旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘戦闘考察Ⅲ・ガミラス最終戦(さらば編)

 

 

 いうなればガミラス終戦は、ヤマトが白色彗星と戦う直前に起こったことである。奇跡的に生きていたデスラー総統がガミラス再建のための一種の通過儀礼としてヤマトを急襲。これにヤマトが応戦したことにより始まる。

 


 ガトランティス側参加部隊:

  ガミラス残存戦力+ガトランティスデスラー艦、護衛艦隊)
 戦力:戦艦1(旗艦・デスラー艦)駆逐艦
 指揮官:デスラー総統


 地球側参加部隊:ヤマト
 戦力:ヤマト、空間騎兵隊一個部隊
 指揮官:土方竜

 


 戦闘経緯・経過
 テレサから入手した白色彗星の情報を手に、一路地球を目指したヤマト。地球艦隊との合流目前のその時をデスラー総統が襲撃した。

 

 戦闘は終始デスラー総統がイニシアチブを握る。
 ヤマトの完全射程圏外よりさらに遠方から、デスラー艦が瞬間物質移送器を用いて臨戦態勢の宇宙駆逐艦をヤマトの至近距離にワープさせる。宇宙駆逐艦はその大火力を以て一撃離脱戦法を敢行、ヤマトの全砲塔を使用不能に追いやった。行動不能状態にヤマトを閉じ込め、デスラー艦によるデスラー砲攻撃を行い完全勝利を目指したものの、隙を突かれて反対に小ワープで白兵戦に持ち込まれる。

 しかしそこは総統、抜かりはなかった。

 ところが――白兵戦は機械兵と生身の人間による戦闘であり、古代のコントロールセンター破壊により機械兵は活動停止。デスラー艦全域制圧成功、デスラー総統は白色彗星の弱点を古代に告げ、宇宙へ……。

 

 

 描写の妥当性

 妥当性も何も、ベースとしては第一作のラストの攻守を入れ替えた戦闘である。

 

 この手合いの事例はないわけでは無く、カンネの戦いやザマの戦いを上げられる。つまり、カンネの戦いを学習したスキピオ・アフリカヌスがそのまま戦術をカルタゴ本国の目の前であるザマにおいて、ハンニバル・バルカスに対して包囲殲滅術を敢行したわけだ。また、やらなくていい戦術にこだわって失敗したのもデスラー総統対ヤマトと同じ構図と言える。

 スキピオは不思議と対ハンニバルにおいて大勝を得たが、それ以外ではパッとしなかった。生涯無敗といわれるが、案外戦いの前後で手抜かりが多いし、政治においては決定的敗北を喫する。おおむね、ザマが彼のハイライトであるといえよう。他方でハンニバルはザマの戦い前も以降も実は戦勘は鈍っていない。カルタゴの中枢的執政部門たる104人委員会の恥知らずな皆さんとか、セレウコス朝の将軍アホアポロニオスが足を引っ張ってくれたり――この人、身内のミスでひどい目に合うタイプの人なのだが、ザマが最大のケチのつき始めだったりする。

 結局、戦う場所を自分発信で選べず望んだ騎兵隊は手元になく。カルタゴ伝統の戦象に頼らざるを得ずまた、突破力を頼ったが……柔軟に戦ったスキピオの方に勝利の女神が微笑んだという事。あれ、戦象にこだわったのはまずかったと思う。

 

 このガミラス終戦はこれと同じである。古代戦闘班長デスラー総統の対決だからあり得た戦闘経過といえよう。

 

 

 デスラー総統が犯した失敗はデスラー砲にこだわったことだろう。これは総統的には絶対に外すことのできない攻撃手段であり、デスラー砲によってヤマトを撃破することこそがガミラス再建の第一歩と考えていた。その節がある。

 一番の問題は、デスラー砲を確実にぶち当てる為に駆逐艦を釘付けにした事これにより、仮にヤマトに反撃された場合に挽回するための戦力が失われてしまった

 

 人命がかかっているならば、あまりに薄いミルの反応や躊躇ないデスラー総統の態度からして、この駆逐艦も恐らく同様にアンドロイドで運行された戦闘艦だろう。そうでなければヤマトに勝っても、今度は彗星帝国と戦わねばならなくなる可能性が生じ、ガミラス再建どころではなくなる。ある意味、消費ないし浪費しても痛くはない戦力であったからこそ、デスラー砲でヤマトごととろかすという発想が出たのかもしれない。

 ただ、結果的に完全に裏目に出てしまった。後々自分を守ってくれたかもしれない戦力を自分ですりつぶしてしまったのだから

 

 さらに、ヤマトが肝心の小ワープによる奇襲戦法は一年前に偶然総統自身が敢行した事。高々一年前の、極めて印象的な出来事をさすがの古代も覚えていた。この程度の反撃は誰にでも予想できるだろうが、総統もちゃんと予想していたらしく再反撃を試みる。ただ、空間騎兵隊やヤマト戦闘班の奮戦によりアンドロイド兵の数が足りなくなったのか、コントロール機構を破壊されてしまう。

 自律的行動が出来ないタイプのアンドロイドらしく、或いは過負荷で機能不全に陥る。総統がアンドロイドの自律行動を嫌ったのか、ガトランティスがそもそも求めていなかったのかは不明。生身の人員を載せなかったというのも安全で簡単に戦力を確保・消費できる反面、不測の事態に対する脆弱さを抱え込む羽目になった。

 総統の作戦がおおむね裏目に出た、と言えてしまうだろう。

 

 

 意義
 デスラー総統の自分なりのけじめ、と言うのが一つ。偶然とはいえ、デスラー総統から白色彗星の弱点を入手できたというのがもう一つ。また、ヤマトがこなした初めての白兵戦であり、クルーや空間騎兵隊と共同での作戦行動が実際的に可能であるという事を示し、都市帝国突入の先鞭をつけた

 もっと言えば、あのまま地球艦隊にヤマトが合流していれば、場合によっては白色彗星に飲み込まれた可能性が高い。ある意味、総統の襲撃タイミングの妙により命拾いしたともいえよう。まあ、総統がヤマトと戦いたかったから襲撃のタイミングを前倒ししたともいえるだろうが

 


 ガトランティス側損害:駆逐艦(ガトランティス)全艦喪失、デスラー喪失=ガミラス完全滅亡
 地球側損害:ヤマト乗組員、空間騎兵隊多数