都市帝国―ご都合主義か、高度なシミュレーションか……―
都市帝国――不備か、読解力不足か。
ヤマトと言う作品について批判的な意見は多くある。あってしかるべき。
ごもっともなものもあれば、しかし一方でそれは単なる読解力不足によるものと断じられるものも多くあった。
擁護ありきの人間が偉そうに述べるのも大いに問題だが、批判ありきの指摘は穴だらけで妥当性を欠く。そんな中で、私がネットサーフィンを楽しむ中に見つけた都市帝国への疑問や批判をいくつか拾い上げて、反論してみたいと思う。
都市帝国の動力源問題
つまり、動力炉一つを破壊されたぐらいで活動停止に追い込まれてどうする。という事だ。若干野暮な言い分だが、大人の事情で片付けるのは嫌いなので説明を付ける。
動力源が一つしかないのか? という文脈での話だが、残念ながらナンセンスな話題である。だって、動力源が一つしかなかろうが、複数あろうが、一つ止めればすべて止まるから。
動力源を複数設置するというのは、素人(私も素人だけど)が考えているほど簡単ではない。振幅を有するエネルギーであるならば当然出力調整が必要で、複数の動力源が一個の目的・一個の地域へエネルギー伝送をする場合、これらは同期して初めて利用可能なエネルギーを供給できるのである。
これはバイクだろうが戦闘機だろうが火力発電所であろうが同じ。一か所でも動力炉に異常をきたせば、元来のエネルギー生産・伝送計画は緊急事態用の非常態勢になる。特に異常が予期しないものや大規模な場合は、動力炉事態やエネルギー伝送先の機械を保護するために緊急停止する必要さえあるだろう。
発電リズムが崩れたならば、緊急停止しするのは都市帝国の機能を保護する上で当然の反応である。
リアルな話、胆振東部地震の際に北海道全域の電力状態が不安定になった。
あれは苫東厚真火力発電所が損傷を受け発電停止せざるを得なくなったことが大きい。北海道の半分近くの電源を担っていた同発電所が停止するという事は、即時供給量が半減するという事である。確実に供給量と使用量のバランスが崩れる。
電気とは波であり信号であるため、このバランスが大事らしい。どうも、一致しないと送る側がやたらに強くなって使用する側の周波数が乱れるという事らしい。供給が多いと周波数が高くなり、低いと低くなる。つまり、あの時点で突然全域で周波数が低くなったという事である。
発電所には定格出力というものがあって、炉をフルパワーなんて子供じみた事は出来ない。変な周波数の供給しては送電設備や電化製品に不調をきたす可能性があり、ブッツリ切る方が選択として正しく、だからブラックアウトが生じたのである。しかも、殆ど同時に水力発電もうまく行かなくなっていた為、停電は回避できなかったと思われる。
何が言いたいかというと、特に不備の無い送電網と準備態勢であっても、発電所の一つが失われれば、むしろ停電させる方が安全な場合が発生する事も往々にしてあるという事。
都市帝国はどうだったか。
一つの動力源が失われ、しかしエネルギー使用は防戦中ゆえほぼ全量使用。完全に、バランスが崩れているとみて間違いない。
もし、ハブ的な回路も真田さんや隊長が仕留めたとあれば、被害が一つの動力炉で済んだかはわからない。連鎖的に複数が被害を受ければ、ブラックアウトする可能性はより高まる。
このタイミングでヤマトが猛攻し、それがパイプラインであるとか補助動力まで破壊したとあれば……都市帝国の機能を回復することは難しい――いや、敵わないだろう。
都市帝国の機能が回復しないとあれば、放棄して早く超巨大戦艦を出撃させる方が手っ取り早いという判断をするのも当然であろう。下手をすれば、波動砲の攻撃を食らって超巨大戦艦が出撃する前に全てが無に帰する可能性だってあった。
中途半端に都市帝国の復旧作業に全力を尽くして敗北するよりも、あの停止時間中に都市帝国を盾として超巨大戦艦の出撃準備をした方が、自然で合理的だろう。
なぜ予備動力を設置しなかったという誹りがある。
これは確かに一理ある考えで、なぜ当然設置しているであろう予備動力源が働かなかったのかは考える必要が有る。
いや、さっき述べた通りだ。
設置していた予備動力源がヤマトとの戦闘によって破損していたとしても不思議はない。地球艦隊の拡散波動砲に対抗するために稼働し、破損した可能性だってある。
