旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅵ・ガトランティス対ガミラス――政治闘争――

 


 ヤマト2。なぜサーベラーは総統を追い落とそうとしたのか。女の嫉妬か、彗星帝国執政の一人としての義務か。総統への不満を持っていたのは、どうやらサーベラーだけではないらしい。

 出来るだけ真面目に、深く考察してみたい。と、その前に彼女の行動をざっくりと振り返りたいと思う。つまり――

 

 

 デスラー総統とサーベラーの闘争の歴史

 第1話:サーベラーと総統は初めからあまり、仲がいい感じでは無かった。加えて、ヤマトをぼろっかすに叩くことで、それに負けたガミラスを暗にディスっているから始末に悪い。

 一方で総統の方も、ゲーニッツの作戦説明中に運んでもらった酒を(作画の関係なのだろうが、彼女は満面の笑みで持ってきてくれた)をガン無視。大帝は受け取ったのに。更にナスカがヤマトにちょっかいをかけた後のエピソードでうっかりサーベラーを呼び捨てにしてしまっている。これは総統も相当に反省せねばなるまいだって言わなくていい事とやらなくていいことしてるんだもの

 

 第2話:テレザート前面に展開する総統にすでに展開中のゴーランド艦隊を指揮下に加えさせるのだが、これに苦言を呈すサーベラー。これはサーベラーでなくとも、疑問・懸念を持つだろう。

 なのだが、困ったことに大帝に嫉妬と受け取られてしまう――大帝閣下、もう少し部下全体を見た方が……。ガミラス優遇ともいえる作戦展開に、ガトランティス全体が動揺しているのですが……

 

 第3話:では「いつまでも玩具遊びの好きなデスラー総統」と軽口をたたいて大帝にたしなめられる。これはサーベラーが悪い。素直に性格の悪い言動だ。

 

 第12話:前半では大帝に対しゲーニッツとラーゼラーを伴ってデスラー総統の派手な行動を戒めてもらえるよう直訴。聞き入れられないとなると、同話後半で大帝の名を騙り、ちくわ惑星での戦闘に水を差した挙句に、無理やり本国へ帰還させる。これがサーベラーの意地か……

 まあ、同盟国の国家元首で指揮官に、すでに権限だのを委譲し作戦を遂行している最中に変更を加えるのは確かにマズイ。が、総統も派手にゴーランドと喧嘩をしているし、ヤマトを挑発している。

 テレサが怒るか、呆れるかどっちか。そりゃ大帝はテレサの事など気にもしていないのだろうが、他のガトランティス人は上から下まで気にしているから、大帝は臣民のために注意を払うべきだったのだ

 

 第13話中盤:総統を帰還させ、一方が大帝の耳に入るも居合わせたサーベラーは逃げ帰ったと吹聴。その後、総統を放置したまま、ゲーニッツと密談――ザバイバルに戦車を貸し出す越権行為を行い、その癖にガミラス艦隊を引き揚げ代わりの増援を送らないというザバイバルを見殺しにするような配置転換。当然、ゲーニッツに咎められるも、総統に罪をおっかぶせる為の尊い犠牲のように語る。

 「恐ろしい人だ貴女は」と、感心してしまうが、納得するなゲーニッツ。ザバイバルはあんたの部下だろ一応。エピソード後半、謁見の間(あるいは作戦室)のあまりにも不穏な様子にタランは気が付くも、総統は諦観。

 

 第14話:一応、総統に指示に従うようにガトランティス大戦略に従うように最後のチャンスを与える。が、当然の如く無視する総統。レスバで負けて切れたサーベラーは総統を逮捕し、独房へとぶち込む。

 さすが総統、無駄な抵抗はしない。「留守を頼むぞ」

 

 第15話:留守番のタランを大帝を称える祝賀会に呼び、挙句直接皮肉るサーベラー。肩を落として酒も進まない様子のタランを見付けるや、彼女はわざわざ近づき「タラン、いよいよ銀河系へ踏み入れるおめでたい晩餐会で何をしょげている? デスラー総統の分まで楽しんでいくがよい」って性格悪いなあんた。加えて、総統の部屋のシーツを変えない。

