旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

地球連邦装備品 星間移民船とその計画(ヤマトⅢ)

 

 

 星間移民船はヤマト史上2度計画されて内、1度は途中まで使用。続旧作で1度実際、本格的な運用をなされた。しかし性能緒元がイマイチ示されず、その内容は不明である。今回はこの移民船をざっくり考察したいと思う。

 

 が、その前に地球の総人口の想定をしておかなければならない

 どうせ正確な事なんてわからないのでざっくりと、ね。

 

 

 総人口の推定

 以前、地球防衛軍の人員と質について考察したが、その際に地球の人口はスタートが何億人かによって、その後の変遷に影響が出るとした。

 つまり、多めに人口を見積もって80億人か、地球環境にある程度余裕を持たせて60億人。ガミラス戦役で遊星爆弾を――奇襲でなかったとしても直撃を受ければ10億人は第一波で消滅する。第二波ではさらに10億人、地下都市への非難が遅れれば遅れるだけ被害が大きくなる。

 第三波、仮に人口60億人から戦役がスタートした場合はこれが分かれ目であり、以降も襲撃を受けた場合は人口が20億人を下回る。

 

 さらに翌年、ガトランティス戦役。これはさらばにおいても、白色彗星の接近によって惑星表面があれだけ荒れたのだ――まず、スペースコロニーは大損害間違いなし。地球表面も海抜の低い地域や沿岸地域は水没してしまっただろう。しかも、白色彗星の反対側の地球表面は水面が下がっている可能性がある。つまり、ヤマトがガス帯を払った時点で反対側も大津波の被害を受ける。数億人単位で人命が失われたとしても不思議はない。

 ヤマト2の場合はさらに直接的で、超巨大戦艦が直接砲撃を行い地表を穴あきチーズにしてくれた。都市部はあまり被害に遭っていない可能性があるが、沿岸部に直撃すればそれだけで津波被害はあるだろう。内陸部であっても、直撃地点の周囲数キロから数百キロ圏内は地震が起きているに違いない。この場合も数億人単位で死者が出る。

 暗黒星団帝国の襲撃は、割合に局所的であり地球の人口比に影響をもたらすとは思えないが、それでも損害は損害。この幾らか後、ダゴンがぶっ放した惑星破壊ミサイルが太陽に直撃する。

 

 この時点の人口は一体どれだけだろうか。

 恐らく20億人前後ではないだろうか。ガミラスやガトランティスによる直接の被害だけではなく、地下都市への移動によって生じた事故であるとか、いざこざの最中の殺人など。地下都市の生活でも、特に長期化していたガミラス戦時では、各種の病気は発生していたはず。これも人口の維持には悪影響というほかない。

 つまるところ、やはり20億人をこえる数が残っているとは思えないこれを前提として、以下の考察・推察を行いたいと思う

 

 

 

 星間移民船(ヤマトⅢ)

 推定データ 
 全長:300メートル強

 全幅:70メートル程度
 乗員:100名程度
 収容人数:数万人 
 航続距離:1万5000光年

 武装:なし

 

  第2話でイメージ図として登場――ここから推測すると、船首は極めて扁平だが底部から上部にかけて通常の船のような断面傾斜がある。上面図としては非常に縦長で、上部に大型の半円状の突起がある。船尾は極めて扁平なひし形の断面と四角い上面図を有し、船尾終端に船橋がある。操舵室ないし司令室はこれもまた扁平な長方形。船首と船尾は細い連結部で結ばれ――全体が青に近い灰色、船首の先端が赤いカラーリング。

 第19話での登場で下地は黄色と判明。

 

 全長の推定・収容人数の推定

 全長は不明だが、ドックからして300メートル程度と思われる。また、300メートルを超える大型艦の建造を地球防衛軍は行ったことがない為、この辺りの数値が全長として妥当だろう。人類の切り札が人類初の超大型艦で航行テストもなしというのはヤバい。浮上できずに折れたら洒落にならん

 この船の幅は全長の約1/4程度であるから、70メートル程度と推定が可能。仮に全長をヤマトの再設定値と揃えた場合、620メートル程度となるだろう。

 明らかに推測するまでもなく収容力が小さい……。

 

 どこに何を収容するのかは全く不明であるが、船首に乗員を載せるという事になるだろう。つまり一方の船尾はエンジンと――その他物資を積みこむという事になるだろう。高さは幅の半分から半分強程度と、見られる。つまり容量はざっくり――

 70メートル×30メートル×120メートル

 8階ないし9階立てビルと同じ高さ、面積でいえばざっくり渋谷駅ぐらいか。或いは東京ドーム程度。まさか市民をすし詰めにはできないため、普通に東京ドームレベルの収容は第一層としてこれを2層、11万人程度は収容可能だろう。

 

