旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス戦役 第二期地球艦隊を率いた諸将

 

 ガトランティス戦役において艦隊を預かった司令は複数人が登場している。それぞれのキャラクターや特性というものを見ていくことで、その行動の妥当性や製作陣が何を仮託したかを推測が可能であると考えられる。

 そこで、今回は彼らを網羅的に考察したいと思う。

 

 

 

 さらばのみ登場――

 氏名:アンドロメダ艦長(本名不明)

 年齢:不明(50代から60代)

 階級/役職:不明(最低で大将クラス)/地球防衛艦隊総司令兼務アンドロメダ艦長

 青い新式の制服に身を包んだ壮年の男性。その名の通り最新鋭戦艦〈アンドロメダ〉の艦長にして地球防衛艦隊総司令である。白髪と整えられた白髭が特徴で落ち着き自信に満ちた振る舞いが印象的だった。ぱっと見、政治家みたいだけどね。

 登場は劇中の終盤、太陽系へ侵攻してきたガトランティス前衛艦隊=第6遊動機動隊を迎撃すべく、月面に集結した地球艦隊を率いて出撃。その全力を以て敵の布陣していた土星圏に突入しこれを撃滅した。

 しかし、続く白色彗星に対しては艦隊が有する拡散波動砲全門の一斉射撃を以て迎撃を試みたが失敗、〈アンドロメダ〉と共に白色彗星に呑み込まれてしまう。

 

 階級が述べられる事はついぞなかったが、恐らく大将かそれ以上だろう、地球防衛艦隊総司令なのだから当然だろう。ただ、元帥まで行くと現場指揮官という感じが薄れる気がする。態度は大元帥級だけど。

 よく無能扱いされるが実際には彼の指揮は堅実かつ非常に落ち着いたもので、自艦隊の能力=火力を最大限生かし、反対に敵の弱い点=的のデカさを突くしっかりした戦略に基づいたもの。地球艦隊の大火力によって彼の指揮が短絡的なイメージで語られるが、実際には安全策・最善策を取ったに過ぎない

 例えば艦載機だが――彼我の航空戦力には測り難い差がある為、うかつに出動はさせられない。しかしてデスバテーターは全幅40メートルの水雷艇レベルであるから密集隊形で迎撃すれば何とかなる可能性は高かった。むしろ密集隊形だから対空戦闘を優位に進めることが出来た。

 潜宙艦は――宇宙最強の戦闘艦である。何といってもレーダーにも映らない、次元潜航艇と違い全く視認できない。これは初見殺しと言っていい性能だ、そんな潜宙艦相手ではアレが精いっぱいだろう。逆に、初見で勝てると思うかい? 艦載機攻撃で相手を密集させたバルゼーの指揮が大当たりしたのであり、むしろ即座に反撃の手を打ったのは見事というほかない。

 白色彗星のガス体に対し――全力で当たったが、単純に敵の方が強力だった。これは古代の情報伝達失敗が一番痛い。聞いたうえで無視したなら、それは指揮ミスになるがそんな話は劇中にない。つまり不可抗力。

 と、以上のように彼の全体的な指揮は十分に擁護可能である。若干、態度が大柄ではあっただろうが、これが士気に悪い影響をしたかといえばこれは否であろう。むしろ、良かった面の方が多いのではないだろうか。指揮官がぶるぶる震えながら陣頭指揮を執るなんて見たくはない。それに白色彗星を侮っていたわけではなく、マルチ隊形からの拡散波動砲一斉射撃の際は汗を流してその時を待った。ちゃんと、腰を据えて本気で戦ったのである。そうじゃなきゃ、精神的な影響で汗は流さん。

 ただ……最期の指示が反転180度であったのが非常に悔やまれる。全体に退却命令を出したのは当然の事であるし、ちゃんと指揮官としての責任を果たしたのではあるが――事前の撤退プランに手抜かりがあったというのが説明として自然だろう。かつ前提での出撃なのは当然だが、万が一を想定しない事と同一ではない。それが万が一を想定しなかった……当時の地球のおごりを明確に表現し、それが脆くも崩れ去る象徴的なシーンだろう。

 

  無能な指揮官として描かれたようにも見えるが、つぶさに見ると悪い内容ではない。どちらかといえば、バルゼーの方が無能な指揮官として描かれている。あくまでどちらかといえば、という意味であり実際にはバルゼーは論理的に戦闘を指揮していた。

