旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

護衛戦艦 プリンス・オブ・ウェールズ――ネルソン級の後継艦――

 

 護衛戦艦〈プリンス・オブ・ウェールズ〉はヤマトⅢに登場した地球戦艦の一隻である。僚艦たる〈アリゾナ〉らと同様の“ワンオフ戦艦”といえ、その見た目の特殊さゆえにファンの妄想を様々に書き立てた。

 

 

 ――データ―― 

 艦名:プリンス・オブ・ウェールズ
 類別:戦艦/艦級名不明
 全長:不明 
 全幅:不明 

 主機:波動エンジン1基(補助エンジンなし)
 兵装:艦首波動砲1門、艦前部連装主砲塔3基、同艦尾1基。他不明 
 艦載機:不明(恐らく未搭載ないし、偵察機

 

 板橋メカらしい直線的なデザイン。

 エンジンノズル周辺部は巡洋艦のそれ、長さにして1/3程度。これより前方は概ね6角形。これが入れ子的に3段重ねで、最も小さい6角形は波動砲口となっている。また、アンドロメダ衝角を拡大したようなガワが艦尾を除いて上からかぶさっている。波動砲口より先まで伸びる衝角はかなり長く、艦全体の1/5から大体2/7程度はある。フィンは艦尾の4枚小デルタと、艦底部の長く伸びた一本と非常に少ない。艦橋の形状は同時期の調査船や新戦艦の艦橋などと同様に躯体をいくつか組み合わせた形状だが、板状アンテナが2枚ほどかつての護衛艦の艦橋のような設置のされ方をして居る。完結編の新巡洋艦とほとんど同じ。カラーリングは主力戦艦のそれと同じクリーム色。

 

 ざっくり言ってN3型戦艦G3型巡洋戦艦、或いはネルソン級戦艦の後継。それ以上でも以下でもない。

 めっさ、英国面

 

 

 武装
 武装は連装砲塔を艦首に3基、艦尾に1基の合計8門のショックカノンと艦首波動砲のみ。多いような少ないような、微妙なライン。ショックカノンは射角は両舷に8門で艦首方向に6門と主砲塔を4基搭載したおかげで指向可能な砲門数は他の艦とそん色ない。この表現しがたい絶妙な感じの設計が英国面

 

 主砲は――艦の全長が他の戦艦と同様であれば、また上甲板が同様の幅であれば1門減っているため、逆に1門辺りの砲口が若干の拡大が可能ともいえる。ヤマトやアンドロメダが46ないし50センチ程度の主砲であるならば、この艦は70から90センチ近い砲口を確保可能だろう。火力や射程、貫徹力が他の戦闘艦より数パーセントは上昇するため、速射力さえ確保できれば敵に浴びせられるエネルギー投射量の総量は他戦艦を確実に圧倒できる

 ガトランティス戦役、特に第11番惑星やヒペリオン艦隊で見たように遠距離での砲撃とその精度・貫徹力がどれだけ生存に寄与するか、これを十分理解し教訓とした設計、そう説明できる。これは素晴らしい。

 

 

 パルスレーザー砲すら見える形で存在しないというのは幾ら何でも近接戦闘を無視しすぎている。ちょっとぐらい載せようよ……。

 艦橋基部にあるかもしれないが、スタイリッシュというべきか無駄が無さすぎる艦容であるから――全部隠顕式だと確保できる数が極端に少なくなる可能性が高い。対空戦闘を一体どうやって乗り切るのか不明。独力では全く不可能だろう

 そうか、味方の支援を前提とした戦闘であれば何とかならん事もないか。ガトランティス戦役では味方艦載機を迎撃に出さなかったから使った程度だし。主砲が速射系なら対空戦闘も問題ないか。

 


 パルスレーザー砲に関してはないかもしれない。

 しかし、もしかするとミサイル発射管かもしれない6つの何かしらが舷側にあるこれが何らかの発射管であった場合、合計12門の誘導弾を発射可能という事になる。結構強力な火力だ。だが――何らかの影響で通信系の能力が毀損されれば、最悪これらはロケット弾化してしまう。当然、命中率は下がるだろう。

 もしミサイルを近接戦闘を視野に配備していたとするならば……

 ミサイルに全ての近接戦闘を頼るのは、強力な砲撃戦能力に比べ案外脆弱な計画と表現せざるを得ない。当たれば多分、パルスレーザーより強力だろうから頼る理由はわかるけど。

