旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ヤマトご都合主義の解決への試み――沈み込む艦載機、すぐ直る第三艦橋――

 

 

 ヤマトにおけるご都合主義、或いはSFから外れた描写として挙げられる事はいくつか代表例がある。

 発進の際に沈み込むガミラス艦載機。
 下方に落ちてゆく戦艦。
 下方に兵装の無い戦艦。
 生える第3艦橋。 

 確かに矛盾やご都合主義と言える。いや、そう見える。まれにだが、一々本気で揶揄する反応があったりする。

 

 素晴らしいよ。その熱意、熱量。

 だが、しかし、まるで全然、妥当性に欠ける指摘と呼ぶほかない

 

 

 

 まずは戦艦の武装配置について説明を試みる。これを説明することで、落ちる戦艦というものも説明が付けられるからだ


 常々ヤマト世界において艦載機は実際の世界と同様か、それ以上に艦載機が重要であると述べて来た。理由は非常な攻撃力を有するが一方で小型、高速である為、パイロットや操縦支援装置、或いは迎撃側のコリジョンコース現象によって非常に迎撃が困難であることがあげられる。


 艦載機はその操縦がおおむね座って行われるが、場合によっては寝そべっても行われる。前者であれば首は自由だが、後者であれば――それ以上は顔を上げられない。つまり、攻撃の方向が限定されるという事。首を上に上げられないなら、下方から上方へ向かう攻撃コースは結構苦しい。休暇中にうっかり太ってしまったパイロットなんかが居ようものなら首の肉で一発アウトだ。他方で上方から下方への攻撃コースは簡単

 

 

 迎撃側はどっから攻撃が加えられても迎撃が出来るようにしなければならない。迎撃が容易になる様にできれば予想コースを見付けて、重点的に配備したい。
 攻撃側は物理・肉体的に困難の少ない上から下への攻撃コースがほとんど唯一であり、最も効果の高いコースである。


 迎撃側はどうせ敵は上から来るのだから、艦上方へ対艦載機戦用の火砲を集中させるのが最も合理的で効果的
 攻撃側は第一波の攻撃が多少でも成功して、敵のコンピューターに損傷や過負荷でも起これば、第二波以降の攻撃は容易に成功し得る。たとえコースが予想されていても、そこは自身の技量と機体の能力で何とか出来る。
 つまり、迎撃側も攻撃側も艦上方からの攻撃コースを旨とするのが最も合理的であると論じられる。

 

 

 下方に落ちていく戦艦も説明は簡単。
 艦の武装が上方に集中しているため、艦底部を晒す事だけは避けねばならない。特に離脱ないし落伍中の緊急事態で、艦の能力が脆弱な中で武装の無い艦底部は晒せない。

 敵が前方の居る中でそれを避けるには、上方へ向かってしまってはむしろ艦底部を晒してしまう。

 横へそれるといっても、味方がその離脱先にいないとも限らない。艦隊運動的にも横方向への運動の可能性は高い故、横へそれたら激突する可能性も高くなる。

 他方で、艦隊運動的に少数艦艇であればなおの事、下方への運動はかなり少ないだろうと推測できる。そして、ヤマト世界においてはほとんどが数十隻程度で艦隊を編成、2202のような数千数万などという途方もない数での戦闘はあり得なかった。縦軸に分厚い艦隊陣形を組むことはまずありえなかった。


 であるならば……下方こそ、はけるべき方向。

 

 下方へはければ、敵艦隊に頭を下げる格好になり――艦長的には不愉快かもしれないが――必然的に装甲が分厚く、火力が温存できていれば砲撃続行も可能。そして、弱点である艦底部は味方艦が守ってくれる。

 という事で、艦は下方へ落ちてゆくのではなく、わざわざ選んで下方へ離脱して行っているのである、といえる

 
 


 沈み込むガミラス艦載機に関しては、これは制作側はどう思っていたのか正直不明だがどうも情熱を以て描写した可能性がある。何といってもあのゴルバ戦でスクランブル発進を見せたが、全機一度沈み込んでからゴルバに突撃していった。

 

 艦載機が発艦時に沈み込むのは現実の(地上)世界ではよくある話
 飛ぶのに十分な揚力は生まれているが、飛行甲板から飛び出した際に、今まで揚力に上乗せされていた地面効果(いうなれば甲板効果か)がゼロになったために、甲板高分沈み込んだだけ。


 宇宙空母の場合はこれとは多少異なるが、外見的に同じようになる説明を付けることは可能。つまり、飛行甲板に人工重力が作用しているという仮定だ。

 人工重力が飛行甲板に掛っているという事は、飛び立った直後は、脚が押さえつけて抗っていた分の重力を推進力のみで抗わなくてはならなくなる。この離陸したタイミングで飛行甲板の人口重力に引っ張られる形で沈み込み、多少エンジンをふかすことで無事離脱する、と説明できる。このような経過をたどれば、理由は大きく異なるが外観としては実際の空母と同じになる。つまり、十分合理的な描写
 最初から私は、そうやって説明を付けていたから疑問に思っていなかった。だからこれがご都合主義とか、なんちゃってリアリティとして挙げられているとはつゆ知らず。ネットって広いですね。

 


 人工重力をどうやって作るかはまた別問題。今度考えます。

 


 直ぐに治る第三艦橋については正直、知ったこっちゃないといいたい。我らガトランティス人はヤマトの第三艦橋が無い状態を見たことがない。多分、ウラリア人もボラー人もディンギル人も見た事ないだろう。

