ストーリー考察Ⅻ・第6遊動機動隊の行方(さらば)
さらばにおいて登場し、ほとんど壊滅状態で地球に降伏勧告の使者として現れたバルゼーの第6遊動機動隊。結局、彼らはいつの間にかフェードアウトした。
彼らはどこに行ったのか、どうなったのか。
合理的な推測、説明を加えたい。
行方の可能性
1、敗北。
都市帝国とヤマトが戦っている最中、一部残存していた地球艦隊と戦闘し撃沈したという想定。一番あり得る。
さすがに本土警備用の防空戦闘機ぐらい用意しているだろう。宇宙港に多少は砲を据えているだろう。他方でバルゼー艦隊はほぼ確実に艦載機を擁していない。地球艦隊が土星決戦で出撃してきた機体をあらかた撃墜してくれたからだ。何百機ものデスバテーターが出撃してくることはあり得ないだろう。
ならば、地球の陸上基地にも多少は勝機がある。
メガロポリスの反対側の半球に位置する全基地から、練習機体も含めた全コスモタイガーを結集させてバルゼー艦隊に対して奇襲攻撃を行えばあるいは勝てる。航続距離はほぼ確実に心配はない。格闘戦闘をする必要もない。ただひたすら対空砲火を避けて爆弾を突っ込ませればいい。
半球の機体が全滅したとしても、もう半球側の基地の機体がある。全球の基地に存在するコスモタイガーを用いれば、まさか数機しかないなんて言うことはないだろうから、100機弱は確実に集められるだろう。ひよっこを乗せるのは忍びないが、しかし頑張ってもらわなければあの艦隊を排除できない。
また、護衛艦が幾らか残っているかもしれない。あるいは、主力戦艦や巡洋艦も改修中であったり建造が間に合わなかった何隻かが残っているかもしれない。これらを緊急出動させれば、都市帝国相手には敵わなくとも数隻の大戦艦と砲撃戦を繰り広げることは可能だろう。
たとえ少数の戦闘艦と少数のコスモタイガーであったとしても、バルゼー艦隊もまた戦力は少数しか残っていない。分が悪くとも、決して勝てない戦いではないだろう。
この戦闘でコスモタイガーは残存したが、主力戦艦が本当に全滅したとあれば、後のシリーズに顔を出さなかった説明の一助にもなる。
この場合、バルゼーは自衛戦闘を強いられる。都市帝国がいまだ健在とあれば当然、降伏と言う選択肢はあり得ない。唯一降伏できるタイミングは超巨大戦艦の消滅であるが、そこまでバルゼー艦隊が残っている可能性は低い。
どうあがいてもバルゼーは最終決戦に巻き込まれる。さすがに浮かぶ的と化した空母と少数の大戦艦では――勝ち目が薄い。
2、降伏。
あんまりあり得ないだろうが、超巨大戦艦の消滅=ガトランティス消滅に伴い降伏したというパターン。
散々地球を痛めつけ、それで降伏したとしても地球では肩身が狭いだろう。政治家なら、彼らを優遇することで彼らの軍艦の技術を吸い上げ(リバースエンジニアリング)たいと思うかもしれないが――国民は許さないだろう。
地球連邦市民が感情的に、ガトランティス人を許せるとは思えない。
バルゼーだってその程度は予想が付くだろうから、これは選択肢としては一番弱いといえるだろう。
3、逃亡。
一時的には可能性があるが、長期的に見ればこれもあんまりあり得ないだろう。
ガトランティス人の気質からすれば、逃亡は出来るだけ避けたいと思っても不思議はない。大体、カラの空母と大戦艦数隻の戦力ではどうやっても他の星を征服するには至らないだろう。
まるっきり文明程度の低い星ならば、征服は可能だろうし、そこで王の様に暮らすことは可能だが、バルゼーのあの雰囲気でリーダーシップを発揮できるかは疑問。しかも、別のガトランティス残存戦力と顔を合わせてしまえば裏切り者とか言われて攻撃を受けかねない。
逃亡と言う選択肢も、バルゼーは取り得ないだろう。
ガトランティス人の気質を考えて、一番妥当でしかもカッコいいのは1の想定だろう。戦って負けたとするのが一番納まりのいい彼らの結末だろう。
地球側も本土にある戦力を全てかき集めて混成部隊を編成し、地球として最後の決戦に挑む。解体を忘れていた突撃駆逐艦や司令船なんかも参加していても不思議はない。ブラックタイガーがゼロがコスモタイガーⅠやⅡと共に編隊を構成していても、あり得ない話ではない。これはある意味、夢のような光景。
しかし――負けて当然、勝って偶然の戦闘に近い。
バルゼー艦隊も、本国が大惨事で他方で目の前に大惨事が迫る中での決断。少ない手勢、取れる手段はほとんどない中での戦闘。バルゼーは生存を期する戦闘を行うことはできないだろう。この状況において彼の勝利条件はただ一つ、残存地球艦隊を都市帝国攻略に参加させない事。その身を以て地球艦隊の出撃を阻止する事だ。
互いに死力を尽くした戦闘となるのは想像に難くない。
残存地球戦力との最後の戦いで敗北し、壊滅した――これが最も妥当で最も華を持たせられる想定ではないだろうか。