 この描き方の意図としては、それなりに能力を持った指揮官と強力な艦隊でも倒せない白色彗星という印象を視聴者に見せる為だろう。同時に指揮官に幾らか横柄な態度を取らせることで地球のおごりを演出するという側面もあると推測できる。

 そりゃバカでも勝てる艦隊に勝った白色彗星なんて、別に怖くもなんともないモノね。生真面目な指揮官に勝ってもただ後味悪いだけで、驕りが見える指揮官じゃないと教訓的な作品にならないモノね。

 だから地球艦隊を極めて強力な艦隊として描く必要があった。その指揮官として十分な能力と威厳を持ったキャラクターとして、彼は描かれたと纏められるだろう。

 最初に述べたように、最期は旗艦〈アンドロメダ〉や指揮下の全艦隊と共に高速中性子の嵐に呑まれ消滅した。

 

 

 氏名:アンドロメダ副官(本名不明)

 年齢:不明(30代から40代)

 階級/役職:不明(佐官クラス)/アンドロメダ副官

 新式の制服に身を包んだ割合に若い人物で副官というより参謀だが、副官と参謀の区別が作品では特についていないから正直かれ立ち位置が判らん。階級は恐らく佐官の……大佐当たりだろう。現実において現場に赴任する参謀は大体佐官クラスゆえ、大佐が妥当だろう。

 デスバテーターとイーターⅡの大編隊の出撃に対し、やんわりと艦載機による迎撃を進言した。意見が言えることや、艦長が柔和な雰囲気で進言を却下した事から、上司との信頼関係構築は十分とみられる。ブラックな幕僚部や職場だと常識的な意見も言えなくなるようで……それを考えると結構ホワイトな環境の司令部らしい

 残念ながら、ほとんど出番なし最期は白色彗星にアンドロメダごと呑み込まれた

 

 

 新しい地球防衛艦隊では軍服にも大きな変化が見られ、ガミラス戦役で利用した軍服類は全て刷新された。ほぼ全てのクルーは上から下まで青を基調とした服装で統一しているのが特徴的である。

 一般クルーはシルエットこそ〈ヤマト〉クルーの白に矢印をあしらった制服と同じだが、しかして青いほぼ無地に変更されている。一方で左胸に白い錨模様をあしらい、右の二の腕にワッペンが張られ所属部隊のナンバー(第15輸送補給船護衛艦隊なら【15】)が書かれている。また、右肩から腰にかけて胸側と背中側に赤い直線が光れている。袖と襟のローマンカラーも赤い。この服装はヤマト2でも継承される

 艦長クラスは折襟で青い丈の短いコートを羽織る。ほぼジャケットにしか見えない。縁が黄色く、裏地が赤。袖が黄色だったりする。このクラスまでは手袋をするならライダー仕様のタイプになる様子。将官になるとまた事情が変わり、副官は少し濃い青の表生地に黄色い裏生地を合わせたミドル丈のコートを着用する。縁が黄色く、袖口も黄色いがすべて無地。下に着ている制服は一般クルーと大差ないが、ローマンカラーは濃紺である。艦長クラスと副官の服装はヤマト2でも継承された

 一方、総司令(アンドロメダ艦長)の服装はまたこれが形が異なる。トレンチコートとほぼ同一の形で、表地青で裏地が黄色。縁も袖口も黄色い。また、ボタンで留めるのかは不明だが黄色いラインが縁とは別に肩から裾にかけて引かれている。なぜかは知らないが、黒い錨のマークが左の襟と袖口或いは手袋に大きく一つづつ描かれているのが目立つ。土方艦長と同様にジャボ、割と細いベルト、肩章、白い手袋と軍帽を着用する。残念ながらこのタイプの軍服はヤマト2では継承されなかった。

 土方艦長タイプのコートはミドル丈の黒いコート。デカい以外は普通の折り襟を有し、裏地が赤く黄色い縁と黄色いライン――襟や袖口など黒い錨の描かれている位置と言い、デザインはかなりアンドロメダ艦長のコートに近い。あまり画面には映らないが、白ズボン。ヤマト2ではこのタイプがベーシックな艦隊司令の軍服となった

 

 

 ヤマト2のみ登場――

 氏名:ヒペリオン艦隊司令(本名不明(英語版Captain Slate)

 年齢:不明(土方艦長より年上か?)