 総統、キレながらもシーツを畳み、怒りが収まらなかったのか床にたたきつける。地味にキツイぞこの攻撃は。

 

 第18話:地球総攻撃開始とヤマト破壊の予告をするため、総統の独房にわざわざ足を運んだサーベラー。音を上げた総統に対して即決裁判を予告し、独房から――総統がこの程度で音を上げるはずもなく、サーベラーは人質に取られてしまう。

 日頃独房のデスラー総統にちょっかいを出していたのだろう、サーベラー。彼女の動きを見て予想したのだろう、迎えに現れたタランによって直掩機格納庫まで車に乗せられて連行。逃走用のイーターⅡの前で解放され、サーベラーはロングドレスにも拘わらず全力疾走で階段を駆け下りた。

 

 初っ端から総統に、ナチュラルに猛烈な牽制をかまされたサーベラーだが、謀略をめぐらし見事に押し切った。そして勝ち誇ったように、全ての権限を使ってなぶりになぶる。だが、その無駄ななぶりによって最後の最後で猛烈な反撃を喰らったサーベラーだった

 

 

 

 正直な話、これはズォーダー大帝が悪い。
 誰だって、よそ者が幅を利かせたら嫌じゃん?

 もし、「そんな事ないよ」とか「それはあなたがおかしい、心が狭い」という人は、心の底から善人であるか、心の底から偽善者のどちらか。

 何か仲良くなるきっかけや、同じ趣味であるとか、そういった“共通言語”があればそこ、初対面でもある程度は仲良くなれるだろうが、何の接点もなければ普通は無理。個々人でも、無理だし勢力として参加してきたりしたら当然拒否反応は強いだろう。隔離政策とかの予防策を提示するとか、血を流してでも献身するとかの代償を払わない限り、同一の共同体を構成する部分としてはいつまでも受け入れられない。

 

 話を戻すが――もしかすると、タランだけなら、ガトランティスに割合に好意を以て受け入れられたかもしれない

 あの控えめな性格であれば案外うまくやれたかもしれない

 タランはガミラス屈指のマルチタスクタイプの人物であり、どっかのタイミングで物凄い活躍をして、ガトランティス諸将もその腕を認めざるを得なくなる展開があったかもしれない。

 ちょっと押しが弱い性格を鑑みれば、ゲルンとかラーゼラーあたりの真面目で汎用というか凡庸な人物なら、多分うまくやれただろう。あんまりひどいいじめられ方をしたら……もしかするとゲーニッツもかばってくれたかもしれない。

 が、デスラー総統のあの感じ、あの様子では――ねぇ?

 

 

 無論、理詰めで考えてよそ者を受け入れることが妥当と考えたならば、それは別の話。だが、皆が皆理詰めで考えられるとは限らない。

 また、理詰めの場合は否定はの感情論を上回るメリットを示さなければならいし、デメリットもちゃんと説明する必要が有る。ところが、この手合いの人たちはデメリットを自分の頭の中でペイしてしまうから、説明責任を放棄して理解しない相手が悪いとしてしまうからいつまでも話がおまとまらない。

 

 

 歴史上では――

 崔浩北魏第3代武帝に仕えた史家である。彼が歴史に名前を残したのは、その才能の豊かさもあるが、悲運と言うか自滅と言うか――微妙な最期によるところが大きい。
 この人物は漢民族で、帝による華北進出を支え北魏を新たなステージへと押し上げた忠臣の一人である。だが、450年に国史の獄で彼は失脚し一族郎党処刑される。


 理由は国史編纂の際、鮮卑族の習俗をありのまま描いた為。ただ書いただけならばまだしも、その書きっぷりが侮辱的だった。これに反発した鮮卑貴族は太武帝に詰め寄り結果、国家の安定のために崔浩は詰め腹を切らされたという事である。

 

