ストーリー考察Ⅸ 太陽制御失敗――壮烈・フラウスキー少佐の死!――
黒田博士の残念な太陽冷却計画に比べ、フラウスキー少佐の太陽制御計画は素人目に見てもかなり筋の通った内容だったはず。しかし、失敗してしまった。
ご都合主義というか、ストーリー展開上は当然ここで失敗しなければならないのだが、それを言ったらおしまいなのだが、結論ありきの展開を擁護だの合理的な説明などしたくはないのだが……
だが、しかし、まるで全然説明をこじつけられないレベルではない! ように思われる。
初っ端からこじつけって暴露してしまったが――今回はフラウスキー少佐の太陽制御計画を考察したいと思う。第18話。
太陽異常増進
なぜ人類にとって破滅的なこの現象が起きてしまったのか、その原因を考えなければならない。いや、直接の原因はダゴンがぶっ放した惑星破壊ミサイルのせいだ。それは分かっている。その話ではなく、なぜ太陽の燃焼が異常増進したのか、そのメカニズムの話だ。ダゴンが使用したミサイルは一応プロトンミサイルの類とされている。
ここを読み解いておかないと、起きた現象の想定のしようがない。
つまり、予想される燃焼異常増進が起きたメカニズムは――命中したプロトンミサイルが核に突入、各内部の水素が陽子と結合し瞬間的に重水素を、その重水素が更に陽子と結合=水素を大量消費してヘリウム3を大量に形成する。
この急速な反応により水素の量が核において、局所的ないし全域に欠乏。欠乏した事により周辺のヘリウムを核融合燃料として活動を続行する。
ただ、通常の水素核融合中だった太陽は核周辺に核融合を安定させるだけのヘリウム量があるとは思えない。仮にプロトンミサイルがもたらしたヘリウム生成量が不十分という重ねての不幸が生じた場合……急激な上に不完全なヘリウム核融合への移行が行われたと言える。
核が水素核融合が中途半端になって不安定化、ヘリウムの集積が中途半端で燃料供給が不安定。この水素核融合に戻ることも、ヘリウム核融合で安定することもできないような終点の見えない変化が、核の収縮が不全・重力の減衰をもたらす。核の不安定化、特に重力の減衰が相対的にせよ発生したならば、恒星の対流層における燃焼と膨張を抑えることは不可能になるだろう。だろうというより、確実。
これは太陽にとってはさほど、危機的な状況ではないが、人類にとっては温度が2度や3度は兵器に上昇してしまうからこれは地獄。
現象として、太陽が一気に大幅に年を取ったようなもので、取り返しがつかない。その反面、現象が落ち着いたのちは人類にとっては非常に長い間再びの安定期が訪れる事が見込まれる。ただ、落ち着くまでの間は人類は急激な地球地表面の温度上昇に対応せざるを得なくなる。対応不可能なほどの温度上昇だが。
といった事が想定可能。
或いは、汲み上げ効果が強制的に引き起こされたのか。
惑星破壊ミサイルは明らかに普通のミサイルとは異なり、容易には爆発しないはず。この強力なミサイルが、恒星表面の対流層を引きずって内部まで到達、挙句爆発して磁場を乱して本来太陽の質量では起きないはずの現象を数々引き起こしてしまった。
正確にいえば汲み上げ効果とは全く別物なのだが、形式として構造として類似しているため、汲み上げ効果と表現した。
この現象においては当然、一部の対流層は元来起きない核融合の影響で燃焼し膨張するだろう。内部への新物質の流入や磁場の乱れで一時的に重力が弱まり収縮が膨張に抗えなかったのかもしれない。局所的であっても、質量に偏りが生じてしまえば――当然重力も偏りが生じるだろう、磁場も思いっきり乱れるだろう。
そうなれば、核で生じた重力が対流層の燃焼・膨張が制御できる道理など無い。
割と強調したいのは、核には十分な量の水素が残っていたという点。残っていたのだが、対流層が核融合し得る圧力と熱を持った層まで到達してしまった為に、その流入量分の不測の核融合と燃焼が発生、膨張してしまった。
一つだけで説明する必要は無く、いくつかの要因が重なることで太陽が膨張してしまった。と言うような流れの話。前述の想定の場合は太陽が強制的に老化させられてしまったが、こちらは別に老化したわけでは無く、ただ単に火に油を注がれただけで核のヘリウム核融合の段階迄は至っていないとみていい。
