旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅹlll シャルバート星到達――さらばルダ王女――

 

 スカラゲック海峡星団域で激闘を演じたヤマト

 激戦を切り抜けたものの、地球人類を救う見込みはない――しかし、ルダ王女はシャルバートへの道を示してくれた。この一縷の望みに、ヤマトは賭ける。第24話の話である。

 

 

 

 あらすじは――

 星に偽装した亜空間ゲートを通りシャルバート星へ到達したヤマト、これを追って来た総統。両者はシャルバート星の今の姿を前に、それまでの誤解を解き和解するに至った。

 そこへ、総統を追って突入してきたゴルサコフ艦隊。シャルバート星を作戦圏内に収めると同時に艦隊、艦載機隊を前進させ惑星表面および展開中のデスラー親衛艦隊へ猛烈な攻撃を加えた。

 

 ヤマトはコスモタイガー隊を繰り出し、ボラー艦載機群を迎撃。古代ら上陸中のクルーもまたボラー降下兵を迎撃、シャルバート星防衛のために戦闘を開始した。しかしシャルバート人が戦う事はなく、ただ運命に身を任せるのみ。

 そこには一切の武器を封印し一切の争いを追放した、いわば不戦の誓いを立てたシャルバート星の信念が働いていたのである。

 

 この腹立たしくもいじらしい平和への徹底追及に感銘を受ける古代。

 他方、古代の姿今までの航海、揚羽武。ルダ王女もまた地球人から一種の感銘を受けていた。だからこそ彼女は、かつて封印した超兵器をヤマトに託すことを決意した。

 天の川銀河で唯一、太陽制御が可能なハイドロコスモジェン砲。これを受領するヤマト、人類の明日への希望が蜘蛛の糸で繋がったのである。だが、一方で揚羽はシャルバート星の王女であり次のマザーシャルバートであるルダ王女と別れなければならなかった……。

 と言うような話

 

 

 牧歌的な、しかし優雅でもあるシャルバート星。大切なルダ王女を奪還・護送してくれた事に対しシャルバート星はヤマトクルーを最大限の敬意を感謝を以て迎える。

 そんな彼らに対し――なんと土門が、シャルバート星を第2の地球として占領しようというヤベェ提案をするシーンがこのエピソードの見どころ。

 しかも、古代まで同じ事を考えていたのだから恐ろしい。お前ら修業が足りんぞ……。まあ、いわゆる魔が差したという奴であり、直ぐに考えを改めるからまあいいか。

 

 

 そこへ総統がシャルバート上空に艦隊を率いて現れる。

 シャルバート星といえば、かつて天の川銀河を統べた宇宙最強のシャルバート帝国の本拠地。全宇宙に広がる強力な一神教であるシャルバート教の総本山である――総統はてっきり超近代都市が広がっているかと思ったのだが、時代の隔たりを考えても面影ぐらいあると思ったのだが……一切ない

 これはさすがの総統も相当に驚いたらしく、更に傍に控えるタランもシャルバート星のあり様にあっけにとられた。

 確かに、聞いていた話と大分違うものね

 

 古代とのやり取りの中で、シャルバート星は戦いを放棄し、どうも実際に武器らしい武器を全て抹殺したという事が判明する。シャルバート星は今現在、丸腰なのであると。

 デスラー総統は丸腰の相手を攻撃するほど、野暮な男ではない

 デスラー総統はあくまで天の川銀河最強の軍事国家シャルバート帝国、その首都星たるシャルバート星を懸念していたのであって、その面影刷らない牧歌的な田舎惑星に過ぎない今のシャルバート星を征服する必要など全くなかった。ガルマン・ガミラスの強敵になる要素が皆無な星に攻撃を仕掛ける意味など無いのである。

 漢・デスラー総統はむやみやたらに征服を繰り広げているわけでは無い、それを忘れてはならない

 

 攻撃の意思はないという総統の言葉を聞き、これを信じる古代。ここに、惑星ファンタムで生じた総統とのわだかまりも解決し、八方丸く収まった――地球人類の移住先がないということ以外は

 

 

 そこへ、奇襲攻撃を仕掛ける無粋なゴルサコフ参謀長

 攻撃部隊を二手に分けてシャルバート星の直接攻撃と、シャルバート星上空に展開するデスラー親衛艦隊を同時攻撃を開始した。本人曰く、電撃作戦。艦載機群の機銃掃射と降下兵の銃撃――情け容赦のない攻撃を加えたのである。ボラーって割とちゃんと戦略を立てて攻撃してくるから侮れない

