旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅲ イスカンダル決戦(新たなる旅立ち)

 

 〈宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち〉の最後を飾る戦闘であり、メルダーズ長官としても引くことのできない戦い、デスラー総統にとっても命を懸ける価値のある戦いだった。この戦闘においては、ヤマトすら戦闘に寄与できぬほど暗黒星団帝国は強力であり、ガミラスは鬼気迫る気魄だった。

 

 

 ガミラス側参加部隊:デスラー直隷艦隊、地球戦艦〈ヤマト〉
 戦力:戦闘空母1、三段空母1、急降下爆撃機多数、戦艦1
 指揮官:デスラー総統、古代進


 暗黒星団帝国側参加部隊:マゼラン方面軍司令部
 戦力:自動惑星ゴルバ、戦闘ヘリ多数
 指揮官:メルダーズ

 


 戦闘の経過
 隷下の艦隊を失い、面目も失ったマゼラン方面軍総司令メルダーズ。彼は彼の拠点である自動惑星ゴルバを以てイスカンダリウム採掘をあくまで強行、これによって失態の全てを回復しようと試みた。


 ヤマトの後方より突如現れた自動惑星ゴルバ。メルダーズはゴルバを更に前進させ、イスカンダルとヤマト・デスラー戦闘空母の間に入り10分の猶予を与えて立ち去る様に勧告した。

 しかしブチ切れたデスラー総統は直ちに総攻撃を開始、残存三段空母は艦載機を繰り出し、その微弱な火力をも用いようと突撃。デスラー戦闘空母もまた使用可能な全砲を以てゴルバに攻撃を開始した。だが、ゴルバの直掩を担う戦闘ヘリは意外に強く、ゴルバ自身のミサイル攻撃も非常に強力で艦載機隊は次々に撃沈され、三段空母も撃沈されてしまう。進退窮まったデスラー総統は最終手段であるデスラー砲を以てこれを撃滅すべく、残存の全機を退避させつつ緊急的に発射――残念ながらわずかに早くゴルバは防護体制を展開し、デスラー砲の直撃を耐えた。

 

 そんな石ころのようなエネルギー弾

 このゴルバに通用すると思っているのか


 勝ち誇ったメルダーズ長官。デスラー砲を最早、弾としか見ていない。

 ただ、彼も多少は腹を立てたのだろう、総統とヤマトに対し嫌がらせを罰すべくイスカンダルに砲撃を加える。一発、二発と撃ち込まれ、それは次第に宮殿へと照準を合わせてゆく――時間がない。宮殿を死守すべく、総統はゴルバの主砲口へと突入を敢行、突入に成功すると総統は艦ごと波動砲で撃ち抜くようにヤマトに要請。極めて強固な外殻に覆われたゴルバを倒すには、無理やりにでも内部へ大規模エネルギーを流し込む、それ以外に方法はなかった。

 その決意を理解した古代もこれを受け入れ波動砲を――その直前、スターシャはイスカンダルを脱出する事とイスカンダリウム採掘の承諾をメルダーズへと通告した。長きにわたる隣人、デスラー総統が死ぬのを手をこまねいていられるほどスターシャは冷徹な女ではなかったのである。

 メルダーズはこの申し出を受け入れ、ゴルバは速やかに降下体制へと移行。他方でイスカンダルからは脱出ポッドが射出、ヤマトはこれを収容する。そこで衝撃の真実が判明した。

 
 脱出ポッドには守と娘のサーシャのみ。そう、スターシャは端っから脱出する気はなく、メルダーズへの通告はただのポーズだったのである。

 デスラー総統を救い、どうしても守りたかった古代守とサーシャを脱出させた後自身は――宇宙の禍根の一つとなりえるイスカンダリウムを消滅させる=イスカンダルの自爆スイッチを押してすべてを断った。イスカンダル星の全ての質量が転化されエネルギーをもろに受けたゴルバはまるで解体されるがごとくパーツパーツに分解され、そして消滅。イスカンダル星も消滅し、戦闘もまた終結したのだった。

 