何が一番妥当なのか、正直……文系でも頭の悪い方の私にはわかりかねる。ちゃんとした経過や推定は、ガチの天文系の方の考察を願いたい。
フラウスキー少佐の太陽制御計画
これは黒田博士の計画より明らかに見込みがあった。これはフラウスキー少佐の計画を読み解けば簡単にわかる事だが、それ以前に――基本的な傾向として、ガルマン・ガミラスは太陽を制御できると思っていた節がある。
例えばダゴンやガイデルは、恐らく太陽の核融合異常増進を観測できたであろうはずなのに、地球占領をもくろんだ。総統の別荘にでもと思っていたらしく、それを考えれば太陽ぐらい制御出来るというのがガルマン・ガミラスの統一見解なのだろう。
フラウスキー少佐の計画だが――真田さんの確認、藤堂長官が大統領に報告した内容によれば、第一段階としてアステロイドベルトで岩塊を採取し、他方で磁気シールドを展開して放射熱をシャットアウト。
第二段階としてアステロイド岩塊を水星軌道まで誘導した後、スイングバイあるいは十分な助走を以て加速させて太陽へ発射、黒点から内部へ突入させる。岩塊突入後、太陽内部のヘリウムが噴出する直前に太陽核融合プラズマ制御装置を搭載したプロトンミサイルを突入させ反応を制御する。
プランは描写の読み解き方によって二通りあるが――
①:ヘリウム核融合の安定化
恐らく、フラウスキー少佐は太陽の核の中にはすでに水素はないと判断したのだろう。故に、もはや水素の核への投入などという時間を巻き戻すような方法は取れない。だから、あくまで核のヘリウム核融合の早期安定化に努めた方が太陽制御がしやすい。
最も簡単で確実な方法をとるべきだ、そう考えた。
合理的な判断だろう。
太陽の核の状態が判断しがたい為、水素を核に投入して効果があるかは不明。仮に投入出来たとして安定化までに時間がかかってしまっては地球人類は死滅してしまう。
だから、現在進行中のヘリウム核融合を促進させ、核を安定化することで恒星表面の燃焼による膨張を制御できる重力を核に取り戻させる。核が安定せず、核の重力が弱いから、恒星が膨張してしまう。だから適切な核の重力を取り戻させることで、恒星自身に膨張をやめさせる。
肝心なのはプラズマ制御を行う事で、これで核融合を管理下に置く。プラズマ制御装置付きのプロトンミサイルとはいえ、そう簡単に核に到達できるとは限らないし、急速な反応の結果ゆえに十分なヘリウム層が確保できていない可能性も考えられる。
故にアステロイド岩塊を用いて先に突入させることでプロトンミサイルが独力で重力や圧力を突破する負担を軽減させ、かつ核に燃料補給を行う。これでプロトンミサイルが安全に核へと突入し、懸念されたヘリウム不足も解消可能。そしてプラズマ制御装置で核融合を――仮に過剰であれば、これを抑制。低いレベルで推移すれば、これを刺激して促進させる。そうして核の安定化を目指す。
単純明快というか、非常に分かりやすい。要件として設定する必要が有るのは岩塊の性質で、上部マントル起源の物質や長期間太陽風にさらされた岩塊などのヘリウムを多く含む岩塊である必要が有る。
微妙に齟齬が出るのが、岩塊を突入させる方向を調整すれば、全球的な変化が生じるのでない限り、磁気シールドを展開する必要が有ったのか、多少疑問。仮に内部の燃えた状態のヘリウムが外部へ噴出しても、太陽嵐が周囲にもたらされたとしても、地球に直撃しなければ問題ないのであり、わざわざシールドを展開するほどの事かといえば……多少疑問。
②:核への水素注入による水素再核融合
プロトンミサイルに岩塊を纏わせていた。この部分に着目すると――この岩塊は恐らく、核に何としても注入したい水素の材料と推測できる。
まず、蛇紋岩などの水の作用を受けて内部が水素を含有する岩石(蛇紋岩の場合は、かんらん岩内のカンラン石が水と作用してできる)。そもそもケイ酸塩は化学式でいえばSi(OH)₄で水酸基(OH)をもろに含んでいる。その系統の鉱物は結局のところ何らかの形で水素を含んでいると言えるだろう。或いは2015年に東大の研究者がスティショフ石中に水素原子が中性な形(H⁰)で存在する――後からもぐりこんできた中性水素原子をこの石がキャッチする――可能性を示した。