主電源に代わる補助電源の設置を簡単に言っても、出力を確保できなければ意味がない。
例えば病院や市役所などは停電などの緊急事態に備えて発電機を備えているだろう。あるいは、国軍が電源車なんかを防衛の一環として保有していても不思議はない。
だが、果たして巨大な都市帝国全体をカバーするに必要な出力を確保できるだろうか? 武装に動力を回せるだろうか? 回せなかったら、補助電源も意味はない。
真田さんらの決死隊が動力炉を爆破したその瞬間から、ヤマトは使用可能な全砲塔及びミサイル・魚雷の全弾を投射して都市帝国を叩いた。都市帝国主要部であれば秒単位で復旧可能だろうが、発電機を自前で用意できていない施設は停電したまま。全力復旧には至らず、一方的に叩かれたとみて不思議はない。また、回転リングは始動から機能発揮まで10秒かそれ以上かかる――その前にヤマトの攻撃は激化しているため、停止したままのリングの軌道が歪んでもご都合主義とは言えないのではないか。
そもそもの問題として、予備の動力源は必要が薄かった。
大抵の場合白色彗星はガス体を取り払われる前に敵を制圧していたとみて不自然はないだろう。完璧に近く、何度も試行錯誤を重ねたであろう防衛プランは、長年の勝利の歴史の中でさび付いてしまったという可能性もなくはない。
どっかの県もため込んでた発電機使えなかったし。
ズォーダー5世大帝になってからほぼ勝ち続けている。それ以前もガトランティスは敵対国家に対し、勝ち続けていただろう。今後も勝ち続けただろう。この状況が敗北という起こり得る事態を、不測の事態としてしまったといえよう。
であるならば、補助動力の点検などおろそかになって当然だし、そこにリソースを回す必要性は薄い。特に、さらばであればなおの事だ。反対に、テレザートで損害を負ったヤマト2では――この時点で補助動力が損傷しても不思議はない。あるいは、ここから復旧したからどうせ全電源喪失の危険はないと驕ったか。
どちらにせよ、補助動力が機能しなかったとしても……そんなにご都合主義とは思えない。むしろ、シミュレーション的には妥当だろう。
使用する人間の行動予測も含めた、シミュレーション。
ブロック化してこのような事態を避けるべきだった。
という考えもあるが、先ほどの想定と同じく、連戦連勝を重ねたガトランティスにそこまでの必要性は感じられなかったという可能性はある。また、整備の為のブロック化はすでに行っていたが、防衛・戦闘プランとしてのブロック化はしなかった、という可能性もある。
何度も言うが、どう見積もっても何億トンもの巨大物質である回転リングをぐるぐる回してミサイルやビームないし粒子砲をぶっ放すのには莫大なエネルギーが必要だ。これは誰でもわかるようなレベル。
この回転リングをどうやって維持するか。不可能かもしれない。ブロック化した所で、他の動力源に負荷がかかるのは必定。ブロック化によるリスクヘッジも限界というものがある。まして全周にわたって通電させる方式ならば、発電ブロックが一つでも緊急停止するのは危険だろう。全ての動力炉が同期してという事であれば、一か所欠ければ他の発電ブロックが過負荷になってとんでもない事になる。
エネルギー伝送管で都市帝国全域に供給する方式であれば、仮にヤマトの攻撃が幾つかの伝送管を破壊したとすれば、そこで試合終了。
動力炉をどう配置しようが都市帝国の一部は切り捨てねばならない。供給路も防衛機能も一つのコンプレックスとして機能している都市帝国にとって、これは致命的。
良い手のように思えるが、ブロック化しても案外意味が無いかもしれないぞ……
ヤマトが都市帝国に接近できた理由。
白色彗星が崩壊した理由は当該記事で述べた通り。渦の中心核という台風だろうが何だろうが、強力な別の渦をぶち込まれてしまえば当然崩壊する。
それ以外に、なぜヤマトと対峙するのに都市帝国はパラノイア隊しか繰り出さなかったのか。恐らく、都市帝国内に艦隊を駐留させることは可能であろう。にもかかわらず、あの大量の中型高速空母はどこに行ったのか……。
艦隊を周囲に張り付けて身を守ることもできたが―― ヤマト2においてはシリウス方面軍へ新造艦らしき〈メダル―ザ〉を差し向けている。旗艦単艦での遠征は幾らなんでも考えづらいし、ズォーダー大帝が結構本気の攻略作戦を計画していた。火力は多いに越したことないから大戦艦は当然前進、どうも戦艦群は射程距離に問題があるから航空戦力も多めに投入したい。
