旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガルマン・ガミラス帝国――新興巨大帝国――

 

 

 ガルマン・ガミラス帝国はヤマトⅢの当初では敵役として現れ、後に地球寄りの立場を取った巨大帝国である。その前身はあのガミラス帝国、マゼラン雲より拠点を移したデスラー総統の手による覇権国家

 その理念は武力による銀河統一を果たすことでの平和の実現……

 

 


 国家名:ガルマン・ガミラス帝国
 国家体制:全体主義(民主主義かつ共和政)
 前身国家:ガミラス帝国(拠点:大マゼラン雲・サンザー太陽系第8惑星ガミラス

 拠点:ガルマン・ガミラス本星(位置不明)
 領域:天の川銀河中心部/先端部を除くペルセウス腕ほぼ全域/じょうぎ腕(はくちょう腕全域)/たて・ケンタウルス座腕先端域
 主要推進機関:波動エンジン

 


 国家体制
 ボラー連邦と戦い、ガルマン民族を解放したデスラー総統。彼は王になろうとはせず君主制を敷くことはしなかった。代わりに直接ないし間接選挙を用いて国家元首の選出=民主主義を実行、選挙によって総統に再び選出された。
 つまるところ、かつてのガミラス帝国と同じである

 何度も言うようだが、民衆が独裁者を求めるならばそれは民主主義だし、民衆が為政者に法を無視しろと求め応じた場合もこれも民主主義。必ずしも公平とか、そういった類が民主主義ではない

 

 若干、宗教に対して強硬政策を行っている点が異なるところ。今までは現れていなかった傾向だが、教義に忠実過ぎて他の存在に対する敬意が全くなく、人種的に同胞である相手の生命すら危険にさらす、それを何とも思っていないシャルバート教はさすがに危険思想と言わざるを得ない。

 加えて、ガミラス帝国時代はガミラス民族だけをまとめればよかっただけだが、風習が恐らく違うであろうガルマン民族までもまとめなければならなくなった結果、多少は強硬手段を取らざるを得なくなったと考えられる。ガルマン民族の場合、総統を圧政からの解放者――ところが、ガミラス民族にとっては百も承知の全体主義もガルマン民族にとってはあまりありがたいものではない、そう思っても仕方がないだろう。

 

 だったら、正面切って選挙で自由主義的な候補を勝たせればいいだけ。

 恐らく、シャルバート教に関係ない人物であれば問題なく総統候補になれるだろうし、軍務経験者なら要件をすべて満たせるだろう。グスタフ中将なんかが適任だったが――クロッペン何かどうだろうか、総統立候補者として。凱旋将軍だし、ヒステン・バーガーとは違い、順当に征服を完了したのだから。

 


 ガルマン・ガミラス本星
 緑色に輝く星、それがガルマン・ガミラス本星。スターシャと名付けられた青く輝く美しい星との2連星である。
 ベースとして、森も海も川もない星である。地殻変動は地球と同様か、より緩やかとみられ、極めて大きなクレーターがそのまま地表面に残っている。総統もそのクレーター内部に都市を築いていた。
 意外と雲が散っていた為、もともと海の面積が小さい惑星か、地下水脈がその水源となっている星なのか、或いは非常に大陸が偏って配置されている可能性が考えられる。物凄く深い渓谷がいくつかあって、その中に物凄い量の水が蓄えられている可能性もあるかもしれない。

 


 国名
 ガルマン・ガミラスというのはそのものずばり、大帝国を築いたガミラスとその元になった民族であるガルマンに由来するものである。


 この複合国名は厄介で、前と後ろ、どちらが上かという議論がある。前提として、欧米では大抵後ろの方が地区市郡県国の順と並ぶのが基本。故にチェコスロバキアは完全に組み合わさるのか、・なのか=なのかで猛烈に揉めに揉めた歴史がある。これは忘れないでほしい。

 =であれば、同格であることが確定。単なるスペースだと……ヤバい、戦争で優劣を付ける羽目になる。・の場合は双方の公式発表による。諸外国からの外称とか、明らかに支配民族が判り切っている場合は、大した意味とか配慮とか無く決定される場合も多い。オーストリアハンガリーなんかは分かりやすい。


 ただ、ガルマン・ガミラスにおいては確実にガルマン民族の方が数が多いのだから、多少配慮があってもいいだろう。ガミラス民族に対しては直接声明でも出せば十分わかってもらえるだろうし。

 

 

 文化
 基本的にはガミラスのそれと同様。酒はやっぱりボラーのそれより青いし、グラスの形もガミラスのそれと大して変わらない。結構祝賀が好きで、勝つと大抵思いっきり凱旋をやったり、この辺りの文化傾向もガミラス時代と変わらないと言えるだろう。

 洒落は上質なもの以外は恐らく評価を得られない――ボッシュートだろう。反対にエスプリの効いた皮肉は高い評価を期待できる。

 

 建築の傾向は若干直線的になってはいるものの、有機的なデザインは維持されている。キノコみたいな形の建築群である。ただ、直線部と結構いびつなバランスになっていて悪い意味で目を引く。

