旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ボラー連邦 ――巨大圧政国家――

 

 たて・ケンタウルス腕のほぼ全域から銀河系中心部近くの領域までを飲み込む巨大国家。あまたの星とあまたの属国を抱え、直轄領域以外の天の川銀河の辺縁部までもその勢力を広げた覇権国家である。

 天の川銀河に古くから成立している極めて先軍的で、極めて圧政的な国家――それがボラー連邦。


 


 国家名:ボラー連邦
 国家体制:共和政・議院内閣制(実質は一党独裁専制
 拠点:ボラー本星
 領域:天の川銀河:たて・ケンタウルス腕ほぼ全域/ペルセウス腕最先端域/じょうぎ腕(新はくちょう腕先端域)/いて・りゅうこつ腕先端域
 保護国:バース星(りゅうこつ腕・太陽系前面域)
 主要推進機関:不明

 

 

 国家体制
 首相という役職がある以上、元来は民主主義なのだろう。ただ、それが変質して独裁制ないし専制化した、というのが妥当な推測。

 役職の名称の如何については、人民委員議会議長とか閣僚評議会議長とかそのあたりだろう。首相の正式名称が首相という可能性は低い。というか、あり得ない。

 民主主義体制であれほど首相という役職に権限があるという事は、当然ながら議院内閣制を採用しているとみて構わない。民主主義、特に行政府に強力な権限が集まりやすい議院内閣制をベースとした場合、これは意外と独裁になりやすい。これは歴史の常
 ソ連っぽい雰囲気からして、一党独裁体制であることが一番妥当だろう。彼らだって一応民主主義の範疇に入る政治体制なのだし。実体は別にして。

 

 この場合、国家元首としての大統領は存在としてどうでもいい。だって首相が立法権と行政権を事実上保有しているのだから。この手合いの国における大統領は立憲君主制国家における君主と同じ、いわば「選出されども統治せず」といった具合。完全に儀礼的な立場。そりゃそうだ、組閣を命じる権限はあっても組閣する権限がないのだから、どうやったって行政権を掌握できない。

 大統領の存在感が極めて重要なのは議院内閣制を採用していないタイプの共和政の国のみ。この場合、行政府と立法府が実際はどうあれ、たいして一緒には動かない。ねじれれば当然議会と大統領が対立する。

 ゆえに、ベムラーゼが事実上の国家元首であるといっていいだろうベムラーゼが党書記長とか総裁のような立場を兼ねていれば、国家より党が上というアブナイ体制ならば100パーセント、ベムラーゼが国家元首

 

 レーニンスターリン国家元首格の最高幹部会議長にはならなかったが、ソ連が彼らの意のままになるという事は自明の理だし、だれも疑わなかった。結局、メドベージェフ大統領をちゃんと国家元首とみなした人は誰もおらず、首相たるプーチンこそ国家元首と誰もがみなした。

 それと同じ。

 

 

 ボラー連邦本星
 恐らく3連星。だって本星のシーンでは全く発光していない星がかなり大きい目視直径で上空に浮かんでいたため、多分3連星だろう。


 地表は氷に覆われ、海洋はあっても大気圏外からは視認できない。

 非常に巨大な帯状雲が認められるため、恐らく温度変化や大気の湿度変化は大きなものはないと思われる。驚くべきが、バース星以下の全く森の無い環境。全体的に青く見えるのは、恐らく恒星との距離がハビタブルゾーンのぎりぎりのラインに位置しているからだろう、だから寒く、透過性の高い青色以外のスペクトルが届かない。と説明可能。


 ボラー本星首相宮殿はかなり埋まった錨の形をしているが、その擁壁がなぜか先端部が崩壊している。断面がいびつなため、デザインではないだろう。可能性としては、以前にガルマン・ガミラス帝国の襲撃を受け、破壊されてしまったと考えられる。理由を付けるならば、地球でいうところのカイザー・ヴィルヘルム記念教会とかドイツ連邦議事堂みたいなノリだろう。