 恐らく、第三艦橋見た事あるのはガミラス人だけだろう


 つまるところ、第22話のドメル決死の自爆第23話でボケーっとしてとろかしたあの時だ。

 タイムスケジュールとしては第21話では地球滅亡まであと215日だから長くかかったとしても七色星団決戦は1日程度だろう。他方、第23話では地球滅亡まであと164日とテロップをうたれている。差し引き……50日前後の期間がある。2ヶ月弱だ

 まあ、疲弊した状況での工作は――2か月でやって出来ない事はないだろうが、かなり難しいだろうだが、第三艦橋がやたら被弾数が多い事を鑑みて事前に、第3艦橋のガワを造っていたとしたならば、ある程度工期短縮は望める。資材に関して言えば、バラン星で使えそうな鋼材をあらかたかっぱぐって積みこんだとしても、不思議はないだろう。ビーメラー星なんかで現地補給しようとしたのだから、バラン星で何とかしようと考えても不思議はない。

 

 第24話では地球滅亡まであと161日とテロップをうたれている。結構長かったガミラス本土決戦。何なら一日か二日ずっと漂っていたらしい。古代お前……
 他方で第25話では地球滅亡まであと131日と――概ね1ヶ月ゆっくりしていたらしいこりゃ藪もイスカンダルになれて反乱を起こしたくもなる

 この131日が、ガミラス戦後ただちにイスカンダルに向かったのか、数日修理をイスカンダルガミラスの中間域で行ったのかは不明。


 説明を付けるならば、艦底部の修理を緊急的に行い、一定程度の成果を見たところでイスカンダルへ降下した――とすれば描写とタイムスケジュールを両方満たせる。
 ガミラス星から飛翔したのは恐らく、敵の残存戦力からの攻撃を恐れての事と説明できる。そこから1週間程度、うずうずしながら修理にいそしんでからイスカンダルへ。さらに水中工作班でもあれば投入して修理続行。地球滅亡まであと131日の時点で修理完遂し、地球へ向けて進路を取った。
 と言うようなことになるだろう。かなり無理はあると思うけどね

 

 完全に機能をもった第3艦橋を2度も3度も復活させるのは難しいだろう。普通に考えて。だからこそ、次のような想定が考えられる。つまり――機能に関してはほとんど一切消滅し、完全なる張りぼてヤマトの外観を保つためだけに頑張って第3艦橋っぽいものを艦底部に張り付けたという事だ。

 

 

 

 形を保つ理由

 ヤマトが形を保つ理由は……さしずめ威嚇だろう。根拠はシュルツの言葉

 彼は特攻を仕掛けた時の理由の一つに、ヤマトの修理完遂を阻止するためと述べた。修理が完遂すればガミラス艦隊は全く歯が立たないことが予想されるが、損傷を負った段階であればもしかすると勝機はあるかもしれない。そう彼は考えて全艦隊にヤマトへの突撃を命じた。諦観もあっただろうが、ガンツ冥王星前線基地の勇士たちはシュルツの命令に同意し、攻撃を仕掛けた。
 他にも補強材料はある。

 ズォーダー大帝もボロボロになったヤマトを戦闘力なしとみなして放っておいた。損傷発生が多発したヤマトに対し、沈没の危機感を感じたグスタフ中将は一命を賭けてかばった。
 完全なるヤマトであれば、恐ろしい存在だが、損傷をしていれば必ずしも恐るるに足るものではない。実際、そういう場面は多い。


 ここから、ヤマトが全力発揮した場合の脅威性はとてつもないものであるが、損傷を受けていれば必ずしもそうとは限らないというのは、ヤマトと戦う人間にとって共通認識と言える。


 実際、損傷を負って出撃した完結編では見事に波動砲口が損傷。エンジンも損傷してしまっていた。となれば、ヤマト側のとり得る方策は外観だけでも常に万全の体制にしておくという事。そうすることで戦闘力が万全であるとこけおどし出来る

 


 判り易く言えば〈メスディイェ〉。これはオスマン帝国海軍が近代化に奔走していた時期に改装された旧式装甲艦である。慢性的な財政難に加えて一気呵成に装甲艦を近代化改修しようと試みたために財源が枯渇。結果、肝心の主砲身が木製のダミーで当然、使えない。何の意味があるんだと突っ込みたいが、外観上は格好がつく。それで妥協しなければならなかったのだからオスマン帝国がどれだけ困窮していたのかがわかるだろうが……。
 挙句、他の装甲艦群も近代化改修されたものの――主砲は後装式にするつもりが大抵前装式のままだったり、結局近代化改修が中途半端に終わってしまった。

 何が言いたいかといえば、アホみたいな話だがダミーで何となくあらを隠すという事はありえるという事。

 


 とくにヤマトの場合はある意味その存在自体がかなり驚異である為、能力が万全であると見せかけることが戦闘を回避する事に繋がり得る
 何なら、ブラックタイガーを全部潰してでも、外観を整備する資材を確保する必要性があるかもしれない。


 ヤマトとしては第3艦橋が残存している事自体が重要なのであって、機能しているかは問題ではない。第3艦橋が艦底部に張り付いている事がある意味、防御性能を底上げしている。そう論じた場合には何を差し置いても第3艦橋を復元せねばならない。であるからこそ、かなり早いスパンで復旧した。と言えるだろう。
 

 

 説明が苦しいものもいくつかあったかもしれない。だが、一定程度合理的な説明を付けられたと思う。少なくとも、考え方として様々な理由づけの方法があるという事を見せられたのではないかと思う