旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅰ 第11番惑星境界面戦(ヤマトⅢ)

 

  偶然太陽系にワープアウトしたラジェンドラ号。そこへ通りがかったヤマトが退去を勧告するが、大破したラジェンドラ号にはそれだけの能力すら失われていたのである。そこでヤマトは防衛司令部と相談の結果、ラジェンドラ号を海王星ドックへ回航させ人道支援の範囲内で その修理を行う事とした。

 ところが、ダゴン艦隊はラジェンドラ号を追って太陽系へと突入。更に地球を含めた挑発的な通信を送る。しかし、ラジェンドラ号が動けない事は動かしようのない事実であった……。

 

 

 

 日本アルプス遭遇戦
 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第18機甲師団艦隊所属駆逐艦
 戦力:駆逐艦
 指揮官:氏名不明


 地球側参加部隊:日本アルプス秘密ドック防空隊 
 戦力:中型雷撃艇多数(ヤマト航空隊搭乗員による操縦)

 指揮官:古代進、加藤四郎

 

 展開・描写の妥当性

 第3話――ラム艦長率いるバース星守備艦隊に意外な苦戦を強いられたダゴン艦隊。しかし、絶対にバース星守備艦隊を殲滅しなけらばならない彼らは、体勢を立て直すためにワープで退避を試みるバース星守備艦隊に喰らい付いて続々とワープを敢行。

 たまたま隣接していた太陽系へと幾隻かがワープアウト。敵味方で同時に同空間へとワープアウトして差し違える中、一隻のガルマン・ガミラス駆逐艦が強行的に地球へと降下を試みた。

 

 勝てると思ったのか、駆逐艦の艦長はそのままどんどん降下。一方でヤマトと地球防衛軍司令部はこの事態に面食らって一時対応が遅れる。

 しかし、ヤマトの任務の重大さを考えれば、相手が不明であっても撃沈すべし――コスモタイガーを操るヤマト航空隊のパイロットたちは雷撃艇に乗り換えこれを迎撃、見事撃沈に成功したのである。

 

 さて……これは駆逐艦が悪い。通信ナシでいきなり降下だもの。外交関係ゼロなのに威力偵察だものそりゃ、迎撃されるわい

 確かに、無警告で迎撃した地球だって奇襲的に駆逐艦を攻撃しているから、問題っちゃ問題。とはいえ、あの駆逐艦艦長の感じからすれば、知らない敵に対して「引き付けて、一気に撃滅せいっ」なんて言っちゃうぐらいだから――通信しても、しなくても結果は同じだっただろう。

 明らかに敵意を持った威力偵察に対し、強硬手段で排除するのは何ら問題はない。

 ただ、防衛司令部の意思決定プロセスが……ちょっとまずかった

 

 意義

 地球の近くで大きな戦闘が起きているという事が判った。前途多難である事がはっきりしたのは、腹積もりが出来て、意義があったと言えばあっただろう。

 ガルマン・ガミラス駆逐艦側からすれば――知らない敵に接近されるべきではない、という事だろう。戦訓を汲める人がいればいいが、多分いないでしょうね

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:駆逐艦1 
 地球側損害:特になし

 

 

 

 第11番惑星境界面戦
 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第18機甲師団艦隊
 戦力:中型戦闘艦多数、駆逐艦多数
 指揮官:ダゴン将軍

 

 バース星側参加部隊:バース星守備艦隊(残存)
 戦力:戦艦1(ラジェンドラ号)
 指揮官:ラム艦長


 地球側参加部隊:新惑星探査特務艦ヤマト 
 戦力:戦艦1(ヤマト)、コスモタイガーⅡ多数

 指揮官:古代進

 

 展開

 第5話――海王星ワープアウトしたラジェンドラ号。黒煙と紅蓮の炎に包まれ、うらぶれた姿で宇宙を何とか進む。そこへ通りがかったヤマトは、ラジェンドラ号に対して退去を勧告した。ところがラジェンドラ号にはそれだけの余力がなかったのである。

