旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ここが凄い、新たなる旅立ち

 

 

 散々な内容の新たなる旅立ちにも、「こいつはスゲェ」とうなりたくなるシーンは存在する。今回はそのポジティブなシーンをピックアップしたいと思う。

 

 

 ここが凄い1:ガミラス星爆発

 ガミラス星爆発自体は矛盾とかご都合主義に近い――近いだけでこじつけられない事はないの――が、しかしその後の演出。これは非常に効果的かつ、ガミラスらしいぜひとも注目してほしいシーンがある

 それは、爆発直後のデスラー戦闘空母の艦橋シーンだ。母なる星ガミラスの爆発という想像だにしなかった破局を目の当たりにするデスラー総統。彼は膝を折り、バラバラになったガミラス星を前に沈痛なひょうじょうを浮かべる。

 そんなデスラー総統を艦橋クルーのほとんどが心配のまなざしを向け、身動きできなくなってしまっているのである。ここのシーンを、よく見てほしい。

 カリスマとは非常に不安定なものである。弱みの見せ方に気を配らなければ、カリスマと部下や国民の間を共感で親密を迎えるのではなく、転覆の好機として捉えられてしまうのだ。

 

 そもそも論として、総統が余計な事をしなければ、ガミラス人は放浪の旅などする必要はなかった……この時点ですでに失態を演じているといえよう。更にサーベラーに政治闘争で敗れるという失態を重ねてしまった。挙句の、母星の爆発だ。奇襲という戦術的には合理的かつ正しい判断だが、戦闘場所が非常にまずかった。本土決戦の時の悪夢を自らリメイクしてしまったのである。

 普通に考えれば、この時点で艦隊は崩壊しても不思議はない。

 しかし崩壊しなかった。これぞガミラス

 

 ガミラス星の爆発は非常に重い事である。艦橋クルーも幾人かは母星の変わり果てた姿を目にして動揺し、目が離せなかった様子である。しかし、多数の艦橋クルーはデスラー総統の方に注意を向けていた。母なる星の最期を目の当たりにし、心を痛める国家元首の背中から目を離せなくなっていたのである。ガミラス星よりも、デスラー総統を心配しているのだ。

 無論、今後の事もある。だから目が離せなかったというのも合理的というか、冷めた表現だろう。不自然はない。他方で、心酔する相手の動揺に心寄せているという見方も可能だ。むしろ、カリスマが相手の場合はこちらの味方の方が妥当だろう。

 

 母なる星より大切な総統。これぞガミラス

 

 

 第一作より、割と無茶な命令を出しがちなデスラー総統。ヤマト2ではズォーダー大帝の好意により同盟相手とされたが、実際には国力は雲泥の差だったデスラー総統。ヤマトにステールメイトを決めたが、結局の所は完勝はできなかったデスラー総統。

 もう、ガミラス臣民は総統には戦術的勝利というものは求めていないといっていいだろう。ひたすら自分たちの灯台となって欲しい。導いて欲しい、最後には再びガミラス帝国を復興してくれればそれでいい。そういうロジックになっていると説明しても矛盾はない。

 第一作より、臣民の未来をもぎ取る為に地球へ侵攻を決めたデスラー総統。ガミラス再興のためにガトランティスの軍門に下り、屈辱の日々に甘んじたデスラー総統。出航に際し、臣民の前で素直に自らの非を認めその上で共に歩むことを願い出たデスラー総統。結構、彼は臣民の為に自身にとって苦しい決断や非難の集まる決断をして居る

 言い換えれば――ここまで臣民の為に決断と散々な運命を受け入れる、そして反省する為政者は一体どこの世界にいるだろうか。少なくとも現代地球のいわゆる先進国の内にはいないといっても過言ではないだろう。かつての地球にもそうはいない。

 

 例を挙げるならば、咸宜帝 阮福明やホーコン7世のような稀有な人物。デスラー総統は彼らのようなタイプの為政者であり、ガミラス臣民はその背中に惚れて心酔し、付き従った。更に、総統には失策をしてもそれを謝れる勇気があった。

 弱さを見せられるカリスマ。その弱さに寄り添い支える臣民。ガミラス星爆発直後の艦橋シーンーーそれはガミラスがヤマト史上最強の国家であることを明確に示すシーンであるのだ。これぞガミラス

 

 

 

 ここが凄い2:「10分間だけ猶予をやろう。その間に立ち去れ」

 これはメルダーズの名言である。これほどまでの余裕を持った敵はいまだかつてなかった。無論、降伏を勧告してきた敵はガミラス、ガトランティスと暗黒星団帝国の3つ存在する。が、メルダーズの発言はこれらとは性質が異なる。

 メルダーズの発言は、これはヤマトに向けたものだ。つまるところ、ヤマトとは交戦をして居る認識はない、という事。いや、戦闘自体は行われている。デーダー指揮下の第一艦隊を粉砕したのは他ならぬ、ヤマトだ。また、メルダーズは地球の事も把握しているし、グレートエンペラーは侵略の色気を見せていた。仮に地球と戦争になるとすれば、ヤマトの奇襲的攻撃は間違いなく、ヤマトの不法行為である為、開戦の大義名分になる。しかしそれをしなかった――

 

 メルダーズ、ひいては暗黒星団帝国の認識では、イスカンダル上空戦はあくまで国家との戦闘では無かったのだろう。たとえるなら、バルバリア海賊討伐辺りか。

 勢力としては認識しているものの、交渉相手として対等となり得る国家としての認識はしていない。あるいは、わざとしなかったか。相手が国家やそれに準じる組織であった場合は、当然その領民について何がしかの処分をする必要が有るし場合によっては債務などを引き継がなけらばならないだろう。面倒になったからといって殲滅して言いという話でもない。普通は国家相手に戦闘を行った際は事後処理をしなければならない――これをしないのはアメリカとガトランティスぐらいであろう。

 しかし、単なる勢力であればこの面倒さを排除し得る。ただの不法行為集団として処断すれば、いくらでも法的根拠を示しつつ殲滅可能。

 

 という意味では、メルダーズはかなりシビアな判断をしていたと言えるかもしれない。つまるところ彼は常に非常に冷静な人物だったといえる。実際、デスラー戦闘空母が主砲に突っ込んできた時も冷や汗はかいたが取り乱しはしなかった。基本的に彼は冷静な人物――しかし、一瞬油断した。イスカンダルの降伏を真に受けたあの一瞬、あれは完全な油断だった……。

 

 

  新たなる旅立ちにだって興味深いシーンはいくつもある。妄想の肥やしになるようなシーンはいくつもある。これから視聴する方々には、ぜひ過度な期待は持たず、しかしいくつか存在する見どころに注目してほしい。きっと、楽しい時間を過ごすことが出来るだろう。

 ぜひ、気を抜いてみてもらいたい。何なら寝ぼけ眼で見ても構わない。そっちの方が感情移入しやすいから。