 

 散々に荒らされるシャルバート星。しかし、シャルバート星の人々は武器を持って戦うでもなくただ叫んで逃げ惑うのみ、中央の宮殿においてもボラー降下兵の襲撃を受けてもただ長老が「やめなされ!」と叫ぶにとどまった。人々は撃たれるままに撃たれ、血が流れる。しかし、シャルバート星は反撃をしなかったのである。

 戦うのはヤマトクルーのみ。ボラーの攻撃はヤマト本隊にも及び、ヤマトはこれをパルスレーザー群で撃墜。同時にコスモタイガー隊を以てこれを迎撃。

 他方、大損害を負ったデスラー親衛艦隊。ゴルサコフ艦隊本隊の接近を受け、新型デスラー艦は艦首を廻して照準を合わせる。直後、総統・怒りのハイパーデスラー砲発射。その赤い光芒の中にゴルサコフ艦隊をとろかしたのだったヤマト史上、デスラー砲が初めて敵艦隊を葬った記念すべき一撃であるデスラー総統万歳

 

 ヤマト、デスラー艦の活躍によりゴルサコフ艦隊は壊滅し、シャルバート星の危機は去った。

 

 

 

 この辺りのシーンでヤバいのが、守る為に闘ってくれているヤマトクルーの行動を〈あなたたちが勝手に戦っているだけ〉というように表現した事

 ちょっとそれは薄情じゃないかい、長老。まあ、恩義に感じていないわけでは無いようなことが後でそれとなく語られるため、まるっきり非常識という事ではないのだが

 久しぶりの戦闘を前にアドレナリンが出ていた、気が立ってたという事で片付けておいてあげましょう。たとえ本気で感謝していても、マウントを意図せず取ってしまったり、言わなきゃいい攻撃的な一言を口に出す人はどこにでもいるわけだし。人の事言えないけど……。

 

 

 ではなぜ、シャルバート星は反撃をしなかったのか

 それはシャルバートが非暴力不服従の決意を固め、武器を捨てたからである――って、待ってほしい

 シャルバート星が今まで安全だったのは亜空間に隠遁していたからでしょう。仮に強固な意志を以て非暴力不服従を決めたとしても、少なくとも、現在のシャルバート星を形作る住民にその決意は見られない。

 現に安全をゴルサコフ艦隊に脅かされた際、人々は思いっきり逃げ惑っておびえ隠れるだけだった。

 〈武器を持たない平和〉という実現する直接的に自分の身を危険に冒さなければならない。その覚悟がなければならない。

 しかし、銃撃を受けた住民たちは、覚悟が明らかに足りない様を晒してしまったのである。本当に、ルダ王女と長老以外は無様なもので、見るに堪えない醜態をさらしていた。――まあね、市民のあの逃げっぷり、あれが普通の反応なんだけどさ

 

 どうやら彼らの行動を見るに、シャルバート星首脳部と一般人の間に、平和に対するレベルとか覚悟に大分溝がある様に思われる悪い言い方をすれば、首脳部が極端な非暴力不服従にのめりこみ、市民の安全確保を完全に放棄した。と表現できるだろう。統治者失格どころか、逮捕モノである

 

 

 

 争いごとを嫌いすぎてシャルバートの民をボラーにみすみす七面鳥撃ちさせるという、とんでもないことをしでかした首脳部

 しかしながらヤマトクルーが争いを楽しんでいたわけでは無いという事も一応理解していた。他者のためにその身を危険にさらしても守るというのは、これはまた別の形の平和への道ともいえる。

 という事で、ルダ王女は地球人類の未来に宇宙の平和を託してみることにした。つまり、明日を地球人類にプレゼントしてくれようというのである。彼女の案内でヤマトクルーはシャルバート星の王墓群のある渓谷へと案内された。

  いやいやいや……このストーリー展開はご都合主義だろうて。話の風呂敷、畳めてないって。

 

 

 シャルバート星の王墓はまるで水晶の結晶のような形状で、非常に巨大だった。いうなれば、金象嵌の黒御影石の墓石である。

 古墳やピラミッドと同等の規模であり、それがいくつも密集して作ってある。マンパワーがあまりないようで、技術も中世レベルが基本のシャルバートにおいて、このような巨大な構造物はなぜ……その疑問は、王墓の内側にあった。

 