 そこで、防衛司令部は同じ軍人のよしみとして、24時間以内・人道支援に限ってラジェンドラ号を海王星ドックへと率いれ補修を許諾した。

 ラジェンドラ号を指揮するラム艦長は無骨だが柔和な軍人であった。彼の口から語られた天の川銀河の戦乱に驚愕する古代。ここで初めてガルマン帝国の存在が語られる。

 

 そこへ、くだんのガルマン帝国が差し向けたダゴン艦隊が現れる。彼らは丁寧かつ断固とした態度で10分の猶予の後、ラジェンドラ号引き渡しが実現しない場合は地球への直接攻撃を通告した。しかし、ラジェンドラ号は動けない。ラム艦長が代わって交渉に当たり、地球側猶予期限の8時間後に必ず海王星ドックを離れて公海において決着を付けると宣言。ダゴンもこれを受諾した。

 一方で真田技師長はラジェンドラ号の損害状況をみて副砲数門のみの戦力では、ダゴン艦隊に勝てないと進言する。しかしラム艦長は「無駄死にはさせない」とだけ語り、有余時間いっぱいまでの補修を受けた後、出撃した。

 

 海王星ドックを離れ、宇宙を進むラジェンドラ号。ダゴン艦隊は海王星からずっと射程堅持のまま追跡をしていた。そこで古代はコスモタイガー隊を発進させ、これを護衛。ヤマト自身も後方に位置して、領土内では一切手出しさせないよう陣形を張った。

 第11番惑星――地球の領土の境界線に到達するラジェンドラ号。機関をフル回転させ、境界を脱したと同時にワープを試みる。他方で、そうはさせまいとダゴンは直ちに砲撃を開始した。更に、領土内での発砲に抗議したヤマトにすら砲撃を加える。

 

 ここでヤマトは応戦、コスモタイガー隊も攻撃を開始した。しかし、大量の戦闘艦艇を前にヤマトも苦戦。ヤマト攻撃に気を取られたダゴン艦隊の隙をついて離脱を試みる――はずなど無いラジェンドラ号。なけなしの副砲を以てダゴン艦隊を砲撃、自身の戦闘を最期まで続行する覚悟で戦闘に参加した。

 途端に集中砲火を受けるラジェンドラ号。ラム艦長がヤマトへ通信、感謝と‟戦線離脱”の謝罪を述べると……ほどなくしてラジェンドラ号は爆発、宇宙の塵となった。

 

 目標であったラジェンドラ号を撃破したダゴン艦隊だが、すでに彼らの標的はヤマトへと移っていた。何としてもヤマトを撃破しようとするダゴン艦隊に対し、弔い合戦を挑むヤマトは持てる手段をすべて使う。

 一時、艦上方へ離脱するように見せかけダゴン艦隊を引き付け、十分に引き付けたと同時に錐もみ状態でコースターン。主砲、副砲、煙突ミサイルを乱射し、追ってきていたダゴン艦隊を片っ端らから撃滅。

 この猛攻にたまらず、ダゴンは副官に命じて全艦に指令し1号艦から3号艦までを旗艦に随伴させ、残りの部下を捨ててワープした。

 

 戦闘も最終盤一隻、ガルマン帝国の名に懸けて何としてもヤマトを仕留めようと手負いの駆逐艦がヤマトに突っ込んでいった。駆逐艦艦長は「諸君、よく戦った……デスラー総統万歳」と最期の言葉を残して戦死。

 しかし、部下たちは艦長の弔い合戦とばかりにヤマト艦内へ突入し白兵戦を敢行した。幸いにも食堂付近に突入したことで、戦闘は比較的容易に進む。しかも炊事部が迎撃に当たったのだから、戦闘班による戦闘とは大きく違う。ところが、ガルマン側も決め手に欠け、ヤマトクルーには続々と応援が駆け付け劣勢へ……ついには全滅してしまった。