 多分、地下とかそのあたりに中枢部があるとみられる。この首相宮殿にはボラー連邦の全域へ通信を飛ばせる中央作戦室があり、即座に部隊配置の転換も出撃も司令が可能。部屋の中は十分電灯が据えられているため、大分明るい。が、装飾的なモノは意外と少なく、ほとんど軍事施設としての要素ばかり。

 


 国名
 由来の推測は全く不可能。似たような語感の言葉がないわけでは無いが、どれも係船柱とかラテン語で飛翔とか全くイメージも何もボラー連邦と関連を想起させるようなものではない。
 連邦というのは国家や自治権を持った州政府が複数より集まり、相互承認ないし国家憲法の承認によって一つの国としての形を持った国である。ボラー連邦の場合、別の国家=バース星を傘下に置いているため連邦の要件を満たしていると言える。

 


 文化
 第12話において、同じ文化圏の食べ物がボローズ総督が開いた歓迎パーティーで披露された。これがバース星独自の物か、連邦のスタイルなのかは不明だが、色がとても地味な食べ物が用意されていた。多分、パスタの類だろう。それからサラダ――なぜかすべてベージュを混ぜたような色である。他方、酒は薄紫色。果物もブドウっぽいヤツと柑橘系っぽい奴が多数用意されていた。バース星の場合、地球の中級指揮官と同様の軍服を着ていた事を考えて、多分……ボラーとは文化が大分違うだろう。

 

 装飾は色味がモノトーンか、赤を中心としており冷たい印象。ボラー本星の首相宮殿の中は、ブドウの房のような照明が天井から吊り下げられるという、なんとも表現しがたい装飾であるが装飾性が無いというわけではない。ただ、あのタイプの照明はむしろアメリカとかではやったような気がするが……。

 ボラー連邦の服装は軍服ぐらいしかわからないが――円盤状の肩パットなどを備えた……機能性という意味ではあんまり合理性の無い軍服。威圧感とか、シルエットがもたらす心理的な影響が中心とすればまだ説明は出来るか。

 ハーキンスとゴルサコフのやり取りを見るに、習慣として、あいさつは歯が浮くようなお世辞で始まる模様。何となく、イメージとしてソ連っぽい「同志スターリン!」的な感じ。

 

 ベースとして為政者は抑圧を行い、臣民はそれに耐える――耐えきれない場合は暴動。と言うような構図がある模様。圧政をして当然、臣民はそれに耐えて当然という感があるらしい。負けるのは当然の如く、恥とみられるし、弱点を見せるというのもどうやら恥とみる傾向がある模様。

 そういったところがステレオタイプなロシア文化と評すことができるだろう。

 

 

 人種

 白い肌が本国人。目は赤であるとか色々だが、色素は薄いように見える。同時に髪の毛も色が亜麻色であったり、色素が薄い傾向にある。氷に閉ざされた日光さえあまり届かない環境である為、妥当なカラーリングだろう。

 骨格は結構ごつい、ゴルサコフ何かは非常にごつい。加えて結構ケツ顎な人が多い。だからどうだと言われたら、どうという事のない事で単なる感想。髪型もあんまりバリエーションがないが、きっと統制されているのだろう。

 ベムラーゼ首相、見た目は実写版ドクロベエをいかつくしてみた感じだが――カラーリングに関しては渚カヲルと大体同じだったりする。

 

 一方でバース星は少々異なる。髪の毛が明らかに天パーで、本国人とは異なり肌が緑色。ガトランティス人と同様な感じではあるが、やっぱりごつい骨格。どんなイメージでキャラクターをデザインしたのか、描写からはあんまり推測が立たない。

 

 

 天の川銀河の盟主・ボラ―/パクス・ボラリカ

 天の川銀河は元々、その大部分をボラー連邦(Bolar Federation)が支配していた。

 

 中央政府による徹底した圧政、軍事力による統括的なな統治。ほめそやしはほとんどせず、金であるとかのパワーや忖度を利用するのではなく明確に軍事力を用いた強烈すぎる統治反対する存在に対しては徹底的に搾取するさらに――どうもガルマン民族は明らかにボラー本国人やバース星人とは明確に容姿が異なることを考えると、抵抗したという事もあるだろうが、政治などの色んな意味で見せしめで奴隷的立場に落とされていたとみて間違いない。国家によるそういう選別は、人権が守られている国の人間から見れば、異常という言葉では表現が不十分なほど。