結論から言えば、石の中には水素が含まれているという事。ヘリウム以上に簡単に見つかる。フラウスキー少佐はこれを利用したんじゃなかろうかと、説明が可能だ。放映当時も十分、蛇紋岩の生成過程は知られていただろうから、石の中に水素があると判った上での描写・設定は可能なはず。
岩塊を突入させる、その過程で太陽自身のパワーを以て岩塊を分解し、水素を取り出す。太陽の猛烈な圧力をもってすれば容易に分離できるだろう、これが第一段階。太陽の内部まで岩塊付き惑星破壊ミサイルが到達できれば、やって出来ない事はないはずだ。喪失した物質を再度投入するのだから確実に一時的とはいえ核は不安定化し、重力が小さくなる事は確実だが、これをプラズマ制御装置を以て反応の規模を誘導――そして水素再核融合を促進・安定化。これが完了すれば、次第に太陽の膨張が収まるはず。
若干時間がかかる可能性があるし、磁気シールドを展開して一時的な膨張による地球への熱の到達を阻止しなければならないため、少々難しい。
描写からすれば多分こちらの可能性が高い――気がする。
モニターの図解に加えて、一時的な太陽エネルギーの強烈な放射を防ぐためのシールドを展開したが――水素注入の際の一時的な重力の縮小に対応するためと説明できる。
初めから安定化を目的とし、核或いは核層にヘリウムないしその材料の投入を行う計画ではこのシールドの必要性は薄く、作戦開始と同時に燃焼・膨張の鈍化が期待できる。反応が大きければ大きいほど、スピードが速ければ早いほど早期縮小が見込める。
妥当性を持たせるには、恐らく核を一時的に不安定にさせてしまう水素投入の方が整合性確保が容易だろう。効率がいいかは微妙なラインだが。
失敗の理由――前提――
多分、着弾したミサイルの本数が判らなかったのではないだろうか。また、地球の示したデータが信用できなかった。核の状態把握や恒星表面の観測に何らかの不備があり、実際と大きな齟齬があった。
これらの理由があって、取るべきではない作戦を採用してしまい失敗してしまった。そう説明できるだろう。
ダゴンの事だから、多分というか確実に何本惑星破壊ミサイルを使ったか、という事までは報告しても何本着弾したかについては報告していなかっただろう。気にも留めていなかっただろう。ガイデルの東部方面司令部の体質からして、これは妥当な推測。
だって、第11番惑星のあれほどまでに無様な戦いぶり――普通はダゴンは降格だ。なのに、その地位にあり続けたという事は、ダゴンが大本営発表ばりの戦闘内容を報告していたに違いない。きっと、記録映像も編集したのだろう。演習の時に取った記録とかも使って。
その程度で、隠蔽できる失態。裏を返せばその程度も見破れないガバガバ査定。そんな部隊じゃ、正確なミサイルの遺失本数など判るはずもない。
もし、フラウスキー少佐が着弾したミサイルを多く勘定していた場合は――これは惑星破壊ミサイルの効果を過大評価してしまっていても不思議はない。反応するミサイルとそれに伴う反応現象は、当然の事ながらミサイルの本数に依存するはずだ。実際より多くの本数を想定したならば、核の水素残量は実際より少なく計算されてしまう。逆の想定をしたならば、当然に推定結果は逆になる。
間違った想定の元にはじき出した、正しい数値では数値上正しくとも実際には正しくない数値。その数値を用いて決行した作戦は、偶然が奇跡的に起きない限りは当然失敗するだろう。
思い出すべきはガミラス時代。
バラン星で運用していた人工太陽。これは、その距離からしてたとえ遮熱シールドを展開していたとしても、元々非常に小さく温度が低かったと考えられる。多分、あれは赤色矮星かそのあたり。つまり、理論はおおむね共通しているとはいえ、本物の太陽とはモノが異なり、勝手は違うだろう――が、実際に太陽を目にするまではどの想定も確実では無かった。
ガミラスは質量の小さい恒星の制御の経験はあった。しかしその経験に依存してしまった結果、予想より質量が大きかったか大きくなった太陽の制御に失敗してしまった。という事か。
