旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅳ 地球占領戦(ヤマトよ永遠に)

 

 新たなる旅立ちで登場し、ヤマトに敗れた暗黒星団帝国。しかし、彼らは新たなる計画を以て太陽系に侵入、地球を占領せんとした。

 地球占領戦はハイペロン爆弾の太陽系突入から黒色艦隊による首都占領完了までの一連の戦闘の事である。

 

 

 太陽系突入戦
 暗黒星団帝国側参加部隊:なし
 戦力:ハイペロン爆弾
 指揮官:なし


 地球側参加部隊:冥王星基地、天王星基地、海王星基地、土星基地、木星基地、火星基地、地球ミサイル陣地
 戦力:各惑星駐屯基地戦力、連装大型ミサイル複数
 指揮官:古代守

 

 展開

 突如現れ、太陽系に侵入した不明飛翔体。次々と惑星基地を沈黙させながら飛翔体は地球に直進してゆく。地球防衛軍司令部はこれに対しミサイル攻撃、大気圏での撃破を試みるも弾かれ不発。首都近郊への着陸を許してしまった。

 

 描写の妥当性 

 あの一発で惑星基地を全て沈黙させることが出来るかは不明。これは別個に考察する必要が有るだろう。ただ、作戦としては妥当だろう。後に判明することだが、暗黒星団帝国には民族事情として後詰が乏しい。故に地球を守る外縁部に対して執着して攻撃するよりも、その包囲網を突破して地球を攻撃した方がずっと攻略が簡単である。英伝であったでしょ? 首都星を帝国に制圧されて同盟軍が停戦する羽目になったシーン。あれと一緒。

 

 ハイペロン爆弾がどうやって侵入したかといえば、恐らく描写からしてワープ。ワープ航法を使える爆弾であれば、太陽系突入のほんの数分後に地球の大気圏突入したというタイムスケジュールも妥当となる。

 中に人間がいたかどうかは微妙なラインで、太陽系圏外の惑星に対しても“攻撃”を行っていた為多分無人わざわざご丁寧に全部の惑星基地を沈黙させるルートは――仮に螺旋軌道を描いて地球に接近していったのならば、何とかならなくもないだろう。物凄く遠回りになって、奇襲とは言い難くなるが

 本来なら、数発のハイペロン爆弾を太陽系に突入させ、最悪数発が迎撃されたとしても残りは地球に到達できるようにするのがベストだろう。この方法なら複数軌道で進入することになる為、最寄りの惑星基地を沈黙させればすなわち、同時多発的に通信を途絶させられる。あの混乱した防衛司令部の描写とも合致する。普通に考えればハイペロン爆弾とはいえ、たった一発で地球人類が絶滅するはずもない。だとすれば、複数発が飛来していると考えて不思議はない。

 この辺りの話ははいくらでも解釈のしようがあるため、断定する必要はないだろう。

 

 ミサイル迎撃を試みたのはこれは当然だし、艦隊を派遣する必要性と艦隊自体の機動性に疑問があったことを鑑みると無人艦隊を温存したのはこれも当然の判断だろう。

 全く効果がなかったのは誤算だろうが。いや、前方の圧縮された空気という分厚い厄介者があるし、あの規模の飛翔体が相手なのだから、簡単にはミサイルが通用しないというのも予想しておくべきだった。この点は手抜かりだし、ちょっとご都合主義っぽい。まあ――

 うっかり迎撃に成功してしまっては、ストーリーが展開しませんがね

 強いて意義を挙げるとするならば、存外地球防衛軍の警戒能力がザルで改良の余地ありという事がわかったぐらいでしょう。

 

 暗黒星団帝国側損害:なし
 地球側損害:火星基地全滅、冥王星基地・海王星基地・天王星基地・土星基地・木星基地通信途絶(損害不明)
 

 

 


 地球占領戦
 暗黒星団帝国側参加部隊:黒色艦隊、地球占領隊
 戦力:戦艦1、巡洋艦多数、護衛艦多数、輸送艦複数、掃討戦車複数、パトロール戦車多数、地上兵および降下兵多数
 指揮官:カザン
 地球側参加部隊:空間騎兵隊歩兵連隊、空間騎兵隊機甲化部隊、無人艦隊
 戦力:探査車1、空間騎兵隊(歩兵)多数、連装大型戦車多数、無人艦隊大型艦多数、無人艦隊小型艦多数
 指揮官:古代守、島大介

 

 展開

 ハイペロン爆弾は沈黙したまま地面を掘削し、強固に着地。これに対し、防衛司令部は空間騎兵隊を繰り出して調査を開始――したが、バリアーによって阻まれる。結果、遠巻きに陣を敷いて警戒する以外に手段がなかった。

  すると突然、高空に光点が見える。

 降下兵の奇襲だった。ハイペロン爆弾への警戒に全ての神経を注いでいた空間騎兵隊は、突然の上方からの奇襲によって大損害を負う。空間騎兵隊の脅威を排除した降下兵は市街地に突入し、マンションや列車に機銃掃射を浴びせて市民を虐殺。

 

 さらに暗黒星団帝国の輸送艦が直接降下、追加の歩兵部隊放出に加えて戦闘機部隊を放出して徹底した制圧戦を敢行。地球防衛軍側も必死に反撃を試み、機甲化師団を前進させる――が、掃討三脚戦車の前に敗北。

