旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅱ 銀河系大戦拡大・地球に迫る戦火

 

 ひたすら「ダゴンめやりやがったな!」という展開が続くのが第2話以降の話。ダゴンがやらなくていい事をやり、やるべき事を散々後回しにした結果、彼の部下を含めた全員が重大な迷惑をこうむる。

 あのケツ割れ、迷惑至極な奴である。

 

 

 降って湧いたように発生したのがアルファケンタウリの植民地襲撃事件である。突然、偶然に近い形でダゴンに発見された第4惑星が対した理由もなく猛攻を受けた。

 非常に残念なのが、この時の防衛司令部の対応。 

 度重なる惑星破壊ミサイルの飛来――"何か”のせいで地球が、天の川銀河がヤバい事になっている事を身を以て知っているはずなのにもかかわらず、アルファケンタウリ方面に事前に戦闘艦隊を派遣していなかったのだ

 第4惑星自体が基地としてあまり機能しがたいのは仕方がないが、当該方面は太陽系にとっては前庭のようなもの。天の川銀河における戦乱が発生した場合は確実に最初に狙われるのがこの地域だ。反対に、天の川銀河以外からの外敵の襲来に際しては一旦人類を避難させ態勢を整える為にも利用可能。

 アルファケンタウリの植民地は、人類が住み繁栄させるには非常に困難で恒久的な植民地としてはコスパが悪いだが、だからといって防波堤なのだからそう簡単に手放せるようなものではない。まして戦乱が目の前に迫っているのだからここの警戒は差し当たって厚くすべき。

 それにもかかわらず、防衛司令部はあらかじめ戦闘艦隊を派遣することを行わなかった。あの惑星では大艦隊を養うのは難しいだろうが、維持できない部分は“輸血”して何とかしても良かったはず。それをしないで、後であたふたするというのは非合理的と言わざるを得ない。

 幾ら戦闘衛星を多数配備して必要に応じて集結させた判断は良かった。太陽系圏内にある艦隊を即応体制にしていたのもポイントが高い。だが、そもそも艦隊を派遣しておいた方が被害が少なく済んだはずだろうし、不必要に当該地の民間人の命を危険にさらしたという点で非常に問題。

 ある意味では職務放棄に近いと言わざるを得ないだろう藤堂長官、アンタ一体なにしとんのや……

 

 この戦闘は、戦闘そのものには、合理的な部分が多いが、しかしながらあの劣勢。だったら端っから艦隊を派遣しておくべきだったのである。

 幸いなことにラム艦長率いるバース星守備艦隊が、地球防衛軍惑星パトロール艦隊の任務を偶然にも肩代わりしてくれたおかげで被害は致命的にならずに済んだ。

 

 

 

 アルプス上空戦第3話の話であるが――これはこれで恐ろしい。

 突然ワープアウトしてきたダゴン艦隊所属の駆逐艦が威力偵察を強行してきた。しかも、可能であれば一部を占領しようという意図さえ見えていたのである

 この時点で100パーセント、時間の猶予など無い。そうである以上即刻撃ち落す判断をしたのはすっぱりして気持ちのいいものだし、実際的に脅威だったのだから撃ち落しても当然だった、最悪だったのが連邦政府に対して事前にせよ事後にせよ報告しようという努力をした形跡が見られないという点である。

 防衛司令部……先のアルファケンタウリでの一件も含めて、事前に連邦政府、特に大統領に知らせていたとは思えない

 だってさ、どう見ても平時な地球において、事前に取り決めが無いという事が前提になるが、所属不明の不審艦への対処は一旦政治マターとなるのが普通でしょう。政治判断の後、対処する。それが藤堂長官の判断で撃墜もとい撃沈に至った。アルファケンタウリの一件に比べれば頼もしい判断であるが、シビリアンコントロール的にはマズイ。

 更に、連邦政府のその後の動きを見れば……アルファケンタウリもアルプス上空戦もどちらも事後報告をしたとも思えない。連邦政府はボーっと大した動きを見せていないのである。つまり、他国との戦闘が発生したのにもかかわらず、完全に防衛司令部内ですべてが完結してしまっている

 これはシビリアンコントロール的に最低の状況ストーリ-展開的には非常にテンポが良かったが、振り返ってみれば……この一連の流れを当たり前のように描写したのはまずかったと思う。

 

 

 