どちらにせよ、これらは太陽表面の物質の傾向などが正確に観測できれば避けられたかもしれない事案だ。しかし、失敗してしまった。
その観測失敗の理由は――
フラウスキー少佐からしてみれば、地球側が示したデータを信用する可能性は低い。地質学のプロ:ヘルマイヤー少佐の行動からして、ガルマン・ガミラスの科学者は唯物史観的な、自分の目で見るまでは判断しないタイプの人が多いと言える。
まして、サイモン教授を政治的なパワーを使って追放した黒田博士の報告や、その追放を容認した連邦大学の天文台の報告など――一般人から見ても怪しい。フラウスキー少佐は、そんな報告書を丸のみするほど愚かというか、お人好しな人物ではないだろう。それが、まずかったかもしれない。
例えば、日本のように性善説を旨とする人であれば、どんなに統計だのにインチキを加え書類を改ざんする政権の報告であったとしても、命にかかわる事柄であればまさか隠蔽や改ざんはあり得ないだろうという判断を下す。
データのとり方とかを気にする真面目な人は、それでも話半分程度には信用するだろう。しかしながら、これは先に述べたように性善説だし、同族だからこその面も大きい。全く知らない、まして国や民族の違う集団が出したデータの場合、その信用度は……どんな評価を受けるだろうか?
だとすれば、フラウスキー少佐が地球側が示したデータを笑顔ですべて却下したとしても不思議はない。地球人とガミラス人のメンタルはさほど際はないし、似たような判断をしたとしても不思議はないだろうし、もっと言えば彼には地球側の報告を却下する権利がある。
ただ、それが間違った結果を生んだ可能性は否めない。仮に、たまたまフラウスキー少佐が観測をした部分やそのタイミングではヘリウム核融合が安定していないことを示していたかもしれない――可能性として、全くのご都合主義とは言えない展開だ。
失敗の理由――現象――
フラウスキー少佐の太陽制御計画とその後の太陽の反応を考えると、ひょっとして異常増進の正体は、強制的な汲み上げ効果的な作用によるものではなかったのだろうか。一時的な質量と磁場の偏りと、これらに伴う重力と膨張の不均衡。
本当は比較的短期で現象が収束した可能性があるものだったのかもしれない。人類にとっては非常に長いスパンだが、宇宙規模でいえば割と短いと言える。
だとすれば、フラウスキー少佐の太陽制御計画は、安定化に向かいつつあった太陽を、核の水素融合をまさに異常増進させてしまい急速に核が燃料を使い果たし、本当にヘリウム核融合に移行。その過程で再び異常増進してしまった。
という事になるだろう。完全にやるべきことの正反対をしてしまった。
現象を整理すると――ミサイルの太陽突入直後は温度が下がったし、太陽の大きさも元に戻ったが直後に、計画前よりも大きく膨張し、高温になってしまった。
これは、核に燃料が投入された事によって、核融合が進むことで収縮が急速に深化、だから膨張を一気に抑えるだけの重力が核に発生した。しかし、元々安定化傾向にあった核にわざわざ燃料投入したことで、実際活強制的に異常増進させてしまい――そうなれば当然、核の水素はなくなる。水素がなくなったらヘリウム核融合に移行するし、一時的に核の縮小傾向は小さくなり、しかし対流層などでの燃焼は維持されているのだから膨張してしまう。
ヘリウム核融合が安定化するまでは、そう時間はかからないはずだが、人類にとっては非常に長い期間であり、結果的に失敗という事になってしまった。
リトライの可能性
もう一度フラウスキー少佐が同じ計画を発動すれば、成功の見込みはあるだろう。フラウスキー少佐が想定した状態に太陽が変化したのだから、むしろ最初の状態よりも制御は簡単なはず。
しかし、前身国家であるガミラスと地球の関係や、一度大失敗をしてしまったという事実を鑑みれば、リトライのチャンスはないといっていいだろう。
