旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

地球侵攻の理由――聖総統のご飯論法・信号無視話法――

 

 ヤマトよ永遠に、において大変意味不明だったのが古代の質問に答える聖総統の説明だった。昨今話題のご飯論法をぶちかます聖総統——これに触れずにウラリア戦役の考察は終えられない。

 

 

 ヤマト史上屈指の迷文句

 新旧ヤマトにおいて、言語明瞭意味不明瞭な発言や行動はいくらでもあった。ズォーダー大帝の単純な一人称のブレのような極めて軽微で受け流せる程度の物から、何とかごまかしようのあるルガール大総統の放言、リメイク作での明らかに無謀だったゼーリック国家元帥の反乱。これに関してはカリスマをなめている。そして次作に登場し高々1000年で人類について知ったような口を利くタイプ・ズォーダーとその幼体。

 まさに、枚挙にいとまがない……。

 その中でも、ゼーリックの反乱程には意味不明ではないが、しかしズォーダー大帝の一人称のブレよりかは痛いのが、聖総統の言語明瞭意味不明瞭な答弁

 

 

 ちなみに——ゼーリック閣下の反乱については、何度も言っているがあれは無謀。無謀過ぎて、あのイベント全体がリアリティがゼロのご都合主義旧作のご都合主義を上回るご都合主義

 ああいうカリスマに対する反乱はカリスマと同等の人望がある人間が別の人間にやらせて初めて成立する。或いは、国が傾いてきたころに初めて、反乱の萌芽が芽生える。

 ところが2199のガミラスは外観上はかなりイケイケで反乱を起こす理由がないし、唯一肩を並べられる英雄ドメルは反乱する気はさらさらない。

 

 確かに、カリスマであるヒトラーに対して反乱(正確には暗殺)が行われた事は複数回ある。が、シュタウフェンベルクらに暗殺されかけたのは、開戦後に圧倒的だったヒトラーの人望がついに、軍から離れたというのが一つある。素人でもまずいとわかる作戦しかしない上、かなり後方に所在する‟狼の砦”こと総統大本営から頓珍漢な横やりを入れまくっている。そりゃ、ヒトラーを排除しなければと誰だって思うだろう。

 それ以前の軍による暗殺計画はズデーテン地方割譲にまつわるものなど、基本的に戦争を避けよう=戦争を始めようとするヒトラーを排除しようという目的。まだ軍の中でヒトラーの支配が確立したとは言い難い時期である。そりゃ、ヒトラー率いる攻撃的な新生ドイツと対立する分子は強烈に力を残し……それでももっと穏当な方法が取れないわけではなかったが、暗殺という強硬手段に出ようとしたのはヒトラーの力が侮れなかったからである。

 完全に個人的な暗殺というか襲撃は国家間の違いからくる……適切な表現かは微妙だが義士のようなもので、性質が異なる。まして反乱という大きなものにはつながりえない。

 ヒトラー暗殺計画に関しては大別すると支配が確立していない時期の例(モーリス・バヴォーとか黒いオーケストラとか)と戦争が末期の例ヴァルキューレ作戦や7月20日事件とか)に分けられる。そして、その間に関してはゲシュタポがあまりに強力かつ緻密な操作を以てあぶりだして未然に防いだ。また、そもそもの計画規模がかなり小さく動きが鈍かった。軍事的絶頂期の1940から1942年にかけてはほぼゼロ。当然、軍の中枢でもかなりヒトラー崇拝の傾向が強まり、ヒンデンブルクルーデンドルフの意思を継ぐような強いドイツの為にこそ、ヒトラーは居てはならないという政府や軍高官は姿を消してしまったのである。

 何が言いたいかというと、絶頂期の独裁者を葬るのは不可能。

 

 ゼーリックがアベルト君を暗殺しようとしたのは懐古的(貴族政治に戻そうという画策)な、同時に自身の地位向上のためであるらしい。

 そんな計画に誰が乗るか。結果、乗って来たのは馬鹿二人(ゼルグードに乗ってたあの二人の事)だけ。あのゲール君にすら見捨てられた——この手合いのぎりぎりの駆け引きは、相対的に見てどちらに人望があるかで様々な陰謀の成否は決まる。現実で起きたヒトラー暗殺計画も、度々同じ人が中心となって仲間が揃わないと早々に明らめた例が多数ある。