 ラジェンドラ号の海王星寄港これはアルプス上空戦と同様に、全体としては素直なストーリー展開である。が、細部にご都合主義と言わざるを得ない展開があった。

 第一として、隣接地域であるからワープでうっかり太陽系に到達するのはある意味仕方がない。これ以前のヤマトの描写としてもそんなに齟齬はない。また、ラジェンドラ号が大損害を負っている状況では、ラム艦長としてもあれ以外の動きようがなかっただろう。更に合理的な説明を加えるならば、アルファケンタウリ周辺の植民地を持っているのは常識的に考えれば地球――であるとすれば、敵の敵は味方として友好的な態度が期待できた。だから思い切って最低限の補修を要請した。

 地球側も、ある意味でアルファ星第4惑星の援軍をはからずも買って出てくれたバース星守備艦隊の旗艦――という点まで認識していなかった節があるが、敵意のない瀕死の艦を見捨てるという非人道的で、現状存在する全ての勢力を敵に回しかねない行動よりも、せめてラジェンドラ号の所属勢力ぐらいは友好関係を築くきっかけになれば、これは幸い。

 ゆえに、このラジェンドラ号周りの行動はラム艦長も地球側も含めて不自然・不思議はない。何ならダゴンもアイツの性格から言って、いきなり海王星に攻撃をしなかった=常識的な行動が出来ただけ褒めてあげるべき。

 

 たださ、地球を守るという点において防衛司令部……不作為すぎないか?

 ラジェンドラ号の不可抗力的な太陽系突入――そう言う事があり得るという事は、太陽系に所属不明の艦が接近してきても何ら不思議はないという危険な状況という事が頻出しているという事。実際、どうやら土星でも同様のアクシデントが起きていた模様しかしながら防衛司令部はそのいづれの事例も確認できていない節がある

 だから……どうして防衛司令部は太陽系の守りを固めなかったなぜに頑なに守りを固めない挙句、警戒網すらザルだった。お前ら、惑星破壊ミサイルの進入から今日まで一体何をしていたんだよ。お前ら何のために存在している組織なんだよ

 と、そこに話が戻る。大統領権限がガトランティス戦役後やウラリア戦役後に強化され、シビリアンコントロールがシビアになったという説明もできなくはないが、だったらたった一言でも長官が対応に苦慮するセリフを、大統領が開戦を渋るセリフを挿入すべきだった。

 

 

 そして――最後の最後でなぜか我慢できなかったダゴン君さ、何で第11番惑星域で戦闘を始めてしまうかね

 古代君の直情的な性格も地球が戦争に巻き込まれる要因になった感もあるが主因としてはこのダゴンという男の存在が、地球を無理やり銀河系大戦に引きずり込んだともいえる

 ダゴンの恐ろしさは、終始一貫した目論見の甘さであるこの性質は彼我にとっての脅威であり、敵にとっては無駄な戦闘に巻き込まれ、味方にとっては敗北必至な戦闘に投入され敵にとっては意味不明な攻撃にさらされるという事

 だって明らかに十分な火力を備えていると見た目からわかる宇宙戦艦相手にどうして……しかも航空戦力を含んだ戦力なのである。戦闘の直前とはいえ、事前に近い形でヤマトの手札が見えていた――どうも、味方にとって苦しい相手という事がわかってしまったのである。

 これに対して見切り発車的に攻撃を加えるというダゴンの判断。全く合理的ではない。それに、あのアルプス上空で消息を絶った駆逐艦――あれ探さなかったのかい? ダゴンよ……。

 

 

 このダゴンという男――それにしても愚鈍だ。全部余計な事をしてくれる。

 政治家なら松岡洋右とか軍人なら牟田口廉也やカスター将軍みたいな感じか。徹頭徹尾、都合のいい行動をし、9割方やらなくていい事をやりくさって、たまに合理的な事をして逆に面食らう。運とおもねりと部下の頑張りで何でか結構高官に上り詰めるという厄介さもそこへ加わる……歴史上にも実生活上もそんなに数は多くないが、いないわけでは無い存在

 このダゴンというキャラクターの行動という前提が、各種の無理やりな戦闘のきっかけ=ご都合主義に一定程度「ダゴンだから」という希釈された合理性を担保する

 ヤマトⅢの導入部は実はダゴンを中心として回っていたと言っても過言ではない。彼が居なければヤマトⅢは始まらないし、彼が居ればこそ完全無欠のご都合主義が概ね撤廃されるのだ。

 

 ダゴンに始まりダゴンに終わる。ダゴンによって担保されるのが、ヤマトⅢの導入部である。何とも都合のいいキャラを作ってくれたよ製作陣