旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅱ・テレザート解放戦(さらば編)

 


 さらば宇宙戦艦ヤマトの中盤における山場、テレザート解放戦。テレサのメッセージを受け、白色彗星の秘密を探るべくテレザートへ向かったヤマト。これに対しガトランティスは同惑星の守備を司るゴーランド、ザバイバル両将に警報をはする。

 これによってゴーランド艦隊は出動、同時にザバイバル戦車師団も臨戦準備を整えた。ヤマトは目的を完遂するためにテレザートへ向かって直進する。

 

 

 参加戦力(総力)
 ガトランティス側参加部隊:テレザート守備艦隊、ザバイバル戦車軍団
 戦力:ミサイル艦、戦車
 指揮官:ゴーランド提督、ザバイバル将軍


 地球側参加部隊:ヤマト、空間騎兵隊第一機甲師団中隊
 戦力:ヤマト、コスモタイガー2部隊、空間騎兵隊一個中隊
 指揮官:土方竜、斉藤始

 


 戦闘経緯・経過
 テレサの行動を封じる必要のあったガトランティスは、その出身惑星であるテレザートに彼女を幽閉した。そのテレサの元へ、彼女の発したメッセージの意味を問うべくヤマトは発進した。これが元来のヤマトの目的である。

 

 一路テレザートを目指したヤマトであったが、宇宙乱流であるサルガッソの余波を受ける。この乱流にもまれながらも目的地であるテレザートを発見――したものの、同時にサルガッソとテレザートの中間点に展開する未確認戦闘艦隊を確認した。

 この未確認艦隊=ゴーランド艦隊圧倒的ミサイル兵装を鑑み、正面切っての戦闘を回避するヤマト。肉を切らせて骨を断つ、ヤマトはサルガッソに突入し沈没の艤装を行いつつ流れに任せて下向した。ゴーランド艦隊は偽装に気が付かず、その最期を見届ける為追跡する。テレザートからゴーランド艦隊を引き離した地点にて、ヤマトは全速を発揮しサルガッソを脱出、速やかに波動砲発射体制へ移行。

 対するゴーランド艦隊もこれに反応してミサイル攻撃を開始。超大型ミサイルを含む怒涛の連射でヤマト破壊を試みる。しかしヤマトは第一波の中小ミサイル攻撃をやり過ごす。冷静に波動砲発射準備をこなし、超大型ミサイル着弾前に波動砲によりこれを艦隊ごと殲滅した。

 以上、土方艦長の名采配

 

 ゴーランド艦隊の脅威を排除したヤマトはテレザートへ接近。これに対し惑星表面からT2迎撃機の大編隊が襲来、ヤマトはコスモタイガー隊の主力を発進して迎撃

 ヤマトとコスモタイガーの攻勢によって迎撃機及び惑星表面のミサイル基地を排除。陸上戦の専門部隊である空間騎兵を惑星の内部空間へと降下させた。

 

 テレザート内部空間において、空間騎兵隊は敵側機甲化師団=ザバイバル戦車軍団の奇襲的大攻勢に遭う。

 多数の戦車軍団接近に対し、隠れるところのない空間騎兵隊は果敢に応戦をするも、基本的に劣勢。だが、不用意に接近しすぎた戦車を分捕ることに成功するなど、幸運に恵まれつつ巻き返す。他方で、ザバイバルは身軽さを生かして意外にも善戦する空間騎兵隊を殲滅すべく、残りの戦力を投入。

 だが、ヤマト工作班が多弾頭砲を持ちだすに至って、ザバイバル戦車軍団を反対に殲滅。ほとんどの戦闘かこれによって終結。以降はザバイバル将軍対斉藤隊長の肉弾戦と、幽閉施設守備の戦闘員の小競り合い。 

 これによりテレザート解放戦は終了した。

 


 戦闘内容
 まず、ゴーランド艦隊はテレザートに接近する外敵の目的であるテレザートの前面に展開、ヤマト襲来時には宇宙サルガッソが防衛ラインの外殻を形成するように布陣を敷いた。これであるならば、テレザートを盾とする事で敵側の攻撃を牽制し、反対に自身らは気兼ねないミサイル攻撃が敢行できる。


