旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

拡散波動砲――第二期地球艦隊の切り札――

 

 
 拡散波動砲はさらばとヤマト2において登場した新型波動砲である。

 さらばにおいて第二期地球艦隊の華々しい戦果を印象付ける決戦兵器であった。ヤマト2においても白色彗星のガス体を取り除く圧倒的な威力を見せつけ、第二期地球艦隊の強力さを印象付けた。

 しかし、その存在は説明が非常に難しい。

 

 

 

 拡散波動砲、その能力
 通常の波動砲が点と直線を制する兵器であるならば、面と領域を制する兵器である。

 発射直後においては通常の波動砲と変わらないが、しかし一定程度進んだのち華が開くようにパッと拡散し、塊状になった波動砲の欠片が円錐状の空間を貫く。拡散した後の一発は原作の描写によれば4、50メートルほどの直径で大戦艦を文字通り粉砕した。

 

 拡散波動砲一発当たりの射程は不明。

 さらばにおいてアンドロメダ単艦での発射が見られたものの、射程等に関する数値読み上げなしであった為不明。他方げヤマト2において全艦隊による一斉射撃の準備の際に各種数値が読み上げられた。
 そこから推測するに、射程は11万宇宙キロほど。白色彗星の強大な超重力の作用に抗い6600キロ以上の円錐直径に拡散、これによって全体からガス体に過負荷を与えて崩壊させた。故に万全の状態における拡散範囲の数値は確定できない。が、アンドロメダのモニター描写から推測すると約5万宇宙キロから3万宇宙キロが拡散域と思われる。

 

 拡散したエネルギー塊一つ当たりは――恐らく3TNT換算エクサトンぐらいだろうか。物凄くテキトーな単純計算だが。

 これは拡散波動砲の一発が拡散するとそれが1000分の1程ならばの想定。途中で雲散するエネルギーだとか拡散した波動砲同士の干渉によるエネルギーの浪費等は全くテキトーに放置して計算したため、目安程度。まあ、これぐらいは見込める。
 また、拡散した一発は簡単にそのエネルギーが発散されるわけでは無く、恐らく塊状になったその形状ゆえに内部にエネルギーが対流するような形であれば、一隻や二隻を破壊した程度で全てのエネルギーが解放されるはずはない。

 

 つまるところ、拡散波動砲ヤマトの波動砲のように幾らか解釈の幅を持たせられる形式では無く、少なくともというかほぼ確実に単純な荷電タキオン粒子砲という事になろう。そうでなければ、拡散させることが難しいし、拡散させる道理が無くなる

 波動砲は水鉄砲とは異なるが、しかし凝集した粒子がそれに近いふるまいをすると考えれば、拡散させる方法は対流のさせ方でいくらでも可能。発射角であるとか、磁力の拘束であるとか……。だが、波動砲そのものが他の原理であるとかをベースにした場合はかなり拡散させるのが苦しい。

 

 波動砲がその正体としてホーキング輻射なり、情報奔流なりの説明がつけられる。

 が、後者なら一束のエネルギー流れは不可分。情報奔流がバラバラになった場合、味方はその影響の全てを把握しきれないかもしれない。反応し損ねた反物質みたいに、ほんの僅か反応し損ねた波動砲塊が出てしまうという珍事も発生しかねないだろう。

 前者の場合、重力なり磁力なり、或いは輻射自身の反射か何かで拡散させるのだろうが――そもそもホーキング輻射を拡散させられるか大いに疑問。ホーキング輻射は熱的なエネルギーであり、エグイほど小さいブラックホールでなければ利用可能なほどのエネルギーは得られないだろう。どちらかといえば気流というか、小川のようなこの輻射がそもそも波動砲に使えるか考える必要が実はあるのだが、元から少なくとも凝集・エネルギー発生量が性質として低レベルなホーキング輻射を拡散してしまうと一発当たりが非常に小さなエネルギーになってしまう事は想像に難くない。

 はっきり言ってホーキング輻射より、中性子星のジェットの方が非常に強力な電磁波と放射線を非常に狭い幅に集中噴射である為威力が高いことが予想される。ブラックホールの想像図のあの南北ジェットはプラズマ。ホーキング輻射は関係ないらしい。

 

 ともかくとして、波動砲の威力を減じてまで拡散させる道理が無い。だって多数の艦が舳先を並べて戦うのだから、効果は飲位の拡大は十分担保可能なのだもの

 

 