地球連邦の現場指揮官たちがそれを容認したとしても、200年経っても200年前から進歩していない地球人類の事だから、不必要なまでにヒステリックに騒ぎ立てて、フラウスキー少佐への責任追及やガルマン・ガミラスの排除が世論の主流になるだろう。それが世論だとすれば、地球連邦の首相や大統領も逆らうのは難しい。仮に二人が政治家として低レベルであれば、元来政治家はプロであって市民を説得するのも一つの仕事であり能力なのだが……多分、あの二人だと無理。
結局、首相と大統領のどちらが上か未だに判然としないし。ガトランティス戦役の時もそうだったが、議会があるのかないのか、責任内閣制なのかどうなのか、大統領は儀礼的存在なのか実際的な統治者なのか、わからない。そりゃ最終的な命令権者は大統領なんだろうけどさ。
緊急時は多分大統領が指揮を執るのだろうが平時は全く不明瞭。地球のこの中途半端な体制を見てしまえば、フラウスキー少佐が何となく地球のレベルを下に見たとしても、わからないではない。
エピソードラストで判る様に、そもそもリトライの決定的に必要な要件が欠けてしまうゆえに、永遠に叶わない想定だが。
最期
先ほどから述べているように、前提条件がずれてしまっては完璧な作戦もうまくはいかない。
太陽の制御は一時的に成功したものの、しかし直後に温度は再上昇し以前の状態よりも事態は悪化してしまう。整合性を取るならば、人間の物差しからすれば悪化していた状態(そりゃ視直径2.5倍じゃねぇ。…。)だが、実際は安定化傾向に向かっていた太陽を、強制的に状態を変化させたのだから、無理が生じるのは当然だろう。
安定化傾向を不安定にさせてしまった。恒星の一生を一段階、前進させてしまったようなもの。地球人類にとってはまずい状況。
磁気シールドを突破するほどのプロミネンスとコロナが目前に迫り、急速転舵でこれを離脱する工作船団。
しかし、フラウスキー少佐は帝国の威信を背負った計画の失敗を重く受け止めていた。非常に責任を感じていた。だから彼はその責任を身をもってとるべく、その場にとどまることを決意する。そして彼は総員を退艦させた後、進路を反転し太陽に突っ込んでいった。
太陽の熱が迫る中、必死に真田さんがフ脱出するよう少佐の説得を試みる。
実際、色んな意味で真田さんの言う通り、不可抗力であったが――その説得もむなしく。総統へのある種の詫びと、古代への謝罪、そして「私も美しく甦った地球をこの目で見たかった」という最期の言葉。
あまりにも責任感が強すぎる。構図から言えば、ヤマト2のアンドロメダと共に都市帝国に突入した土方総司令にも似た壮烈さ。
滅びの美学というべきか――是としがたい行動だが、しかしながら否とするにはあまりに惜しく、潔い最期であった。ガミラス軍人ここにあり、という奴である。
太陽制御失敗は詳細に検討すれば、別にご都合主義というほどの内容ではない、これは保証できる。
しかしながら古代君の自然はすごいんだ、人間は及ばないんだと言うような説教のせいで演出マターなエピソードであることがはっきりと分かった。そのため、せっかくのそれなり存在していたストーリー展開の妥当性も、質が徹底的に下がってしまったと言える。
それに、フラウスキー少佐が前提の設定をミスっただけであり、修正を加えれば十分機能するはずの計画である。本音を言えば人間がちっぽけな存在という点は同意できるが――だからといって制御できそうなものも、古代のセリフにあったように自然凄いや宇宙凄いで片付けるのはどうかと思う。そりゃ売り言葉に買い言葉で総統も宇宙制覇を宣言するって。おかげでエピソードラストのしんみりした雰囲気が台無し。
ご都合主義的展開や、偏見じみたユートピア思想など、ヤマトⅢらしい要素がぶち込まれたエピソードといえる。移民本部オペレーターのセリフにあるが、「やはり」って何だよ……失敗前提かって。このセリフを必要と判断して挿入してしまうという製作陣の意識とは……ヤマトⅢの深層における残念さが表出した事例と言えるかもしれない。
唯一救いになるのは、雪がお悔やみの言葉を述べた事。それに加え、責任を取った人間にはそれ以上の責めを負わせないガミラス時代からの伝統が今も残っていることが見えた。
この一連の描写は、これはヤマトシリーズの世界観を堅持した描写としていえ、大変素晴らしい。ここは手放しで評価したいと思う。