 元々、ゼーリックにそれだけの人望がある描写はなく、彼がアベルト君を暗殺する動機になりえる描写も特にない。ないがしろにされているわけでもなく、ただ単にアベルト君のお友達であるドメルを蹴落とせれば、それで十分安泰なのが国家元帥。

 つまり、馬鹿二人が計画に乗ったのも非合理的な描写だし、アベルト君を暗殺しようとしたのも非合理的な描写。もっと言えば、アベルト君側の動きとして——ああいう計画をわざと決行させる理由も不明瞭で、証拠をつかんだ時点でとっ捕まえればいいだけ。そもそもゼーリックが排除すべきはドメルのみ。下手にアベルト君を抹殺すると人望のないゼーリック自身にも危険が及ぶのは誰だってわかるし、さすがのゼーリックだて馬鹿じゃないのだから判るはず……。

 さらに言えば、独裁者が一度死んだ風に見せて実は生きていましたというのは大抵上手くいかない。生きてこそ力を有する。一度、反乱を起こされたというその経歴もカリスマ性に傷をつける為、やるべきではない。どっかの黒電話と同じで、生きている事さえも、大事な政治活動。だからわざと死んで、反乱分子をあぶりだすなんて下策チュノ下策。

 

 はっきり言ってあの一連のシークエンスは、ストーリーに深みを持たせるには全く無意味だった意図は判るが、カリスマをなめ過ぎヒトラーを参考に、カリスマという特殊な存在やそれに対する周囲というリアリティを織り込もうとしたのは理解できるが、何となく表面をなぞっただけに終始したのはいただけない。

 この時の描写に関して、ゲール君のデスラーという存在に対する無常の尊崇=反乱分子の即時射殺のみが妥当な描写。たださ、気づけよゲール。

 

 

 さて、全然関係ない話を終えて聖総統のお話。

 謁見の間において古代君に、未来の地球人がなぜ過去の地球人に対しハイペロン爆弾を送り込み、挙句地球人を殺しまくったのか。その理由を尋ねられた聖総統。

 その時の様子を振り返ってみよう

 

 ——謁見の間にて——

 「出鱈目な歴史はやめてもらいたい」

 聖総統「これが真実のヤマトだ。2202年の地球には帰れないのだ。君達が唯一つ生き延びる方法は、このまま降伏してこの星に永住する事だ」

 古代「では伺おう。この星が未来の地球だとしたら、何のために重核子爆弾を打ち込んだのです。あれ一発で、地球人類は減亡してしまうでしょう。自らの過去を抹殺してしまえば、現在のあなたが方も消減してしまう事になるのに」

 聖総統「その通り。我々が自らの祖先を抹殺するわけがない。あれは……聞き分けのない一部の人間に対する脅しに過ぎない」

 

——ヤマト艦橋にて——

 山南艦長「脅し?」

 

 

 そりゃ山南艦長だって疑問符が浮かびますわな。脅しで実際に殺されたらたまったもんじゃない。聖総統が送り込んだ艦隊のおかげで今現在、地球の上には累々たる地球人の死体が横たわっているのだ。挙句のあのカザンの態度だ。良かれと思って過去の地球にやって来たヤツの態度じゃないだろう

 また、普通に考えれば古代君の発言は、ハイペロン爆弾の地球着弾から連邦政府主要施設占拠までの一連の事に対しても疑義が及んでいるとするのが妥当訊かれていなくとも、答えるのが筋だろう。さっき述べたように、実際に犠牲者が出ているのだから。聖総統は自らの先祖を抹殺することはないと述べたが――考えようによっては、占領時に地球人を射殺しまくった時点で幾らかの今の自分たちを消しているのだが。そこ整合性取れてないじゃないかと。

 それを聖総統は本当に、厳密に訊かれた事だけしか答えないという驚くべき反応これはご飯論法と言わざるを得ない。相手が疑念を持っているのに、誠実に答えようとする意志が全く見えない。

 

 聖総統の「あれは聞き分けの無い一部の人間に対する脅しに過ぎん」と、この苦し紛れの意味不明な発言…しかも、前段で「その通り」などとのたまっている。討論中の「その通り」といえば、大抵は相手の言葉尻を捕えてちゃぶ台返し的に自分の論の正当性を相手に担保してもらう——いわば一大攻勢をかけるタイミング