 階級:不明(将官クラス)/ヒペリオン艦隊司令(地球防衛艦隊・前衛艦隊)

 沖田艦長世代と同じ黒いコートの制服に身を包むグラサン艦隊司令。奇襲・強襲を仕掛ける快速のヒペリオン艦隊を預かり、果敢にバルゼー艦隊に左舷後方から攻撃を仕掛けたが火力の差を埋められず旗艦もろとも戦死。

 

 指揮能力が高いか低いかは正直微妙なライン。闘将ではあるが能力的には凡将といったところか。別動隊を任される以上は能力が高いという判定なのだろう。

 船足を止めずに敵艦隊に突入を試みたのは当たり前ではあるし、しかし主砲による攻撃に終始したのは硬直な指揮といわざるを得ない。ミサイルや魚雷の豊富な駆逐艦巡洋艦を多数抱えているのだから砲撃戦よりも誘導弾をぶちかます方が妥当な指揮だっただろう。

 他方で、敵の大火力を前にも怯まなかった勇敢さは称賛に値するだろう。更に、ヒペリオン艦隊はアンドロメダの艦内パネルにて戦況が明らかになっていたが――シリウス方面軍第二艦隊に対して最期まで前進し、幾らか後退させることに成功したことは間違いない。これはシリウス方面軍全力を主力艦隊前面に押し込んで、その行動・とれる戦術を狭めるという、地球側が想定していたシリウス方面軍の内情からすれば、ヒペリオン艦隊は最善策を取ったと言える。一定程度作戦が成功したと評することが出来るだろう。要するに一応、かく乱は成功した。

 また、遺言となってしまった「我が旗艦の――」との通信は最期まで彼我の戦力分析を行い、土方司令部に情報を送ろうと試みたと考えれば、指揮官の鑑という評価もできるだろう。若干贔屓の引き倒しな所があるが。

 

 サングラスのおかげで土方総司令より年齢が上に見える。砲撃にこだわったのを作画に要因を求めないならば、砲術畑の人という事になろう。

 階級は不明瞭で、正直判断がつかない。防衛艦隊がアメリカ流のあまり年齢や期にこだわる事のない組織であれば、土方総司令と同格の大将クラスでも問題はない。必要事由さえあれば年齢やハンモックナンバーはそんなに関係ない。一方で日本海軍的な年功序列で硬直した組織であれば、土方総司令より年上だった場合は追いこされてしまったという事で割と出世コースを外れた人物という事になり、少将か最高で中将がせいぜいと予想できる。

 登場理由は多分、バルゼー艦隊の強力さの演出が役割であろう。そのためのキャラクターで、それ以上でも以下でもないのだろう。存在としては正直、製作陣にとってウェイトは小さいだろう。

 ただ、ヤマトファンにとっては……何となく哀愁というかそういったものを感じる彼の存在は――非常に大きい最期は先に述べたように反転してきたシリウス方面軍第二艦隊の衝撃砲により旗艦と共に爆散したどうでもいい事かもしれないが英語版だとアラン(Alan)というファーストネームがあるらしい。

 

 

 

 氏名:副官(本名不明、英語版でも言及無し)

 年齢:不明

 階級/役職:不明(佐官クラス)/土方幕僚部副官

 さらばにおけるアンドロメダ艦長の副官に当たる人物で、服装も同じ青いコート。役割も同じだが、土方総司令の性格が性格だけに……信頼はされているようだが、ブラックに近い職場環境。まあ、意見具申はそれなりに出来るようなので、少々古臭い普通の職場といえばそうなのかもしれない。

 第18話で見たようにガトランティス戦役を闘った地球側登場人物で珍しくというかほぼ唯一、ホルスター的なモノをベルトの左側に引っ提げている

 

 ヤマト追撃戦などで見せたように、決して臆病な性格では無く、むしろ果敢な性格であることが判る。ただ、オーバーな表現をしがちな人物でガス体を取っ払ったのに「全く効果がない」などと、表現が過剰なのが玉に瑕。ちなみに彼の隣に居るメガネは波動砲砲手らしい。

 彼は全般的に防衛司令部より土方総司令に与し、艦隊集結も常識的な反論をしたが結局は集結命令を発して反土方的画策などは何もしなかった。また、拡散波動砲の早期使用を意見具申して戦場に留まる様に土方司令に働きかけたり、アンドロメダ以下の都市帝国突入においても異論を唱えなかったなど――一見官僚的だが、なんだかんだ言って武人的気質の持ち主と評価できるシビリアンコントロール的には軍紀的には、どちらかといえばよくない傾向だとは思うが……土方総司令との信頼関係はちゃんと構築されている模様。

