旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

暗黒星団帝国兵器群 ゴルバ型浮遊要塞――廉価機動要塞――

 

 ゴルバ型浮遊要塞はグロータスに率いられ、7基集中投入された大型要塞である。その能力のほどは判然としないが、自動惑星ゴルバの恐怖を覚えているヤマトクルーや視聴者にとって、非常に恐ろしい存在であったことは間違いない。

 

 

 ――データ―― 
 型名:ゴルバ型
 類別:浮遊要塞

 全長:1080メートル
 直径:630メートル
 武装:空間重魚雷9門、上部速射ビーム砲多数、上部速射ミサイル多数

 

 ゴルバ型浮遊要塞の概要

 全長から言えば自動惑星ゴルバの拡大版であるが、戦闘ヘリの搭載はナシ。あの巨大砲もナシと……事実上の廉価版そんな高速移動しない要塞で援護してくれる艦載機が無いっていったいどういう事だよ。背景の明るいイスカンダル戦と違うからであろうが、どうにも内部も暗い印象。しかも空間重魚雷の発射機構は旋回不可能な可能性がある上に、自動開閉式になっていない可能性もある。結構、武装の質が低い
 火線は自動惑星ゴルバの蛍光黄緑と異なりパープル。また、ミサイル発射帯と速射ビーム発射帯は分けて配置されている模様。前者の方が位置的に高い模様。

 

 特に再設定が必要ない事は自動惑星ゴルバの記事において述べた通りである。が、ヤマトなども再設定を加えたため、これらにビジュアルを合わせるならば、単純に倍をする必要が有る。

 つまり――

 全長:2,160メートル
 直径:1,260メートル
 武装:空間重魚雷9門、上部速射ビーム砲多数、上部速射ミサイル多数

  と、デケェんだか小せぇんだかわかんねぇ全長となる。母艦機能を保有する必要がない故、自動惑星以上に大きさは何とでもなるから話の座りが悪い。

 

 

 戦略決戦兵器:空間重魚雷
 直径50メートル、全長189メートルの超巨大な空間重魚雷がコイツの目玉。
 ガトランティスのミサイル艦の全長にミサイルを含めなかった場合の破滅ミサイルと同等の巨大さである。再設定値も、ミサイル艦の再設定最小値の破滅ミサイルの大きさと同格だ。エグイほど大きい
 容積にして約37万立米に上る。これは非常にざっくりした計算だが、物凄く空間重魚雷と似た見た目の核爆弾のB41(容積5.14立米)の全長50倍、容積的には71984倍ほどとなる。


 このB41は最大25TNT換算メガトンの出力を誇のだが――単純計算してはならないが、1250TNT換算メガトン=1.25TNT換算ギガトン容積的には1799610TNT換算メガトン=1.79TNT換算テラトンは予想の範囲内となろう。太い上、元の基準が大出力である為、破滅ミサイルの最大予想原作設定値での出力を大幅に上回る。再設定した場合の最小値の破壊力と同等であるから。恐ろしい。
 これが9本。あまりにも巨大な全長である為、恐らく、次弾装填は不可能だろう。出力総数としては11.25TNT換算ギガトン、容積的には16.11TNT換算テラトンが見込まれる。原作設定値のゴーランド主力艦隊の破壊力とほぼ同等だ。

 

 仮に再設定値を用いれば直径100メートルの378メートルの容積296万7300立米となる。この場合はB41の100倍(容積的には577295倍)ほどとなり、出力も2500TNT換算メガトン=2.5TNT換算テラトン級(容積的には14432375TNT換算メガトン=14.43TNT換算ペタトン)となろう。容積を見た場合、ゴーランド艦隊全力の7倍の出力相当となる。
 同じように9本であることを鑑みると、22.5TNT換算テラトンの容積的には129.87TNT換算ペタトンとゴーランド艦隊全力の10倍の出力を誇る

 

 劇中では7基が出撃、ヤマトを迎撃した。部隊の総出力=63本分の攻撃力を計算すると――
 約77TNT換算ギガトンないし約112TNT換算テラトン、再設定を加えると約164TNT換算テラトンないし約903TNT換算ペタトンの範囲が見込まれる。
 要は、最大でゴーランド艦隊全力の80倍ほどの爆発力を内包した要塞群がヤマトに襲い掛かったという事になる。