 拡散への疑義への回答

 ビーム兵器を拡散させる――そもそもビーム兵器では無く粒子兵器とするのが妥当。

 高エネルギービームではない、水鉄砲的なエネルギー奔流。ビームの場合質量を持つほどの高エネルギー・凝集するようなものの場合は、そもそもビーム兵器かどうか怪しい。水鉄砲的エネルギー奔流であれば凝集し、一定程度結合を伴うようなものであれば特に自身が質量を持ち当然の如く発射後射手の手を離れても自由落下的に空間を直進するだろう。敵にぶち当たるまで、拡散した一発は空間を進む。つまり――

 拡散させて何が悪い

 使用目的によって拡散と直流で分けて庭に水を撒くだろう、車や家を掃除するだろう。それと大差ない。規模がまるっきり異なるが……確かに一発一発の威力は多少減じるが、高荷電によって一時的に質量を持ったような形である為、敵を巨大流星帯に叩き込んだような形に出来るもっと言えば、一発で敵を消し飛ばす必要はない。何発かぶち当てて無力化できればそれでいい。そっちの方が相手は味方艦の回収や修復に手間取って自軍の戦略的優位確立に寄与できる。

 

 つまり、拡散させる意味がないという発想自体がナンセンスで、全く描写もそもそもの設定もわかっていない発言質問者が戦略的発想も、柔軟な発想も何ら持ち合わせていない査証となってしまう
 屈託のない純粋なまなざしで問いかけるなら、有りの質問。だが、したり顔で質問したら赤っ恥必至とだけ述べておく。

 

 

 

 拡散の原理
 波動砲の原理自体不明。故に拡散原理も不明だが、推測は可能だろう


 可能性としては、エネルギー奔流にストレスを与えることでライフリング(磁力線のこと)とは逆方向の力を貯め、その磁力線の弱まった地点で一気に発散し拡散させる方法という可能性。

 主力戦艦の波動砲に見られる中央仕切り版によって、中途半端にねじられた二つのエネルギー奔流が双方ぶち当たってねじれて、それを無理やり磁力線によって拘束する。磁力線の力の強さによって射程は前後し、しかし全般として最大11万宇宙キロほどまでしか保てない。11万宇宙キロほどの地点では元来後方11万宇宙キロほど程の空間と磁力線がつながるはずだが、それが伝達できず、弱点となる。そこで拡散。わずかに残った磁力線が拡散のガイドとなって、スプリンクラーのように敵艦隊に高荷電タキオン粒子が降り注ぐ。

  他にも、理由は考えられるだろう。が、私には思い浮かばなかったので端折る

 中央仕切り版は恐らく……無理やり高荷電状態にしたニュートリノ何かを結晶状態にさせたとかだろう。波動エンジンが粒子をバラバラに再構築するのだから、その過程で当然ニュートリノが発生してもおかしくはない。高荷電状態にすることが可能であれば、当然拘束できる。これを中央仕切り版周辺に展開できればその高密度のメッキで仕切り版と波動砲の間に緩衝空間を設けることは可能だろう。であるからこそ、都市衛星ウルクとの戦闘でニュートリノビームを真田さんが見破った=地球にも同様の考え方があったが、コスパの問題で切り捨てた。という話にもつなげられる。 

 

 

 巡洋艦の場合

 恐らくどうしても艦の全長から波動エンジンの大きさが小さくならざるを得ないだろう。つまり、出力が戦艦のそれに比べて非常に小さい。当然、波動砲発射に必要なエネルギーの総量自体が小さくなるだろう、タキオン粒子の生成量も限定されるだろう。

 その限定されたタキオン粒子を前方に投射、他方でエンジンは全力運転を行い磁力線を強力に前方投射しタキオン粒子の奔流がその先端に到着した時、この磁力線のかごを突き破って発散・直撃。結果として主力戦艦やアンドロメダのそれと同じ拡散波動砲とすることが可能。

 純粋なタキオン粒子砲であれば、磁力線による拘束はエネルギーをタキオン粒子に加えることにもつながるだろう、であれば敵への直撃直前に猛烈な磁力を突破する行程はむしろ波動砲の一発一発の威力を担保する事になるだろう。元から強力な主力戦艦のそれでは磁力線の強度が担保出来ず不可能だが、巡洋艦程度の波動砲ならば可能――という事が説明できる。

 巡洋艦の拡散波動砲は中型艦が大型艦と同じ火力になる様に必死に考えた苦心の作品、という事になるだろう

 

 


 アンドロメダの場合

 波動砲はそれまでの設定では波動エンジンが生成するエネルギーを全て一時に前方に投射するため、1門であることが当然であった。
 しかし、アンドロメダは連装である。ちゃんと理由を付けなければ、ご都合主義とつけ入れられる隙を作ってしまう

