旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅰ ガミラス上空奇襲戦(新たなる旅立ち)

 

 ガミラス上空奇襲戦は〈宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち〉のほとんど冒頭に生じた戦闘であり、ガミラスにとって最大の悲劇をもたらし地球に新たなる強敵を招き寄せる結果となったキッカケの戦闘である。

 

 

 ガミラス側参加部隊:デスラー直隷艦隊
 戦力:戦闘空母1、三段空母3ないし4、デストロイヤー艦多数(概算20前後)
 指揮官:デスラー総統


 暗黒星団帝国側参加部隊:マゼラン方面軍第1艦隊隷下護衛艦
 戦力:護衛艦多数(概算30以上)
 指揮官:氏名不明中級指揮官

 

 

 戦闘の経過
 ヤマトとの決戦、そして和解を見たデスラー総統。彼は集い慕う部下と共に、新しい母星を求め大ガミラスの大地となる星を求めて放浪の旅を開始した。
 その新しい船出に当たり、かつての母星ガミラスに別れを告げるべく太陽系から遠路14万8000光年を超えてサレザー恒星系へ到達。18カ月と23日ぶりに懐かしいガミラス星へと降り立つ――つもりが所属不明の艦隊を発見。それはガトランティスでも地球でもイスカンダルでもなく、当然ガミラスでもない初めて見る勢力の姿だった。しかも何やら地下物質を勝手に採掘している


 住むに不適格といえど、ガミラス人の母なる星であることには変わりない
 総統は直ちに戦闘配備を下令、砲撃準備整い次第前方へ火力を集中、一斉砲撃を以て不明艦隊を攻撃開始した。敵艦隊は多数といえども小型で火力も装甲も非力であり、奇襲と力で押し切る事が出来るように思われた。一方で敵の指揮官は泣きの入った声で本隊による加勢を求めたが、戦線を支えようにも総統怒りの猛攻でほとんど壊滅状態に。
 破れかぶれの不明艦隊。その内の一隻が放った砲撃が、デスラー戦闘空母をはるかに逸れて採掘作業船に直撃、そこから連鎖的に反応を起こして誘爆が続き、ついにガミラス本星が爆散してしまう
 ガミラス艦隊は直ちに退避し、難を逃れたが敵艦隊は爆発に飲み込まれ完全に消滅。しかしガミラス星もまた消滅してしまった。

 ――たとえ滅びゆく運命にあった星とはいえ、こんな残酷な結末を迎えるとは……それをこの目で見ることになろうとは――総統は膝を折り、母星の消滅を嘆く。

 


 描写の妥当性
 いくらブチ切れたとしても、まずは警告を発するべき相手が不審者でもいきなりの攻撃はまずいって。正当防衛法とかありそうだけどさ。

 これは妥当性というより合法かどうかの話であり、総統の行動は恐らく不法ないし一段下がって不当な行動という事になるだろう。だってさ、ずっとお留守にして所在不明なのに、急に現れいきなり権利を主張するでもなく主砲をぶっ放すんだから話し合いもへったくれもない。相手だって基本的には非合法だが一方で、総統は積極的に権利の主張をし続けてはいなかった、これは痛い。またイスカンダルのスターシャも理由の如何に関わらず、継続的なアプローチをしていなかった様子だから……長期取得時効ではないが、暗黒星団帝国側が合法的に当たり前的に占領・採掘していたとしても不思議はない。誰もガミラス星の権利の主張をしていないのだから。

 どちらかといえば、総統の方が分が悪い。

 一方で描写の妥当性の面から言えば、直情系の指揮官であるデスラー総統なら当然あの判断になるだろうし、部下も当然続いて戦闘に参加するのはある種当たり前の描写だろうだって総統はカリスマなんだから。カリスマの魔力を侮ってはいけない。

 

 三段空母をうっかり引き連れたままの砲撃戦は奇襲性を重要視したという面を強調すれば仕方がないと説明できるつまり三段空母を退避させる時間がないか、退避させた三段空母を護衛する戦闘艦を割く余裕がなかった

 前者は勝手に離脱すればよかった――総統のおそばに、といって無理に引っ付いてきたという説明もできなくはないか。後者の戦闘艦を割く余裕がなかったのは恐らく、すでに別動隊をマゼラン雲ないし核恒星系辺りに派遣しており親衛部隊のみの参加だったからという事になるかもしれない。ヤマト2の第3話で見たあの巨大艦隊に比べれば、あの時点で率いていた戦闘艦隊は結構小さく見える。他に目立った戦闘はなかったし、それを考えると戦力を割いて放浪の旅の露払いとして向かわせ、総統自身は余裕があった為にガミラス参りをしたと説明可能。