 はっきり言ってソ連の最も暗部を明確に描いたといっていい。アメリカだってそんな美しい国とは言い難いが、優生思想が流行ったような国だし、褒めたくはないが……しかしソ連に比べればさすがに天国だろう。

 

 そうはいっても、一応ボラー連邦の圧倒的軍事力は外敵に対しては強力な防波堤になったことは間違いない。単体で存在していては簡単に征服されてしまうであろう小国家も、ボラー連邦の後ろ盾があればこそ、その命脈を保てるという見方もできる。

 戦乱に比べればマシな、覇権国家による統治。それはまさに価値が非常に下がった現代におけるパクス――(――による平和)という語をあてはめるにふさわしい状態だろう。

 明らかに質の悪い、不幸の多い統治ではあるのだが……彼らは戦乱を起こそうとわざと圧政を行っているわけでは無く、反乱が起きないようにと圧政を行っている。彼らは彼らなりの理論で他国を属国化(彼ら曰く保護国)して、その安全を確保している。やり方は全く称賛に値しないが、一応は平和というものをもたらしうる行動ではある、実際に平和をもたらしている。つまり、パクス・ボラリカ(Pax Bolarica)である。質の高いものではないが、しかしこれは確かに存在した。

 

 結局はガルマン・ガミラスという新興国家に破られてしまったし、ガルマン・ガミラスの方がよっぽど自由な国である為、明らかにパクスをもたらす存在としては戦力外通告を受けたが一応、パクス・ボラリカは一応実現できていたといえる

 彼らがその認識であったかはかなり疑問だが。

 

 

 ちなみに、残念ながら我ら大帝星ガトランティス(Gatlantis Empire)場合、繁栄や秩序という意味では確かにガトランティスがもたらすものという考え方があったが、どちらかといえばガトランティスそのものの繁栄や秩序を重んじた

 加えて、平和については端っから眼中になかった。つまるところ、戦乱というものに対しては正直、無頓着だった。どちらかといえば、戦乱を望んでいた傾向さえある。また、かなりの強烈な搾取もしたし、これらを多角的に見てみるとガトランティスの統治は――戦乱に比べれば相対的にマシとは、どう考えても言い難いむしろ戦乱の方が希望があったかも……。

 つまるところ、悲しいかなパクス・ガトランティカ(Pax Gatlantica)という語はガトランティスの統治や理念を語る上では、あまりに語と実際に齟齬が出る相応しくない。それに、仮に当てはめるとしても英語の場合はどうも白色彗星帝国( White Comet Empire /Comet Empire)の方が頻繁に用いられるためガトランティスの語を用いても……という別問題も生じる。

 

 
 兵器
 ガミラスなみの紙装甲だが、ガミラスなど目ではないほどの物量作戦でごり押ししてくるため、問題はない。それに、紙と言ってもコスモタイガーの銃撃で爆散するほどではないから、そんなに心配はいらない。

 一方で、砲口の直径――というより長辺と短辺がどうにもやけに大きいために火力は決して低くはない。目算で1門当たりガルマン・ガミラスの3門分のように見える為、考えようによってはボラー艦艇は艦首方向12門の火力集中武装という言える。
 決戦兵器は惑星破壊ミサイル。新兵器開発は余念がなく、ミサイル特化デストロイヤー艦やワープミサイルなど多数を劇中後半部に投入してきた。

 意外と手ごわいのが、ボラー兵器群の特徴

 

 ボラー連邦の軍艦が何を主発電機、機関、推進部に用いているかは不明

 ワープなど艦の機能は波動砲を除いて地球のそれと大差ない為、波動エンジンは搭載しているのは確実だろう。〈ラジェンドラ〉が海王星ドックで整備を受けている故、砲撃に用いる機構も地球やかつて接触した勢力のそれとは大差ない“既存タイプ”だろう。一方で、ノズルの数の割に火力が低めである点、波動エンジンを推進に用いていても地球のそれとは接続の仕方が異なるのだろう。そもそも、ノズルの配置や数がエグイほど異なるため核熱ロケット推進アークジェット推進を組み込んだ複合推進で、波動エンジンは主発電機扱いの可能性だってある。