 

 反物質であった場合、重量は原作設定値で4万トン強の再設定値で16万トン強を見込む。要塞1基当たり16万トンないし144万トン。すべてを反物質とした場合、惑星破壊を見込める量の概ね1/25相当となる。ロータスの部隊全力であれば、総数は112万トンないし1008万トンと惑星破壊可能な重量の1/3弱と相当肉薄可能
 実際には装甲部に相当な重量を割かれるからもっと出力は低くなるだろうが、それでも惑星に打ち込めば近くはボロボロになるだろう。

 仮に反物質を主力とする爆弾であれば、1基でも惑星を制圧する圧力には十分なるまして集中運用すれば現実問題として惑星消滅の危険が目前に迫る。降伏に向けた交渉は非常に容易になろう

 

 結構問題なのは予備弾がない事。
 ゴルバにとっての空間重魚雷はモスラにとっての鱗粉と同じ。非常に強力で相手を容易に圧倒できる反面、いっぺん使うと再度の使用は事実上不可能。だから、ここぞというタイミングで使わなければ、むしろ劣勢に追い込まれてしまう。複数基が同一空間に展開している状況ならばこのデメリットは十分低減可能だが、単独では中々に使用が危険。

 

 

 極めて高い危険性
 さはさりながら、これだけの出力の魚雷を抱えている事はある意味でリスクを抱えているともいえるだろう。つまり、内部で事故が起きればそりゃ誘爆するだろう。

 こいつの場合は、1本でも暴発すれば大惨事不可避。最悪の場合、残り8本まで一気に誘爆してしまうだろう。1基が全損すれば――集中配置された他の要塞が誘爆する可能性は十分ある。

 劇中であったように7基全部が誘爆する可能性もなくはない。1基が爆発しても危険なのに、それが2基ほとんど間を置かず爆発したのだから……加えて、ゴルバを形成する装甲板があちらこちらに飛び散るのだから、それで損傷する。損傷からエネルギーが流入するという可能性もあるだろう。


 ロータスはこの危険や誘爆の可能性を理解していたのか――実は疑問

 グロータスが発射命令を下した12本のプラス盾にされた要塞に内包された9本、攻撃が成功していた場合は合計21本の空間重魚雷が――それも、要塞の動力炉まで巻き添えにして爆発していた可能性が高い。要は惑星の約1/9が吹き飛ぶようなエネルギーがあの一点に集中していたのだ。これは危険
 もしかすると、ロータスにとっては自動惑星ゴルバの経験を踏まえた控えめな攻撃という認識があったかもしれないが、全然控えめではない。しかも、ヤマトを吹き飛ばしてしまえば波動エンジン内のエネルギーが炸裂してしまいかねないのだが……あの男髪型に気を取られたのか危険性がわかっていなかったらしい。

 

 

 弱体化疑惑
 ものすごく弱い理由は――自動惑星以上に特化した対エネルギー兵器性能を持たせたため説明しておこう弱体化というより、根本的に愚かな描写のおかげでなんだかダメダメになったという方が……妥当だろう。大体、艦載機が削られている時点で要塞砲の射程外への攻撃手段が全くないのだから、あまりまともな設計ではない。自分で自分の身を守れないのだ。


 何とか整合性を持たせるならば自動惑星ゴルバとガミラスの戦闘の際、ガミラス急降下爆撃隊が決死の突撃を試みた。これはおおむね戦闘ヘリやミサイルによって防がれたが、一部機体はゴルバに直撃した――ここから暗黒星団帝国が教訓を得たとすれば可能性は二つ。

 一つは、敵ミサイル兵器の接近はゴルバの重火力で十分迎撃できる。最悪、ヘリは削ってもいいかもしれない

 もう一つは、多少ミサイルを撃ち漏らしたとしても要塞が大気圏内でも機能できるようにするための密閉構造と分厚い装甲板だけでも十分機能し得る。


 これらの教訓を得た場合、ゴルバに対エネルギー兵器の防護性能を強化させるという考え方は十分理解できるだろう多分届かない敵の実体弾攻撃より、直撃の可能性の高いエネルギー兵器をかわす=無駄の削減とリソースの効率的活用だ