 そのタイミングで言ったのが……「脅し」発言。物凄い肩透かしな上に、なぜ一部の聞き分けのない者たちを黙らせる必要があるのかという前後の内容なしに脅しなどと言っているから、話が全く通らない

 それはそれとして――続きを見てみよう

 

 ――謁見の間にて――

 聖総統「しかし、ヤマトの歴史はこの航海で終止符を打っているのだ。悪い事は言わない。この星に残って生き延びる道を選びたまえ」

 古代「いや、ヤマトは帰る。あなた方があの重核子爆弾を使う事が出来ないと判った以上、もうここに留まる必要は無い。あの前衛艦隊を追い出し、元の平和な地球に戻して見せる!」

 聖総統「戯けた事を……全ては歴史が証明しているのだ。幾ら足搔いても、君達は君達の運命の糸から逃げる事は出来ないのだ」

 古代「いや、我々の運命は我々の手で切り拓いて見せる!」

 聖総統「フフフ……ハハハハハ……過ぎてしまった歴史を戻すというのかね? やれるものならやって見るんだね? ヤマトの諸君。ハハハハハ——」

 古代「クッ——ソォ……」

 高笑いの直後、ぬーっとイスが下がって聖総統はご退場逃げたなコイツ。一方……声にならない言葉で反論を諦めるんじゃないよ古代君。そして結局、このシーンの冒頭で語られた〈暗黒星雲に覆われた200年未来の地球〉という今明かされる衝撃の真実をスルーされてしまう。これに関しては聖総統ばかり責められず、古代君の質問力不足にも問題があるだろうが。

 

 驚くべきことだが、聖総統の言葉は前後の部分で矛盾がいくつも生じている

 起動できない脅しを送り込んで、その事実を持ち帰ろうとしたヤマトを返そうとしない。その理由は何か=なぜ聞き分けのない者を黙らせなければならないか、聖総統は答えなかった過去を抹殺するつもりはないと言いながら黒色艦隊を送り込んで地球人を大量に射殺しメガロポリスを占領したのか。未来が過去に積極的に干渉しているのだが、200年後の地球に影響は出ないのかと。これも聖総統は答えなかったそもそも、黒色艦隊がなぜヤマトを追ってきたのか、浮遊要塞群がなぜヤマト進攻を阻止しようとしてきたのか。未来が決まっているならば、なぜ無駄なあがきをしたのか。これもまた、聖総統は答えなかった。途中で「しかし」で言葉をつないでいる割には脅しとヤマトの終止符がつながっていない点も何だか納まりが悪い。

 結局、聖総統は全く理由を答えなかったのだ

 

 無論、私程に忖度が上手になれば聖総統の穴の開いた発言でも言葉を補い一応の筋が通るように転化できる。つまり――

 帰還阻止に対しては――指揮系統を屁とも思っていないヤマトが帰還すれば、せっかく犠牲を出して掴んだ新しい未来を不意にするからやめろ。逆に帰還阻止できれば、今からの未来は別に定まっていないから長生きしてどうぞ。

 なぜ降下兵はあんな無法をしたのか――2202年とか3年頃に大災害で大量の地球人が死ぬ、その為ある程度の死者は誤差として歴史の流れの中で吸収できる。何だかんだ言って欠けたイスを埋める人はどこかに居るモノであるから、さして心配はない。替えの効かない人物の先祖の居場所は把握しており、指一本触れていない。聞き分けのない一部の者に関しては死んで当然。

 ヤマト進攻を阻止したのは――ヤマトこそ聞き分けのない一部の者であり、帰還阻止のためだった。また、200年後の自分たちが影響力を行使したため、聞き分けのない一部の者による未来の自分たちが被るはずだった被害をヤマトとの戦闘に集約し歴史の流れとしての整合性を持たせた。負けたのは運命半分、弱かった半分。

 しかし、で文章が繋げていない――ヤマトが聞き分けのない一部の者であるという前提で喋っているため、自分では文章がつながっていると思っている。永住して生き延びろとは言ったが正直、終止符を打ってくれて構わないと思っている。

