戦闘考察XIII・ガミラス最終戦(ヤマト2編)
新生ガミラス建設のための通過儀礼としてヤマト撃滅を狙う執念の総統と、何としても地球を守る為にこれを突破しなければならない決意のヤマト。
まさに、死闘である。
ガトランティス側参加部隊:ガミラス残存艦隊
戦力:戦艦複数(旗艦・デスラー艦)、三段空母複数、デストロイヤー複数
指揮官:デスラー総統
地球側参加部隊:ヤマト
戦力:戦艦1、第11番惑星守備隊残存部隊全力
指揮官:古代進
戦闘経緯・経過
第22話、木星ガニメデ基地において応急修理を行ったヤマト。地球が降伏を受諾したが、しかしヤマトは一隻でも徹底抗戦することを決意、ガトランティスへ最終決戦を挑む為出撃した。
その道すがら、デスラー総統のリベンジに遭遇する――第23話。
地球近傍、白色彗星が地球へ降下するその光景を目前にしながら、突然ガミラスの急降下爆撃機がワープを敢行してきた。さらに、ヤマトが迎撃態勢を構築する前に更に雷撃機がワープアウトしコスモタイガー発進口を攻撃――ヤマトのあらかたの戦闘力を奪う。
ヤマトの必殺技にして最後の手段である波動砲――も、いわゆるデスラー機雷を砲口前面にばらまかれてしまい、封じられる。更にデストロイヤーが大挙して襲来、砲撃を敢行しヤマトを徹底的に痛めつけた。
だが、ヤマトもやられっぱなしではない。
ヤマトは総統がかつて偶発的に敢行した白兵戦をそのままやり返すべく、小ワープを敢行。しかも機雷を引き連れたままの小ワープであったため、図らずもガミラス艦隊の攻撃を牽制することにも成功。
戦闘はデスラー艦内へと移る。
ヤマトクルーは空間騎兵隊と共にデスラー艦へ突入、タラン率いる戦闘隊と激戦を繰り広げた。空間騎兵の最後の組織的戦闘であり、総力を挙げた決戦。総統のために徹底抗戦するガミラス兵に対し、空間騎兵もまた徹底的に押して押しまくる激戦である。
この途中、うっかりミスで島君が吹き飛ばされる。
一方で単身、艦橋へと突入する古代。彼はデスラー総統とガミラス戦役以来の直接対決をする事となる……しかし、彼は元々負傷していた事に加えて、無理がたたって痛みに耐えきれず気絶。そこへと居合わせた雪――
第24話――雪は倒れた古代の下へと駆け寄り、銃口をデスラー総統へと向け、必死にかばった。他人に銃を向けるタイプではない、わかり切った彼女の性質ではあるが、古代のためならばと、弱々しくも必死に戦う姿勢を見せる彼女。
古代自身の地球人類への献身、何より雪の古代への献身――その情がデスラー総統の心を氷解させ、地球やヤマトとガミラスとの因縁を全て解消したのである。その献身が、都市帝国攻略のためのヒントを持ち帰ることになる。「真上と真下、もろいものだ……」おもむろに発した総統の餞別の言葉。
そしてデスラー総統はデスラー艦を放棄、第一空母へと帰還を移し――新たなる母星を探す旅へと赴いた。
描写の妥当性
さらば版の最終戦においても言及した通り、スキピオ・アフリカヌス対ハンニバル・バルカスと同じシチュエーションだ。
ガミラス艦が白兵戦中に旗艦の援護が出来なかったのも、機雷のせいもあるし旗艦とヤマトの距離があまりにも近すぎて誤射の危険が非常に大きかった。これでは砲撃による掩護はできない。艦上でも戦闘が行われており、艦載機で機銃掃射というのもそう簡単では無い。つまり、戦闘の大まかな筋に関しては、問題はない。ご都合主義と言われる内容ではないだろう。
若干説明の必要な描写は総統が独り納得して引き揚げる、付き従って全艦隊も引き揚げたあのシーンだろう――2199が大好きな人には理解できないだろうが、カリスマはそういうモノなのだ。
カリスマに行動の妥当性を求めたところで大した意味はないし、一種宗教的な陶酔をしているその支持者に何を言っても馬耳東風。しかも、平気で無茶な命令を実行してしまう。地獄の底までついていってしまう、それも喜んで。どんなに無理筋でも擁護してしまう人間が多数いる。
