大帝星ガトランティスを探る ・地球侵攻、その目的
ガトランティスがなぜ、地球侵攻を決意したのか。
実は判然としない。
だって、地球艦隊は大型艦・中型艦共に全艦拡散波動砲装備の超火力偏重タイプ。これと正面から戦うとすれば、ガトランティス艦隊の損害は免れない。そんなこと、誰だって精密なシミュレーションなどしなくても十分察しが付く。他の惑星を征服した方が簡単だ。
そこそこ頭のいい原住民を奴隷にしたいのなら、それだって他の惑星を征服した方が簡単。波動砲の技術が欲しかったとしても、デスラー総統に贈ったデスラー艦ですでに習得済みと考えると……。
ますます地球侵攻の合理性が無くなる。
という事で今回はガトランティスにより地球大攻略作戦がなぜ行われたかについての考察をしてみたいと思います。
一部は他の記事の繰り返しみたいになってますがご了承ください。
では、侵攻しない選択肢を提案しうるか、損得から考えてみる。
地球を征服する事がどれだけガトランティスの得になり、損になるのか。検証してみよう。
地球を征服する事によるデメリット。
1、敗北。実際、その通りになった。
そもそも、地球は波動砲という超強力な決戦兵器を全体にいきわたらせるという選択をとったえげつないほどの戦闘国家である。んな簡単に勝てるはずもない。
他の勢力と異なり、地球は火力投射の強化を最優先課題として不足しがちな隻数を補おうとした。これにより、地球艦隊は少数ではあるものの強力で比類なき火力を有する戦闘艦隊を作り上げたのである。以前、各艦種は専門的な兵装を有しており、艦隊を総合力として整備していると結論付けたが、他方で拡散波動砲を巡洋艦以上に配備しているのは艦隊の火力を徹底して向上させる方策と言えるだろう。
他に地球型の戦力を有するのはディンギル帝国のみだが、これはハイパー放射ミサイルを水雷艇と一部母艦に搭載したのみで、煎じ詰めると地球の全員サッカータイプの配備とは異なる。艦隊総力の火力向上を意味しないものでは無いだが、どちらかと言えば攻撃のスピードを上げる為の方策と言え、地球とは考えた方がかなり異なるのだ。
史実に例を取れば、黎明期の日本艦隊。
これは対定遠級戦艦用に巨砲を積んだ三景艦(ホントは四景艦になる予定だったが、取りやめ)を用意し、それ以外の部分においては速射可能な砲を多数搭載した快速艦による襲撃で敵艦隊の攻撃を散らし、圧倒する。結構軽量級の戦闘艦に偏重していたが、その代わりに速射砲を載せて火力を増強したのである。
戦力の配備としては必ずしも充実したものではないが、目的に特化した正しい戦力配備と言えた。同じように予算の無かったオーストリア海軍がまんべんなく戦力を整備しようとしたのとは好対照と言えるだろう。
だが普通、艦隊は総力として充実していれば良く、それが前提。変に特化した艦隊では、能力が欠けて運用に支障がきたしてしまうかもしれない。攻撃に際して、弱点が明確に存在するという事は、自身も身を守りやすいが敵も攻撃しやすいという事。だから普通は無理のない充実した戦力を出来るだけ多数用意する。
それを大規模に揃えて全宇宙を席巻しようとしたのが我らガトランティスであり、或いはボラーや暗黒星団帝国だ。
史実を例に取れば、清の北洋水師。
この艦隊は決戦の要である定遠を中心に主力の補完として装甲巡洋艦、火力支援として防護巡洋艦を導入。駆逐艦や水雷艇を後衛として作戦を立てた。戦いぶりは確かにまずかったかもしれないが、作戦の立て方や戦力の整備に関して言えば、李鴻章や丁如昌の出来る範囲内で最大限の熱意を込めて行ったもの。決して間違ったものではない。
大規模な海軍であるイギリスやドイツは、それぞれ火力重視の快速艦隊を、防護力中心の航洋性重視を編成。戦艦だけではなく巡洋艦や駆逐艦などの戦列の補完戦力も手を抜かずに建造した。
どの国も編成において国力の許す最大限に優秀な戦闘艦を、国家の方針に基づいて合理的に調達していた。一つの分野に偏ることなく、すべての状況に海軍全体として対処できるように過不足なく戦力を整備した。
翻ってガトランティス
問題なのは、これらの国家は地球艦隊と同じタイプの艦隊と戦う時、必ず圧倒的な戦力差を擁しなければならない事。同数の戦力しか用意できなかった場合、確実に戦力はこちらが下となる。
地球艦隊はほとんどすべての艦艇に波動砲が搭載されている。さらばで土星宙域へ向けて出動した地球艦隊は戦艦36隻、巡洋艦81隻。合計で108門の波動砲があの宙域に集結しているのである。
