戦闘考察Ⅷ デザリアム要塞星突入(ヤマトよ永遠に)
デザリアム要塞星突入戦はヤマトよ永遠にの佳境である。最終決戦であり、都市帝国突入戦に比べれば軽量な戦闘ではあったが、しかしながら一筋縄ではいかない戦闘であった。
ウラリア戦役最後の戦闘である。
デザリアム要塞星突入戦
暗黒星団帝国側参加部隊:デザリアム要塞星、警備兵小隊
戦力:要塞複数
指揮官:聖総統スカルダート
地球側参加部隊:ヤマト
戦力:戦艦1
指揮官:山南艦長→古代進
展開
グロデーズを打ち破り、うっかりデザリアム星まで炎上させてしまったヤマト。しかし、暗黒星団帝国はここまでは想定済み。むしろ全力攻勢を仕掛けるべく浮遊要塞と要塞砲の全門を展開しヤマトへと猛烈な砲撃を加え始めた。
一方、デザリアム星に残留していたサーシャ。彼女はヤマトに勝利をもたらすために、自己犠牲的に居残りデザリアム星中枢へと潜入を試みていたのである。そして南極のパイプを開いてヤマトを招き入れた。
無事内部潜入に成功したヤマトだが、デザリアム星の中枢・水晶都市より猛烈なミサイル攻撃を受け、波動砲発射を試みるも途中で山南艦長が残念ながら戦死してしまう。更に、サーシャ救出のめどは全く立たず――そこへ、聖総統が現れ彼女に対して銃撃を始めた。彼女を射殺し、パイプを閉鎖して仮に星が滅ぼされるとしてもヤマトだけでも道ずれにとしようとしていたのである。
早く波動砲を撃つように要請するサーシャだが、彼女は凶弾に倒れる。しかし、彼女は聖総統に一矢報い、彼にも重傷を負わせた。
復讐するかの如く古代は、間髪入れずに波動砲を発射。何とかパイプ閉鎖を試みる聖総統を水晶都市ごと光芒の中へととろかしてしまった。
誘爆の鬼気迫るヤマトは全速力で北極のパイプより脱出、デザリアム星から更に銀河へと誘爆が及ぶに至って、連続ワープでこれを回避。
地球の敵は滅び、同時に大切なクルーを多数失ったヤマト。しかしこれで戦闘は全て終わったのである。
滅びゆく二重銀河を、サーシャの幻影と共に後にして、ヤマトは地球へ舳先を向けた。
描写の妥当性
サーシャはどうやって中枢へと忍び込めたのか――まったく合理的ではない。しかもコスモガンまで片手に、である。何から何まで警備がザル過ぎるだろう、暗黒星団帝国よ。
警備兵を言いくるめて無理に潜り込んだとか強行突破したという可能性は捨てきれないが、合理的ではないだろう。きっと、サーシャはああ見えてかなり武闘派で、誰か脅してパスワードとキーを入手したんでしょう。うん、そうしましょう。
だが、そんなヤバい半地球人が居たら、当然警備兵を大量投入するだろうし、同時に聖総統へ報告が上がるだろう。なのにそれがなかった……描写が一通りとっ散らかってご都合主義。全くのノーマークってどないやねん聖総統閣下。
聖総統自身がサーシャ捕縛に向かったのも大いに疑問。だって、警備兵がいるなら彼らに任すのが普通。逆に、何故に彼自身がわざわざ探しに行ったのか意味不明。そんなに人材不足というか人間不足なら、ロボット兵とか導入すればよかったのに。我らガトランティスなんか生身の兵隊は幾らでもいるのにさらばのデスラー艦にはロボット兵を配置したのだ。見習ってほしいぐらいである。動力炉警備も弱勢だが無防備だったわけではない、空間騎兵のアイツが強かったというのも爆破された一因。
暗黒星団帝国の無防備はあまりに……もう、言葉が無い。
別に水晶都市自体は大してまずい描写ではない。
そりゃ、何で人間が住んでそうな部分がミサイルになっているのか、というところは疑問だが……破れかぶれ状態だし、仮にあれがエネルギーコアであった場合はアレをつぶされるとデザリアム星は機能停止してしまうのだから、何としても進入してきた敵を殲滅しなければならない。だから移住用のシャトルとか、ここのビルが備える自家発電装置をミサイルに転用したとか説明をでっち上げれば何とかならん事はない。
仮にあの空洞空間が艦隊の待機場所であったならば、地軸パイプが開閉する事は大して不思議ではない。不思議ではないが、その構造だと内部であれこれいじるヤツが入った時点で、どうあがいても勝てない。
残念極まるのは、二重銀河まで消滅した事。
猛烈に空白の空間がデザリアム星との間にあるはずなのに誘爆し、とんでもない爆発を見せたのだ。これは意味が分からない。百歩譲って物凄く二重銀河の存在する空間が実は通常の宇宙空間とは比べ物にならないぐらいかなり濃密に粒子の漂う空間であれば――爆発を媒介するものがあるのだから誘爆してもわからん事もない。二重銀河は見かけ通り、物凄く詰まった存在だったのかも。
だが、劇中それを示すようなセリフはあっただろか? 宇宙創成の脅威と神秘を見せつけていたというナレーションに依拠すれば何とかならん事もないかもしれないが、どちらにせよご都合主義的。
さらに、新たなる旅立ちで味を占めた演出なのだろう、サーシャの幻影。あれもお説教じみた別れの言葉で台無し。17歳相当の1歳の乳児があんな――彼女がマニッシュ・ボーイみたいにスタンド使いだったら話は変わるかもしれないが。
古代と真田さんは幻影を見ても不思議はないだろう。1年でも大切に姪(親友の娘だからそれこそ、実の姪に近い接し方だっただろう)として育てたのだから、真田さんは当然。波動砲トリガーを涙しながら古代から奪おうとした、あのあえての親心のシーンを見ても、筋が通る。また、熱しやすい古代も無理はない。泣きながら波動砲トリガーにしがみついていたし。
ただ相原、お前……よく付き合いのないサーシャが通信を入れた際に絶叫できたね。その感情の豊かさは逆に関心する。
意義
暗黒星団帝国にとっては意義も何も無い。だって、滅んだのだから意義をくみ取りようがない。仮に彼らの残存勢力があったとして、聖総統のような無駄にワンマンで前線指揮を執りたがるアホを大将に選ぶべきではない。加えて、過剰に恐れて相手に弱点を晒すような日本昔ばなしの化け物みたいなことをしてはならない。
地球にとっては、軍艦の機械的な面を向上させるのは当然だが人間の柔軟さも組み合わせなければ有効な戦力にはならないという事だろう。加えて、敵は目の届く範囲から攻撃を仕掛けるわけでは無く、場合によっては察知すら難しい位置から奇襲を仕掛けてくる可能性もある。防衛圏は太陽系に限定するより多少、外縁部も防波堤として早期警戒に用いるべき。といったことがくみ取れるか。
暗黒星団帝国側損害:デザリアム星、二重銀河消滅(暗黒星団帝国滅亡)
地球側損害:山南艦長、レーダー員(真田澪/サーシャ)