 もう一度言うが、これは人数が少なすぎだろう

 確かに、トバ・カタストロフ理論が正しかったとして、7万年程度の極めて長い時間をかければ、ほんの数組の夫婦が生存していれば人類は70億以上にまで増えるのだ。

 だが、それは人類種の単なる生存の話。

 人類による組織的な星間移民は話が違う。人類種が生き残ればいいという話ではないのだ。仮に20億人だったとしても、約1万8182隻で一度の輸送か1000隻で18回。ヤマトに合わせても44万人がせいぜい。4546隻で一度の輸送か1000隻で4.5回の輸送。これは非常に手間だやって出来ない事ではないのだが、時間が怪しい

 

 輸送回数を低減するには、巨大すぎて元から不格好なのが際立ってしまうが――ヤマトに合わせた再設定値の倍の全長に再構成する必要があるだろう。この想定では移民船は全長1.24キロで収容人数も約176万人に及び、桁の違う輸送力を有する。

 これならば、1136隻を建造するか、200隻を建造して6回輸送すればいい。まあまあ地球の負担は減るだろう。

 

 

 航続距離の謎

 どうやらこの船は波動エンジンを主缶としては積んでいないらしい。或いは使用回数に限度があるらしい

 そうでなければ、航続距離に限界があるというのは、設定として矛盾が生じてしまう。まあ、ストーリー展開的には波動エンジンだろうが何だろうが航続距離に限界があった方が都合がいいのではあろうが……。

 

 1万5000光年という航続距離を考えれば、ワープが出来て当然であるため――このワープの為だけに波動エンジン積んでいるという事か。或いは、使用する燃料を星間物質ではなく通常の核燃料あたりを利用しているか。

 これらにどんなメリットがあるかといえば、正直メリットはないと思われる。仮に星間物質を取り込むためのインテークが必要で、それを削減して容量を確保したとあれば……端っから船体を大きくしておくべきだった。

 メリットのために波動エンジンの常時稼働を制限した、あるいはワープを制限したとするのはあまり妥当・合理的ではないだろう。小説版のようにワープには猛烈な身体的負担がかかるというのであれば別だろうが、アニメ版ではシートベルトナシは危険という程度。メリットのためでないとすれば……

 

 合理的な説明をするならば、波動エンジンの量産を行うためにダウングレードしたため使用に限界がある。だから通常航行に使用するには大きなリスクがある――そう頻繁に稼働していないため、インテークを設けるほどでもなく核燃料あたりを利用した。という事になるか。

 かなり後ろ向きな説明になってしまっているが……。

 

 

 この星間移民船はあまり具合のいいものではない

 無論、出来損ないではないし、数を集めれば十分利用可能。シンプルを極めた構造であり、明らかに建造は容易であるから、この点も利用価値は十分。

 ただもう少し船体を大型化する必要が有るだろう。このままでは船長の確保が苦しく、自身の船を見捨てさせる形で民間から徴募する必要に迫られ、不必要な不安定要素を内包してしまう。

 結局、この船は建造はされたものの――幸いというべきか、実際に出動することはなかった。

 

 

 

 星間移民計画の様相

 恐らく、はじめは1万5000光年の距離のみを前提にした運用だっただろう。理由は先に述べたように、個々のエンジン性能と量産体制の限界。

 割に狭い範囲内での移動であれば、ピストン輸送というのもある程度は可能なはず。仮に危険があったとしても、第二期の残存艦艇や新規建造艦を投入して濃密な輸送路を確保可能だろう。しかし、遠方になればなるほど往復に時間がかかってしまいそれだけ船の数が必要になる。道中の危険という不安定要素との遭遇もしやすくなる。

 出来るだけ地球に近くかつ、太陽の影響圏外。これが集団移民のベストなのは合理的といえるはず。アルファ星第4惑星やバーナード星第1惑星が不適当だったのは非常に痛かった……。

 

 移民計画の本格始動は第12話、人類滅亡まであと228日の段階。各探査艦隊が出動し、結果報告が入り始めたのが第14話人類滅亡まであと207日の時点である。更に第20話にても探査艦隊が調査続行している様子が映るが、この時点で人類滅亡まであと118日と迫る。そして最終回である第25話、地下都市の冷却装置を全力稼働させて10日、1/3まで落として1カ月がタイムリミットとされていた。

 これらのタイムスケジュールから考えて、最初の計画では100日程度を移民期間として見込んでいたとして妥当だろう。一方で組織立てて太陽の影響圏から脱出するのに最短で10日弱。

 だから順調に移民を成功させ、最後のグループを仮に1千隻=4億人(100隻なら4000万人)――別に数字は何でも構わないのだが、これを脱出させるのに必要な期間が10日弱という事になろうか。スケジュールとしては3日以内に移住先から地球に帰還し、2日以内に人類の乗り組みを完了させ、1日以内に太陽の影響圏を離脱して3日程度で移住先へ到着。