 つまり、これら王墓は王墓であって王墓ではない超兵器の収容庫・封印施設だったのである

 ハイペロン爆弾や惑星破壊ミサイルといった破滅的な超兵器群がしこたま詰め込んであったのだ。かつてのシャルバート帝国の残滓である。

 これだけの兵器がありながら――だが、シャルバート星の人々は気が付いたのである。宇宙制覇など、どれだけ続けても広大すぎる宇宙を制覇するなど土台無理な話。征服事業は、宇宙に戦禍をまき散らすだけに他ならない。終わりの見えない闘争……そこには虚しさしか存在しないのである。だからシャルバート星は一切の武器を王墓の中に封印し、惑星そのものを亜空間の向こう側へと移し隠遁したのである。

 

 

  まあ、戦乱を避けるには……逃げるのは常識的な判断。物理的に戦乱から距離を置けば、それは当然戦乱を自ら呼び込まない限りにおいて、避けられる。もっといえば、この方法以外に現実として戦争を避けるべく取るべき手段はない

 とはいえ、である天の川銀河を強力な軍事力で制覇した国が急に覚醒して隠遁したら、その方が余計に戦乱を拡大させてしまうのではないだろうか平和を希求し、平和があまねく銀河にもたらされることを願う割に、それとは正反対の事を行っている感が強い

 しかも、長老やルダ王女はこの徹底した平和への希求=非暴力不服従を地球にまでそれを要求するような発言をしている。

 さすがに、地球に対して今すぐ武装を放棄しろなどという跳躍理論の過干渉はしなかったからまだマシだが……シャルバート星の諸君、君らも天の川銀河ハビタブルゾーンに星を置いてから同じセリフを吐いてほしい。死んでも滅んでも構わないと、高らかに宣言しているのだから、直ちに武装を全て実際的に放棄して、行動に移してほしい。それと、末端の信者の過激な行動や、明らかな教義の読み間違えをちゃんと抑制してほしい。

 と思った次第。

 

 結局、シャルバート星も武装自体は放棄してなかったしね

 そりゃ、宇宙を破壊しかねない存在に対する抑止力とか、技術の流出を避ける為、とか色々理由は付けられるのだが……冷めた目で見ると、フィクションの中ですら結局非暴力不服従武装蜂起は実現できないのか、それが当然のような形に描かれているというのがなんとも情けないというかなんというか……こんなとこにリアリティを仕込まなくても。

 挙句、よくある末端の信者が教義を深く理解する前にテキトーな理解で行動して他者を踏みつけにしたり、洒落にならん点もまさかのリアリティ抜群で描いてしまう。評価すべきところでもあるのだが、一方でそこまでリアリティを出すと、いわゆる神の視点で作品を見ることになる視聴者が個々の登場人物に感情移入しづらくなる気がする……。

 

 ともあれ、である。ヤマトが誕生した理由は、あくまで地球人類生存のためであり他者を滅ぼすことが前提ではない。という事を明確化したエピソードであり、平和というものが実現した際には初めてヤマトがその任を解かれる。という事を想起させるのだが……残念ながら色々と白々しい部分が出て、残念エピソードとなってしまっている感がある。

 熱意とか人類に対する期待・希望は伝わったんだけどねぇ……。

 

 

 

 

 おっと。危ない、危うく記事を締めくくるところだったこのエピソードのもう一つの中心はルダ王女と揚羽の別れである

 ルダ王女はシャルバート星の次期女王であり、それは次のシャルバート教の教祖を意味する。ルダは揚羽のルダには成れないし、揚羽はルダの揚羽には成れない。揚羽は、レガリアを捧げた祭壇に登るルダ王女を見守る事しかできなかった。

 

 非常に感動的な情緒的なエピソードである全力で分かりやすく、かつ直接的に表現をすれば映画〈ローマの休日〉のオマージュといえるだろう。全く同じ構造の登場人物とストーリー展開である。いわば、”コスモ・ローマの休日”。

 だが、残念ながら――前のエピソードで2か月をすっ飛ばしてしまった結果、揚羽とルダ王女の間にどんな心の触れ合いがあったのかわからない。スカラゲック決戦で二人が接近したかといえば、信仰告白ぐらいで、他には特に挿入シーンがないのだ。ムードを盛り上げるに足るだけの出来事が一つもなく、これでは……二人の別れに……全く感情移入のしようのない話になってしまった

 これは非常に痛い。せっかくの感動シーンなのに、もったいない