 大量のパトロール戦車が投入されるに至り、首都は3次元的にほとんど占領されてしまった。

 

 乾坤一擲、防衛司令部は虎の子である最新鋭の無人艦隊投入を決定。運航担当の島大介に命令を下し、直ちに月軌道から占領部隊に対して艦砲射撃を試みた――が、後方からカザン率いる黒色艦隊が接近。反転すらできず、七面鳥撃ちにされてしまい、挙句コントロールセンターまで破壊されてしまった。

 結果、地球は全ての反撃の手段を失う。そしてカザンを首班とする地球制圧軍との降伏の交渉へと強制的に移らされることになる。

 

 

 描写の妥当性

 性格は悪いよね、暗黒星団帝国。敵の視線をそらせて、明後日の方からもう攻撃を加え、一気呵成に全ての対象に対して攻撃を加える。奇襲からの縦深戦術といえるだろう。地球の全ての戦力に対してまんべんなくもう攻撃を加え、早々に連邦大統領や連邦首相の官邸を占領し、更にミサイル陣地まで占領。

 占領しなかったところといえば、防衛司令部ぐらいで、これはのちの交渉相手の確保と説明が出来るだろう。「防衛司令部以外のいかなる集団も対手としない」的な。真面目な話、この手合いのパフォーマンスは結構必要。独ソのポーランドをめぐる戦いやその周辺の政治模様、日本軍の欧米植民地に対する統治権の継承でも実際見られた。

 

 他方地球側の行動は若干不思議。現場の、最前線の空間騎兵隊は当然、不明で見るからにヤバそうなハイペロン爆弾に神経を集中させてしまうのは当然。指揮官ぐらいは全周に対して注意を払っておいて欲しかったが、一定程度は仕方がない。

 だが、防衛司令部まで、降下兵による奇襲に対して全く有効打を繰り出せなかった。これはマズイし、不可解

 ジャミングされてレーダーが使えないとするならば、これはむしろ警戒してしかるべき。「レーダーが使えないから上はみませんでした」なんて何の言い訳にもならない。この降下兵に対する全くの無防備さは、はっきり言ってご都合主義展開だろう

 地上のコスモタイガー隊を全機上に上げて迎撃を試みたが、同時多発的な降下に対処できず、じりじり押されていった――という方がシチュエーションとして妥当だっただろう。シーンを作るのに金と時間がかかるのは間違いないが……

 

 無人艦隊については――島よ、お前が乗っても何の役にも立たん。うぬぼれるな

 この島とかいううぬぼれ屋よりアナライザーの方が遥に決定的に、圧倒的に能力が高い。これは断言できる何せアナライザーは都市帝国との戦闘において完璧にヤマトを操った。ヤマトがガトランティスを追い詰めることが出来た、その一端は明らかにアナライザーである

 島が乗っていたところで、結局自分の艦以外はまともに動かせなかっただろう。なるほど操艦に関して一家言あるのは判るが、戦闘部門についてこいつは優秀な人を横に見ていただけの人である。それを忘れてはならない。

 

 妥当化しようとするならば、島は運航のみを任されており、機関部の出力調整などは太助が、戦闘に関しては別の人物が行っていた――しかし暗黒星団帝国の奇襲によって戦闘担当の指揮官の到着を待たずして艦隊攻撃に移らざるを得ず。だから彼が戦闘と運航の二つの業務を兼務することとなり、輪をかけて艦隊が役に立たなかった

 という設定が必要になる。

 

 元から全く自律ではない艦隊であるから、端っから、奇襲を受ける側になった際の堅牢さはない。この差し当たっての地球の防衛を任された程度の残念な艦隊、それを元来複数人に分けて戦闘を行うはずが島と徳川の二人だけになってしまった。

 これならば、全く役に立たなくても仕方がない。そんなゴミを造るな、という批判はあるだろうが、一応話としての筋は通る。

 弧の場合、元来の戦闘部員は暗黒星団帝国の奇襲を受けてどこかで足止めを食っているか、戦死したかのどちらかだろう。冥福を祈る。

 

 

 意義

 地球の防衛戦略が全く紙屑だったという事が判明した。また、無人艦隊は安物買いの銭失いという事と、空間騎兵隊はやっぱり肉弾戦が一番強いという事が判明した。これは戦争の終わったのちの、次なる戦争に備えるという意味では非常に有用。

 他方で暗黒星団帝国の側からすれば、やはり奇襲作戦は非常に効果的であるという事が確認できた事が大きい。また、この戦闘だけでほとんどすべての地球の統治機関を制圧することに成功したため、あとはどうとでも既成事実が造れる。目指すは占領の続行のみ――ほとんど戦争には勝ったといって等しかった。

 

 

 暗黒星団帝国側損害:ほぼ無し
 地球側損害:無人艦隊全滅、機甲師団壊滅、空間騎兵隊多数戦死、防衛司令部大破

 

 全体として、あと一歩で妥当性が担保できるのが地球占領戦。しかし、あと一歩の所で妥当性を欠く描写や設定を入れ込んだ事で、台無しになった。なぜ、オウンゴールしてくれるのか……迷惑である。

 何より、島君の「俺があの艦隊に乗り組んでいれば……」なんて、お話にならない。あのセリフで、この作品のニオイというものがはっきりしてしまったし、ストーリー展開的に妥当性を確保しようという努力が……見られない……。