地球はとにかく波動砲の大火力を前方に無理やりにでも投射し、敵艦隊を地球側が攻撃できる最も遠い地点で撃破する事が最優先。数的不利を絶対的に強力な火力で優位に持ち込む。えげつないほどの攻撃重視、カタログスペック重視な建艦政策と言える。
これは、敗北の危険性が十分にある。
ガトランティスは元来艦隊戦によって敵を粉砕あるいは、敵艦隊を白色彗星によって粉砕し本星は艦隊で焦土化する。描写的にはどちらも艦隊よって粉砕するのが常と見ておかしくないだろう。
しかし、である。ガトランティスの頼みとする大艦隊も、3桁の砲門数を誇る波動砲相手にどれだけの戦闘を行え得るのか疑問だ。ガトランティスには同等の射程を持つ火砲が存在しないのである。頭を使えばひっくり返せる、などという簡単な戦力差ではない。
もしかしたら、ガトランティスはこれまで、ここまで火力偏重というか武装過多な艦隊とであったことがなかったのかもしれない。
ガトランティスと同様の戦力構成や射程の艦隊相手なら、時間がかかっても征服できるだろう。充実していても小規模なら簡単に踏みつぶせよう。だが、小規模のくせに飛び道具で身を固めた武装過多な艦隊――こんな危険な勢力がたくさんあってはたまったものでは無い。
勝てない事はないが、だが勝てないかもしれない。
しかし、その程度の事でガトランティスが進路を変えるなど、あってはならない。大したことないデメリットと言えよう。
2.反乱。これは地球を征服した後の話だ。
まさか、艦隊が無傷で勝つという最善のシナリオ以外を想定しない事はありえないだろう。いくらサーベラーが高飛車であったとしても、あり得ないだろう。
最悪に近いシナリオで話を進める。
いくら地球艦隊が全滅したとはいえ、ガトランティスの大艦隊を打ち破ったことに他ならない。ガス体も取り払われ、都市帝国も大損害を負った。そして超巨大戦艦のお出ましまであったとしたら――もはやそれは勝利ではない。ステールメイトだ。
完全勝利出なかった場合、ガトランティス側も圧倒的な降伏条件を突き付け難い。
地球を搾取できなければガトランティスの再建は難しい。拡散波動砲やショックカノンの技術を手に入れ、それによってガトランティスを再び偉大にする必要がある。
だが、地球の反発は想像に難くない。連邦大統領の様に、十分戦ったのだから対等な関係でもおかしくないと、地球人が言い出しかねない。
普通は、征服された国と言うのは常に無条件。しかも強い国であればあるほど、その強さをくじくため徹底的に搾取されてしまう。だが、搾取される側としては不愉快以外の何物でも無い。
もし、残存地球艦隊の数隻が反乱を侵したならば?
ヤマト2であれば火炎直撃砲が存在するため、鎮圧は難しくはない。しかしさらばの場合はほとんど鎮圧の手段を持たない。こうなった場合――地球そのものを盾にするほかないが、ガトランティスのやり方を身をもって経験した地球人からすれば、地球人類を守る為の地球を見捨てるという選択もしかねない。
地球の反乱を受けた場合、ガトランティスの戦力では鎮圧が難しいのだ。
仮に艦隊戦力の中に地球人がまぎれていても同じ事。むしろ余計にややこしい事になってしまう。鎮圧しようにも、反乱軍に近づけないし場合によってはどこから反乱の第二波が発生するかわからない。
地球のような強力な星であれば、反乱と言う選択肢も取れる。が、他の星はどうだろうか。本来は反乱などしようのない他の弱小勢力――これが地球人に勇気づけられて反乱を開始すれば、もう反乱のドミノ倒しが起きかねない。
事実上領土を持たないガトランティスにこのような危険は薄いが、差し当たっての占領地だとしても反乱を起こされては面倒。
地球征服にはこの危険が現実の物として存在するのだ。
まあ、そうなったらさっさと逃げればいいだけだが。
地球を征服する事によるメリット
1.資源獲得
常に都市帝国は新しい資源を補充しなければ、その維持が出来ない。食料や工業原材料など、あるいは人間も補充する必要が有るかもしれない。
アンドロメダ星雲から太陽系までの経路は星系が少ない空間だ。直進した場合、この距離は無補給で進まねばならない。出来るだけ早く補給しなければ都市帝国が機能不全を起こす危険性が生じる。
確かに、大幅にコースを外れれば恒星系に突入することも可能だが、有益な星ばかりとは限らない。ガトランティスは基本的に征服する場合、必ず前衛艦隊を配置する。彼らが付近の星系を探査するだろうが、ガトランティスが求めるのは文明のある星であって、無人の星などは大して意味がない。
前衛艦隊を派遣し、補給地として有望な惑星を探した結果が地球だった。これだけでも十分理に適う。
地球という存在を知った上ならばなおさら征服する必要がある。
