旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガルマン・ガミラス兵器群 2連3段空母――次世代型空母――

 

 2連3段空母はヤマトⅢの中でもかなり有名な戦闘艦であり、"ダゴン新鋭艦隊”、つまり第17空母艦隊の基幹戦力を担う大型空母である。赤い見たカラーリング、ちょっと懐かしい見た目の極めて特異で印象的な戦闘艦だ。

 今回はこの艦を考察したいと思う。

 

 

 ――データ――

 艦名等:不明
 全長:540メートル
 武装:回転速射砲塔4基、瞬間物質移送器
 搭載機数:不明

 搭載機種:雷撃機、重爆撃機、双胴戦闘機

 

 全体的に赤く塗られ、右舷側は艦首から艦尾にかけて飛行甲板部に白い矢印が記され、反対に左舷は艦尾から艦首にかけて白い矢印が伸びる。しかし、最先端部には直径50メートルの幾らかピンク色に塗られた円形がある。ここは瞬間物質移送器が埋め込まれ、一基ずつ発艦が可能となっている。艦尾にはそれぞれ左右に着艦用の飛行甲板が存在し、これは矩形ノズルエンジンの上部に設置されている。


 艦橋は戦闘空母のそれに近いが、かなり角ばった様子。最上甲板発進口より一段高まった部分から、更に一段高まった部分に艦橋が据えられている。幅はほぼ双胴戦闘機より一回り小さい程度か、他方で奥行きは恐らく重爆撃機と同様。
 艦橋内部は四角い大窓の左右に台形の大窓が近接。2メートルほど床からせりあがった中央通路の更に2メートルほど高まった部分に艦長席が堂々とそびえる。割と小さい椅子だし、床には3メートルほどの幅あるとはいえ手すりがないから危ない。艦長席後方、左右に階段かエスカレーターが付属し、昇降可能になっている。せりあがった中央通路によって左右に分けられ、オペレーターが2名ほど、大型モニターであるとか瞬間物質移送器操作盤を操る。

 海外ではTripple Twin-Deck Carrier〈Garumman〉と類別が大変ややこしい表現になっている。一方で艦名は威風堂々ガルマン。見合う活躍は出来なかったけど……。

 

 

 武装
 武装は極めて貧弱艦後方に設置された回転砲塔4基しかないのはいただけない。挙句、配置がかなりマズイのである。

 二門ずつ発射を鑑みると、遮蔽物が全くない為に艦首方向へは同時に8門を見込める。数的にはそれなりに有意義だろう。その一方、舷側方向は4門がせいぜい。角度を多少つければもう1門ぐらいは加勢できるかもしれないが……元々、大型艦の割に根本的に砲門数はが少ない。加えて、ガトランティス時代から遠距離砲戦には向かない傾向がある回転砲塔。

 この武装では近接戦闘以外にまるっきり何もできない。下手をすれば、自衛さえあやうい。かつての三段空母はこれの半分よりもっと短い全長であるが、長砲身砲を多数装備していた為に意外と攻撃力は馬鹿にならなかったが、2連3段空母は武装がダウングレードしてしまっている対空・対艦の両用砲として回転砲塔を採用したのは合理的な選択であろうが、であるならばより多くの武装が搭載可能になったはず。はずなのに、どうしてもっと武装を付けなかったのか……。
 このままだとむしろ的になるだけ、艦載機を危険にさらすだけに思われる。幾らダゴンが頭悪かったとしても、この艦をヤマトのすぐそばに送り込むなんて……

 

 

 全長の妥当性
 3/4弱が3段空母の部分であり、1/4強ほどが連結部及びエンジンブロックとなっている。連結の空白部は飛行甲板の1/3程を描写され、高さは三段空母部分の半分ほどを見込むが、艦橋がある為多少高くなる。

 幅は全長に対し1対3程でずんぐりむっくりではないが、取り立ててスマートというほどではない。3段空母の部分はかつての3段空母より長い模様であるが、カットによって印象が異なる。総合的に勘案すると、想定としては1.5倍程。連結部に張り出した砲台がある為、これが――ざっくり飛行甲板の半分ほどの長さがある。

 


 飛行甲板について雷撃機が3機横並びになっても十分左右に余裕がある――4機並べるとギリギリということ。重爆撃機だと、多少翼端が干渉してしまうため互い違いに並べる必要が有るが、それでも2機は並べられる。
 艦載機前提だと飛行甲板幅は60メートル前後で、両舷合わせて120メートルに艦中央の空白空間の幅を勘案すれば、全長との比率がざっくり1:3程度に収まるため齟齬はない。が、戦闘空母やヤマトとの比較だと――設定値と描写にかなり齟齬が生じる。設定値が少々大きいのである。


 つまり――艦の全長は妥当性が確保できているとは言い難いが、棄損しているほどでもない、微妙なライン。

 

 原作設定値より――100メートル近く縮小されると、ヤマトの原作設定値を基準とした値として描写に近い全長となる。ヤマトの原作設定値=機能部の描写をガン無視した場合における、ヴィジュアル的に妥当な設定値は400メートル程度……なのではないだろうか。という事。

