旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅰ サレザー帰還~重力星雲突入まで(新たなる旅立ち)


 サレザー帰還~重力星雲突入のシークエンスはこの物語の発端であり、同時に次の物語へヤマトを巻き込んでゆくキッカケである。偶発的な、そして不幸な出来事が散々に折り重なる、デスラー総統にとっては非常につらい時間だった。

 


 物語の展開・発端
 最早住むには適さないガミラスを離れ、新たな母なる大地を求めて放浪の旅へ出たガミラス。その指導者デスラー総統はかつての母なる星ガミラスに別れを告げるべくサレザー恒星系へと艦隊を進めた。


 しかし、そこで見たのは懐かしい故郷ではなく、不明艦隊による採掘作業で傷ついた星だった。

 デスラー総統は直ちに全艦隊を以てこの敵を攻撃、これの排除を試みる。優勢に戦闘を行ったものの、激戦のさなかに不幸にもガミラス星は爆発してしまう。

 敵艦隊を撃滅したデスラー総統であったが、彼を更なる不幸――イスカンダル星が軌道を外れて暴走、サレザー恒星系の外へと飛び出していった。
 最悪の事態。

 そこでデスラー総統はかつての宿敵であり、この状況を打開できる唯一の存在、ヤマトへと打電した。

 

 他方、地球ではヤマトが月軌道から帰還。ガトランティスの切り札:超巨大戦艦によって痛めつけられボロボロになったその体をドックで修繕、クルーもまた病院で治療を受けた。
 そして1カ月、修繕・治療成ったヤマトと残存クルーは再び空へと飛び立つ。新しいクルーを補充し、新たなヤマトとして訓練の為に飛び立った。

 


 ガミラス側動向の整合性
 基本的にデスラー総統は大した問題行動はない、ご都合主義な行動もない
 ガミラス星に立ち寄ったのはこれは人類として極自然な行動であると説明できる。例えば、宗教であれば教祖やその歴史において重要な土地を訪ねたり、アニメやドラマの撮影地を順に訪ねることはよくある話。国家や民族の発祥の地や、伝説であれ実際であれその土地は非常に大きな意味を持つ。すなわち、聖地巡礼である。
 100人いれば100人がその通りというわけでは無いが、しかしかなりの人数が自身にとって大切な土地に強い思い入れを持つことは不思議ではない。

 

 ただ、不明艦隊に対する奇襲はかなりまずかっただろう。宣戦布告ナシの奇襲戦では、メルダーズに“なんか輩をかましに来た宇宙海賊”にしか思われなくてもこれは仕方がない。法的な意味での話ではあるが。


 無論、勝つためにはガミラス電撃戦以外に手段を持たない。であるならば宣戦布告をして相手がしっかり体制を整えての戦闘など――負けて当然、勝って偶然。だから奇襲を敢行するのはガミラス人として当然だろう。また、この時点ではイスカンダルから何の情報も得ていないし、ガミラス自身も暗黒星団帝国の情報を知らず、ガトランティスからも情報を得ていない。また暗黒星団帝国側も元々の住人であるガミラス人について全く埒外であった模様。
 故に、この両者が仮に宣戦を布告したとして……取っ散らかっただけだろう。お互いにお互いが認識できず、受諾できないという可能性がある。

 

 シチュエーションとして総統の性格と、ガミラスが勝てるシチュエーションづくりの意味では宣戦布告ナシの奇襲は当然。合理性という意味ではその通りだが、しかし……不法……

 暗黒星団帝国側のガミラスをただひたすら不法者的に扱ったあの態度に繋がったと説明できれば――何とか整合性は取れる。そのため、奇襲が不必要なシーンであったかは評価が分かれるところだろう。

 

 ヤマトに救援を頼んだ――見たことないような艦が、自分たちの領域に突入しているという事を考えて、絶対に拠点になるような戦闘艦隊なり要塞なりがあるだろう。まさかあの護衛艦隊が全力であるはずはない。そう考えるのは当然だろう。