となれば、艦隊規模を増援に向かわせたとして不思議はない。
そうであるならば、本国艦隊の空母を全艦供出したと考えても当然だろう。
他方、さらばでも説明は付けられる。
やはりあのどこかわからない惑星表面からの第6遊動機動隊出撃は気になる。都市帝国の上下を反転させたように見ても、別に問題はないだろう。発進口の形式が異なるのが問題だが。
別に、第6遊動機動隊がどこから発進していても構わない。元々、あの規模は地球艦隊を殲滅するにはどうにも数が少ないように思われる。都市帝国内部に艦隊を係留させていれば、バルゼーへの増援として出撃・合流させてもおかしくはないだろう。
中型高速空母の行方が問題になるが――すでに出撃して、土星に直進する第6遊動機動隊とは反対方向から地球軍の惑星基地攻略に向かっている。あるいはあらかじめ出撃させて、ガトランティス本隊の後衛として配置した等、いくらでも理由は付けられる。
どちらにせよ、ヤマトとの決戦時に都市帝国が艦隊を保有していなかったとしても不思議はない。
色々描写をすっ飛ばしたのは確かに要らぬクレームがつく原因となったが、当時の製作手順を考えると……非難などできない。
大体、他の作品であったりリメイク作において描かれなかった部分は皆妄想考察で色々補完しているのに、何でか旧作ではそこらへんすっ飛ばす。ダブスタは良くないと思うよ? 人の事いえないけど。
人道問題……?
愛の戦士とか言っている割には前作と言い、次作と言い、やたらに人が死んでいますね。自己犠牲とか献身も一応愛の形なのだが、一般には受け入れがたい。
また、民間人を巻き込みかねない展開も多々見られる。確かにこの観点からの批判は上がってしかるべきだろう。
ただ、民間人、という点については反論可能だ。
都市の住民は……
ちょっとアレな問題――都市帝国に対するヤマトの猛打。前述の通り、これは確かに論争を呼んでしかるべきである。
いくら敵であっても、一般人に対する攻撃なんてあってはならない。たとえ敵がこちら側の一般人に対して攻撃をしていたとしても、こちらが敵側一般人を攻撃していいという理由にはならない。あくまで軍人同士だから、人間同士の殺し合いがギリギリ認められているのである。ガトランティスがそれに服する義務はなかったとしても、地球は現代からそれ以降にかけて自分自身に枷ているのだから守って当然。
大抵の人間が軍属であるとか、下手をすれば全員軍人という可能性もある。つまり、一般人と言う意味での市民が存在しているのかは……疑問。いないという場合も十分あり得る。
例えばヤマト2の第18話にて宴会が設けられていたが、そのステージには女性のダンサー集団が踊りを披露していた。が、だからと言って彼女たちが一般市民とは限らない。恤兵部指揮下の慰問部隊と言う可能性は十分あり得る。
一般に恤兵部(日本軍)は献金・寄付を監督する部署だが、人間の慰問部隊も監督するのだ。つまり、吉本興業と朝日新聞が共同で結成した〈わらわし隊〉。彼らは元来後方にいるべき民間人だが、命の危険を承知で前線まで足を延ばして笑いを届けた。
あるいはアメリカの陸軍通信隊や陸軍航空軍第1映画部隊のような、娯楽とプロパガンダを組み合わせた戦略部隊と言うのも存在している。彼らは興行で兵士を直接喜ばせはしなかったが、兵士やその背後の市民に対して威力を発揮して自軍の正当性を訴えた。
軍隊に存在しているのは決してドンパチやる部署だけではないのだ。しかし、軍隊の中に存在しているのだから、ざっくりみな軍属となる。
そもそも、何をもって市民かというのも定義の必要がある。予備役は果たして市民なのか? 幼い士官候補生は軍人なのか、子供なのか。工場勤務は市民が準軍人なのかも……。どこまでが攻撃対象になるのだろうか。ガトランティスと言う特殊な性質の国家相手では判断がつかない。
大体、軍属以外を残しておく必要性には甚だ疑問符がつく。
ガトランティスが、いくら勝つ見込みが強いとはいえ、負ける可能性を想定せず移動大本営=都市帝国内部に非軍属をそのまま置いておく可能性がどれだけあるだろうか。
となると、ガトランティスに純粋な非軍属がどれだけ必要なのだろうか。仮に存在するとして、彼らの役割は一体何だろうか。
