテレザートの爆発という猛烈なエネルギーを受けた事により、損傷。その損傷を回復しきらないうちに残存地球艦隊の全力による拡散波動砲一斉射撃を受けてしまった。この状況では、さらばと同様以上の2回連続攻撃といえ、やはりガス体を支え続けることは不可能だったといえる。

 地球艦隊はテレザートの犠牲なくして波動砲攻撃は成功させえなかっただろう。
 

 

 白色彗星の弱点としては渦の中心核以上として、制御装置の容量があげられるだろう。さらばにせよ、ヤマト2にせよ割合に短いスパンで連続して惑星を消滅させられるだけのエネルギーが投射された。

 この耐えられるかわからないエネルギーに真っ向から対峙するよりも、都市帝国前面に重力場を展開して影響を相殺するのに全力を尽くす方が、戦術として正しい。ガス体維持に全力を尽くしたとして、耐えられれば何の問題ないが……万が一敵わなかった場合は悪くすると重力制御機能全喪失の可能性もある。そうなったならば、都市帝国は確実に打撃を受ける。ガス体と都市帝国のどちらが優先順位が高いか――


 仮に、制御を失った場合に白色彗星はどうなるだろうか。

 テレサや地球艦隊あるいはヤマトの攻撃によって強大な圧力が加えられ、中性子過剰核が想定を超えて一気に分解され、あまつさえ中性子が崩壊してより小さなクォーク化するという緊急事態が発生しないとも限らない。ほとんど中性子星と言える白色彗星がより重力のつよいクォーク星へと変化するのだ。その内側へ向かう重力は中性子星よりさらに強力、元々巨大すぎる白色彗星ならばうっかりするとその質量でブラックホールしないとも限らない。

 そうなれば、地球艦隊もろともガトランティスは重力に潰されて小指の先についた塩粒より小さくなってしまうだろう。

 元々、白色彗星のシュワルツシルト半径に拠する都市帝国だ。普段から猛烈な重力に対抗しているだろう。それが外部からの干渉による急速な重力変化にさらされた時、その重力制御がどれだけ可能かは不明。

 

 

 重力制御装置のキャパシティを超える重力が内部にかかったならば、その時点でガトランティスは滅亡だ。先ほど述べた通り、塩粒になる。それだってまだ良く重力に対抗していると言えるかもしれない。

 

 拡散波動砲の余波というという膨大なエネルギー

 ガス体がクォーク化した場合の重力

 

 これとを天秤にかけたならば白色彗星がクォーク星に変化することの方が危険であろう。ならば重力制御を局所的に行う事で全力で身を守り、濃密なガス体の自然な崩壊によって余計な負荷を避けつつ波動砲の余波をかわす。これは自然な判断だろう。

 うまくいけば、都市帝国は自身の重力制御に注力でき、

 ガス体は自身の質量でまとまろうとし、

 拡散波動砲がこの危険な物質層を洗い流してくれる。

 

 仮にこの時点でガス体が取り払われ、白色彗星の形を失ったとしてもである。

 地球艦隊に勝利できれば太陽系の惑星どれか一つか二つを破滅ミサイル等でバラバラにして粒子レベルにまで落とし込んだのち、中性子過剰核としてとりこみガス体を再建することが可能だ。

 普通、中性子星というかパルサーはそのままではエネルギーを消費するだけだが、星の残骸などを取り込むことでエネルギーを回復することが出来る。中性子星としては普通の振る舞いである。これと同じ原理を白色彗星が使用しないはずはない。

 テレザート爆発後に結局ガス体が再建されたのは、周辺域小惑星を吸収したためであり、星を破壊するのは進路上邪魔であるからと言う理由と、副次的にガス体のエネルギー補給であると結論づけられる。

 

 要は、ガス体なんぞ取り払われても痛くも痒くもない。

 ガス体なんぞいくらでも再建できるのだ。

 

 当然、ガス体は最後まで維持しようとしてしかるべきだ。しかし、重力制御機能全喪失だけは避けねばならない。であるならば、ガス体の維持を途中で放棄する展開も現出しても仕方ないだろう。 難局を突破した後、付近の惑星を破壊してそこからガス体を再建すれば何の問題も無い。

 

 これが白色彗星の弱点とその対策、理論的説明になろう。

 

 

 

  ガス体の役割
 このガス体にどれだけ超重力を発生させるだけの能力があるかは不明。恐らく、都市帝国内部に重力発生源があり、これが周辺のガス体をまとめ、まとまったガス体が更にガス体を引き寄せ、ドミノ倒し的に連鎖反応で猛烈な質量を生み出す――と言うような事だろう。

 

 

 ガス体の能力として推測できるのは、敵戦闘艦の装甲への損傷だろう。

 仮に重力圏に突入しなかったとしても、濃淡はあろうが高速中性子の嵐の影響下にあろう。となれば、原子炉や宇宙船に見られるように、中性子による原子レベルでの損傷は馬鹿にならない。しかも白色彗星の場合は、そのような“普通の”環境ではなく中性子星表面レベルの中性子線を周囲にまき散らしている

 装甲表面は大して時間もかからずに原子レベルでボロボロになり、安全強度は設計時とは異なり大幅に低下するだろう。元来の安全強度ならば耐えられたはずの衝撃に、全く耐えられなくなる。となれば、星をも破壊する白色彗星の超重力に敵うはずなどない。堅牢さを失った艦体は、脱出しようとすればするほど自ら分解していってしまう。

 おそらく、さらばのあの描写に近い事になる。

 

 

 別な特性として予想できるのは電磁波

 地球艦隊のレーダー装置だのに一定程度の影響はもたらすだろう。宇宙戦艦クラスになればファラデーケージ以上の極めて強力な遮蔽が可能だろうが、惑星表面に対する影響は恐らくただ事ではないだろう。また、電磁波は波であり、エネルギーである為、投射した対象物に対して熱を与える。これが白色彗星の高温の源になるだろう、分子の破断は確実に容易になるし、酸化等の化学反応も促進される。もしかするとブラックホール化しかねないような質量である可能性があるが、この強力な電磁波で周囲の物を加熱・発光させていたとすれば、白色に輝くのも当然と言えるだろう。

 電磁波は中性子自身の原子レベルでの装甲への打撃をアシストするだろう。宇宙にある元来は気にならない程度の濃度でしか存在しない物質も、これにより馬鹿にならない化合作用を見せる可能性がある。ただでさえ、高速中性子で弱った艦体表面にこれは堪える……。

 

 つまり、白色彗星のガス体はたとえ濃密で重力の源にならなかったとしても、侵攻する宇宙戦艦の装甲を徹底して破損させることが出来る。

 いわば、時間を何万時間分も経過させたような、過剰な劣化をほんの短い時間の中で与えることが出来るのだ。これにより超重力の威力を何万倍にも高め、宇宙を席巻し得るだけの鉄壁の防護を成し遂げたのである。

 

 これならば、さらばでの地球艦隊を飲み込んだ際の破壊描写にも合致するし、論理的破綻も少ない理由づけになるのではないだろうか。
 

 

 最後に
 この白色彗星の何が好きかって、パイプオルガンの調べと共に宇宙をかけるあの冒頭の圧倒的な訴求力である。まさに宇宙を席巻し、押しつぶさんばかりの意志を感じた。
 個人的に、白色矮星なんて名称にならなくてよかったと思う。いや、用語としてはこちらの方がむしろ正しいが、字面も響きもいまいち。彗星の方が古来からの魔の星としてのイメージをプラスできるうえに字面も響きもカッコいい。