 これが期限、移民のラストチャンスであろう。劇中の描写と整合性は十分にとれる

 

 これらの想定が妥当であれば、移民船は最大で1日5000光年程度の速力という事になるだろう。移民計画の当初の予定からして――仮に10回に分けて移民を行うならば、乗り組みに20日、往路に30日、復路に30日で合計80日のある程度の猶予が10日とこれもまた整合性が取れる

 よって、描写から推測した収容力11万人想定だと2000隻、44万人想定だと500隻、最大の176万人想定ならば120隻もあれば十分という事になる。惑星発見まで時間がかかればそれだけ移民船の数を増やす必要に迫られ、早期発見が出来れば数は少なくても構わない

 どのみち、差し当たって火星か土星海王星当たりの惑星基地に退避する必要はあるだろうが。

 

 一方で、後期では明らかに計画の前提が変更される

 シャルバート星への通路(門)は惑星ファンタムやスカラゲック海峡星団からそうは離れていないはず。亜空間という不確定要素を含んだ上での話だが――あのヤマトでさえ、シャルバート星から太陽系まで46日かかる。そもそも、天の川銀河は直径10万光年であり、ガルマン・ガミラスとボラー連邦の境界ラインに位置していた惑星ファンタムは、明らかに地球から5万光年を超える距離にある

 これは移民船の航続距離をはるかに超える為、仮に踏破できたとしても帰還できる見込みは薄い為、船は使い捨てにせざるを得ないしかも、地球滅亡まであと118日と迫った上にいまだに惑星探査を全艦隊が続けていた

 いやいや、水曜どうでしょう班並みにスケジュールが破綻してる――事前の計画のままでは……

 

 の極めてタイトなスケジュールをこなすには、ほぼ確実にガルマン・ガミラスの協力が不可欠だろう

 連邦政府の動きを想定するならば、太陽異常増進の根本的原因を作ったダゴン将軍=ガルマン・ガミラスに責任を取らせ、一時的にせよ地球人を難民としてキャパシティのある惑星に避難させる。或いは、地球の移民船だけでは賄えない部分をガルマン・ガミラスの大型艦艇に収容させて猛烈なピストン輸送を行う。この計画を総統に承認してもらった――と言うような事前の取り決めなりをしなければ、移民は不可能だ。

 協力的な総統は当然として、多分波動砲の威力を知ればキーリングあたりも地球に与するのを承認するだろう。

 そうなれば、護衛はガルマン・ガミラス艦隊に任せて地球の全艦艇を輸送船として使用可能だし、ガルマン・ガミラスの影響圏周辺域ならばどれでも好きな惑星を選べた。実際、惑星ファンタムを推薦したのは総統だし。

 意外と、"ガルマン・ガミラスにおんぶにだっこ作戦”は未来が明るい

 

 つまるところ後半はヤマト・古代と総統の関係性と、一種の腐れ縁である地球とガミラスという関係性に大きく依存した計画に変遷したと説明できるだろう

 

 地球側としても当然、対症療法でしかないとしても――差し当たっては人類を地球から火星へと、火星基地のキャパシティの限界まで地球人を輸送しただろうし、点在するであろうスペースコロニーにも一時避難をさせただろう。これで出来るだけ地球から直接輸送しなければならない人数を減らしかつ、人類滅亡まで数日から数カ月の猶予を持たせることが可能。最低限この程度はやっておくべきだろう

 その間にヤマトが吉報をもたらしてくれれば幸いだし、本当に総統が地球人を難民認定してくれれば安全にガルマン・ガミラスの領内に一時滞在可能になる

 この難民キャンプを軸に数カ月から数年は人類は根無し草とはいえ十分生存できるようになるし、探査を続行して何ならアンドロメダ銀河さんかく座星雲大小マゼラン雲に足を延ばしたってかまわない。

 一応、人類の命脈をつなぐことだけは可能

 

 

  猛烈に危険な綱渡りになった移民計画。最初こそ、順当なタイムスケジュールではあったものの、移住先が見つからないという事態によってどんどんタイムスケジュールに遅れが発生し、地球単独では致命的な状態に至ってしまった。善後策を打ちようがなかった感もあるが、藤堂長官の若干の指導力の不足を感じる。実際、会議でも吊し上げをくらい、ヤマトに希望を託すほかなかった。

 

 幸いにもお人好しな総統の好意で、ガルマン・ガミラスの支援という一種の移住へのめどがついたものの、それでも人類延命策でしかなかった。ここまでくると、少々脆弱な能力の移民船についてはもはや語るべくもない。

 ルダ王女=マザーシャルバートの懐柔に成功し、ハイドロコスモジェン砲入手という僥倖が地球にもたらされた。これによって何とか首の皮一枚繋がったと言える。正直、移民計画は失敗だったと言わざるを得ない。