仮に、ガトランティスに非軍属や純粋な軍人以外が存在したとして、どんな人物が想定できるだろうか。
酒保商人や従軍商人。これはあるかもしれないが、多分こいつらは太陽系突入前にさっさと逃げる。また、周辺地域を征服しつくすガトランティスにこの手合いの存在がいる可能性も大して高くない。
ほとんど軍属みたいなもんだし。
家族。ガトランティスがいわゆるSF国家のような人口を生産するタイプであれば端っから存在しない。つまり2199の親衛隊や2202のようなタイプだ。旧作っぽくはない想定だが、選択肢としてはあり得る。
あるいは、ガトランティスがローマ的な行動=領域内の軍団移動には大抵家族を引き連れて行軍をする場合――トイトブルクの森であったように、家族が同行して軍団と共に攻撃される危険は一定程度存在する。要は、家族も引っ付いていくからには当然彼らも攻撃を受ける危険性を承知だろう。その予測が立つからこそ、それを避ける為に、太陽系突入前に脱出していてもおかしくはない。
或いはガトランティスが遊牧国家的な原理を採用していた場合。
こちらはもっと方針が明確だ。つまり、敵が接近してきた場合、遊牧国家はさっさと家財道具をまとめて女子供と共にトンずらするのが基本。だから元朝は北方の元来の本拠地に撤退して北元としてしばらく勢力を保ったのである。大体、彼らはいくつもの都市を渡り歩いて領域国家を形成するから、一個都市を落とされたくらいでは動揺しない。パルティアや元なんかがいい例だ。
ともかくとして、家族を逃がすも家族とともにいるのも、どちらの想定もあり得る。
さっさと逃げるか、覚悟して残るか。
そもそも、都市帝国はその規模や構造からして、大人数を何か月何年と養う事は難しいはず。
都市帝国は原作設定=15キロだと面積は176平方キロ程度。兵庫県三木市(約7万5000人)並みの面積である。表面積では456.8平方キロで群馬県高崎市(約37万人)と同等。
直径が1.9キロならば2.8平方キロと埼玉県蕨市(約7万4000人)の半分並みであり、表面積は7.398平方キロ。京都府向日市(約5万6000人)並みだ。直径5.7キロならば25平方キロの兵庫県伊丹市(約20万人)と同等。表面積は64平方キロで石川県かほく市(約3万4000人)。直径が36キロの場合は1017平方キロと、山口県山口市(約20万人)と同格だ。表面積は2622平方キロで岐阜県高山市(約8万6000人)。
センサー集積を考えると全て居住区にすることは不可能だが、結構収容できる計算。まあ、表面部分のみが可住とするのが妥当だろう。
日本随一の人口密度を誇る豊島区は2万2000人毎平方キロに達する。これに当てはめると直径15キロでは総人口1000万人、1.9キロでは16万2800人、5.7キロなら140万人。最大設定値の36キロならば5700万人が居住可能となる。
とんでもない大きさ直径1200キロ設定ならば――面積113万平方キロ(=ペルーと同等、人口約3300万人)、表面積は294万平方キロ(=アルゼンチンと同等、人口約4000万人)で豊島区並みの密度の場合は総人口646億人?
これは養えない……
住まえることと、養える事には大きな乖離が存在する。
表面から数メートル分は人間の居住区だろう、更に深部はセンサー類が割拠するだろう。惑星部は空洞で艦隊ないしパラノイア隊の建造・整備・係留地。中間地点は上下に動力炉群、そして超巨大戦艦。
どこに農場を置けばいいのだろうか? 食料自給率が恐らくゼロに近いであろう都市帝国に、数千万人以上の人口を長期間保たせるのは、どう考えても無理だろう。
描写に近い数値では、新座市(埼玉県)と同格だが、これを1.9キロ範囲に収めなければならない。原作設定値の場合、大阪市と横浜市を合併させて15キロ範囲内に収めるのと同等の難事業になる。大阪人と横浜人を仲良く住まわすというのも難事業だが――などと冗談など言っていられない。ヤマトの艦内農場と同等の規模の設備が1428台から最大88000台が必要だ。しかも、この8倍直径が原作設定値であるから……途方もない数の設備が必要となる。
もっと言えば、これを稼働させるための原材料も必要となる為、決して無補給で大量の人口を養うことはできない。
