旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅵ・ガトランティス戦役最初期戦(ヤマト2)

 

 

 太陽系外縁部遭遇戦

 これはヤマト2のオープニングを飾る戦闘である。そして、あのガミラスをたった一隻で破ったあのヤマトが非常に残念な体たらくを晒す。これが地球防衛軍の体質や今後のストーリーを暗示する、物語の上では非常に意味のある戦闘である。

 

 ガトランティス側参加部隊:偵察陽動艦隊
 戦力:高速中型空母1ないし2、大戦艦多数、駆逐艦多数、デスバテーター3機
 指揮官:コスモダード・ナスカ


 地球側参加部隊:太陽系外周艦隊第3護衛隊
 戦力:戦艦1(旗艦<ヤマト>)、巡洋艦複数、パトロール艦複数、駆逐艦複数、コスモゼロ1機
 指揮官:
古代進

 

 戦闘経緯・経過
 第1話――デスラー総統の過剰にも思える警戒に対し、ガトランティスは同盟相手の要望としてヤマトを威力偵察を敢行した。
 太陽系外周艦隊第3護衛隊の旗艦であったヤマトに対してナスカの偵察艦隊がデスバテーターを差し向ける。しかしヤマトは乗組員的に万全の状態では無かった。艦の能力も最新とは言い難く、残念ながら艦隊ごとナスカのされるがままになり多数が損傷を負って撤退した。

 

 描写の妥当性

 ガトランティスには地球人が思うような国際法の類=宣戦布告ないし相当する勧告を行った後の戦闘という大前提が存在しないと思われる。それ以外は普通の威力偵察であり、ナスカの行動としては別に不思議も何もない。

 ヤマトに関しては、図らずもクルーが一流であるとかヤマトに特化しなければ、運航に微妙な支障をきたすという事が判明。ワンオフ戦艦であり、まま癖のある航行をする軍艦はそれなりに例がある為――当該クルーが若干残念だった。と片付けられる。

 

 ヤマトは1年間、太陽系外周艦隊第3護衛隊の旗艦として任務に就いていた。つまるところ。主力戦艦などの中核になる戦闘艦がまだ十分な数や訓練が出来ていなかった――だからヤマトが改修や修復等もそこそこに最前線に出張っていた。

 つまり、駆逐艦護衛艦、パトロール艦など艦隊決戦に用いれるか微妙だが、地球の生存圏確保には十分寄与できる差し当たっての戦闘艦の中の最有力艦という位置づけだったという事になるだろう。

 

 にしても、宣戦布告ナシに派手にやってくれたなァ。ナスカさんよぉ……。こいつはやべぇ選択。この時点で、すでにガトランティスが地球と降伏だの停戦だのの交渉に応じる存在ではないというのがはっきりしていた。

 

 そしてまた、認識不足ではあったもののゲーニッツが外周艦隊という区分けを知っていたという――恐ろしいまでの情報収集能力だ。ただ一つ問題が生じており……

 実際のところ、外周艦隊は元来強力な戦闘艦隊であり、後に第1艦隊と第2艦隊として登場した戦力は戦艦を中心とした砲撃艦隊だった。開戦前であれば多少戦力規模も小さいだろうが、それでも太陽系の外縁部を守る重大任務を担う艦隊であることに違いはない。そんな外周艦隊の第3護衛隊を受け持つのが〈ヤマト〉。第3護衛隊は高速艦艇を中心とした雷撃系の戦闘艦隊であり、数も平時の艦隊としては格段少ないというわけではないだろう。

 故にゲーニッツの認識は間違っている。〈ヤマト〉は左遷というほど左遷、冷遇というほどの冷遇をされているわけではないのだ。

 詳細な情報を得ていたガトランティスが何で微妙に認識違いをしたのか、どうしてそうなったかといえば――実際、同話中に見えたデスバテーターを補足できないレーダーの性能不足等、艦隊は全体として醜態を見せた。それに加えて地球防衛軍高官はヤマトを全く評価していない。これら条件を組み合わせればゲーニッツの間違った認識も、到達し得る認識の一つだったのかもしれない。

 これ、ひょっとして……防衛司令部のメインコンピューターにハッキングしたのか……高官が乗った艦の通信を聞いたのか……何にせよ恐ろしい事に違いはない

 

 意義
 地球――特にヤマトにとっては新たな敵を認識するとともに、それに対して現状では全く敵わないという事がはっきりした。徹底した危機感をヤマトクルーが共有し、ヤマトクルーと面識のある防衛司令部の幾人かもまた、その危機感を共有することが出来た。この危機感の共有は非常に有益であったといえよう。