 役割としては土方総司令の決断力と求心力の演出が大きかっただろう。また、ヤマト世界は案外司令官と副官がワンセットになっていることが普通。それを考えると、そう大きな役割と製作陣が期待したとは思えない。

 が、印象には結構残った。そして彼は都市帝国攻撃の際、土方総司令より先に燃えるアンドロメダ艦橋で戦死した

 

 

 氏名:第一空母艦長(本名不明)

 年齢:不明

 階級/役職:不明(佐官から将官)/第一空母艦長

 ヒペリオン艦隊司令らと同じ黒いコートの制服を羽織った艦長。巡航空母艦隊の指揮官かもしれないが、不明。階級は不明で艦長なら大佐だろうし、隊司令なら少将から中将ぐらいの格は欲しい。

 声が凄いはきはきして、何ならうるさいレベルだが登場シーンが登場シーンゆえにカッコいいというほかない。残念ながら雷撃隊を発進させるシーンで自空母の攻撃隊に下令したのみの登場。仮に指揮をしていたとしても、前線に出たヤマトに代わって機動部隊の指揮を引き継いだ程度だろう。この人に関しては情報がなさ過ぎて考察のしようがない……。

 この人に関しては階級がいまいち予想できない、立ち位置もわからん。隊司令ではあるが、航空戦のプロでは無く奇襲作戦成功の為に歴戦の古代に指揮官を譲った――という前提があれば、将官であっても不思議はない。この場合は少将や准将ぐらいが想定できるだろう。他方で、単なる艦長の可能性もなくはないだろうから……全然わからない。服装からすれば……将官だろうか。巡航空母艦隊が基本的には編成上の単位で、元々は空母が単艦で活動していたとすれば、艦長=艦隊司令扱いでも何とかこじつけられる……か?

 多分それっぽさを演出するための登場だろう。そんなに深い想いとか考えがあって登場させたキャラクターではないはず。思入れが有ったら名前ぐらい付けるだろうから。しかし、威勢のいい出撃命令、明らかに現代の海軍軍人っぽい雰囲気といい、良い感じに濃ゆいキャラであり……是非活躍してほしかったのだが……。

 恐らく僚艦と共に突如現れた白色彗星のみ込まれ、旗艦と共に運命を共にしたと思われる。きっと最期まで踏ん張っただろう。

 

 

 タイタン基地に集まったその他の皆さん――

 将官クラス、佐官クラスの各指揮官が多数タイタン基地に集結し、対ガトランティスの戦闘を議論した。古代をはじめとした青く丈の短いコートと土方総司令ら黒く前を重ねるタイプのコートに加え、事務らしき防衛司令部要員と同じ緑色の背広型軍服の3種類の服装の人物が登場している。また、青コート以外はジャボを首に巻いている。なお、コートすら羽織らない青い制服の諸兄はいわゆる下っ端と思われる。

 

 青コートは佐官から代将クラスと思われる。小中型艦の艦長ないし、それらによって構成される戦隊司令辺りが職責だろう。無論、能力によってもうワンランク上の大型艦や艦隊司令を受け持つこともあり得るとするのが妥当。他方――類似した色合いコートであっても、後方の幕僚部に所属する者は将官クラスの型のコートを着るのだろうとこじつけ推測できる。

 黒いコートは十中八九将官クラス。ジャボが妙におしゃれというか貴族趣味。土方さんに意見したのは彼等であり、分艦隊であるヒペリオン艦隊司令も同格の服装に身を包んでいた。このタイプの服はさらばでは土方さん以外には着用しておらず、何度考察してもガミラス戦役からの使用とするのが妥当。他方、ヤマト2においては青コートの方が少なく――これは理由が不明。新体制の防衛軍と旧体制の防衛軍の内部対立として説明もできるが……本筋に関係ない感が否めない。

 緑軍の背広型は明らかに防衛司令部の要員で見るからに完全に事務職だろう。武官(いわゆる制服組)ではなく防衛省職員(いわゆる背広組)で次官や審議官といった別個の役職があると思われるが、それを示すような章は特に事務系では見受けられない。ガミラス戦役時代の赤茶色のそれとは異なり、緑でシルエットは結構洗練されている。現場指揮官とは明確に異なる服である事は一種の差別化であり、シビリアンコントロールの現れという説明も可能だろう。