 と、一応は何とかそれっぽい話はでっち上げられる。ただし。先に述べたように……これは猛烈に忖度した場合の話である。全力で聖総統を忖度した場合に初めてわかる話で、これらが抜けた聖総統の解答を前に古代君たちが引き下がる必要はない。彼らが聖総統の言葉を無理に忖度しようとするいわれはないはずである。

 肝心な部分が残念ながら聖総統の口からは語られておらず、聖総統が答えたのはあくまで――

 Q. 未来の地球になぜ重核子爆弾を打ち込んだのか、先祖が全滅するぞ。

 A. 抹殺するつもりはない、ただの脅し。

 程度の事で質問側の不出来もあって回答としてあまりに情報が欠けている。何度も述べるが、この解答だと大勢の人々が黒色艦隊によって死傷している点について、つまり本気で占領し生殺与奪を握っている事に対して何の回答にもなっていない。重核子爆弾についての事だけした回答して居ないのである。

 更に、古代たちを死にたくなければ永住するようにと未来を積極的に変えようとしている割に、古代が過去に帰ろうとすると歴史は変えられないなどと都合のいいことをのたまう。 

 相手の質問に言葉尻を捉えて不十分な回答をする。まるで国会答弁のような発言ばかりである。しかも相手の感情を掻き立てて言い合いという形で議論を強制終了させてしまう……見事なポリティカルスキルだ。

 

 前段のご飯論法(というには実は答え過ぎなのだが)の次は、何と信号無視話法を活用してくる聖総統ある意味、彼はホンモノの政治家だ。冗談抜きで、ある意味で尊敬する。

 第一、先ほどの「脅し」発言も、よくよく考えれば古代の問いに対する答えとは言い難い。正確には、問いの出来事を決行するに至るまでの経緯の説明。何でやったのか、なぜ重核子爆弾なのか、という核心については特に触れられていない。これは黄色信号と言っていいだろう――質問の文言自体に対する返答及び質問までの経緯の説明に近い。

 そして真打——何で未来の地球の為に過去の地球を脅すのか、という点に話題がうつるであろう、あるいはそこを突っ込むべき場面で聖総統は突然、ヤマトは2202年の地球に帰れないという話を持ち出してくる。いわゆる赤信号——論点のすり替えだ。これはダメだ。しかもドヤ顔で答えているというのも、大問題。積極的に、話を自分から持ち込んで会話のイニシアティブを握っているのだから完全に確信犯。本来の意味でも御用でも確信犯だ。

 味方だと心強いかもしれないが……国会でこれをやったら普通の国民は支持をやめるか、政治への期待をやめるかのどちらかだろう。こんな単純なミスディレクションにうっかりこれに乗っかる古代君、君もダメなんだよ? 同罪だよ?

 

 結果的に聖総統は青信号——問いに真正面から答えることを何一つしてない

 ヤマトクルー側も総理番の政治記者みたいに極めてぬるい質問しかしないのもいけないのだが——仕組まれた嘘があまりに壮大過ぎて見抜けなかったのはある程度仕方がないかもしれない。200年後に暗黒星雲が地球を覆うという衝撃の言葉に対し、動揺し過ぎた。動揺し過ぎて自分たちで回答を探すという……目の前に答えをくれそうな人物がいるのに、問いかけないという初歩的な失態を演じている。これは聖総統関係なしに情けないぞ、ヤマトクルーよ暗黒星雲の件を問えば、他の解答もより細かく答える必要が生じる為、一発逆転ではないがより多くの情報得られたかもしれない。もっと早く確信をもってデザリアムを発つことが出来たかもしれないのだ。

 一方で聖総統、彼も最後まで何で暗黒星雲に覆われたのか教えてくれなかった。あなたもあなたで、自発的に説明しなさいよ……上手く説明できれば、古代たちを懐柔できたかもしれないのに。第一作ほど、彼の観察眼は鋭くないのだから。まあ、説明した所で壮大にとっ散らかって大惨事になったかもしれないが。

 

 この中途半端な感じも――聖総統のあのとっ散らかって常に不十分な説明も、疑ってかかるべき未来の地球という大嘘を割と信じたヤマトクルーに気を良くした、或いはガードが緩んだ思っていたよりはるかに、偽装地球作戦が上手く言ってしまい、実は聖総統もかなりビックリしていた。すれば何となく説明はつくだろう。