 まあ……遠中距離戦闘を旨とするのであれば、味方の直掩下の活動であれば問題もなかろう。先に述べたガトランティス戦役でもヤマト以外の艦はミサイルを使わなかったし。敵大型艦と対峙するだけならば、ショックカノンの強力さを鑑みれば……無きゃ無いで大丈夫なのかもしれない

 

 

 この艦は意味のある、意味の分かる武装傾向を有し纏まった設計となっている。

 カラーリングを鑑みると護衛とかついているが、実際は"普通の”戦艦なのだろう。砲撃を中心に据えた、他艦種支援の下に多数で戦列を構成する戦闘艦としては十分理に適う設計。つまりは砲撃専門艦、いうなれば〈ヴィクトリー〉や〈ブラックプリンス〉の様な戦列艦。大分古い例だが……。

 

 

 しかしどうしても一つ疑問が生じる

 つまり――この艦自身が近接戦闘に脆弱で何なら護衛対象である。なのに調査船団を護衛しなければならないかなり矛盾した任務を劇中、仰せつかっていた。

 少なくと単独での船団護衛は難しい艦なのにうん、英国面ですね。運用まで……

 

 


 全長の推測
 300メートル程度だろう。"衝角”を除くと、実質は260メートル程度。ただ、困った事に雲の上を飛んでいるシーンしかないから全く、それっぽい推測が出来ない……。見た目からして、波動砲口は多分主力戦艦と同等か幾らか大型とみられる。この一点に頼り故に、300メートル程度。

 艦の能力自体、艦載機運用能力の様な艦体を大型化する必要のあるモノは設定されていない。外観からもあるようには思われない。となると、設定と描写の整合性の為の全長の再設定は全くの不要でこれは楽。

 再設定したヤマトとヴィジュアルをそろえる為に計算するならば――少しオマケして700メートル程度が妥当だろう。

 

 

 立ち位置
 前に述べたように本当は普通の戦艦、それも量産型の設計何かしら特別な意図をもって設計された戦闘艦ではなく砲撃戦に主眼を置いた艦。

 ただし、〈プリンス・オブ・ウェールズ〉に関してはプロトタイプかつ事実上の一番艦である為特別な立ち位置であることは間違いないだろう。希望的観測だが、ヨーロッパ地区艦隊ないし英国や英連邦艦隊旗艦を務めていると期待するヨーロッパ地区艦隊旗艦であるかどうかに関しては、フランスが宇宙艦隊の整備計画にいつものへそ曲がりを発揮した場合、潰れる可能性が高い。

 

 砲門数を減らして相対的に規模を大きくした主砲は当然強力と言えるだろう。また、正面に3基を並べて砲門数そのものは他艦との差を解消している。完全に正面の敵と戦う設計。完全に大型艦と戦う設計

 形状からして艦載機運用能力を見込めない艦容。第二期地球艦隊の巡洋艦に準じた艦の形状では、偵察機数機程度しか載せられない。つまり、コスモタイガーを擁するヤマトらと異なり単艦ではどうやっても組織だった敵とは戦えないのである牽制すら難しいかもしれない。万全な状態であれば、単独行が可能であろうヤマトやアンドロメダとは大きく異なる。

 

 推測をまとめると、主力戦艦の砲力拡大と無駄の省略が設計の基本方針だったといえるだろう

 いうなれば、それまでの戦艦に比して相対的に強力な戦闘艦、他艦と戦列を組む前提で戦う戦闘艦という前提の元に設計された艦。普通の戦艦だが、火力は向上させたということ。

 ガトランティス戦役で結局ほとんど使わなかった艦橋周りの兵装を全て取っ払い、やっぱり使わな過多舷側の兵装も取っ払った。使わないものをそのまま置いておくより、中途半端な突起を取っ払い平滑な表面として応力の偏った集中を避けることで装甲の能力が引き上げられるならば、相対的な艦の能力は向上し得る

 中途半端な武装を取っ払った代わりに主砲一門当たりの火力を引き揚げ、配置を工夫し他艦と指向できる砲門数や射角の差を最小限にとどめ、相対的に強力な砲戦能力を提供する艦へと設計をまとめ上げた。

 他国や自国の古い艦に対し、相対的な能力向上を狙った設計の方針は条約型戦艦〈キングジョージ5世〉に近いだろう。この艦やクラスもさんざん言われたが、実際にはかなり戦争で健闘していたし設計も目的はおおむね達成されていた。

 これと同じ、やはり英国面

 

 