 ジャボは多分、高官一般を現す印。

 防衛軍長官のジャボは白で参謀は色付きのジャボであるが、他の司令部要員はジャボすらなかった。基地司令部に派遣されている司令部要員に関しては作戦会議に参加したあの人は白ジャボで、中央司令部とはいくつかずつ階級が下がる=派遣先においては格が相対的に上昇するという事だろう。他方、現場指揮官=武官でジャボを付けている人は例外なく黒コート。副官は残念ながらジャボなし。恐らく、黒コートの時点で高位艦隊司令であり、ジャボを自動的に着用することになるのだろう。

 

 

 

 さらば、ヤマト2双方に登場――

 氏名:土方竜(英語版:Draco Gideon)

 年齢:不明(52歳前後)

 階級:不明(正直推測が出来ない)

 役職:第11艦隊司令ヤマト艦長(さらば)/地球防衛艦隊総司令兼務(ヤマト2)

 どの作品でもジャボを付けた黒いコートの制服に身を包んだ少しロン毛な白髪の男性。基本は寡黙だが、必要な場面ではちゃんと喋る。部下に下す命令は必要最低限で、しかもその命令の内容自体も必要最低限だから結構怖い印象。平成や令和基準から言えばかなりスパルタな昭和漢との評価になるだろう。

 口の悪かった沖田時代とは異なり、部下への叱責は結構言葉を選んでいるのか、NOを意味する言葉以上の装飾はしなかった。名前はヤマトによくある新選組のメンバーからの明らかな借用、つまり土方歳三

 

 指揮は性格同様、冷静沈着にして果断

 さらばにおいては砲術の専門家を思わせる波動砲発射をテレザートで行い、地球前面域ではある意味で機動戦といえた白色彗星迎撃~都市帝国攻撃までを指揮。ヤマトの能力を最大限に引き揚げガトランティスと対等な戦闘をけん引した

 古代に波動砲をゆだね自身は爆発圏からの艦離脱を指揮、その後に出現した都市帝国に大いに動揺したヤマトクルーに対しひたすら冷静に全砲門の発射用意とコスモタイガー隊の出撃を命じる。しかし回転ミサイルの猛攻に打つ手無く、都市帝国下部への回避を命じたが下部にも要塞砲はあり、あまり被弾を避ける効果はなかった。

 この激戦の中、コンソールの爆発か艦長席にてついに致命傷を負う。

 苦しい息の中、空間騎兵隊の斉藤隊長に支えられつつ「次の艦長は君だ」と古代を指名。更に発見した艦載機射出口からの内部突入、動力炉の破壊を指示し「戦え古代、地球の運命は君の肩に、君たちの肩にかかっているのだ」と鼓舞する。そして「頼むぞ……古代」と言葉を残しこと切れた。

 

 ヤマト2においては物理的にヤマトの進路を妨害した第1話や第5話を除き、常に後押しする立場で振る舞う。

 艦隊司令としては第10話で戦力が足りないと長官に対しアンドロメダ級5隻を白色彗星の地球到達まで100日を切る中で要求、第15話ではアンドロメダ級を10隻以上必要だと要求を引き揚げた。結果として首相に艦隊建造計画を、首相が納得した上とはいえ変更させる暴挙に繋がる。

 佳境に入った第18話では外周艦隊がキャッチした情報を受け、出撃してきたバルゼー艦隊を迎撃すべく防衛会議をガン無視して艦隊の配置転換を強行、全艦隊を土星圏に集結させた。艦隊指揮権を掌握していることをいい事に、長官が地球の未来を想えばこそ罷免などできず事後承認する他ないと知っていて、決断を既成事実化して迫ったのである。