 

 説明の一つは、実は連装ではないというもの
 つまり、単純に砲口が二つ付いているだけで、発射機構は単一であるという仮定。

 薬室から放たれたエネルギー奔流が二つに砲口に流される――なんでそんなことをする必要が有るかといえば、拡散させるためというのがあげられるだろう。あるいは、砲口(砲身部分――があると言えるのかは疑問だが)を出来るだけ小さく開ける事で波動砲の軌道を収束させるためという想定もできる。自由に動き回れる状態の粒子が、簡単に雲散してしまうのは想像に難くはない。その雲散を止める為に収束させる必要があるが、砲口を小さくすることでその収束率を可能な限り高める。

 

 もう一つの説明は、この場合は薬室は並列で独立していて、薬室までのエネルギー伝導路が共有という想定。連装自体の理由は、前述と被るが、拡散させるために連装としたというもの。


 何で2門あれば拡散できるのかといえば、“波動ミスト”を生成する方法の一つにそうあるから。
 ミスト用のノズルヘッドにはいくつか形状があるが、複数の水流をノズル先端の極小開口部めがけて高圧で送り込む形式が一番単純なノズルヘッドの形だ。逆に、水流は一本だが、複数の高速空気流をぶち当てて細い開口部から膜状の液体を噴射、その膜が自然崩壊して霧状になる形式もある。スプレーノズルはこの形だ。

 少し変わったミスト用のノズルヘッドは霧のいけうちが開発したドライフォグ(私が朝、ベースとして見ている番組がバレてしまう……)これが私が2門あれば~と考えた発想元。

 

 単純なノズルヘッドを角度を付けて向かい合わせにしてその霧をぶつけ合い、更に圧搾空気をぶち当てる事で極めて細かい粒子となった水を前方に噴射する方式だ。
 何が言いたいかといえば、ミスト化するには水流にストレスを与える必要があるという事。これが波動砲でも通用する原理であるとすれば、拡散波動砲もできなくはないだろう。荷電粒子砲にその理論が通用するかどうかは疑問だが、一方で一応タキオン粒子も物質ではあるのだからそれなりに物理の法則にしたがう必要が有る。

 量子流体力学って学問もあるそうですし、本気の考察はそういう学科を専攻した方に譲ります。

 

 

 

 あるいは、主力戦艦とおおむね同じ形式だが、威力を高めるために連装。基本的には主力戦艦と同じやり方で拡散させる。

 アンドロメダの砲口内側は微妙に外側に向くような傾斜を設けられているが、他方で舷側は傾斜なしの直進の磁力線を発することが出来るだろう。つまるところ、外側に飛び出そうとするエネルギー奔流を強力な磁力線によって無理やり拘束する。この無理やりの二乗な拘束を行うからこそ、主力戦艦よりもさらに強力に拡散させることが可能。という説明。

 二門あることが、中央仕切り版を設けたのと同じ作用をもたらすという事。

 

 

 一応、どの想定でも連装であることと拡散させることを結びつけられたと思う。

 採用した理由としては主力戦艦方式とアンドロメダ方式のどちらがより威力を高めた拡散が出来るか、その実験という事になるだろう

 

 

 

 アンドロメダと主力戦艦の砲口の違いが、拡散方式の違いに起因するとすれば、アンドロメダが唯一の連装砲搭載艦である理由も説明がつく。


 艦隊旗艦としての運用を前提にしたとしても、整備のために同等の能力を持った艦が必要になる為、複数隻の建造が必要だ。大和型戦艦であるとか、こんごう型護衛艦であるとかが例に挙げられる。
 一方で、必要だから作ったが――同時に多数ある必要がないから多くは作らなかった艦もある巡洋戦艦フッドや戦艦ヴァンガードが判り易い例だろう。どちらも一種の技術的到達点として建造が許可されたが、「時代に合わない」として複数隻の建造は中止された艦。

 

 アンドロメダは後者の事例に近いだろう。拡散波動砲の拡散方式のバリエーションや、効率を確認するためのプロトタイプ。であるならば、アンドロメダのような連装波動砲搭載艦をやたらに作る必要はない。すでに完成されている主力戦艦の方式をベースとして、ひょっとしたらのレベルで、装備させてみた。これで具合が良ければ、本採用で主力戦艦の形式は用いないという事になっただろう。つまるところ、仮にアンドロメダが新戦艦のプロトタイプとして採用されたとしても、それは戦艦の性能のプロットとしてであり、連装砲をそのままにするかは不明。結局主力戦艦の砲口形式を採用する可能性だってある。