 この事件のめんどくさいところは歴史家によって評価が異なるところ。従来的には胡漢の闘争というのが大きいとされている。他方で最近の研究傾向は、単なる崔浩の性格によるとか、帝との決裂、政権の刷新といった見方をされる。

 はっきり言って全部だろう。常識で考えて、たった一つの理由に集約できることはまずない。仮に集約できても、その前提となるものがある。それを忘れては、正しく事件を見ることはできないだろう。


 崔浩が才能を鼻にかけていれば当然、全員が不愉快に思うだろう。
 帝が鮮卑族より漢民族を優遇していれば不愉快、鮮卑族は不愉快に思うだろう。
 
 鮮卑族漢民族の力を削ぎたいが、無理な可能性が高い事もわかっている。だが、せめて最高権力の一角を占める崔浩ぐらいは討取りたい。

 他方、漢民族も崔浩とその師匠たる寇謙之の独裁に近い体制は不愉快だろう。漢民族の繁栄を捨てるつもりはないが、目障りな崔浩ぐらいは売り渡しても構わないだろう。彼一人で差し当たって鮮卑族の不満が落ち着くなら安いもの。

 帝としても、だんだん政策に乖離の出て来た崔浩に不信感を抱き始め、これ以上そばに置いておく必要性もなくなって来た。


 事件の背景には、これらの絡み合った事情がある。この事情を弾けさせたのが北魏国史編纂だ。直筆していようがしていまいが、失礼な書き方をしていようがしていなかろうがそんなことは関係ない。まあ、揚げ足を取ったというか、言質を取って首を取ったと言うような形だろう。
 これでチェックメイト。後ろ盾を失い糾弾される要因しか持たない崔浩に、生きる望みなどありはしなかった。

 

 もしかしたら最近言われるのとは違い、本当に失礼な書き方をしていたかもしれない。直筆したのが問題なのか、直筆の仕方に問題あるのか。現物が残っていないのだから、判断のしようがないのである。だから、北魏国史の現物が出てこない限り、崔浩が悲運の人とするのはかなり難しいというか、妥当性を欠く。

 


 更に下って第6代孝文帝
 彼の時代、北魏は徹底した漢化政策を開始した。これにより国姓を拓跋からに改めたり、平城から洛陽へ遷都。あるいはズボンやら母国語を禁止、中国風の儀礼以外は認めなかった。
 北魏はいまだ鮮卑が支配者層であることは明白。たとえ漢民族の進出が激しくとも、古くからの貴族を無視しての政策はするべきではない。にもかかわらず、その習俗をすべて禁止したのである。普通、後に現れるの様に一国二制度程度に収めるのだが、孝文帝はそれでは満足しなった。しかもとは違い、漢を鮮卑に合わせるのではなく、鮮卑を漢に合わせたのだ。さらにアレクサンドロス大王よろしく通婚で鮮卑漢民族を血統的に同一化させようとした。
 これはダメだよ……。
 結果、中国本土を支配域に組み込んだ時点から政権中枢に入り込んだ漢民族(農耕人)と、鮮卑系(遊牧民)との軋轢が最高潮に達したのである。当たり前だ。かつて崔浩という人身御供で一時的にそれなりに関係性がマシになったのに、帝自身が悪化させてしまったのだ。
 
 これらの政策に一番腹を立てていたのが、何を隠そう他ならぬ長男=皇太子・元恂。彼は色々な理由で鮮卑流を守ろうとしていたのだが、色々あって誅殺。孝文帝の漢文化への傾倒ぶりがうかがえる。


 523年、六陳の乱が発生。これらは対柔然の為の遊牧人精鋭戦闘部隊として配置されたのだが、遷都に伴う物理的距離の拡大や柔然の弱体化により地位が低下。6個全ての地位が低下し、北魏内の鮮卑族の地位も低下して余計に冷遇されていたのだ。元々精鋭の軍団を6個も同時に冷遇して、無事な訳はない
 彼らは大方の予想通り反乱を起こし、それに伴い発生した内紛で北魏は自滅。反乱自体は鎮圧に成功したのにね。

 