 ボラー連邦は巨大国家であり要衝にはそれぞれ大艦隊を配備(バース星守備艦隊やハーキンス艦隊など)する、まめな軍事力の展開を行っている。この点を鑑みると、存外航続距離が短くても問題とはならない可能性が高いのだ。要するに波動エンジンを電源としての利用のみで、推進に使わなくても問題ないという事。

 また航続距離が短い方が、描写の整合性は取れるようになる

 つまり――ボラー連邦系の技術では通常航行だと意外とバース星から地球まで到達できなかった。バース星と地球の間に全く交流が無かったのは単純に、足を運ぶ手段が無かったからたまたまワープして偶発的に到達するぐらいでしか接触の機会が無かったから。だから交流が無かった。その冒険的機会も、ガルマン・ガミラスの進出やボラーの進出に直面し逸した。として説明は出来る。

 ともかく推進技術は多分、ガルマン・ガミラスと同程度か少し上程度だろう。

 

 

 描写の齟齬

 劇中にボラー連邦の迫害を避けて巡礼を続けるシャルバート信者が登場する買いがあった。彼らの話によれば25年ほどさまよい続けているらしい。

 つまるところ、最低でもボラー連邦は勢力を確立してから25年程存在しているらしい。ヤマトに登場した国家の中では老舗といえよう。また、10年ほど前にバース星を保護国化した事を考えると、その時点までは確実に拡大傾向にあった巨大国家である。

 でも、銀河系大戦でガルマン・ガミラスが登場したのは自動惑星ゴルバとの戦闘の後――物凄く長く見積もって5年前がせいぜい。戦争が佳境に達したのは恐らく、新惑星探査のためにヤマトが出動した1年かそこら前程度。これは……明らかに矛盾している

 ガミラスが地球に手を出した時点でボラー連邦はおおむねバース星まで勢力を伸ばしている。続くガトランティス天の川銀河侵攻を前にしてもボラー連邦は特に警戒をせず、挙句暗黒星団帝国の地球侵攻に至ってはその侵攻ルートがボラー連邦の勢力圏を掠めている可能性が大。これらの時に全くボラー連邦が動かなかったのは道理に合わない。まあ、長老が時系列を勘違いしてヤマトクルーに語ったとして片付ければ何とかなるだろうが

 

 無理やりにでも辻褄を合わすなら――ボラー連邦は元来、天の川銀河の中心部からさんかく座銀河方向に割拠していた。だが、ガルマン・ガミラスが建国されるに至って勢力が揺らいでしまった。

 そこで自らの勢力を確保し、ガルマン・ガミラスを挟み撃ちにすべく天の川銀河辺縁部の諸国家を懐柔ないし宗主権の奪取を以て断行した。だから地球周辺域にその影響が及ぶのが極めて遅く、一方で意気盛んなガルマン・ガミラス東部方面軍はボラー連邦の動きに反応する形で地球周辺域へと進出した。

 劇中で語られた時系列を全く無視しているが、これならば丸く収まるだろう。冒頭で時間軸の話が全くなかったことが、逆にストーリー後半で時間軸の話が出た際の歯止めにならなかったといえよう。

 端的に言えば失敗……。

 

 

 ボラー連邦は名称も含めて、どっからどう見てもソビエト社会主義共和国連邦。その徹底した圧政、中央の論理以外を全く無視した統治。主義という大正義のお題目と民族の性格という前提があればこそ、成立・継続ができる国家といえる。

 ヤマトⅢにおいてガルマン・ガミラスアメリカ的な性格を持たされ、武力で成し遂げようとしていた。一方でボラー連邦は同じくイデオロギーと実体と正義のはざまで存在を試される国家。彼らのその理想の実現は政治的な抑圧と軍事的な抑圧の同時抑圧だった。

 この妙にリアリティのある架空の国家は、確かにヤマトにただのドンパチSF以上の設定の重厚さを与えたと言える。

 うまく活かせたかは――ノーコメント。ノーコメントかどうかもノーコメント。