旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅵ 黒色艦隊往路遭遇戦(ヤマトよ永遠に)


 黒色艦隊往路遭遇戦は中間補給基地を撃破し、更に前進するヤマトを阻止すべく迎撃に現れた敵艦隊との遭遇から始まる一連の戦闘である。

 

 

 遭遇第一会戦

 暗黒星団帝国側参加部隊:不明艦隊、黒色艦隊(合計2個艦隊)
 戦力:戦艦2、巡洋艦多数、護衛艦多数
 指揮官:氏名不明、カザン


 地球側参加部隊:ヤマト
 戦力:戦艦1
 指揮官:山南艦長

 

 

 展開

 突如として現れた不明艦隊。これは接近と同時にヤマトを砲撃する。残念ながらヤマトは濃密な星間物質に阻まれこれを補足できず、一時暗黒星雲の中へと退避。意外な事に暗黒星団帝国側もこの雲の中ではうまくヤマトを補足できなかった模様。仕方なく艦隊は前進した。

 直後、ヤマトは偏差射撃を敢行し暗黒星団帝国艦隊に対して逆奇襲をかけた。これによって艦隊はヤマトとの直接の砲撃戦に集中、接近戦を敢行した。だが、帝国側巡洋艦の能力ではヤマトに大した損害を与えることはできず、むしろヤマト側の猛射によって次々と沈没していく。結果、艦隊は戦艦一隻を残して全滅してしまった。

 ところが、ヤマトを追ってやってきたカザン率いる黒色艦隊が到着。挟撃こそできなかったが、損傷を負ったヤマトを背後から攻撃する事に成功。ヤマトは体制を立て直すべく小惑星帯に突入し、黒色艦隊の攻撃から退避した。

 

 

 描写の妥当性

 暗黒星団帝国も暗黒星雲内ではうまく敵を補足できないというのは衝撃。二重銀河は暗黒物質の向こう側にあるはずで、フィールドとして――お前らの十八番じゃないのか……。しかも偏差射撃をしないのだから積極性に欠ける。これは山南艦長の方が上手だったという事で説明は可能か。

 そうだ、この戦闘では山南艦長の指揮が光った

 偏差射撃でもってガス雲離脱直後から暗黒星団帝国艦隊を攻撃、直接の近接戦闘においても敵艦隊を誘導するような形で艦の進路を取らせて効果的に射界に捉え続けた。お見事。特に、凡人ならやってしまうであろうコースターンをせずに、そのまま砲撃を加えるという度胸。実際、あのまま攻撃してもんだいなどなかった。むしろ敵艦隊に対し最適な位置=上方からの攻撃を続けることが出来たのである。素晴らしい。名采配というほかない。

 

 ただ、最後の黒色艦隊の奇襲を受けたあれは痛かった

 レーダーが利かないという最悪な状況であり、どうしようもなかった。しかも圧倒的多数による攻撃であったからこれはやはり仕方がない。逃げるが恥だが役に立つと小惑星の方へと退避したのは当然。しかし、安全を確保するために取った退避路の選択が――敵が追ってこなかったという事をもっと重大に考えるべきだったかもしれない

 だが結局は結果論だし、あの時点でその可能性に気付いたとして、黒色艦隊の脅威の方が大きかったのだから判断として間違っていたとまでは言えないだろう。

 

 

 意義

 結構ヤマトにとって大きい意味がある。つまり、暗黒星団帝国が艦隊を意外と柔軟に運用ができないという事ははっきりした。また、戦闘艦の堅さも以前に交戦した時とさほど変わりがないという事も判明した。何より、割とヤマトと大差ない条件で戦闘を強いられているという事が予想できたのは、非常に大きい。対艦戦闘において、めどが立つからだ。

 他方で暗黒星団帝国側は名称不明の増援艦隊喪失は痛いが、カザンの黒色艦隊が前進してヤマトを追い立てることに成功したのは十分意義がある。だってヤマトを罠に押し込むことに成功したのだから。

 

 

 暗黒星団帝国側損害:不明艦隊指揮下巡洋艦隊壊滅
 地球側損害:無し



 遭遇第二次会戦・浮遊要塞被要撃戦
 暗黒星団帝国側参加部隊:浮遊要塞隊
 戦力:浮遊要塞7
 指揮官:グロータス


 地球側参加部隊:ヤマト
 戦力:戦艦1
 指揮官:山南艦長

 

 展開

 不明艦隊を撃破したものの、地球から追いかけて来たカザン率いる黒色艦隊の攻撃を受けたヤマト。しかし、前方の小惑星帯に逃げ込むことで黒色艦隊をまくことに成功した――しかし、前方に突如として現れたのはあのゴルバの量産型だった。

 7基のゴルバがヤマトを囲み、一斉射撃を加える。

 これに対してヤマトは何とかショックカノンで応戦を試みるもゴルバの表面装甲を打ち破るには至らない。ヤマトの保有する最大火力は波動砲。だが、エネルギー充填中に敗北を喫しかねない。それほど圧倒的な攻撃。

 

 そこへもっての真田さんだ。

 真田さんはあらかじめ開発していた波動カートリッジ弾の使用を提案する。古代、山南艦長はこれに同意、直ちに南部以下の砲術部員がカートリッジ弾の装填に取り掛かった。ただし、装填には時間がかかる。