 ふわっとしたように思われるかもしれないが、事実は小説より奇なり。やってみた程度でやらかすクリエイティブな人が海軍には多い地球防衛軍にそういうクリエイティブな人がいない、なんて想定はむしろご都合主義。

 

 

 2202の話なんか知らん。あれ、私が文系のせいで理解できないのか、理系が設定に関わらなかったのか、少なくとも表になっている設定に関して言えば、まるっきり理解に苦しむ設定。何で直列で2門扱いになるのか。

 挙句、拡散波動砲が最大の効力を発揮する、搭載する理由を持つパトロール艦に装備させないというのがもう意味不明。しかも主力戦艦は発射しないというのだからなお、話にならない。

 

 あの時点でエンケラドゥス守備隊が敗北したならば、土星圏がガトランティスの勢力下に落ち、防衛戦闘が苦しくなる――のにあんな能力の艦隊を配備する。これも意味不明。敵艦隊は勝手に接近してくれているのに、すでに射程圏内に捉えているのに発射しない。結局本隊は到着と同時に拡散波動砲をぶっ放しているのだから発砲制限を行う意味もない。一通り、合理性の無い展開……。

 それっぽい演出、それ以上ではない。としが言いようがない。

 

 

 劇中の活躍

 ぱっと見にはご都合主義だといわれてしまうため、個別に出来るだけ詳しい考察を加えたい

 さらばにおいては土星決戦終盤においてその力を発揮、バルゼー艦隊の主力を撃滅した。更に続く白色彗星に対し、主力戦艦や巡洋艦と共にマルチ隊形を展開、これを迎え撃った。しかし、白色彗星のガス体を打ち破る事叶わず、全艦喪失の憂き目にあった。

 これは恐らく、白色彗星が万全の状態であったことが要因だろう。さらばにおいては白色彗星は一度も大規模エネルギーの投射を受けていなかった。だからこそ、通用しなかった。だからこそ、ヤマトの弱点を貫いた波動砲が確実に効果を発したという事が出来る。

 

 ヤマト2においては、直進するバルゼー艦隊を迎撃するために拡散波動砲発射隊形を展開、一斉射撃を以て決着を付ける――はずが火炎直撃砲の連発によって叶わず。

 何とかバルゼー艦隊を撃滅した地球艦隊は白色彗星の緊急ワープにも耐え、マルチ隊形を展開。拡散波動砲の全艦一斉射撃を以てこれを迎撃した。これによりガス体を取り払い、都市帝国への直接攻撃につなげた。

 説明としては、やはりテレサの捨て身のテレザート大爆発により一時的とはいえ、都市帝国は大ダメージを負った。恐らく、ガス体がなければあの時点で都市帝国は崩壊していただろう、それを防いだが――代わりに制御装置に損傷が発生してしまったと考えて不思議はない。しかもテレザート爆発からそう長い時間たっておらず、土星圏への緊急ワープであり、ワープ直後の波動砲迎撃であるから過負荷が起こってもおかしくはない。

 であるならば、ヤマト2において地球艦隊の拡散波動砲が白色彗星のガス体を取り払ったのも、非常に合理的と言えるだろう。他方で、都市帝国に対して全く影響がなかったこともまた、合理的と言えるだろう。

 

 

 拡散波動砲は非常に有用な決戦兵器である。

 どうやっても一発当たりは数TNT換算テラトンは下回らないだろう。ショックカノンなんかよりはるかに強力。これを巡洋艦のような中型艦艇や護衛艦のような小型艦艇に載せれば、非常な火力を艦隊総力として保有することが出来る。単体でも、敵艦隊に襲われた際に最低でも離脱することぐらいは可能になる。これほど艦の生存性を高め、汎用な兵器はヤマト世界では他にほとんど類例がない。


 にもかかわらず以降の登場が見られないのは白色彗星に対する敗戦の記憶だろう。

 人員を失ったことで中途半端な無人戦艦を投入して地球を守る羽目になった。敵要塞に対する恐怖から拡大波動砲などという別形式の波動砲を作り上げてしまった。これは迷走というほかない。普通に拡散波動砲を標準装備しておけばよかったのに。

 

 

 

 ヤマト作品は忌憚ない表現をさせてもらえば迷走している。旧作もリメイク作も大迷走している。

 結果、合理性の高い拡散波動砲は日の目を見ず、復活編という中途半端な作品で引っ張り出された。作品の中の兵器としての価値では無く、ファンを引き留めるための決戦兵器として持ち出された。何とも不運な兵器である。

 まるであだ花の様な兵器……