 他方でガトランティスにとっては油断の種となった。ヤマトがまるっきり反撃できなかった事が明白になり、元からあったデスラー総統に対する侮りと相まって完全にヤマトを箸にも棒にも掛からぬ老朽艦という認識を固めてしまった。ガトランティスにとっては不運が重なったとしか言いようがない。


 ガトランティス側損害:なし
 地球側損害:駆逐艦巡洋艦、パトロール艦の複数が中破ないし大破。

 

 

 

 地球上空侵入

 地球が完全に後手に回った戦闘というよりハプニングである。また、地球以外でも金星において戦闘が発生、ガトランティスに完全な敗北を喫した出来事であった。

 

 ガトランティス側参加部隊:偵察陽動艦隊
 戦力:潜宙艦2程度、大型艦上長距離戦略偵察機
 指揮官:コスモダード・ナスカ


 地球側参加部隊:地球防衛軍防衛司令部
 戦力:出動できず
 指揮官:藤堂長官

 

 戦闘経緯・経過
 ヤマトに対する攻撃で地球という存在に対して非常に大きな疑義を感じたガトランティス首脳部。つまり、デスラー総統はあまりにも過剰に地球の戦力を評価しているのではないかという事だ。

 そこで彼らは地球の実力を確かめるべく、金星のエネルギー中継基地を破壊、さらに偵察機を地球に降下させその様子を見ることにした――第2話後半


 結果はガトランティスの予想を上回る無防備さで停電に対して無策。デスバテーターの偵察に抗う事も出来なかった。他方で、偵察機もうっかり古代進にその姿を見られてしまうなど、若干ガトランティス側にも手落ちがあったといえる。

 

 描写の妥当性

 地球は従来のような発電施設を運用しておらず、外部からのエネルギー供給に頼るという非常に危険性をはらんだ体制であることが判明しかも、地球やその他惑星基地と一体運用されており金星のエネルギー中継基地に問題が生じると全てダウンするという全く防衛を考えていない驕った設計という事も判明した

 

 エネルギー供給網にバックアップが無いというのはまずい意味で驚異的であるが他にも問題があるだろう。その問題とは金星のエネルギー中継基地に防衛設備があったのかなかったのか。無かったら大問題で責任の所在を明らかにしなければならない。とはいえ、戦闘衛星があの体たらくであるから――あってもなくても関係ないだろう。まあ、大事なのは防衛しようという意識その物ともいえますから、まずは配備するところから……。

 

 停電その物の被害は一応、政府機能中枢施設がバックアップの発電設備を持っているためさほど問題なかったし、これは普通の都市が災害に見舞われた時と同じと言えた。これらは順当、妥当な反応だった。

 ただ、防衛軍の中央病院が一時的に電力不足になるという緊急事態が発生し、アンドロイドのおかげで電源を補完したという椿事が発生してしまった。また、一部施設では混乱と破壊がもたらされ……正直もっとうまく事態を収拾できてしかるべきだっただろう。そもそもエネルギー供給方法そのもののバックアップを必要としていたのだが――どこであんな雑なエネルギー供給網になったのだろうか。

 真面目な話――防衛戦略上、この状態を放置するのはさすがにマズイ。描写が妥当であるとか無いとか以前の問題で普通に不安。大帝やサーベラーの言う通り、案外脆いそ地球……

 

 意義
 地球の防備が完全に無防備であることを露呈。一部の防衛首脳部はこの危機に関して対応を考えただろうが――いや、そんな描写はなかった。ほとんど長官のみが危険を認識し、そのそばにいた参謀も多少は懸念を示しただけである。これでは教訓も意義も何もない。唯一、ヤマトクルーが重ねて危機意識を抱いたという事だけが意義と言える。
 ガトランティス側も地球が完全に無防備な張子の虎であるという事を再認識してしまう事になった。残念ながらこれは間違った認識であるのだが、しかしこの時点で積み上がった事実から判断するに妥当なのは――地球が恐れるに値しない低発達文明国であるという事。
 考えようによっては、デスラー総統的にはヤマトが鈍い反応をし、更に地球全体が脆弱であることを鑑み、逆にヤマトクルーが決意に立ち上がるという可能性が降ってわいた事は評価に値するといえるだろう。彼にとって、ヤマトが正義感によって立ち上がり、白色彗星に立ち向かう事が、自分が再び戦場に舞い戻る理由になるのだから。

 

 ガトランティス側損害:なし
 地球側損害:全球的都市機能マヒ、金星エネルギー中継基地損壊