資源というのは物理的なモノだけではない。知識というのも一種の資源である。
あの強力な波動砲に関する技術は、魅力的というほかない。ガトランティス艦艇に搭載されているどの艦砲より遠距離まで砲撃できる通常運用可能な決戦兵器である。征服することが出来れば、類似の技術を持った敵に対してもガトランティスの技術独力で勝利することもできるし、導入した波動砲を以て簡単に征服せしめることが出来る。
波動砲以上に注目したいのがショックカノンだ。これは大抵の勢力の戦闘艦に対して貫通力を持つ。しかも射程が結構長く、衝撃砲発射許可の下りていなかった大戦艦は手も足も出なかった。この地味だが強力な兵器はぜひとも手に入れたいし、反対に地球は絶対に取られたくない技術だろう。
ともかくとして、資源が必要なガトランティスにとって、この上ない資源供給源として地球は非常に魅力的であるという事。
2.戦闘そのもの
戦争に勝つには、強力な兵器が必要であるが、それよりももっと重要なのは数である。数を投入できなければ話にならない。
数を投入するには人間も相当数郎乳する必要が有る。特に、Gスーツすら保有していない疑惑のあるガトランティスにおいて、マンパワーは何物にも勝る信頼すべき兵器であろう。屈強な兵士を維持するには金も食料も必要だ。
が、ガトランティスにそんな余裕はない。
だったら保有しなけりゃいいじゃん。
と、遊牧民的な発想が発生してもおかしくなはい。
実際問題として退役軍人の処遇は常に騒動を巻き起こす。
アメリカの退役軍人にまつわる問題は、国家を守った英雄に対する当たり前の奉仕と、平時における国家の負担とアンタッチャブル。金銭的な支援なのか精神的な支援なのか、何が必要なのかケースバイケースゆえに、整備が大変。
で、結構票田だったりするから政治家はひやひやしながら退役軍人やその周辺人物に媚びをうっている。
アメリカに限らず、どこの国でも問題だ。
日本だって、自衛隊の生活になれてしまい、いざ退官したら何をしていいのかイマイチわからない――という人も少なくない。そういう問題を普通の人ならば金と真心のバランスを必死にとって何とが解消しようと知恵を振り絞る。
が、古式ゆかしい人はそうではない。ちゃっちゃと新しい戦争を引き起こして面倒な彼らを前線に突っ込めば敵が問題を解決してくれる。
この方針を一度取ってしまうと、軍人に対する福利厚生は戦える存在である限りに限るようになってしまい、平時の社会への復帰の道を閉ざしてしまうだろう。余程優秀でなければ、現役での福利厚生だって怪しくなる。
そして、戦闘に役立たなくなった軍人の対処は、とにかく消えてもらう事であり、戦争をし続ける事となってしまう。
仮に、ガトランティスがこのような対処を取っていた場合。戦争は資源収奪であると同時に、人口調整にも使われているという事になる。ガトランティスにとって、戦争はまるで新陳代謝を促す刺激――それ以上でも無ければ、それ以下でもないという事だ。
アンドロメダ星雲から太陽系にかけての間で戦争の出来るような文明国家はない。前述の想定が正しければ、これは死活問題だ。残念ながら、テレザート攻略も前段階で達成したアンドロメタ星雲制覇に比べれば大したことない事業である事は間違いない。このアンドロメダ星雲制覇という大事業の余波として存在する大艦隊の消費を、早急に進めなければならない。
そのためには、強力な戦闘艦隊を有している地球は格好の的。むしろ、強ければ強いほど、地球を征服する理由になる。メリットになるのだ。
地球侵攻、その価値
地球侵攻について
一つ目の仮定は、テレザートでうまく消費しきるはずだった戦力が全然消費できずに、食料等の問題が発生していたという事。これならば偵察して強いとわかってもなお、むしろ強いくらいがいいと地球に狙いを定めた理由として十分。
二つ目の仮定は、世代交代の必要性。ガトランティスからすれば、新しい兵器を使うには新しい世代を用意したいだろうし、旧世代がずっと居座られては迷惑。
新しい世代を育成するには、都市帝国のキャパシティを超える人員を確保する必要がるが、その決定を簡単には下せないだろう。飢えたらヤバい。さすがに帝国を危うくする決定を大帝が下そうとするならば、あの3馬鹿ですら大帝に反旗を翻す可能性がある。だいたい、あの大帝が何も考えずにこの手の決定を下すとは思えない。戦争の予定があれば、キャパシティを少し超えている状態でも消費するめどがつくゆえに、新世代育成の許可も出るだろう。
だから地球とは敗北の危険を冒してでも戦闘をする必要が有った。