 第20話において、プロキオン方面軍の航空戦力を危険視してヤマトに機動部隊を率いさせ奇襲攻撃を敢行。その戦果を以て第21話にてシリウス方面軍と直接対決。ヒペリオン艦隊に先制攻撃を掛けさせたが、強力なシリウス方面軍相手に作戦を変更せざるを得なくなり拡散波動砲の先制攻撃により敵艦隊粉砕を試みた。だが、バルゼー総司令が自慢の火炎直撃砲により艦隊が大損害を負い、土星本星への転進――ヤマト機動部隊と共にシリウス方面軍を円環に誘い込む。そして、水蒸気爆発を誘発させ敵陣を乱し反転攻勢に出た。この猛攻によりバルゼー艦隊を壊滅、旗艦〈メダルーザ〉と決戦を挑みこれを粉砕し知略を以てバルゼー艦隊を迎撃しこれを粉砕した。まさにハンガリーの諺「逃げるは恥だが役に立つ」をこれ以上ない形で正統に表現したといえよう。

 だが、突如現れた白色彗星により艦隊は更なる損害を負い、ヤマトが遭難。戦力が不十分な状態ではあったが拡散波動砲一斉射撃を以てこれを迎撃。ガス体を取り払う事には成功したがしかし、艦内機構が損傷したのか続く都市帝国との決戦ではショックカノンで挑むほかなく……「砲撃用意。エネルギーが尽きるまで、怒りを込めて打ち尽くせ」と下令、全艦突撃を敢行。だが、しかしガトランティスを打ち破ることは叶わず。

 次々と僚艦が沈み、ただ一隻となる。そしてヤマトよ生きていたら聞いてくれと通信を送り、都市帝国下部への攻撃を指示。直後、旗艦アンドロメダと共に都市帝国回転リング部へ突入、戦死した。

 

 彼の階級は何だと考えると――さらばにおいては第11艦隊が辺境地に配備されている点と規模がさほど大きくないと予想されるため、少将クラスと推測が可能。少将ぐらいならば小規模な戦力や艦その物の指揮も鈍る程に現場を離れないだろうし、宇宙戦士訓練学校の教官が通常の兵学校と同じように教官が大佐であれば――少将は大佐の一つ上でから昇進と配置換えが同時に行われたと説明は可能。海上自衛隊式なら群とか隊司令なら一等海佐での就任例があるゆえ、なお矛盾はない。

 沖田艦長に続く、そして性質が反対に近いタイプのリーダーを製作陣は求めたのだろう。沖田艦長という第一作ファンにとって絶対に近い存在に匹敵し得る、それだけの能力を持ったリーダー。これを実現するには土方艦長は極めて有能な戦術家でなければならず、熱い男であった沖田艦長と被らないように冷静な男でなければならなかった。そして実際それだけの指揮と冷静さを劇中に見せた。彼の存在によって古代を成長させ、最期のヤマト艦長という大役へと導く鍵中の鍵なキャラクターといえるだろう。

 

 ヤマト2においてはまごうことなき大将だろう。本来が中将であったとしても、総司令就任に当たり昇進という事もあるから大将が妥当。問題は割と最近まで共感をしていたという点で……教官=佐官クラスで艦隊総司令などなれるはずもなく、この点が大きく古代のセリフと齟齬が出る。教官ではなく宇宙戦士訓練学校の校長ならば、恐らく少将か中将クラスが就任すると想定できるため齟齬がなくなる。つまり古代が火星で訓練中に校長就任してもらえば、ごまかしは利く。

 土方艦長が土方総司令になったのは演出マターだろう。登場済みキャラクターの中では他に適任なキャラクターもなく、新たに作るには不都合があったと思われる。

 何といってもヤマト2はテレビシリーズだ、映画とは違い非常に長く尺を埋め演出効果を高めるには地球艦隊を丁寧に描く必要性が出て来た。この地球艦隊を製作陣自らが印象を悪くしてしまったアンドロメダ艦長に任せるのでは無く土方さんに任せることによって――堕落した地球や政府と、その中でも誇りを持った地球人・地球艦隊という対比やヤマトが旅立つバックグラウンドの形成を行った。というのが真相だろう。

 特に、艦隊の配置転換を独断専行で行ったアレは際立ったエピソード。元々果断で柔軟で芯のある武人としての描かれ方をしたからこそ、妥当性を持ったエピソードである。他のキャラクターでは無しえなかっただろうし、アンドロメダ艦長にやらせれば傲慢以外の感想が生まれない危険もあった。

 土方司令はさらば・ヤマト2共に基本的には静かな闘将で一貫して描かれている。別に叱りつけるタイプではなく、必要最低限にして十分な言葉を相手に使うというのは何とも職人肌な描かれ方である。