 特にゴーランド提督は、デスラー総統や偵察機の調べによりヤマト以下の地球艦隊の必殺兵器である波動砲の脅威性はすでに把握済み、とみて構わないだろう。であるならばヤマトとテレザートの中間地点に艦隊を展開したのは至極当然である。まして前面空間に宇宙サルガッソが流れていたあの状況では、わざわざ積極攻勢に出る必要性は薄かった。

 

 反対にヤマトは宇宙サルガッソを渡り切るというのが一つ、渡り切ると同時にゴーランド艦隊への攻撃を開始せねばならないというのが二つ、テレザートへの影響を避けねばならないという3つの難題に大して一時に回答を示さねばならなかった。艦長に就任した土方竜は、この難題に対して死んだふりしてサルガッソに流されるという作戦を取った。クルーは冷や汗ものであったものの、サルガッソの流れ方の隙をついて脱出。ゴーランド艦隊のミサイル攻撃に対して無視をしつつ波動砲エネルギー充填を開始した。

 

 ゴーランド艦隊はこれに対して横隊を展開、弧の中心点にヤマトを据える形で3方向よりミサイルの飽和攻撃を開始した。
 ゴーランドが危惧すべきは波動砲とコスモタイガー隊、そしてヤマト自身の艦砲。全く迎撃の手段を取らず、艦首を艦隊に向けている状態では当然波動砲発射の危険性をゴーランドは第一の危険として認識していたであろう。一方でヤマトはサルガッソで自分たちを出し抜いたという実績がある。つまり波動砲発射も一種のカムフラージュである可能性が幾らか残された状態だった。その際考えられるのはコスモタイガー隊の襲来であり、散開して中途半端な弾幕を張るよりも密集して撃墜を試みるのが可能性の高い対処法であろう。他方、接近戦をするという選択肢は指揮下のミサイル艦隊はパルスレーザー砲の掃射で大爆発を起こす危険がある。絶対に接近はできない。非常に怖い波動砲は遠方では収束率が低下し、効果範囲が広がる性質がある為、下手な展開では意味がない。もう一つ、ヤマト史上では限定的にしか描写されないジャミングであるが、これがゴーランド艦隊に対して一定程度働いているという可能性もあってもいいだろう。当然、ゴーランドにとって背後の厄介な敵であるテレサの祈り、と言うのも一定程度関係していたと説明づけてもそれなりに合理性がでる。このような理由でミサイルの誘導性能が低下した場合、ロケット状態の直進しかできない可能性が出てくる。


 つまり、ゴーランドはヤマトに接近することも距離をとることもできず、全艦がヤマトを直線に捉えられる位置に展開しなければならない。そして、波動砲発射よりも前にミサイルの集中によって撃破する、万が一ヤマトが迎撃を開始しても敵わないほどの飽和攻撃をする。これ以外に作戦の取りようがないのだ。
 一方でヤマトも波動砲以外に確実にゴーランド艦隊を倒せる手段はなかった。ただ一つ優位に立っていることは、ガトランティス側のミサイル兵装について知識のある人物が指揮官であった事である。土方艦長は第11艦隊での敗戦でガトランティス側の兵装について実戦でどのようなものかをすでに学習している一方、宇宙戦士訓練学校で校長をしていたように地球の軍艦について相当量の知識があったとしても不思議はない。〈ゆうなぎ〉では勝てなかったかもしれないが、ヤマトならば、であるからこそ小型ミサイルは捨て置いて波動砲発射準備に掛った。
 結果は土方艦長が賭けに勝ち、ゴーランド艦隊を撃破した。


 迎撃に発進したT-2に関しては、個々のパイロットの能力によって幾らか番狂わせがあったが基本的にはコスモタイガーが優勢であり、対陸上基地においてもヤマト側が常に優勢であった。