 ただ、三段空母を連れたままは悪手。あの空母は全長を大型化しない限りどの砲も機関砲レベルで正直物凄く砲力が微妙。長砲身砲であるから威力を高められるという前提があればデストロイヤー艦に近い火力を仮定できるが、裏付けられる描写は特にない。相手が紙装甲の暗黒星団帝国の護衛艦だったから通用したような物で、後代に登場した巡洋艦相手だと一体どうなってたことか……

 

 

 ガミラス星の爆発は理由は不明。核爆弾状態の採掘船が爆発し、それが星に影響を与え誘爆させた、という説明になるだろう。
 採掘船団は母船1と工作船4である。作業母艦は原作設定値の戦闘空母と比較して600ないし780メートル、再設定を加えた場合は――1.2キロ程度は見込まれる。更に工作船も150メートル程度、再設定の場合は300メートルと意外と大型

 つまるところ、超大型核爆弾が1、大型核爆弾が4本あの場に揃っていたという事になる。これは惑星を1/50程度は削れるぐらいの威力だ。当然あの周辺の岩盤は支えが折れて崩壊するだろうし、場合によっては1年ほど前の波動砲発射の影響で脆弱になっていた別場所の支えの柱が木っ端みじんになっても不思議はない。岩盤は十中八九ガミラス星を覆う大部分が崩落してしまうだろう

 

 また、工作船がどのような採掘を行っていたかにもよるだろう
 ガミラシウムがカリホルニウムクラスかそれ以上の有用性の高い放射性元素だったとして、荒っぽい採掘を行う暗黒星団帝国が地中のガミラシウム濃度の高い地層を表出させる露天掘りを行っていたと仮定する。で、その過程で地中にガス状態で封入されていたトリチウムなどが噴き出し、D-T反応が起きやすい環境が生まれていたならば……。

 カリホルニウムの場合、ウランより約1/1200ないしプルトニウムより約1/400核分裂の連鎖反応の必要量が少ない。これが正しく、単純に数値をあてはめるだけで出力が計算できたとすれば、採掘船団の爆発だけでほぼ確実にガミラス星の大部分を粉みじんにできる。少なくともあの地点から半球ぐらいは岩盤も地層も吹き飛ばせ、コアにも重大なダメージを与えられる。また、ガミラシウム濃縮の高い地層が連鎖的に反応して全球にわたって核爆発が起きる可能性もあるにはある。露天掘りならば、そうなりやすい環境だもの。

 

 仮に、他にも採掘船団が居たならば――居て当然だろうが、デーダーがどうも護衛艦隊でも十分戦線を支えられると思っていたように、ガミラスを侮って退避しなかった船団もあるかもしれない。あるいは普通に指示を出し損ねたかもしれないし、自動制御であった場合ガミラスがジャミングを行えばそれだけで採掘船団の行動は制限される。

 これが誘爆を引き起こした場合、目も当てられない大惨事になる


 コアまで確実に木っ端みじんになるかといえば、確証はないが作業船団の目的や積みこんだ中身を考えると、作業母艦が爆発し各方に誘爆をもたらした場合は星を木っ端みじんにする可能性が十分ある

 つまり、ガミラス星の爆発は必ずしもご都合主義ではないという事。また、隣国のイスカンダルは自爆スイッチをコア辺りに仕込んでいるため、多分これガミラスにも同様の装備あったんじゃないかな――とすれば、自爆スイッチの誤作動を十分誘発し得るだろう。この場合、ガミラス星イスカンダル星もサイボーグ惑星という事になって色々話がややこしくなるが……。

 が、爆散描写が必ずしもご都合主義ではないという事を下支えする根拠となるウルトラC的だけどね。

 

 

 ただ、イスカンダルが何で飛び出したかは知らん。いくらバランスを失ったとしても、サレザーとの引き合いがあるのだからそんな簡単に系外へ飛び出してしまうのだろうか……?

 系内で軌道が変わるとか、或いは巨大ガス惑星との関係でうっかりスイングバイではじき出されてしまった、というのはあるかもしれないが――劇中の描写を前提とすると、該当しそうな惑星はない為……無理そう。ここは擁護できるだけの知識や予測を持たないため、ご都合主義展開としておく
 そもそも、なんでスターシャはガミラス星が勝手に荒らされていることについて文句を言わなかったのか。仮に守とサーシャを守りたかった、だから触らぬ神にたたりなしと――理解はできるが、ちょっと冷たくないかな?。

 と、この作品はあんまりきれいな展開になっていない事は確か。

 


 意義
 新しい敵との遭遇で、ガミラスの弱点を認識できたことはガミラス自身にとって大きいだろう。ある意味、彼らの艦隊のドクトリンは彼らが想定した場面においては完璧に近い戦果を挙げたのだから。

 暗黒星団帝国にとっては、彼らもまた奇襲を受けた場合に全く体勢が立て直せないという自身の弱点を認識することになった。

 

 

 ガミラス側損害:ガミラス本星
 暗黒星団帝国側損害:護衛艦隊喪失、作業船団喪失、ガミラシウム採掘失敗