 実際の政治家だって機微に触れることを言われると、洋の東西に関わらず一国の首相だろうがキレて早口になったり、党首だろうが相手を口汚く罵ったりしてしまう事はよくある。反対に、褒められると公式行事でうっかり自分の後援会に来たような挨拶をしてしまうことだってあるのだ。ある意味、しゃーない。

 むしろ、異星人なのに地球人らしい感じで親近感がわく

 

 最終的に聖総統は古代たちが知りたかったことを答えきれなかった、或いは答えなかった。ひょっとすると、答えを用意していなかった可能性もあるだろう。途中で仕留めるつもりだったのに到達してしまい、結構焦って原稿を書いたために内容が不十分になってしまった。これだったらあの微妙に舌足らずな言葉の数々も仕方がない。誰だって急にスピーチなんてできやしないし、政治家だって一部を除いて台本なしには喋れないものね。

 幸いというべきか、あの妙に説得力のある声のおかげで一時はヤマトクルーを騙せたのである。しかし、説得しきれず。これが聖総統や彼が地球だと強弁する星あるいは歴史に対しそこはかとない疑念をヤマトクルーが持ってしまった

 正直聖総統、喋らない方が良かったかも。少なくとも、原稿のライターを変えるべきだった。

 

 

 更に、物凄く忖度してみよう

 聖総統の新しいスピーチライター、或いは聖総統府の官僚になったつもりで、聖総統の発言にできるだけ沿う形に、偽地球のストーリーを組み立ててみる。

 

 暗黒星雲に覆われた理由は単純に天体現象でいいだろう。

 地球表面は割合にまんべんなく物があるし、確認できていなかった時代も自然が非対称を創る可能性が低い事から、左右対称=物事がまんべんなく展開されていると考えられていた。それは宇宙においても同じ。だが、実際には幾らか偏りがある。そこには何らかの原因があり、それが反物質だとかの理論構築で話が出てくる。

 要するに、天の川銀河全体の重力バランスが崩れてしまったとすれば――その結果、別の場所に存在していた暗黒物質天の川銀河に流れ込んでしまったと、それっぽい理由がでっち上げられる。

 或いは、波動砲の使い過ぎでエネルギーのバランスが崩れてしまったことが原因と言ってもいいだろう。宇宙の平和だとか調和を気にするヤマトクルーに対し、波動砲使用をマインド的に封じる効果が期待できる

 別にこの点は事実でなくて構わないのだから、ヤマトクルーに与える心理的影響を第一にすべきだろう

 

 そしてその結果、太陽の光が届かず地球が全球凍結間近までの危機に陥った——これを何とか乗り切ったのがあの地球。一部、かつてイスカンダル人がそうであったように異星人(この場合、実はメルダーズが200年後の地球の英雄だったという事にしてもいい。イスカンダルで本人死んでるし、文句は言わないだろう)が助けてくれた、それも大きく作用した。

 しかし、容貌も新しい人種が生まれて従来の地球人と、異星人のような姿の適応人種に分かれてしまう。実際に地球人と互換性のある遺伝子を持つ異星人が居住したとしても構わない。これらの要素が、争乱を引き起こす。これにより、天変地異と争乱によって地球は疲弊し200年後にも拘わらず人類の発展に急ブレーキがかかってしまったのだった。残念ながら衰退期と呼んでもいいレベルにまで落ち込んでしまった。

 このままでは地球人類は滅亡する

 この危機を解消すべく、聖総統は過去の地球に向けて艦隊を出撃させ、強制的に全人類の力を結集させて天変地異に備え、時間と人命・資源の浪費を阻止。200年近い時間ロスを取り戻して高い発展と人類種の繁栄を200年後の地球にもたらす計画を立てた。

 

 問題はヤマト。地球を救うためには当然、ヤマトも出撃する。

 ただ、問題だったのは彼らがうっかり他の文明と衝突しかねない危険性を孕んでいるという事。また、結構理屈ではなく感覚で動くという事も有る。当然、200年後の地球人と言っても見た目やらが違うから信じてはくれないだろう、そこで戦闘になってしまう可能性は十分に存在する。また、余計な事に未来の地球に到達してしまいそこでひと悶着を起こしても不思議はない。ヤマトクルーの諦めない闘志と絶対的正義感、一方で今の繁栄のために過去の地球人の命を危険にさらす200年後の地球——相容れるはずなど無い。