 古代と島はヤマトをゴルバの陰に隠れさせて砲撃を1/7に低減させるべく艦を動かした。だが、要塞総司令グロータスは何と当該要塞を見殺しにすることを決定。各要塞2発ずつの空間重魚雷をぶっ放して要塞ごとヤマト破壊を試みた。挙句、当該要塞もこれに泣く泣くか、同意したように沈黙する。

 えげつない状況に直面したヤマトは波動爆雷を以てこの魚雷を迎撃、直後発射準備整った波動カートリッジ弾を以てゴルバに対して反撃に出た。

 

 ウィークポイントを狙われたゴルバは、波動カートリッジ弾の攻撃になすすべもなく内部から誘爆、要塞全体が崩壊。更に次から次へと誘爆を重ね……ゴルバ型浮遊要塞は全基が消滅。更にカザンの黒色艦隊も巻き添えを喰らったという。

 

 

 描写の妥当性

 罠に誘い込むまでは、良いと思う。頭使った作戦だし、一瞬ビビった。ゴルバ7基はやりすぎな感もあるが、ヤマトに対して結構怯えていることを暗に示すようでこれも又異論はない。

 が、ヤマトが堅い。堅すぎるひょっとしてゴルバの搭載砲って我らガトランティス駆逐艦より火力不足なの? 2199のように波動防壁があれば、説明はつく。自艦の戦闘に支障がないように弱体化させた空間磁力メッキを使用している、としてもかまわないだろう。ただ、何の説明もなくあの堅さは理不尽というか、ご都合主義。ちゃんと理由を示さなきゃ……。

 

 波動カートリッジ弾を使用するまでの流れは、真田さんがずっとイカルス天文台でヤマトを整備していたという事実と山南艦長と面識があるらしいという点を考慮すれば、別に問題はない。古代のリテラシーが若干低いだけ、裏を返せばそれだけ真田さんを信頼しているともいえるか。

 波動砲の1/100のエネルギーを込めたカートリッジ――多分、高荷電状態のタキオン粒子を込めたという事になるのだろう。それを波動砲と同じエネルギーといっていいのか、原理的に違う気もするが……古代君向けの説明だったから厳密な違いをあえて説明しなかったとすれば何とか妥当性は保てるか。

 

 綱渡り的で、時々ご都合主義に片足を突っ込む今作だが――一番ひどいのはハッチの閉め忘れだろう。これは擁護できない

 次弾装填できないのは仕方がない。空間重魚雷が迎撃されたのも仕方がない。空間重魚雷を発射中は他の砲撃が出来ないのも、魚雷に自身の砲撃が当たらないようにするという事を考えると、無理もない。

 だが、ハッチを閉め忘れるか? 自動で閉めろって

 自動で閉まらなかった理由はまったく合理性がないし、閉まらないようにする理由も、閉まらなかった理由も合理性確保など――無理だ。この時だけ自動閉鎖システムが壊れたとすれば……ない事はないかもしれないが、しかしご都合主義。

 

 反対に誘爆は仕方がないだって、あの規模の魚雷があと何本か要塞には積まれているのだ。要塞ごと破壊し得るあの魚雷が誘爆したのなら、ゴルバの炉心も巻き添えになるだろうから大爆発は必至

 ただね、だったらあの空間で魚雷を打つな、という話になる。彼方立てれば此方が立たぬ的に、誘爆の合理性を担保するとグロータスの攻撃司令の合理性が担保できない。要塞間の距離がめちゃくちゃ近すぎるもの。

 グロータスの攻撃司令の合理性を担保すると今度は、誘爆の説明が難しくなる。ヤマトが要塞ごと爆散しても、それが被弾しても問題なく耐えられるとグロータスは認識していたが、実際には耐えられなかったのだから。

 仮に反タキオン粒子が重要な物質として暗黒星団帝国の技術に取り込まれているとすれば、ヤマトを恐れる理由になるし通常の何倍もの爆発力を持った対消滅とすれば、誘爆も合理性が保てる。が、ならばヤマトを不用意に要塞ごと粉砕するのは危険すぎる一手。

 百歩譲って、グロータスがヤマトの危険性や波動砲の危険性を全く理解していなかった、あるいは聖総統から知らされていなかったとすれば多少はグロータスの行動にも妥当性は出てくる。だが、その場合はグロータスが情けない半分かわいそう半分の指揮官になってしまう。また重要情報を伝えなかった聖総統、ひょっとするとサーダが握りつぶしたかもしれないが、いづれにしても暗黒星団帝国首脳部の残念さが決定的という別問題が生じる。

 そしてどんな場合でもハッチ閉め忘れだけは、どうあがいても合理性が保てない

 

 

 意義

 暗黒星団帝国側が酌んだであろう意義というか戦訓は――撃ったらハッチは閉めろ。以上製作首脳陣、このハッチ閉め忘れをバカバカしい話だとは思わなかったんだろうか?

  こんなアホな戦闘からはヤマトも戦訓などくみ取れないだろう。ヤマトがここで敗北しなかったのは地球にとってそれは当然意義はある。が、それだけであって全く考慮すべきではない戦闘だ。

 

 暗黒星団帝国側損害:浮遊要塞全喪失
 地球側参加部隊:ヤマト

 

 何でせっかくかっこよく纏まった不明艦隊との遭遇戦で盛り上がったのを、意味もなくカザンに追撃させて、にもかかわらず彼の最期を描かない。挙句凡ミスで要塞7基を一挙喪失というのはご都合主義以前の問題。雑。救いようのない雑さだ。

 これは脚本家と、GOサインを出した監督やプロデューサーに極めて重大な責任がある。これは断言できる。