 結果、北魏宗室を受け入れた懐朔鎮東魏を建て、別の宗族を受け入れた武川鎮西魏を建て北魏は東西分裂。
 これ、漢民族鮮卑族の対立という単純な話ではなく、どちらかといえば鮮卑族自身の内紛に近い。漢民族に対してNOを突きつけるのか、融和していくかに分かれたといえる。

 

 太武帝から続く漢民族優遇と、孝文帝から加速した漢化政策。この支配者層と言うか、国家成立の根幹をなした国民を一通りないがしろにした施策を敢行した。この結果、北魏は崩壊し、散々な醜態を歴史にとどめることとなってしまったのである。

 

 

 結論から言えばたかが個人的悪感情で国を揺るがすようなことをするのかといえば、実はみんなYESだ

 この情けない、しかし否定するにはあまりに強力な感情によって、国家は容易に動揺してしまう。それが国家の中枢が引き起こすのか、一般大衆が引き起こすのか。別問題だし、対処法も異なるが、結局のところ結果は同じ。

 当然、サーベラーたちガトランティス人にとってデスラー総統はガトランティスに災いをもたらす存在と見ても不思議はない。
 決して小さい戦力ではないガミラス残存艦隊を率いる専制君主。とはいえ、ガトランティスに比べれば今やその権勢は見る影もない。そのくせガトランティスのやり方を完全無視する。帝国の大戦略をガン無視して、矮小な個人的目標に固執する。

 そんな人間をなぜ優遇しなければならないのか。

 なぜ、我々ガトランティス人がガミラス人如きと舳先を並べて地球と戦わねばらなないのか。理不尽にもほどがある。高官にせよ、一兵卒にせよ、そう考えても不思議はない。
 


 同盟国の君主であるならば、それはそれ。大帝閣下が気に入っておられるならば、その事に文句を言ってもせん無き事。

 だが何故ガトランティス大戦略に深く食い込むのか。

 なぜ彼に一々状況説明しなければならないのか。しかも、ゴーランド艦隊を共同戦線を構築するのではなく、デスラー総統の指揮下に入れるという配置。これは判りやすく超好待遇だ――それがぽっとでの、しかも地球に負けた君主になぜ? 

 ガトランティス人なら誰だって思う事だろう。


 大帝に非難が行かないというのは、まあ、今までの大帝の功績や人望によるところだろう。今までガトランティス大戦略を指揮したのは他ならぬ大帝なのだから、その大帝を否定するのは難しいだろう。だって、大帝に仕えて来たガトランティス人自身への自己否定になってしまうから。自己否定は難しい。だから大帝も非難の対象から自然に外れる。
 故に、横から突然現れた総統に、その大帝と対等な様子に非難が集中するのはむしろ自然。また、人たらしの総統が嘘や方便でだましている。そう受け取っても仕方がないだろう。あの洒落た感じはガトランティス人には無い雰囲気というか素養である。

 

 

 個人的な悪感情が第一に立っているとしか言いようのないサーベラー。

 しかし、彼女の語る大義名分は分からないでもない。むしろ妥当

 大帝が総統に対して感じるシンパシーが、総統から拡大してガミラス人全体にまで行ってしまっては、ガトランティスの政治体制がまるっきりわかってしまうもし、仮にガトランティスガミラス二重彗星帝国なんてものになってしまえば、これまでガトランティスを支えてきた機構が全て崩壊してしまう。イデオロギーが崩壊してしまう。

 これでは彗星帝国ガトランティスが滅びてしまう。全宇宙に冠たるガトランティスに、肩を並べる存在が出来てしまう――これは矛盾に他ならない。

 排除しなければ


 ゲーニッツもまた、総統の存在に危機感を抱いたやはり個人的な感情から対ヤマト戦闘を行うというその不確実性と言うか、妥当性の無さ。これは軍司令官として認めてしまってはマズイ。しかも、ゴーランド艦隊との軋轢から、ガトランティス大戦略を軽く邪魔をしているという。何とかして排除しなければ、ゴーランド艦隊喪失以上の損害が出かねないが、それはガトランティスの軍司令官として手をこまねくわけにはいかない。