 このでっち上げ話の際、一度は実は失敗して二度目のループ(映画〈ハッピー・デス・デイ〉的な感じ)という事にしてもいい。被害が大きければ大きいほど、ヤマトクルーの動揺を誘える

 もし帰還した場合、これもまた未来を変える行動である。聖総統が把握できない変更が生じる危険性があり、せっかく成功しかけた作戦なのに水泡に帰してしまいかねない。だから、最悪の結果――200年前の地球人と200年後の地球人の双方に多数の死者を出した大計画の失敗を阻止すべく、グロデーズを出撃させてヤマトを撃沈した。

 

 それまでの間においてもヤマトを沈めようとしたのは……ヤマトが宇宙最凶である事は地球人自身が一番知っている。見方によっては存在そのものが危険でさえある。どんな理由にせよ、作戦遂行の邪魔であることには変わりない。

 何なら、200年後の地球がもっと平和で200年前の地球を攻撃する必要が無いように、メルダーズがガミラシウムやイスカンダリウムの採掘――地球繁栄の頼みの綱だったのに、それをヤマトが阻止した。おかげで今やヤマトは英雄から裏切り者になったとしてもいいだろう。かなりヤマトクルーは動揺するはず。よかれが全くよからぬことになるのだから。

 要は――200年後に現実と迫った地球滅亡寸前を避けて、より良い未来を創る為に直接的に200年後の地球が200年前の地球に介入した。ヤマトや長官ら聞き分けのない一部の者は地球を想う心が真っ直ぐ過ぎて200年前の地球が血を流す事を良しとしないだろう、だから消えてもらうように努力した。

 結局失敗して君たちは私=聖総統の目の前にいるが。だから、200年後の同胞を想うなら君たちはこれ以上騒動を起こさないでくれ――という全体的な流れとなる。

 多分、これなら聖総統にもご満足いただけると思う

 このでっち上げストーリーのまずいところが話すべき相手がヤマトクルーにいない事だって古代君や南部君は話聞いてくれないだろうし真田さんや山南艦長だと矛盾を見つけて突いてきそうだから下手に披露できない。案外、太助も島君も油断ならない。他のクルーだと説得できても影響力が小さい。

 アナライザーなら、もしかすると何とか誤魔化せるか……聖総統がプレイバックPart2を歌って百恵ちゃん愛を語ればワンチャンあるかも。あまり艦の意思決定に影響力があるとは思えないが。

 

 

 どちらにせよ、聖総統の案はとっ散らかった話である。

 一応、説明を付けようと思えばつかない事はない。しかしながら、あまり具合の善い説明ではない。しかもどれも過去を変えて未来を変えようという極めてデンジャーでハイリスクなギャンブル。

 この点について質問をされてしまっては、それこそ聖総統が古代君に喧嘩を吹っ掛けたように感情で押し通す他なくなってしまう。答弁としては最悪の部類だろう。そもそもの聖総統の説明に不備があり過ぎる為、どうやっても惨事になる。

 

 

 残念ながらこれら一連の設定と描写は、シーンごとに絵コンテを思いついて、それを切り貼りして寄せ集めた結果のように思えてならない

 到達した敵母星が実は地球だった——いや、地球に偽装した人工要塞だ。これはインパクト大間違いなしだ。一回見るだけなら、誰でも幾らでも騙せそうな内容である。ここから話を作ったような印象さえある

 しかし、ヤマトという日本アニメの金字塔にこれは——詰めが甘かったのではないだろうか。何度も見返される、となればこの聖総統のとっ散らかった説明にも目というか耳がいくのも当然。そうなった時、この作品は批評に耐えられるだろうか。

 正直、耐えているようには思えない。聖総統の説得力は完全に大平さんにおんぶにだっこじゃないか。もっと練ってから台本を書いてほしかった。

 

 

 きっと2202の構成担当の大先生は、この作品を参考にリメイクに当たられたんでしょうね(超☆皮☆肉)