ヒトラーは非常にわかりやすい。最後の瞬間までナチス・ドイツの為に、ヒトラーの為に戦ったドイツ国民の何と多い事か。
彼に対する反乱や暗殺は多数発生したが、これは政権掌握前後に関しては個々人の決意による決行が中心であり、政治信条の違いによって起きた。他方で、戦争開始前後や終盤における暗殺計画は戦争の未然阻止、或いは泥沼にはまる前に講和へと導くため。
それぞれ異なる意思により決意され、それぞれ異なる方法で決行された。
まとめると、カリスマやその配下の行動に合理性を求めても、一般的な意味でのそれは得られない。特にデスラー総統に関しては、素直に敗戦を謝罪するなど、人間としての側面を素で晒すなど――どの陣営に属していても非難しずらい。どこぞの政治家連中のように、「私の責任で」などと言っておきながら私は悪くない矛盾しまくる為政者よりもずっと親しみがわき、悪感情を抑えられる。
この、弱点すら長所に変えるスーパーカリスマ相手に、反乱描写を差し挟んでも合理性が低い。タランが異議があるような反応を見せられるのは、総統の最側近である彼の特権だ。
むしろガミラス艦隊は総統に素直に従ってこそ、合理的描写と言えよう。
だが、島君に起きた出来事については――正直擁護する気になれない。
無論、別の科の人間が人数の足りなくなった科の応援に回るという事は戦闘中ならばあり得るだろう。それ自体は、問題ではない。まして班長職だし、ガミラス戦役の生き残りだ、一通りの戦闘訓練は受けているのだろうから戦力には当然なり得る。
問題なのは航海の責任者が外に出ているという事だ。何でお前、艦外に出たんだよ。そりゃ――次席に権限を委譲するのであれば、その限りではない。ご自由にどうぞ。しかし、島はそれすらせずに外へと飛び出していったのだ。お前、バカじゃねぇのか? 航海班長のイスが宙に浮いたのは、後にアナライザーが島の代打として登板する事からわかる様に権限は宙に浮いているのである。
古代の場合、彼の権限は艦長代理と言っておきながら基本的には戦闘以外に口出しはしない。この戦闘においても、事実上の副長である真田さんにちょいちょい意見を求めるなど、いざという時に真田さんに頼るという構図がすでに完成しており暗黙の了解としても……まあ、理解はできる。これで十分すぎるほどヤマトが機能しているのだから、指揮系統的な意味や実務的問題はない。年齢から言っても、真田さんの方が先任士官だろうし、古代が出て行ったら即座に指揮権が移るとしても別段不思議はない。いざとなれば、フェーベ沖で見たように、古代君は機上から戦闘指揮できるし、特に実際的な問題はないだろう。
だが、島大介は違う。運航班の班長であり、実際的に操艦を任された責任者だ。それが前線の応援に回るなんて……。
いくら何でもこの展開は擁護できない。ご都合主義以下の無理筋。というか、擁護すべきではない。
挙句、アナライザーでも十分島君並みの操艦が出来てしまったのだから――アイツ、いらなくね?
意義
空間騎兵隊との共同での戦闘。都市帝国突入以前に相当数の空間騎兵隊が失われていたが、その最後の戦力が勇んで決死の突入を図る――その決断を下すための大きな罪穢用にはなっただろう。
他にもデスラー総統の懐柔成功したことは大きい。これにより都市帝国の能力を減じ、攻撃を容易にすることが出来たといえよう。これに関して言えば、古代と雪のロマンスもそれなりに価値があったと言わざるを得ない。
総統に関して言えば、ヤマトへの恨みからの脱却という非常に大きな、今後の彼の運命を開くきっかけになった。そしてまた、死闘を演じた相手とのある種の絆は彼の非常に大きな財産となったともいえる。
ガトランティス側損害:ガミラス残存艦隊旗艦・デスラー艦
地球側損害:残存空間騎兵隊多数、ヤマトクルー多数戦死、波動砲(ストライカーボルト損傷)、第一及び第二主砲塔損傷