 一方、ヤマトの再設定値――これを適用した場合、この空母は原作設定の全長が当たらずとも遠からずになる。妥当性を帯びる。さすがに540メートルだとヤマトより小型になってしまうため、620メートル程がざっくり想定可能だろう

  どっちみち100メートル近くの増減が生じる。だが、他の艦に比べればこの程度は誤差程度といっても構わないだろうガトランティスの超大型空母なんか、キロ単位で妥当性がずれていったのだから、それに比べればずっとマトモ。

 

 なお、発進口は片舷5つあるらしい。が、極めて矛盾なのが、少なくとも最上飛行甲板の発進口が雷撃機専用に限定されていること。だって1開口部の幅が雷撃機にジャストフィット。でも、最上飛行甲板の後部には重爆撃機や双発戦闘機が駐機中……

 これは飛行甲板の幅が60メートルであることが確認できるため、大変便利な描写なのだが……重爆撃機が発進できない。つっかえてしまう。もし重爆撃機や双発戦闘機を運用するならば確実にエレベーターが必要だし、多分あるのだろうが初登場時の描写と艦自体のスペックに重層的な違和感が生じてしまった

 

 

 

 艦載機運用能力
 双胴戦闘機は全長が18メートル、全幅が29メートルであるとされる。雷撃機は全長17メートル、全幅12メートル。重爆撃機は全長21メートル、全幅31メートル。
 第10話でガイデルがダゴンに披露した際は甲板上に雷撃機は左舷15機・右舷15機、重爆撃機は左舷10機、双胴戦闘機は右舷14機が駐機していた。これが3段を見込むと総計として雷撃機90機、重爆撃機30、双胴戦闘機42機の全体で162機であろう――と思ったのだが、どうも違う可能性があるらしい

 


 第11話でのシーン。これは非常に画期的でカッコいい描写だが、この存在のおかげで艦内を考察するうえではちょっとややこしい事になった。

 当該描写は、艦載機の武装補給に関するもので――右舷艦体に着艦した艦載機は内部にある自動給弾レーンに載せられ順次、左舷から発艦していく。着艦の様子から最上飛行甲板は雷撃機、中飛行甲板は重爆撃機、最下飛行甲板は双胴戦闘機の運用に絞っているらしい事が判る。

 じゃあ、第10話で何で駐機をお披露目をしたんだと突っ込みたくなる。しかも、一応右舷と左舷の艦尾にそれぞれ着艦用の甲板がエンジン部の上に設けられているというのだが……だったら何で前から着艦してるんだよ……。

 

 格納部分の話であるが――まさか円形の瞬間物質移送器搭載部にまで機体をのっけたまま運航するとは思えないし、本当ならば両サイドに擁壁がある部分までが格納庫であろう。となると、飛行甲板部の2/3弱が艦載機格納部と推定可能。この数値を勘案すると、初披露での駐機数の倍程度の範囲に収まるのが妥当なはず。

 つまり、これらの情報を総合的にアンアンすると、片舷のみの搭載であれば双胴戦闘機24機・重爆撃機20機・雷撃機30機、両舷搭載ならばその倍が妥当なライン。再設定値では、片舷搭載双胴戦闘機36機・重爆撃機30・雷撃機40で両舷搭載なら当然倍。これらの数値が最大に近い搭載機数といえるはずだ。

 

 原作設定値

 搭載機数:双胴戦闘機常用18+補用4(ないし常用36+補用8機)、重爆撃機常用15+補用4(ないし常用30+補用5機)、雷撃機常用25+補用4(ないし常用50+補用5機)/総数常用58+12機(ないし常用98+18機)
 搭載機種:双胴戦闘機、重爆機、雷撃機

 

 再設定値

 搭載機数:双胴戦闘機常用30+補用6(ないし常用65+補用7機)、重爆撃機常用25+補用5(ないし常用50+補用10機)、雷撃機常用35+補用5(ないし常用70+補用10機)/総数常用85+16機(ないし常用185+27機)
 搭載機種:双胴戦闘機、重爆機、雷撃機

 

 

 第一作に登場した3段空母のギリギリの搭載能力60機程度に比べれば、どの想定でもかなり有力な搭載機数を誇る。だが、あっちは200メートルでこっちは540メートルと図体に比べれば明らかに能力が低い。

 ガミラスの航空戦力に対する低い注力度からすれば、高い合理性を以て展開力を担保するこの艦は、能力的にいえば不足はないだろう。迅速な補給が出来れば、あるいは替えのパイロットが迅速に用意出来れば、これは大量に艦載機を保有するだけの空母よりよっぽど戦力になるのだから。

 

 ただ、ちょっとこけおどし感があるのは否めない

 

 

 

 運用・立ち位置
 航空戦力の基幹となる戦闘艦だろう。旗艦任務でも構わないが、出来れば艦載機運用だけに注力してほしい。だって、外観的にはあんまり指揮能力が高い艦には思われないから……