都市帝国がアメリカ大陸想定でも、恒常的な生産手段を持たないであう都市帝国では、単なる市民を置いておくほどの余裕はないと考えておかしくはないだろう。軍人ならば価値はあるが、例えば単なる教育者や配管工やキャスターやアイドルと言った存在を養う場所はない。彼ら全員にプロパガンダなりの役目が存在しなければ、都市帝国においておく価値はない。
多分、市民はおらず全員何らかの形で軍に関わっている。そう考えて不思議はない。
大体、攻撃前に都市帝国の住民を避難させるのはガトランティスの責任である。
明らかに地球を攻撃する意思を持った
明らかな攻撃手段を擁する要塞である都市帝国
ヤマトが「民間人がいるかもしれない」と気にする必要はない。気にしていたら反対に地球市民が危険にさらされてしまうだろう。ヤマトはあくまでも地球人類を守る地球防衛軍の戦闘艦であり、クルーはひいては全宇宙を守ろうと意志を明確にしている。
であるなあば、全宇宙を掌中に収めようとする――平和に対する概念の全く違うガトランティスの拠点である都市帝国に誰がいようとも攻撃せざるを得ない。共存しえない、退けられない敵は、滅ぼす他ないのかもしれない。
もう少しヤマトを擁護すると、攻城戦を例に出せる。攻城戦はどんなに守備隊や指揮官が頑張っても、結構な数の民間人を巻き添えにしてしまう。
類例は紀元前から現代まで様々ある。
メギドの戦い以降、度々起こった攻城戦はローマもウィーンもサマルカンドも襄陽・樊城も高松城も旅順も市民を巻き添えにした戦闘だった。ロンドンもドレスデンも東京もオ―フォードあるいは風船爆弾の投下も被害の大小の差こそあれ無差別攻撃であった事には違いない。攻撃側にとっては常に攻撃の意義や敵の邪悪さ重要だし、守勢側は攻撃を受けた事自体やその民間被害に重大さを見出すが……。
パキスタンでもイラクでも彼我共に民間人を巻き添えにした戦闘を繰り広げているのに国際社会で非難できる国はほとんどなく、しかも空爆やらを加えた国は軒並み正義の為だと標榜して国民もそれを信じ――たがっている。
ダブルスタンダードというか……最早目くじらを立てても意味はない、あるいみ人間のさがというものなのだろう。
他方、恐ろしいまでに女性が居ない点の説明は、単純に前線に居ないという答えを想定できる。
パワードスーツのような肉体強化の概念が驚くほど希薄なガトランティスにおいては、肉体的な差異は戦場において足かせとなる可能性があるため、屈強な女性以外は適さない可能性が高い。普通の体力・体格の女性――に限らず軟弱な男も含めて――は補給部隊や総参謀長を務めるサーベラーの様に戦闘指揮の裏方に回っている可能性が高い。あるいは侵攻以前に脱出している可能性も考えられるだろう。
前者ならば、女性進出に関して遅れているとかいう話ではなく適材適所という事になる。
戦場はテレザート空間と第11番惑星と土星圏と月軌道の4つのみであり、地球が一年も踏ん張ったわけでは無い。地球戦役に参加した部隊もナスカ、ゴーランド、デスラー総統、ザバイバル、バルゼー(+ゲルン)と5ないし6名の将軍・提督が率いた部隊だけであって補給部隊等は特に描写にない。
ねじ込むならこの辺りに無理やりねじ込めるだろう。
後者ならば、予想よりもガトランティスが人道的な集団と言える。
てっきり人でなし系集団と思っていたが、彼らなりに軍属と非軍属を分けているのかもしれない。例えば、交戦や抵抗をすれば軍人や軍属、抵抗しなければ非軍属であるとか。これは描写にない為何とも言えない。
前者の想定にせよ、後者の想定にせよ、身内にはそれなりに手厚い集団という事が言えるだろう。
どちらでも、ガトランティスの株は上がる。
どの立場やどの予想を取るかによって、ガトランティスが女性にとって働きやすいか働きにくいかは変わってくるだろう。
都市帝国の落日
何でこんな強力な要塞が落ちたのか、それは完全にサーベラーとゲーニッツの不作為のせいである。ヤマト2において、はっきり言って、それ以外にガトランティスに失点はない。二人の不作為は以下の通り。
1、デスラー総統追い落としの為の部隊への越権的命令。
→ザバイバル戦車軍団全滅。テレサの解放。ヤマト撃滅の好機を粉砕、ガミラスとの同盟破綻。
2、軍司令官でありながら、テレザートへの無策な前進。
→対消滅にまともに突っ込んで、都市帝国が損傷。ヤマトへ追いつくことが出来なくなった。
3、ヤマト決死隊の動力炉部の侵入を前に、責任問題・自身の保身を優先させた。