 描写の妥当性
 古代君の言う通り総統、気が早い。

 無論、艦載機を繰り出せなかったことがデーダーとの戦闘で後れを取った理由の一つである。であるからして、艦載機を繰り出せる状態にまで三段空母が回復したとあれば、これを利用してゴルバ攻撃を試みるのも無理はない

 行動として無理はないが、無謀だった

 まさかデスラー砲が効かないとは思わないもんね。デスラー砲すら効果がないような強固なゴルバを、通常兵器で圧倒するのは至難の業だ。結果論だが、無謀だった。

 

 砲口は本当に唯一のゴルバのウィークポイントといっていいだろう。他はエンジンノズルぐらいだろうが、あの状況では狙いようがない。

 いくら出力が低かったとしても、曲がりなりにも荷電タキオン粒子砲ないし情報奔流砲だ、直撃すれば普通は大惨事になるはず。しかしこれが通用しなかった。この前提が発生したという事は、たとえヤマトの波動砲が非常に強化されたとしても、勝てる保証はないということである。

 もう一度言うが、極めて強力な粒子兵器でも勝てる保証が全くないのに、艦載兵器でゴルバを打ち破れる可能性は全くない。あとから見返せば馬鹿な戦闘に見えるが――だが、これが判明するのはデスラー砲発射の後。それ以前の段階でただでさえ戦闘が苦手な総統が、効果的な戦闘を行うのは無理に等しい。

 ヤマトやコスモタイガー隊もまた、総統がゴルバに猛攻を仕掛けたおかげで戦場の余白が無くなってしまい、前線に食い込むことができず援護を行う事もままならなかった。

 

 これら各種の状況が合わさったからこそ、総統はゴルバの砲口に自艦を突入させ、波動砲に耐えられない自艦を誘爆させることでゴルバの内部破壊を試みたのだ。

 破れかぶれで自己犠牲が過ぎるが、しかしあの時点で総統が取れた作戦はこれ以外になかっただろう

 


 イスカンダルの爆発は波動砲より確実に上の威力を持つことが容易に予想できる。

 ヤマト2でいえばテレザート星の爆発は白色彗星のガス体を取っ払うほどの威力だった=戦艦36巡洋艦81の波動砲が火を噴いたのと同格と仮定できる。2199で例えれば波動砲の4発ほどをまとめたそれを大幅に上回る威力だろう。ゴルバがこのエネルギーに巻き込まれた場合、特に防護体制を取れていない状態では――爆散して当然だろう。

 加えて、ゴルバにとって地味にヤバかったのが下方からのエネルギー衝突であったことが説明可能。噴射口から炉心にエネルギーが流入すればそれこそ一発で木っ端みじんだ。しかもエンジンも稼働中だから、余計にデスラー砲を防いだ時の防護体制とは比べ物にならないほど脆弱だったと推測できる。

 であるならば、ゴルバが消滅してしまうのも無理はない。むしろ当然

 


 ただし、イスカンダルの自爆スイッチ自体がかなり無理のある設定。というか、ヤマトっぽくない――別の松本零士作品的な、表現しがたい展開。

 極論というか普通の視点を持てば……言ってしまえばご都合主義だし、擁護しようにも……人工の惑星ではないはずのイスカンダル星で自爆装置というミスマッチは、ヤマトの世界観をぶち壊しにした残念設定と言えるだろう。

 これは、正直幻滅。説明はさ、幾らでもこじつけられるけどしたいと思わせる設定ではない。

 


 意義
 波動砲でも敵わなそうな敵がいるという事を知った事。これがガミラスと地球にとっての意義。
 暗黒星団帝国にとっては、技術を吸収出来れば非常に有益であろう人間の文明を見付けた。これは大きい意義。また、ガミラスのような弱勢相手でも相手が奇襲攻撃を行えば非常にマズイ状況に立たされる=自らの基本戦略は奇襲とゲリラ戦に絞って発展すべし。という事を戦訓として読み取れるだろう。ある意味、続編ではしっかりと学習し、奇襲戦以外は決行しなかった。

 

 

 ガミラス側損害:急降下爆撃機多数、三段空母1、イスカンダル星
 暗黒星団帝国側損害:自動惑星ゴルバ、戦闘ヘリ多数(つまりマゼラン方面軍消滅)