 一騎当千の具体例ともいえるヤマトは、この状況を打開してくれる唯一の存在であるというのはほぼ確実。ヤマトにはぜひとも援軍として戦ってほしい。部下が納得したかといえば、ガミラス艦大破木星圏あたりで一度ヤマトを粉砕したため、この時点ですでにヤマトが旧敵であっても仇敵であるという認識はガミラス側には無かったとしても不思議はない。

 何よりガミラスの大艦隊もガトランティスの大艦隊も打ち破ったヤマトならば、次に現れ得るだろう敵大艦隊と戦う上で強力な戦力といえる。それにイスカンダルの緊急事態であり、それは地球も決して他人ごとではない。関係者であるのだから全く伝えないという選択肢はなかっただろう。家族ぐるみの親友であれば、親の訃報を親友に伝えないという選択肢は、常識と礼儀から言って普通は取らない。それと同じ。
 ただヤマトが答えてくれるかは――賭けだった

 


 地球側動向の整合性
 1カ月でヤマトが復帰できたのは――整合性を取るのがかなり厳しい。


 だって、軍艦の戦線復帰はそう簡単では無いから。仮にモノコック的構造で装甲と内部との間に大きく空間を取っているのであれば、外側を取っ払って何とか形を整えるというのは可能だろう。アンテナも基部や配線がダメになっていなければ、簡単に取り換えが効く。フィンも十分に取り換え可能なはず
 ただ、艦内通路の損傷は簡単には直せないだろう

 エンジン部は衝撃波や酸素濃度などで内部人員が死傷した事は間違いないだろうが、だからといってエンジン自体に損傷があったとまでは言えない。実際徳川機関長は出力低下を報告したのみ。〈霧島〉は機関が損傷し高温蒸気で機関科員が全滅してしまったが、仮に陸に上げてもエンジンがダメになっていたかは話が違う。機関部のような致命的とまではいかない程度の損傷であれば確かに復旧は早期に可能だろう

 とはいえ、直撃弾や貫通弾が対ガトランティス最後の戦闘でやたら目ったらに多かった、砲も基部から大損害を受けた

 

 仮に基部が問題なければ、3カ月ほど前に陸に上げた主砲や副砲を積みなおせば、能力は下がるが砲撃は可能になる。が、思いっきり基部から跳ね上がって爆裂していた描写を考えると、簡単な修理には終わらないだろう。1万2000=メートルなら12キロが修理後の射程であるが、ガトランティス戦役時点では10宇宙キロが十分に届く距離とされている。射程が伸びているわけだが、であるならば改良した砲を新規に製造したという事になるが、一か月で製造できる者なのかは不明。砲塔は以前の物を再利用し、砲身のみ新規建造のアンドロメダ級などの不要になってしまった砲身と挿げ替えた物のなるのだろうか。

 砲塔基部、機関部及び波動砲発射機構、エネルギー伝導部、艦内コンピュータ、医務室、弾薬庫、艦載機格納庫辺りの損傷が大したことなければ、艦の機能的にはそれなりに早期に復帰可能。

 とはいえ、1カ月での戦線復帰は多分無理。あの全盛期のアメリカでさえ沈没寸前の〈フランクリン〉を復帰させるのに9カ月はかかった。燃えただけといえば語弊があるが、絶望的といえば完全に嘘な〈翔鶴〉も3ヶ月はかかった。

 

 いくら高性能なドックであったとしても3ヶ月から半年は絶対必要。仮に1カ月で出動させた場合は艦の機能はせいぜい6割程度にしか回復しないだろう。どんなに機械化が進んだ地球であっても同じこと。

 ましてヤマトは部品供給に危うさがある。防衛軍司令部の整備計画、従来の形式を残す気が無かったのだから、様々な部品はアンドロメダ世代の艦を整備するために製造されていたはずヤマトに使える部品が果たして地球にどれだけあるのか甚だ疑問。例えば、人が中に入る主砲塔のスペアが果たしてあるかどうか……。アンテナ類だったら主力戦艦の奴で何とかなりそうだが――旧式の機関部品やパルスレーザー砲が残っているだろうか……。

 そんな状態で一カ月かそこらで復帰できるとは思えない

 