 

 空母としての立ち位置は、先進的な実験艦というところになるだろう

 発艦と着艦を艦体を分けて運用するため、かち合う事がない。つまるところ、余計な事故で艦や機体を喪失することはないだろう。これは有意義だし、艦載機を発進させ続ける上でアドバンテージになる。また、給弾が全自動であることは非常に特徴的で、背航空整備員の数を大きく減らすことが可能。

 この航空整備員は本来はパイロットと同数は確実に確保しておきたいのであるが、いかんせん人数が膨大。パイロットと合わせてしまうと、艦の居住スペースは容易にひっ迫してしまう。しかし、整備が極限まで自動化されていれば、整備員用居住スペースを別の用途に転用可能だし、集中力を欠いたうえで起きる不幸なミスも防げる。

 場合によってはこのスペースを自動給弾レーンに用いたのかもしれない。

 

 航空戦力は生身の人間に頼ると、大きなリソースを割かねばならない。だが、これを極限まで自動化できれば、その限りではないだろう。数的に足りない航空戦力の火力を補うには、効率の良い出撃と補給は大前提になるだろう。

 コンセプトはガミラス式の次世代空母数的不足を補えるほどの展開力と、人的リソースを圧迫しない自動化による整備。それでいて、長年運用してきて構造的な強みも弱点も理解している、無理のない設計を用いて安全・安定性の確保

 これらの要件をクリアするため、三段空母をベースとして発展的に設計変更を行った。ガミラスにあるありったけの自動化技術を投入して完成させた艦。

 というのが妥当な立ち位置と、建造の背景と説明できるのではないだろうか。

 


 これらの要件から通常の艦隊戦や征服事業の他、あまり人員を割けない辺境地域への侵攻及び警備にかなり役立つと見える

 艦の運航自体はどうやら、艦橋の規模とオペレーターの数からいって必要な頭数は多くはない。あとはパイロットだけだが、これはある程度縮小可能だろう。特に現代のような、リモート技術やAI技術の高い環境における想定では、もしかするとドローンという事になるかもしれない。ともあれ、パイロットも機械のサポートを受けるのだから、超絶技巧を一様に要求されることもないのだから、確保可能なはず。整備士も、自動化されてほとんどいらない。故に、艦の運用には空母としては非常に少ない人数で十分戦力として役に立つ事だろう。

 目立つし、威圧的だし、戦力として馬鹿にならない。この存在意義は大きいだろう。敵艦と直接の対決さえ行わなければ、という点は注意しなければならないが、ちょっと戦力的に不安の残る艦隊に配備すれば、総統の言葉通り「一層レベルアップされるはず」だろう

 モニター艦〈サーベラス〉に近いイメージだろうか。あの艦も、見た目はアレだが一応最新鋭だったし、配備された当初は戦力として(人員さえそろえば)決してバカにならないものだった。同時代的に世界的に見て、スペックとしては割とまともだった。

 2連3段空母も、これと同じ。

 


 一方で、実際に戦闘になった場合に要求されるのは、迅速な航空戦力の射出や再出撃の支援だろう。

 空襲の効果が不十分な場合における迅速な再出撃は死活問題であり、着艦と補給を迅速に行える2連3段空母は持って来いな存在。また、遠方からの攻撃や奇襲攻撃の際には瞬間物質移送器がいかんなく威力を発揮してくれる。

 ただ、 がっつりと敵と組み合う航空戦は戦闘空母や新3段空母らを前面に出してその火力で敵を排除させ、航空戦力を展開させ――2連3段空母はその脆弱性から後方に位置して指揮通信が中心となるだろう。これが安全。

 

 

 劇中の活躍
 第10話にて初登場、東部方面軍機動要塞の格納スペースで戦闘空母などの僚艦と共に画面に大写しになった。この艦はゲーレン艦長指揮のものであり、ダゴンが受領した後、ヤマト迎撃のために出撃する。同話中から、第17空母艦隊の基幹戦力としてヤマトを追い詰めたものの翌話で戦没。
 第16話の建国記念セレモニーで別艦がデスラーパレス上空を飛行し、再登場を果たした。が、それ以降の消息は不明。

 

 

 

 ヤマトⅢという作品はヤマトというコンテンツの仇花感が何となく臭う感じがするというのが私の見解。SFなのか冒険なのかが判然としないからこその良さと、はっきりしなさゆえのテンポの悪さや演出マターな展開――この二つが入り混じった結果として、評価が人によって大きくわかれる。

 その中において、この2連3段空母は合理性はそれなりに担保されているし、色々と見どころのある艦である。そうではあるのだが、細部に矛盾をはらんだ――どうにもおさまりの悪さを感じざるを得ない。この点、ヤマトⅢらしい艦とも表現できる。

 ストーリー展開上の必要性はない演出マターな登場なのだが、一方でガルマン・ガミラスの軍事力にリアリティを加える存在でもある。何に焦点を据えて評価するかによって、いかようにも評価が変わる戦闘艦、それが2連3段空母。