何にせよ、ガトランティスにとって地球は、征服にともないデメリットよりもはるかに大きなメリットをもたらす惑星だった。
仮に敗北の危険を冒したとしても、そのメリットを奪いに行くだけの価値を持った惑星だったといえるだろう。
これらの想定をしてもなお、欠けている視点がある。
なぜ地球を知ったのか。彼らは地球を目的としてかなり早い段階から進路を定めていた節がある。マジのガチにずっと同じ軌道をぐるぐる回っていては宇宙の制覇など出来るはずもないのだから、軌道はガトランティス自身が定めるところにより変更するだろう。軌道変更には目的が伴ってしかるべき。
しかし、地球はガミラスと違い、有名どころの国家ではない。
そんな地球の為にわざわざ軌道変更したとは思えない。仮に地球を目的に軌道変更したならば――何かしら、ガトランティスの耳に地球の名前が入る理由があるはず。
一つはデスラー総統。
さらばの明らかに格下扱いな待遇はおそらく……帝国は強い存在を尊重し、執念の男であるデスラーには敬意を払うがそれでは一個人であって、しかしガミラスの総統としては地球に負けた以上敬意を払うに値しない。という判断が下ったか。
他方、2においては残存艦隊は結構な戦力を誇り、負けたとしても邪険にするのは失礼にあたると、判断された。これは呼びかけに現れており、さらばではデスラーと呼び捨てだが、2では総統と肩書で呼ばれていることからも合理性がある説明と言える。と思うの。
このお方、どうしてもヤマトに復讐がしたい。
ヤマトにリベンジするにはヤマトを引きずり出す必要が有る。本当ならば自分が地球にもう一度遊星爆弾でも送り込みたいのだが、そこまでの戦力はない。
ならば、ガトランティスの大方針である宇宙制覇の過程の一つとして地球に攻撃を加えてもらえばいい。ガトランティスにとって、地球は征服するに足る魅力を持った星だ。食指を伸ばさない理由がない。
そうすれば確実に地球を救うためにヤマトは出撃する。
そこを叩けばいい。ガトランティス=大帝にとっては先ほどから述べている通り、いくらでも地球を攻める理由があるし、その上で障害となりうるヤマトを自分が仕留めるといえば大帝も邪魔はすまい。
総統のプレゼンの結果、地球が侵略するに値する星であると、大帝が認識した可能性は十分ある。
迷惑だなぁ~。
二つ目の理由として、地球自身。
ご存じの通り、一時期地球では宇宙研究の過程で信号を宇宙へと発信するのが流行った。カールセーガン氏がご存命だった頃の話。
この頃はずっと宇宙に発信し続け、ボイジャーを打ち上げて、そこにメッセージをのせて遠い外宇宙へ送り出した。あるいはダイレクトに信号を発信した。そうして我々地球人は自ら発見してもらえるように必死に手を振って、のろしを上げた。
阻害されなければこれらのメッセージは令和の日本が手に負える範囲外の宇宙へと今も地球の存在を誇示しているのである。
どこかの段階でガトランティスに200年前の発信のいづれかが届いたとしても、そんなにご都合主義な話とはならないだろう。
三つ目はテレサ。
彼女が発した信号は全宇宙に広がり、受信可能な勢力全てに届いただろう。可能性として、テレザートに最も近い文明勢力が地球だけだった、と想定できる。
テレザート最・近傍空間は当然ガトランティスの勢力下におかれており、またアンドロメダ銀河側の空間にあった惑星国家はあらかたガトランティスに平らげられていてもおかしくはない。
そうなると、ガトランティスの進行方向側でテレザートからの信号を受信できる最も近い位置にある文明が地球だけだった、だからガトランティスは地球に速やかに偵察艇を派遣して探った。
その結果、征服するに足る惑星だと認識したため艦隊を発し侵攻した。これもありそうな話と言えるのではないだろうか。
まとめます
長々と述べたように、結構ガトランティスには地球を侵攻する理由がある。ガトランティスが地球を知る機会も結構ある。
地球と戦い、負ける可能性もあるが勝つ可能性も十分ある。
地球征服すればデメリットよりはるかにメリットを獲得できる。
ガトランティスは何も、別に意味もなく宇宙を回っているわけでは無い。生きるために周回しているのでありまた、イデオロギーによって突き動かされている。ガトランティスは存在する限り宇宙を周回し侵略を続けなければならない。
地球侵攻もガトランティスが接触し得る存在の中で現状最も価値のある惑星だった。だから地球に狙いを定めた、それ以上でも以下でもない。
ある意味、≪腹が減ったから飯を食う≫のと同じ、ごく自然な事だった。
これで十分合理的な説明が出来たのではないだろうか。
我ながらアニメに何ムキになってんだと思う……