 大体、総統はガトランティス大戦略を邪魔こそしないが、理解しようとも協力しようともしない。

 これは、排除しなければならない

 


 恐らく、ラーゼラーやその他の幕僚も同じだろう。

 程度の差こそあれ、ガトランティス人ならば誰でも、ガミラス人による彗星帝国への浸食や台頭=乗っ取りを懸念しても不思議はない特に両国ともワンマンの専制君主なのだから、簡単に事が運ぶ。この簡単に事が運ぶからこそ、徹底して拒否反応を示すのだ。

 


 多少過剰反応かもしれない。だが、ガトランティス人ならば誰しもがデスラー総統の存在に危惧を示すだろう。何せ、両国ともイデオロギーが類似しており、どちらかが折れなければ共同戦線は成立しないが、どうにも折れそうにない。

 この薄っすらした危機感が共通していれば、サーベラー達がデスラー総統の逮捕を強行しても誰も異を唱えないだろう。むしろ、支持してもおかしくはない。

 

 心理的な不安はいつも人の行動を左右する。
 特に、良く知らない他者であればその警戒心は最大の防御を取る。たとえ良く知る相手でも、その関係性が一線を越えれば同じ事だ。

 


 昨今起きている移民問題も同じ。

 結局のところ、数の問題や程度の問題が極めて大きい。受け入れ推進派は善意と使命感を以て無制限に近い受け入れを目指す。受け入れたからには国民と同等の権利を目指す。反対派はその際限のない受け入れ人数と、際限のない権利拡大に危機感を持つ。移民が国民と同様の負担を分かつかといえば、実は結構疑問だったりするし、文化になじむかもまた未知数だからだ。

 個々人の人間ならばまだしも、集団でやってくる――その恐怖感がまずいのだ。それが実際的な脅威であるとか無いとか、一度問題が発生してしまえば関係なくなる。

 もし、推進派が真摯な対応ではなく単なる非難を始めれば、途端に世論は推進派を支持しなくなる。反対派は勢いづいて移民を攻撃し始める。大抵の場合、推進派は正義感が原動力であるため、そもそも反対されることを想定せず、受け入れられることを前提としているから議論にならない。反対派は恐怖心から動いているのが基本でデータを示されても認めないため、どこまでも問題を引きずって結局解決しない。


 この解決し様がない、ある意味新手のビジネスモデルみたいな関係性が、移民やその根本原因、国家、民族、融和、そう言った問題を複雑化させ解決を困難にしている。
 結局全部感情の問題が助長しているのだから、救いようがない。感情の問題を愚かだとして切り捨て、わざわざ反対派の感情をあおり、それに対してマッチポンプ的に賛成派が再度罵倒する。これも救いようがない。

 

 

 ズォーダー大帝はその寛大な心でデスラー総統やその民たるガミラス人を処遇した。確かにこれは偉大な事であろう。正しい事でもあろう。
 だが、肝心の自国民の心の機微を判っていなかった

 ガミラス人との交わりや関係性、そう言った危機感に対して大帝はモデルを示さずビジョンも示さなかった。 


 幸か不幸か、これまでの功績のある大帝に非難が集中する前に、その原因たる総統に非難が集中した。これもまた大帝の説明不足に起因し、総統のあのニヒリズムがそれを助長した。

 偉大な君主ゆえに、二人の間には信頼するしないなどという問題など、端っから発生しえない。だからガミラスとガトランティスという巨大帝国をそれぞれが支配できた。カリスマワンマンの神がかり的な決断に全て落とし込まれる。

 しかし、一般国民にそれと同じクオリティを求めるのは無理というもの

 


 残念ながら、大帝の総統に対する対応は一連のパッケージとして失策と言えるだろう。その失策の結果、起きたのがデスラー総統の逮捕劇であったといえる。

 対ガミラスの悪感情がガトランティスに組織的に存在するため、あのサーベラーの判り易い悪だくみも、成功させてしまう土壌があった。

 そう説明づけられる。