 物凄く、いい方向に解釈すれば、有機的デザインだが菌類をバイオミメティクスの対象には選ばなかった大帝星ガトランティスのデザイン傾向が流入していると説明はできなくはない。

 

 

 人種

 恐らく、最も多いのはガルマン民族だろう。第17話で語られたように――これは天の川銀河の中心部核恒星系に居住していたガミラス民族の母集団であり、ガミラス民族はここから飛び出しマゼラン雲へと移り住んだ集団である。

 いわば――フェニキア人の都市カルタゴと、その母市ティルス。どちらかといえばはみ出し者に近い傾向のある、よく言えば進歩的な集団が小アジア辺域の巨大都市ティルスからアフリカへと開拓に向かい、カルタゴを建設してエトルリア人を撃破して地中海の覇者となった。この故事と似たような過程をたどったと説明できる。

 

 どうやら、放射線に対する反応は――地球人より耐えられるか、一定程度定期的に放射線に曝露された方が彼らのウェルネスに寄与できる、その程度である。という設定にする必要が有るだろう。

 地球人類は自分たちの数万年前までの歴史を知っている。すべてでないまでも、推測は可能なレベルにまで落とし込んでいる。地球人でこのレベルなのだから、ガミラス歴史教育をおろそかにしない限りは――あの手合いの全体主義国家が、歴史教育プロパガンダに利用しないはずはないので、数万年前までのようすを把握していて当然。しかし、総統はガルマン民族を知らなかった。単に彼が自国史でうっかり落第していなければ、ガルマン民族とガミラス民族が分裂したのは――割と昔、と推測できる。

 同時に、例えばブーサイード朝のようにオマーンザンジバルの二つの地域にまたがった繁栄をした――という事も、ガミラス及びガルマンの歴史においてはなかっただろうと推測できる。

 劇中に時間軸の話が一切なかったため、この辺りはテキトーに設定可能

 

 

 建国の流れ

 はっきり言って時間軸は滅茶苦茶。だがまとめると――自動惑星ゴルバとの戦闘の後、再び新たな大地を求めた放浪を始めたデスラー総統。彼はかつて地球へ侵略を行った際に、まだ調査を行っていなかった天の川銀河中心部へとその舳先を向けた。

 そこで偶然的にガルマン本星を発見する。

 しかし、この星はすでにボラー連邦に征服されていた。これを救うべくデスラー総統は直ちに惑星に降下、奇襲戦を以てボラー連邦の勢力を排除に成功。ボラー連邦に対して反感を持っていた属国らも、本国派遣の高官を排除することでガミラス側に集い、場合によっては本国派遣の総督もガミラスの勢いを見てボラー連邦から鞍替えしたかもしれない。

 徹底した攻勢をかけ、ガルマン本星周辺域より前線つまり北部方面に強力な戦闘艦隊を派遣しこの領域を確定。巻き返しを試みるボラー連邦が包囲殲滅を図る様に支配領域の再構築を試みるのに反応し、東部方面に強力な艦隊を派遣しこれを迎え撃ち逆にボラー連邦の支配領域を狭めようとした。

 全く別個ないしボラー連邦の服属国の西部方面や特に何の脅威もなかった南部方面の征服完了に及び、一定程度の戦果を国民に布告。そして、ヤマト発進の一年前に帝国の勢力確立を祝し、建国一年祭を挙行した。

 

 シャルバート信者の長老が言った「25年の戦乱」が一体何の話かは全く不明だが、実際にはガルマン・ガミラスは全く関わっていないとするのが妥当。

 きっと長老はガルマン・ガミラスが嫌い過ぎて記憶の勘違いをやって――別勢力とボラー連邦の戦闘やボラー連邦の圧政を、ガルマン・ガミラスとボラー連邦の戦争と取り違えてヤマトクルーに話したのだろう。

 

 

 総統の決意・帝国の目的――パクス・ガミラシア――

 ガルマン・ガミラスがなぜ拡大傾向にあるのか、その最終目的は何か。

 

 国家である以上、特に成長期にあるこの帝国においては拡大傾向はこれは当然の流れだろうしかし総統の口から語られたのは意外にも平和の希求であった。かつて母星を失い、いくつもの圧政を目撃し、そして先祖たるガルマン民族すらその被害に遭った

 これを見た総統の心に如何なる感情が去来したのか。表現は難しいが、しかし推測に難くない。

 だから、ボラー連邦のような圧政を行う敵を排除し天の川銀河に自由と平和をもたらす。天の川銀河に存在する生命に危害を及ぼす外敵に対し、ガルマン・ガミラスがその総力を挙げて迎撃する。いわばパクス・ガミラシア(Pax Gamilacia)を実現する事がデスラー総統の目的であった。これは内側に存在するシャルバート教も、人民を害し統治を害すのであれば敵としてみなす必要が有る。

 

 パクス――というのは「――による平和」という意味のラテン語の成句である。幾らでも創る事が可能で、パクス・ブリタニカパクス・オトマニカパクス・トクガワーナ(別につづり的にはトクガワニカでもトクガワエア可。個人的にはパクス・トクガワエワの方が好き)などいろいろある。

