旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅱ イスカンダル上空奇襲戦(新たなる旅立ち)

 

 イスカンダル上空奇襲戦は配下の護衛艦隊を失ったマゼラン方面軍第1艦隊司令デーダーのリベンジマッチである。デスラー総統にとっては最悪のシチュエーションでの迎撃戦となった。

 

 

 ガミラス側参加部隊:デスラー直隷艦隊、地球戦艦〈ヤマト〉
 戦力:戦闘空母1、三段空母3ないし4、デストロイヤー艦多数、戦艦1、コスモタイガーⅡ多数
 指揮官:デスラー総統、古代進


 暗黒星団帝国側参加部隊:マゼラン方面軍第1艦隊
 隷下艦隊:巡洋艦

 戦力:巨大戦艦1、護衛艦56以上、艦載機隊多数
 指揮官:デーダー

 


 戦闘の経過
 イスカンダルが加速して飛び出し、ワープを重ねて重力星雲に突っ込んでしまった。しかしデスラー総統はひるまずそれを追い、地球の、特にヤマトにこの緊急事態を知らせ更に、今だ残るスターシャらの救出を試みた――その背後、デーダー率いる第一艦隊が奇襲的に猛攻を仕掛けて来た

 艦尾方向への攻撃力が小さいガミラス艦隊はこの攻撃にたまらず、しかもデーダーは多数の三段空母を無力化したためガミラス側は艦載機による迎撃すら不可能になった

 そこで総統は正面切った対艦戦闘をあきらめ、マザータウンの周りの海に着水を決め、デスラー機雷を上空に展開しヤマト到着までスターシャ宮殿の死守を試みる。


 機雷にキレたデーダーは猛砲撃を浴びせてこれに突破口を形成、艦載機隊を先に送り出してガミラス艦隊を攻撃。さらに猛砲撃によって大型の突破口を構成し機雷原を突破、ガミラス艦隊も最早これまで――と思われたその時、コスモゼロ率いるコスモタイガー隊の大編隊が登場、敵艦載機隊を撃破した。

 デーダーは現れた新手の敵に対し巡洋艦隊を差し向けるも敵わず、結果旗艦を以てこれを撃滅しようと試みた。反対にヤマトは波動砲を以てこれを撃滅しようとしたが、そこでデーダーはイスカンダルを背にする形で陣取って艦砲によるヤマト撃沈を目指した。手も足も出ないヤマトであったが、しかし幸いにもイスカンダルの暴走が再び始まりデーダーはうかつにも左舷増速の指示を忘れてしまう。結果、絶妙なタイミングで波動砲を発射、耐えたかに見えたが内部から爆発して第一艦隊は壊滅してしまった。
 しかしイスカンダルを救う戦いはこれで終わったわけでは無かったのである。

 

 

 描写の妥当性
 暗黒星団帝国の戦闘艦が物凄いステルス性を発揮していたとすればガミラス艦隊が奇襲をみすみす許してしまったのもわからないではない。

 実際の所、ガミラス艦やガルマン・ガミラスガトランティス艦(潜宙艦を除く)ボラー艦ディンギルも一応の補足出来ていた地球軍の防衛網が、暗黒星団帝国艦隊のみ全く動きを掴めなかった

 ガミラス艦隊にせよ地球にせよ、ギリギリまで接近されてからの感知であり、例えば推力を増した時の熱だとか砲撃時の熱だとかをキャッチして初めて存在が明確にわかる――その前の段階では残念ながら「何かいるっぽい」ぐらいしかわからないと説明しても合理性は一応担保可能。

 

 以前にガミラス艦について考察した時に述べたが、ガミラス艦は奇襲を受ける側に回ると弱い。‟戦力として決して弱くはないが大して強くもない戦闘艦”を‟そこそこの数集めて”行う電撃戦だからガミラスは強いのであるガミラス艦は守りも大して強くない上に、そもそも艦種が偏り過ぎてて防戦や正面切った知略を尽くした艦隊戦には不向きなのである。

 それが今回奇襲を受ける側に回ってしまった。これでは勝ちようがない


 仮に艦載機を送り出せればまだ勝機があったかもしれないが、残念ながら戦闘空母は序盤で見事に損害を受けて艦載機を送り出せず。三段空母もほんの少ししかいないのに1隻は撃沈。他も損害を受けたと考えていいだろう。これでは反撃のしようがない

 護衛艦相手ならば勝てたかもしれないが、問題はガミラス艦の平気で倍の長さを誇る巨大戦艦。これを相手にした場合、何をしてもまさに無駄。

 