 ヤマトに直接、新兵をしかも大量に受け入れさせたのもと言えば疑問

 徳川太助以下機関部30名と戦闘部・航海部・砲術部合計29名、飛行科54名の合計114名が新規乗り組みを命ぜられた。これに恐らく再び乗り組んでいるだろう生存者古代以下18ないし19名を加えると138名+工作班複数名で訓練航海に旅立ったのである。

 この数は空間騎兵隊を偶然に受け入れる事となったヤマト2のクルー(新パイロット+外周艦隊時編入クルー+旧クルー約60名に空間騎兵隊が20名前後)は恐らく114名を超える数になるだろう。この時と同じぐらいの数でありながら、遥かに多い数の新兵を迎え入れたという事になる。

 多すぎねぇか……。


 日本海軍を例に取れば新兵教練は3ヶ月だとかで十分。
 当てはめるなら、概ねガトランティス戦役直前に課程に入った生徒たちだろう。ただし、士官候補生ともなれば話が異なり、大学(戦前なら中等課程)を終えた後に訓練を受けるという一段違った教育課程となる。この場合は6年+幹部候補生学校1年の計7年が必要。要は、歩兵は3ヶ月から半年もあればそれなりに使えるようになるが、指揮官は7年ぐらいは見込んでおきたいという事。


 ヤマトの場合、幸いにも幹部は生き残っていた。問題は歩兵が足りない事。とはいえ、わかっている数字だけで乗り組みの約80パーセントが新兵とはいかがなものか。使えん新兵を放り出して元来の乗員数である114名に落とし込んでも、約80パーセントの新兵率を誇る。

 これはヤバいって旧日本海軍などでは例えば長門でも新兵補充は100名程度であろうと元乗員の証言が――ネットでもいくらでも拾える――なので推測できる。これは長門の乗員数からして10パーセントを下回る数値。普通は、新規の乗組員が完全新兵ばかりになる事はなく、玉突きという表現は正しくないだろうが別の同じ艦種ないし種別の違う艦でキャリアを積んだ人間が、スライドして同じ兵科で配置換えになる部分がかなり大きい。こうすれば、たとえ乗り込む艦が違えど、兵科が同じであれば当然互換性はあるし艦内生活や海上生活になれたクルーを確保できる。

 練習艦だって上から下まで新卒ではなく、全クルーの内で半分弱程度。


 常識で考えれば、ヤマト乗り組みにおいて他の残存主力戦艦や巡洋艦駆逐艦からの乗員を合わせて乗り込ませ、丸っきりの新兵にならないようにする必要が有っただろう。これらの艦の指揮官の場合は、戦術が異なる以上簡単には融通はできない。が、兵員であれば大きさや構造が多少違ってもそれこそ1カ月かそこらで順応してくれるだろう。そもそもあの機械化された艦内で何をする必要が有るのか不明だが。
 恐らく長官や山南校長は良かれと思ってヤマトに大量に新兵を投入したのだろう。ヤマト以上に実戦を経験した戦闘艦は地球には存在しないし、元気で新兵とさほど違わない年齢=より深い交流が可能な幹部はそれこそヤマトクルー以外には居ない。が、これは防衛司令部として少々まずい判断。仮にヤマトを戦闘艦として能力を維持させたいならば、練習艦のような状態にするべきでは無かった。ましてこのような状態で戦闘に参加させるべきでは無かっただろう。

 地球側の行動に関して言えば、正直結構取っ散らかった展

 

 

 ストーリーの展開的に問題は――いくらでも残念な箇所がピックアップは可能。可能ではあるが、これが致命的と言えるほどの残念なストーリーばかりかといえばそうでもない。特に、総統の奇襲攻撃やヤマトへの救援は整合性が取れるし、これに答えたのもあのクルーならばと説明は可能。キャストというかキャラクターの性質にある程度は答えを求められるレベルであり……要するに全体として、雑なだけそれはそれで問題だけどさ……。

 ただ一つ、イスカンダル星の暴走のみは全く説明が出来ない……。これはご都合主義。