 ただ、ヤマト2ではさらばよりも果敢さが強調され、豪快で豪放なバルゼー総司令と対になる指揮官としての側面を強調され、それが作品の盛り上げに好材料となった。ヤマト2の艦隊決戦として最高の盛り上がりを土星決戦で演出できるだけの、有能な指揮官としての表現の積み重ねが成されたのは断言していいだろう。20話掛けて少しずつ描いた有能さが、土星決戦での拡散波動砲戦から砲撃戦への転向を決定できるだけの胆力を、確証バイアスを自ら脱せられるだけの指揮能力を発揮できる論理性を書き起こしたのである。

 

 土方総司令(艦長)は指揮も優秀だが、そのキャラクター性もまた優秀でガトランティス戦役における盛り上がりを創出した武勲者ヴィジュもカッコいいが、そのエピソードやセリフがまたカッコいいのである

 さらばにおいて第11番惑星での敗戦から常に死に急いでいたがしかしてクルーを巻き添えにしようとは決してしない姿勢を堅持。最期は「生きて汚名を晒していた私もやっと……」と、それでも最期まで最期の後も指揮をすべく頭脳を働かせた。カッコいい以外の言葉を掛けようがない。そりゃ古代も土方前艦長の命令を決行するッ! と意気込むだろうし、元から勇敢な空間騎兵隊が益々決死隊に参加する動機になっただろう。

 ヤマト2では隊司令として先を見据えて戦いをプロデュースしていった。特に土星決戦では火炎直撃砲を前に「これが敵の決め手か……」と、しかしこれを知略によって打ち破った。その後白色彗星に対しては立ち上がっての拡散波動砲発射を命じ、現れた都市帝国に対して果敢に戦闘を挑んだ。この古武士のような戦い方はしびれるというほかないだろう。

 また、最期まで打ち破る術を探り「そうか……ヤマト、生きていたら聞いてくれ。彗星帝国を攻めるのは、あの下の部分だった。我々はあの都市に目を奪われ過ぎていた。ヤマト、ヤマト、我々は負けた。だがヤマト――」とヤマトが戦線に復帰すると信じて通信を飛ばした。その途切れ途切れの、何度も「生きて」とフレーズを繰り返す通信は様々な文章を想像させる。

 劇中、唯一先を見通せなかったのが白色彗星迎撃であるが、しかしその先をヤマトに託した。平たく言って、泣けるね。

 

 土方さんがいなければ、ガトランティス戦役を描いた二作品はただ、地球艦隊が壊滅したり、ヤマトクルーがたくさん死ぬだけの作品になってしまっていただろう

 確かにかなり人は死ぬ、しかしてそれが無駄とか打算とかの産物ではなく、ちゃんとした理由のある死を迎える。とにかく地球を守るというその目的の為に、無謀でも挑まねばならない。その挑む姿勢を登場するキャラクターの中で最も強く見せたのがこの男、土方竜。

 この男の存在無くして、ガトランティス戦役は伝説になりえなかった。それほどの影響力のあるキャラクターと断言して構わないだろう

 

 

 

 諸将総括

 極めて優秀な指揮官であるかは見方によるが、他方で意外かもしれないが無能な指揮官はいない。全員が一定レベル以上の能力を持った指揮官だった。

 とはいえ――正直な所、土方さん以外はあまりしっかりした描かれ方はしていない。ストーリー上は必要ない事であるし、尺のとれないさらばにおいては無理のない事

 しかし、些細なセリフでもそれが存外に重いものである事も少なくはない。そう言った味付けによって、大きく性格を印象付けられたキャラクターが図らずもこの作品の厚みを増したのだといえる

 例えばアンドロメダ艦長、彼は地球のおごりとその裏付けの軍事力を見せつけた――存在が作品価値として非常にプラスになったキャラクターであろう。あるいは、タイタン基地に集まった諸将から出た疑問の声は地球艦隊が決して硬直した組織ではなく、地球を守る為に集結したプロフェッショナル集団であるという事を明確に印象付け、更に土方総司令の決断力や慧眼を強く視聴者に訴えかけた。

 主人公の扱いに比べれば、彼等指揮官は土方さんを除けば皆モブキャラに近い。しかし、そのモブキャラのちょっとした行動が、作品にリアリティを持たせてくれるのだ。

 

 彼らは作品中におけるガトランティス迎撃の根幹であると共に、作品の価値を高めてくれる対視聴者における極めて優秀な指揮官達であったといえよう。