 ヤマトはガトランティス戦役以来の大ピンチを何とか退けたが、しかし平田ら炊事部の面々が犠牲になってしまったのである。

 

 

 描写の妥当性

 ラジェンドラ号側の行動には何ら不思議はない

 特に、公海に出ると同時にワープで逃げるというのは名案だろう。ラジェンドラ号が太陽系から離脱すれば、ダゴン艦隊は必ず追跡してくる。そうすれば地球でダゴン艦隊がたむろする理由はなくなる。つまり、公海に出ると同時にワープで逃げることが地球に迷惑をかけず、バース星に帰還できる唯一の方法だった

 一方で戦闘に参加したのも、ラジェンドラ号が太陽系に進入しなければ発生しなかった戦闘にヤマトを巻き込んでしまった。自分だけ逃げる不義理をラム艦長がどうしても許せなかった、本国の名誉にかけて戦ったに過ぎない。

 仮に逃げた場合、味方の士気に確実に影響するし、祖国バースに地球という余計な敵を作ってしまう危険性もある。そもそも逃げる前に撃沈させられる危険だって少なくなかった。つまり、まともな人間であればあの場合はどうやっても戦闘に参加する他なかったラム艦長でなくとも、同じ判断をせざるを得なかっただろうが、特に堅気のラム艦長にはほかの選択肢など考えられるはずもなかった。それを判っていたからこそ副官も艦長の命令を支持した。

 実に普通の合理的なストーリー展開だろう

 

 

 防衛司令部としてはラジェンドラ号に敵意がない事が判っているのだから打ち払う理由はない。確かに迎え入れる必要性はないが、うまくいけば天の川銀河で起きていること――アルファ星第4惑星への攻撃など――について聞きだすことが出来ると予想が出来た。

 しかも、ラム艦長率いるラジェンドラ号はアルファ星第4惑星への攻撃を行った側ではなく、それを防いでくれた側の艦隊という事は記録を見れば即判る事

 これらを考え合わせれば、藤堂長官のラジェンドラ号の海王星ドック寄港許可は極めて合理的で妥当な判断

 

 

 ヤマトの護衛行動も、順当

 コスモタイガーの攻撃力から言えば、水雷艇に近い扱いでラジェンドラ号を援護するのは当然だし、ヤマト自身がその後方についてダゴン艦隊主力からの攻撃を防ぐのも、古代君にしては名采配といっていいだろう。

 ラジェンドラ号へ攻撃を始めた時点でダゴンが協定違反をしたのだから、これに対して攻撃を開始するのも当然だし、第11番惑星軌道内は明確に地球の主権の範囲内である事は確実だから何の遠慮もなくダゴン艦隊を打ち払えばいいだけ

 ただ、相手の数が多かった故に護衛任務は結果的には失敗してしまった。さらにラジェンドラ号自身、あの損傷であの数を相手にしては……むしろ良く持ちこたえた方だろう。

 ストーリー展開的にも、戦闘の合理性的にもラジェンドラ号爆沈は避けられなかった

 

 その後の戦闘も割合にまともな展開を見せる。意外な事に。

 いったん上昇してそれから降下するという行動は、結果として敵艦隊の一部を引きはがして事実上の各個撃破に持ち込み、敵艦隊より高速で動くことで敵艦隊に対して最大の火力をたたきつけることに成功した。

 要は陽動+各個撃破これは結構すっきりした戦闘内容だし、結構まともで……何なら見事

 確かに他の提督なら別の反応をしかねないが、しないともいえない。殊、ダゴンに限って言えば――彼はガルマン・ガミラスの中でもあんまり指揮の上手い方ではない。そんな将軍に対し一隻だけで挑んだというのが、逆にうまく作用したと言えるだろう。

 