 波動砲の種類の推測
 〈プリンス・オブ・ウェールズ〉に搭載されている波動砲が一体どんなタイプなのかは劇中だけでは予想が付かない。全く言及がない為である。

 だが、論理的に考えれば設定は可能かもしれない。

 

 仮に収束波動砲を搭載していれば、高い貫徹力と大口の砲口からくる若干緩い収束率による一定の散布界を持って敵艦隊を攻撃。敵艦隊の陣形に突破口を作り味方水雷戦隊の突入を支援するという事になるだろう。

 ヤマトⅢの地球では、これを実現できるだけの戦力がないが

 

 仮に拡散波動砲であれば、ひたすら遠方で敵を漸減。接近する敵艦に対しては長射程大口径のショックカノンによる圧倒的な射撃力を以て押しつぶす、力押しな戦闘が予想される。また、単独でもある程度は組織だった敵と戦う事が可能になる。

 ヤマトⅢの地球では、こちらの方が妥当だろう。また、艦の武装からしても、拡散波動砲というのが妥当だろう。

 

 〈プリンス・オブ・ウェールズ〉は主砲が一門一門が大型である可能性が高い。他方、パルスレーザー砲がない可能性が高い。この二つを考え合わせると、この艦は遠距離から中距離における戦闘が中心になる

 というか遠方で敵をどれだけ粉砕できるかどうか。如何に敵を接近させないかに生存できるかどうかがかかっている。特に、味方空母や水雷戦隊の支援が脆弱な場合。同型艦多数集めたとしても、である。

 

 

 遠距離で出来るだけ敵を粉砕しようと考えれば、これは拡散波動砲以外の選択肢はあり得ない。どうせ地球艦隊は少数なのであるから、劣勢をひっくり返すのは拡散波動砲しかない。近接戦闘に持ち込まれる前に敵艦を粉砕する、航空戦力だろうが何だろうが面で叩けるうちに叩く。そのためには拡散波動砲しかない

 これらの事情から推測して、拡散波動砲搭載艦というのが一番妥当だろうむしろ拡散波動砲以外をこの艦に搭載すべきではないのではないだろうか。一番楽なのは、両方が撃ち分けられることだけど。

 

 


 劇中の活躍
 第12話に移民局発足と探査本格開始に伴い所定の宇宙港に開港された護衛戦艦の1隻として登場。第20話にもワンシーン登場。どっちも比較対象になるような構造物とは一緒に映らなかった。残念。

 結局、どの調査船団に配属されたのかがわからないため、帰還出来たのか銅貨は不明。

 

  なお、イギリスで建造された、或いはイギリス人が設計したなどという事は劇中全く語られなかった。が、この艦をイギリス人が創らなくて誰が創るだろうか。こんな見た目と設計の戦艦を創るのは非凡な才能を持つイギリス人の他に居ないだろう

 特異な発想と既存の技術とあとはガッツですり合わせ、まさに英国面

 

 


 活躍の想像
 敵艦隊の襲来に際し、問答無用で拡散波動砲の先制攻撃を行うだろう。最大射程でこれを迎撃し、第一波攻撃で敵の前面部を粉砕。

 それでも依然として接近してくる敵艦隊に対しては時間の許す限り拡散波動砲でこれを迎撃、ショックカノンの射程圏内に到達されてしまった段階においてはじめて主砲による迎撃へと移行。大型主砲にて敵を順次迎撃。


 残念ながら後ろを向いての撤退は敗北を意味するのがこの艦の設計。調査船を退避させつつ、自艦はその場にとどまり自己犠牲的に戦うほかないだろう。幸いなのが、艦尾形状からして快速艦の予想が立つ事。

 つまり、拡散波動砲で敵が怯み、攻撃が鈍化したタイミングで護衛対象と共にとんずら出来れば、これがベスト。ダメなら島津の退き口的にあえて敵に突進してすり抜けて全速で逃げる。

 

 全体として色々割り切った感じの設計であり、プリンス・オブ・ウェールズというだけあって、大変イギリス軍艦の香り漂う戦闘艦に仕上がっている

 大英帝国海軍は非常に凡庸な設計と、既存で信頼性のある技術を突拍子もない組み合わせ方をする設計と、二通りの設計系統がある。どちらに転んでもそこそこのクオリティに仕上げるのが大英帝国海軍であるが……この〈プリンス・オブ・ウェールズ〉は思いっきり後者の戦闘艦だ。

 まさに、英国面。そう結論付けられるだろう。