→都市帝国全機能停止。
度が過ぎるとしか言いようがない。
ヤマト2で殆ど地球に対して圧勝できたはずなのに、この二人のせいで……。
止められなかったラーゼラーにも問題あるが、このサーベラー・ゲーニッツ両名と同様の扱いになるのは正直かわいそうだ。
さらばに関しても、都市帝国が陥落したのはサーベラー総参謀長の防衛プランに対する無理解や彗星帝国の力への奢りが招いた失策と言っても差し支えないだろう。ラーゼラーのような当たり前の憂慮を示した人間に臆病者などと罵るのは、はっきり言って高官として論外だ。
これに苦言を呈すことが出来ず、ラーゼラーを擁護できなかったゲーニッツにも問題がある。
まともじゃない最高幹部二人が余計なことをしまくってくれた……。
これはもう正直、大帝の任命責任も追及しなければならないだろう。どんな国家でも軍の人事は軍の中でしか決定しないが、しかし最高幹部は十分政治家が任命できる。そもそも大帝も軍人である公算が高い。
であるならば……何で更迭しなかったのかな……。
ご都合主義な展開に見えるが……といっても、現実には同等かそれ以上に醜い人たちは幾らでもいる。誠に困った話だが。
例えば――以下、お説教フェイズ。
自分たちが蒔いた災厄の種が目を出したのを与党のせいにする野党や、都合が悪いと全て野党のせいにする与党。しかも、意味もなく攻撃的な言い回しや嫌みや侮辱も上乗せする。本当に幼稚。
彼らは皆、自己保身で記録を都合よくかいつまんだり捏造したりと恐ろしいほどのご都合主義をかましている。挙句に彼らは一人残らず、自分の存在は日本のために不可欠だと確信している節があるし、自分のしていることは寸分違わず国益の為だと信じているらしい。傍から見れば売国に近い行動であっても。さらにお気に入りの無能がはっきりした人物をずっと大臣に据え続けて、大して思い入れの無い人物はすぐに首を切るダブルスタンダード。
しかも支持者も視野狭窄症に陥って、全て肯定しているのだから話にならない。必死にニュアンスを捻じ曲げ全てを肯定し、少しでも気に入らない事は野党のせいにする。実際がどうであれ関係ない。
反対派は全て否定するしか能がないから話にならない。信者レベルの肯定派と同じように彼らも野党の失敗を全部なかった事にしている節がある。
考えずにこれだから手が付けられない。考えてこれだったら余計に手が付けられない。
もっと言えば、リーダーシップを発揮しすぎて民主主義のプロセスを無視するのも、立派なサボタージュ。これ、意外と問題。無茶苦茶な内容でも、プロセスは踏んでいるお隣の国の方がマシと言う話も、ある意味筋の通った話。疑惑が生じても 黙ってたり、即入院したり、嘘の答弁をしたりは軒並み自己保身の為であり、それこそサーベラーとゲーニッツと同じである。
連戦(選挙の話)のおごりというのがあるが、この手合いの不作為は人間という存在自体の”さが”とも言い換えられるだろう。
政治家に限らず、陸上の地方隊だったりが気合の入っていない仕事をして、挙句説明になかった処理だ工程だを後からこっそり付け加えたり。意固地になってスパコンの能力の方向性を見誤った技術者とか、某保安庁が同僚に詐欺かましたり、日本に限らずホワイトハウスに忖度して駆逐艦を移動させた艦隊とか、雑な事をする国家の中枢というのは結構事例がある。地方自治体の顔に泥を塗って官邸に忖度する教育機関など、何がしたいのか不明。
割とマジに、現実で将来においてAIに「人間はゴミだから掃除するデス」といわれる可能性はあるし、言われてしまった場合――私には言い返せる自信がない。
こういった、「なぜそのタイミングで君らはそんなことをしたんだい?」とか「どうして道義的責任に思い至らなかったのか、どうしてそれで国民が納得すると思ったんだい?」とインタビューして見たくなる事例は多い。
このような明らかな、しかも現実にも存在する邪魔は、むしろリアリティがあると言えるのではないだろうか。まともであったり、分をわきまえた高官は現実にも絶対数が不足しているが、このガトランティスでも不足している。
反対に、物凄いリアリティと結論付けてもいいのではないだろうか。
真面目な話、逆に、フィクションぐらいまともに戦う政府高官というのを登場させてほしい。フィクションぐらい完璧な施設とか組織とかも見て見たい。
今回の考察は以上です。