 
 一方、空間騎兵隊は苦戦を強いられた。
 相手となったザバイバル戦車軍団は、思いっきり機甲化師団であり生身では分が悪い相手であったからだ。しかし、ザバイバル戦車軍団も上空支援や歩兵の支援を受けていないため――双方一長一短の編成だった。幸いにしてテレザートの内部平原は幾らか遮蔽となる岩塊が存在しており、空間騎兵隊の胆力もあっていくつかの車両を撃破。一両を乗っ取り戦車軍団をかく乱した。

 そこへ多弾頭砲が到着し、これによりザバイバル戦車軍団は壊滅。古代、真田、アナライザーの3者はテレサの幽閉されている地下空間へと安全に降りることが出来た

 

 

 描写の妥当性

 まず、テレザート前面域での会敵についてであるが――サルガッソについてはいわゆるコズミックストームの類として比定出来るだろう。つまるところ、恒星風や銀河風であるとか宇宙ジェットとかの事で、プラズマの収束した強烈な流れである。

 テレザート近傍には赤色巨星でもあるのだろう、これが供給源になってサルガッソが発生している。あるいは巨星とブラックホールの間にストームがサルガッソとして流れ、その前面域にテレザートが位置しており同惑星が固定されている。と言うような想定が可能だろう。

 仮にプラズマ乱流が吹きすさぶ一種のスクリーンがテレザート前面域に展開されているならばゴーランドは当然これらを戦闘に用いるだろう。うまくいけばこのプラズマ乱流に突っ込んでそのまま敵艦が沈んでくれればそれで済む。突破した所を狙い撃ちすればいい。それで十分。当然の成り行きと言えるだろう

 

 

 問題は、ゴーランドが土方艦長の欺瞞にうっかり引っかかった事。これは、個人の資質によるところでありそれ以上でも以下の事ではない。密集隊形を取る必要が有ったかどうかについては検証が必要だが、プラズマ乱流の影響による通信障害が一定程度認められるとすれば――自慢のミサイルはミサイルではなくロケットになり、発射姿勢は直線コースを取った方が着弾させるには都合がいいだろう。

 単純に波動砲の威力を見誤ったのがまずかった。脇が甘いぞ、ゴーランド。

 

 ザバイバルの敗戦も、ゴーランドと同じように勢い余って突進して反撃を食らったという、いわば個人的資質による采配の失敗に起因するだろう。部隊が前進しているからと言ってこれが必ずしも優勢・勝利の担保にはならず、むしろ誘い込まれて粉砕されるという危険性は古今東西陸戦ではよくある事。別段、ご都合主義な展開というわけでは無い。まして生身の人間に取り付かれたら戦車は太刀打ちできませんからね。で、挙句戦力を再投入したタイミングでの多弾頭砲だからそりゃ負けるわい。

 他方で空間騎兵隊が多弾頭砲をはじめから持ってこなかったのは、ゴーランド艦隊とT-2を排除したことで概ね的戦力を排除したとヤマト側が誤認したことが原因と説明できるだろう。どちらも全く無自覚で敵をなめたり誤認していたが、現実との乖離度が空間騎兵隊の方が小さく結果、勝利をつかんだ

 そんなところだろう。

 

 

 意義
 地球側にとっては、テレサを開放できた事が最大の意義。また、一度敗北したとはいえ土方艦長が第一級の司令官であることが戦果を通じて全乗組員に示せたこと、空間騎兵隊がただ飯ぐらいのガサツな連中ではなく、頼もしいガサツな連中であるという事を示せたのは非常に大きい。土方艦長を指揮系統のトップとして空間騎兵隊をも含んだ“ヤマトクルー”を成立させた。これは今後の作戦実行において非常に有益である。

 ガトランティス側にとっては情報流出という、戦争継続を行う上では不安定な要素が生まれた。という程度にとどまる。大したことないといえば大したことないが、他方で全く安心して戦闘を行って問題ないというのはマズイ。という状況に入っていった。
 


 ガトランティス側損害:ミサイル艦隊全艦、ザバイバル戦車軍団全力
 地球側損害:コスモタイガー複数機、空間騎兵隊複数人