 ガミラスの場合、日本語と英語では表記・発音(ガミラスとGamilon)が大分ずれる為、英語に合わせると恐らくパクス・ガミロニカ(Pax Gamilonica)になるだろう。ガルマン・ガミラス帝国(Galman-Gamilon Empire)でもガルマン帝国(Galman Empire)でもなんでもよかったが、複合名詞を利用すると冗長になってしまうため却下。ガミラス時代も別に戦乱を望んでいたわけでは無いし、ガルマンに偏るとガミラス時代との継続性が見えなくなるため、あえてガミラスに焦点を置いた。

 

 領域内を統一的に統治する巨大な国家の元、同一の制度・法体系、同一の通貨、外圧のない統治、公平な統治

 結局のところは戦乱期に対する相対的な平和であるし、ユートピアとは程遠い。しかしながら外圧に対して無防備であるとか、統治者がコロコロ変わり制度がコロコロ変わるといった、より困難な社会情勢へ突入することを避ける。その意味では確かに、確実に平和である

 また、余程巨大かつ抑圧的な国家であなければ――そういったパワーのある国家といえど、何百年も続いた長い歴史や文化には簡単には抗えるものではない。同一の制度や法体系、通貨のしようといっても、“柔軟な運用”という範疇に収まってしまう事も少なくはない。また、領域に新たに参加する地域に対しては当然モラトリアムを設ける必要はあるし、地域ごとに風土の差があり、中央がこの差を埋めることが出来なければ結局は地域ごとの法体系であるとかを運用せざるを得なくなる。

 それはともかくとして――

 

 デスラー総統は、とにかく天の川銀河を平和にしたかったその平和の中身について、或いは手段については賛否があるだろう。平和になる前段階として強烈な戦乱を天の川銀河にもたらしてしまったことは事実であるのだから。シャルバート教も、害悪といって差し支えないが、しかし問答無用の射殺は確かにマズイかもしれない。

 ただ、シャルバート星が無防備と判明した後の行動、少なくとも地球に対して対ボラーで連携してほしいという、ボラー連邦が地球に対して要求した属国化ではなく同盟国としての存在を要望した。その姿勢からすれば、ボラー連邦に比べて相対的に平和の建設者としてはガルマン・ガミラスの方が相応しい。感情で動きがちで、他の勢力に比べて武装過多でうっかり戦乱を広げそうな地球よりも相応しい。これは間違いない。

 ガルマン・ガミラス帝国の元、諸族をまとめ、天の川銀河にあまねく平和――パクス・ガミラシア――をもたらす。これが総統の願いであり決意だった。そのためにガルマン・ガミラスはその勢力を天の川銀河全体に広げようとしたのである。

 そう説明可能だ。


 

 兵器
 ガミラス帝国の伝統、紙装甲。多分、足回りの改良は効率の向上程度で抜本的な変更は行われていないだろう。それゆえか、ボラー連邦相手に火力で押し負ける場面が目立つ。実際、ボラー連邦は登場した勢力の中で割に火力が高めである可能性が高い為にあまり責められないが、それでも……ガミラス的に今までよりマシの火力であってもあんまり……。

 一方で、惑星破壊ミサイルを新たに“汎用”決戦兵器として新たに採用、さらにデスラー砲を汎用化して艦隊全体の戦力を圧倒的に強化した。新反射衛星砲、牽引ビームを武器に使う、なぜか双発機が多い、やっぱりドリルミサイルまだ持っていた、等々のガミラス独特のビックリどっきりメカを使いたがる傾向はちゃんと受け継がれている。

 自爆傾向が強いのはかつてと同じ。 

 

 最も特筆すべきは、回転砲塔だろう。あれは明らかに大帝星ガトランティスそのもの。いつ、どのタイミングで総統ないしタランがこれの設計図を手に入れたのかは不明だが、きっとどっかで借りたのだろう。

 この速射砲はガトランティスにおいても有用であったように、準主砲としてガルマン・ガミラスの火力不足を速射性でカバーしていた。ガルマン・ガミラスも、回転砲塔を護衛艦艇に多用している――きっとたまたま何だろうけど――というのも、その性質をよく理解した上での採用と説明できるだろう。

 

 更に、デスラー砲艦というあのメカ。これは地球艦隊の傾向を取り入れた大火力の先制攻撃タイプの艦隊建設といえる。ただ、デスラー親衛艦隊という部分がネックで、そこはやはり独裁系全体主義国家の悪い癖が出たとしか言いようがない。だって、ごく限定的な場面でしか使わない艦隊に集中運用――これでは汎用化が出来ている、しかも敵は類似した兵器を持っていない。この利点を生かし切れていない。

 

 

 ヤマトⅢにおいてガルマン・ガミラスアメリカ的な――イデオロギーと実体と正義のはざまでその存在を試される性格を持たされた。彼らにも理想があり、それを武力で成し遂げようとする、武力で抑圧を取り払い新しい世界を切り開く……。これが正しいかどうか、第三者的には全くわからない。

 ただ、デスラー総統はどうやら本気で平和を願っていることだけは確かだろう。いわば、パクス・ガミラシアとでも呼ぶべきものを到来させようとしていた。