 最強と思われた自動惑星もイスカンダルの爆発という巨大エネルギーには抗えなかった。また、宇宙にはデスラー砲やそれ以上の強力な兵器が存在すると知れば、これに対策を立てるのは当然。その結果、対弾性能はそこそこにして、エネルギー兵器にのみ焦点を当てた防護を行った。デザリアム星もこれと同じ事情としても、不思議はない。

 味方が攻撃に利用する極めて狭い範囲の波長のみが通過可能で、それ以外を阻害する磁界なりを利用した偏光シールド。表面の塗装が到来したエネルギーの波長のほぼすべてを反射、或いは熱に変えてこれを即座に放出。これらを兼ね備えてエネルギーなり粒子なりの波の側面を重点的に叩き潰す、という方法がゴルバの防護の基本だろう。これを浮遊要塞ではより方向性を強化した他方で実体弾はゴルバという巨大質量物体を維持するための構造ですでに十分敵に対しての強度が保てるという判断し現状維持

 要は――改修を後回しにされた〈HMS フッド〉みたいに、ゴルバ型浮遊要塞が実体弾に対する対策を後回しにして設計されたという事。

 が、波動カートリッジなどという、暗黒星団帝国にとってはとんでもない兵器が登場してしまう。これではそもそもの前提である実体弾の威力が大した事無いという部分と相反するし、暗黒星団帝国の天敵である波長のエネルギーを有するためダブルで危険。そしてその危険が現実のものになった。

 期末テストとかでたまにこういうことあるよね

 

 

 とはいえ……空間重魚雷のハッチを閉め忘れたのは非常に愚か。これはストーリー上というか尺上のご都合主義と言わざるを得ないだろう

 大きさから考えて、要塞内部で製造する他は先込め式以外考えられないからハッチが意識して閉めなければならない――であったとしてもだ。あの重要部ハッチの締め忘れは話にならない。

 擁護し様がない


 波動砲やショックカノンに対する防護を徹底して、場合によっては内部にも一定程度防護塗装でも施したのかもしれないが、実体弾の直撃で簡単に粉砕されてしまった。というのは話が通るが、そもそもハッチを閉め忘れんじゃねぇよという点には全く反論できない。

 お粗末にもほどがある波動カートリッジ弾で粉砕されてしまったこと自体は、別にご都合主義でもなんでもない。だが、ハッチの締め忘れが、問題。これはご都合主義と言わざるを得ない

 

 必死こいて史実で類例を探してみれば……
 肝心なタイミングで観測員が留守してた駆逐艦コール〉とか、もっとひどいハッチの閉め忘れで沈みかけたインドの原潜〈アリハント〉、吸排気システムからの海水侵入でバッテリーを失ったアルゼンチンの潜水艦〈サンフアン〉。

 非常に単純だが重大なミスや欠陥によって喪失に至った軍艦はまま存在する。

 

 にしたってやべぇ凡ミスであることには違いない。

 正直、私もこじつけていて――スタッフのあらすじの書き方のテキトーさに閉口していた。自動惑星ゴルバが強すぎて、だからと言って極端に弱くしてどうすんだよ……。

 


 劇中の活躍
 グロータスの配下として7基が出動、カザン率いる黒色艦隊の攻撃を受け、迷い込んだ空間にてヤマトを迎撃した。

 が、砲撃がヤマトにいまいち通じず、沈黙を差せる程度のみ。決定打を欠いたグロータスはしびれを切らし、空間重魚雷を以て撃滅を図った。が、通じず。反対にうっかり閉め忘れたハッチに波動カートリッジ弾が直撃、誘爆して全滅するという非常な失態を演じた。最早醜態に近い。

 

 

 ゴルバ型浮遊要塞は、普通に考えて自動惑星ゴルバの大人の事情な弱体バージョンという表現が一番しっくりくる。敗北の仕方も情けなく、ヤマト迎撃のために出撃して、満を持して戦闘を開始した大型要塞にしては――あまりに盛り上がりに欠けた。

 合理的な説明を加えようと思わなければ、全く持って非合理的な描写頑張って説明を加えても、根本的な部分で残念極まる描写によって説明の努力がくじかれてしまう。このゴルバ型浮遊要塞の残念な扱いというのがヤマトよ永遠にという作品の全体的な満足度を押し下げる要因になった。

 と説明せざるを得ないだろう。