 更に言えば総統の判断も素直にまずかった

 マザータウンの周りの海に着水し、スターシャ宮殿を護衛しつつ明確に流れ弾を避けられるように艦隊を盾として利用した。気持ちは分かるが、これはマズイ。空中に浮いているデーダー艦隊は長砲身も相まって幾らでも仰俯角をつけられるが、ガミラス艦はどうにも仰俯角がほとんどとれない真上に近い位置から攻撃を受ければ、これに対して応戦はほぼ不可能だから、ある意味コスモタイガーの救援まで全く砲撃しなかったのは、しなかったのではなく出来なかった、とシーンは説明できる)

 ガトランティスの回転砲塔ならば、あれ、俯角は微妙だが仰角が地味に80度ぐらいはとれる。アレだったら多分、デーダー艦隊をマザータウンの周りの海に着水した状態でも十分攻撃できた。が、ガミラスの無砲身砲ではそれは無理な相談。デスラー機雷の性質からしてデーダーが必死に開けた突破口もある程度は自動的にふさいだだろうが、それはある程度。しかしそれまでに戦闘空母の長砲身砲を利用して攻撃したとして、自分で機雷を始末するようなことになっては無駄どころかマイナスになってしまうため砲撃できず。

 総統の判断が全部裏目に出てしまったといえよう


 総統、ちょっとガトランティスに長く居過ぎたのか自軍の兵装の弱点を晒してしまった――かな? 故に、色々情報を合算するとこれ、ヤマトⅢで回転砲塔を多数採用していたり長砲身砲が基本兵装になっている事と整合性が取れていたりする

 つまり、総統が自分で無砲身砲が直面し得る最悪の局面を創り出し、その弱点を思う存分味わったから、採用を取りやめたという事。他方で、浮いていればいくらでも俯角が取れる為、海防艦枠のデストロイヤー艦は換装しなかった。

 

 イスカンダルがいいタイミングで動き出したのは、それはご都合主義もとい、自然の作用という事でまた別に考えるとして――デーダーは何という凡ミス。

 デーダーが波動砲に備えたのは幾らでも理由が付けられ……仮に、サーベラーがヤマト撃滅後の総統に対し地球攻略作戦の参加を依頼し、その際に拡散波動砲の情報を伝えようとした過程で、その情報がどこかで暗黒星団帝国に漏れたとする。あるいは、暗黒星団帝国が戦っていたのはまさしくガトランティスの後衛部隊。だとすれば、本国からの情報で後衛が拡散波動砲を警戒したとしても不思議はないし、その驚異的な武器の情報を暗黒星団帝国が必死行て入手し研究したとしても不思議はない。

 その結果、影響範囲が大きすぎて容易に使えない武器、或いは束になれば危険だが、一塊当たりのエネルギー量は大したことないから問題ないとデーダーは判断して戦闘を継続した。拡散波動砲ならば万が一イスカンダルに流れ弾が当たらないとも限らないし、先ほど述べたように一塊当たりのエネルギー量ならば十分耐えられるはず。が、ヤマトは古臭い収束波動砲。おかげでデーダーが立てた全ての戦闘計画が狂って敗北してしまった。挙句イスカンダルが動いてしまった。

 とすれば何とか話のつじつまは合うだろう。散々巨大な帝国を描いているのだから、互いを全く知らないというより、薄っすら知っているという方がセリフでデーダーが「艦首波動砲」と言い当てた部分の説明として合理的。

 

 別に艦首に大型砲がついていること自体は何も珍しいアイディアというほどではないだろうし、敵艦がこちらに艦首を向けて攻撃が鈍れば――何ぞの決戦兵器使用を狙っていると、普通は警戒する。この単純解でも問題は無かろう。

 

 

 意義
 デスラー総統としては古代進との個人的感情や、決して非友好的な態度を取るわけでは無い地球連邦という後ろ盾にはなり得ないが、しかし好印象な不確定要素を手に入れた。波動砲という非常に強力な兵器を持つ艦隊を敵ではないレベルに落とし込む、そのこと自体外交的軍事的に好材料だろう。

 古代としては、ガトランティスとの戦いの中で受けた恩義を返す絶好の機会だった。また、地球の恩人でありうまくいけば同盟が組めるイスカンダルや敵ではなくなったガミラスとの同盟の可能性は政治的に好材料。地球としてもこの戦闘に参加した事自体に意味がある、まして勝てたし、暗黒星団帝国に対するデータも取れた――はずだったんだけどなぁ……。

 

 

 ガミラス側損害:三段空母2、デストロイヤー艦複数隻、ヤマト艦載機数機
 暗黒星団帝国側損害:マゼラン方面軍第1艦隊全喪失