 白兵戦においては、あれはヤマトにしては無様ではあったが――炊事部は本来戦闘には参加しない。それでも、他部署へ敵を侵入させなかった身を挺した防戦は見上げた根性。よく戦ったと言える。

 ついでに言えば、何だが島君の操艦が下手だった気もするが、相手が何が何でも突入する意思があったのだろうから仕方がない面も多い。

 ホント、食堂以外に突っ込んでくれればよかったのだが……

 

 

 ダゴンに関しては第11番惑星域を脱するまでどうして待てなかったのかと聞きたい。高圧直撃砲でワープとほぼ同時に射撃できれば、一発は当てられただろう。最悪取り逃がしてもバース星を包囲しておけばいい。何故そうしなかったのか……。後々の事を考えれば、変な事をして地球の参戦を避けるのが得策だったはず

 そう思わなかったのなら、ダゴンの状況認識や戦力把握の能力がポンコツという事になる実際ポンコツだから、地球を巻き込んでも問題ないと思ったのだろう。ひたすら傲慢で詰めの甘い――威厳のいの字もないドメル将軍な彼だからこそ、ある意味妥当な描写物凄く悪い意味で、妥当

 

 仮に公海上であれば、ヤマトはこれ参戦する理由がない。この状態でヤマトが参戦してくれば、ガルマン・ガミラス側に地球征服の大義が生まれる。また、ラジェンドラ号を袋叩きにでき、返す刀でバース星を征服できたはずだ。

 それなのにダゴンが余計な事をしたおかげで、ガルマン・ガミラスは地球に対して道義的に劣勢となってしまった。何かあった際に地球連邦政府から総統府へ何ぞの請求書が届いた場合、総統は何ぞ代償を支払わなければならないだろう。好意としてではなく、義務として。

 

 デカい態度取ったくせに、びびって逃げたのも情けないぞダゴン

 ヤマトが離脱すると思って追ったのは仕方がないとして、あの猛反撃で面食らったのも仕方がないとして――それで逃げるか普通? 挙句、味方艦隊に対して離脱を命じなかった。味方艦同士が援護しつつ離脱は別に不思議ではないが、それは全艦がスムーズに離脱するために必要な事であって、自分が生き残る為にやる事ではない

 ダゴンは指揮官として責務を果たさなければならなかった。全艦に順次退避を命じて、しかる後は勝手にさっさと逃げればいい。なのに、旗艦の為にわざわざほぼ全艦隊が居残りさせ、全滅させたなんて指揮官として話にならない

 

 

 駆逐艦の艦長に関しては、あれ多分機関部が損傷していそうだから多分逃げられなかっただろう。割と自己犠牲的なガルマン・ガミラスの軍人からすれば、祖国の為に艦隊の為に、帰れないならヤマトを葬るまで――実にガルマン・ガミラス軍人らしい行動最後に部下にねぎらいの言葉をかけたのも涙を誘う

 一方、部下たちも最後まであきらめずヤマト内部に突入し、勝利をもぎ取る為に最後まであきらめなかった。これは果敢な戦い方で軍人かくあるべし

 ガルマン・ガミラス魂、ここにあり。といった具合である彼らはダゴン艦隊の中で唯一真剣に戦った人物なのかもしれない

 

 

 意義

 地球連邦にとっては、バース星に恩を売れた事とガルマン・ガミラスがそんなに強い敵ではないという事が判明したのが大きいだろう。

 ダゴン側にしてみれば、地球にも侮れない軍艦がいるという事が判った。しかも地球は兵器の質としても存外に強力。策を練って練り過ぎることはないと、分かっただけでも収穫だろう。

 バース星は……ラム艦長という偉大な指揮官を失った。その代償は非常に大きいが、彼の心意気が一時とはいえヤマトをバース星側に引き込む事になった。つまり――意義はあった。だが、あまり大きなものではなかったといえる。

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:中型戦闘艦多数、駆逐艦多数  
 バース星側損害:戦艦1

 地球側損害:特になし