旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガルマン・ガミラス帝国側登場人物の考察(ヤマトⅢ)

 

 ヤマトⅢにおけるガルマン・ガミラスの諸将は名前こそ大量に登場したが、実際の所あまりよくわからない感じだった。だから、検証・考察しよう。

 なお、ガイデルや一部技術系の人間以外は全員が将軍と呼ばれているため――彼らの階級やらに関して厳密なことは全然わかりそうもない。それっぽさを優先しただけのように思われる。

 例えばドイツ軍なら将軍を単にGeneralと訳せば大将になってしまうが、別の語であるGeneralleutnantと訳せば中将、Generalmajorならば少将、Brigadegeneralならば代将を意味する。他にもGeneral der Waffengattungなんかは兵科大将と呼ばれるし、Generaloberstは上級大将となる。一方で提督(Admiral )は大将で確定。ちなみに上級大将と同格の提督はGeneraladmiral、元帥はGroßadmiralと呼ばれるらしい。無論、少将にGeneralと呼びかけてはいけないという話ではなく、将軍という語から対象者の階級を推測することはできないということ。

 特に、なんでガイデルだけ提督と呼ばれるのか、全く推測できるような要素を史実からも劇中からも抽出できなかった。面目ない。

 

 


  ガルマン・ガミラス帝国軍人――
 氏名:ガイデル(Geidel英語版:Smeerdom)
 年齢:不明(50代程度ないし60代)
 階級/役職:提督(階級は不明、大将ないし上級大将か)/東部方面軍司令
    容貌:青い肌、ハゲのケツ顎。

 ガイデル(Geidel)アメリカに多い名前である。その一方、元々はGiudelでありドイツはバイエルン由来の名前で11世紀から14世紀に使われた中高ドイツ語の中で意味を解される。自慢屋とか浪費家といった意味らしい。古いドイツ語由来の名前であるから、これは当然ドイツ本国では表記こそガイテルであるが、かなり普遍的に使われる名前。幾らかスペルが違っても似たような発音になる為、似たような名前がかなり多く、KeidelやGeitelあるいはGeibel、Geibler、Geidel、Gebel、Gebl、Geblerなどのバリエーションがある。

 ドイツ国防軍最高司令部総長ヴィルヘルム・カイテルあたりの名前を参考にされたのだろうが、キャラクターとしては似ているか微妙なライン。ガイデルはバチバチのおべっか使いとして有名でLakaitelなどと揶揄され、本人も自分を軍人とは誰も見てくれないと分かっているほど軍役からは遠いほぼ政治家。その点ガイデルは一応は度胸と目端は利いた……カイテルよりも全体としてヘルマン・ゲーリング的と言えるだろう。

 階級は不明だが、詰襟の前に黄色い縦線が左右に3本ずつ入っている。これは他のキャラクターの服装と比較して、間違いなく階級を示すものと言えるだろう。キーリングの服装をどう判断するかによるが、純粋な軍司令官としては最高幹部だろう。

 キャラクターとしては尊大でしかもサバサバしている。汚い世襲政治家のような大分嫌なキャラクターに仕上がっているのだが――一方で、慕い畏れるダゴンやガルマンチワワの様子を見るに、昔は凄かった親分といったところだろう。2199のダガームのような出自としてもいいかもしれない。無能かといえば、無能ではないのだろうが軍人としての能力は不明でついぞ発揮されなかったその代わりというべきか、デスラー総統をけむに巻き新鋭艦をせしめるなど政治家としての能力は高い

 問題は、万能感に浸りやすい点デスラー総統の命令で一つ重大なものを完全に失念し、危うく自分の立場を自分で消滅させかける。高官のくせに過剰な自信からホウレンソウがなっておらず、しかもそれをおべっかと口車で隠してしまうから……大事業は本当は任せてはいけないタイプなのかもしれない。それと関連してというべきか、頭のつるっとした具合を保つために東部方面軍機動要塞で床屋で頭を仕上げてもらっている。確かにハゲはハゲで結構手入れが必要らしいし、身なりを整えるのはいい事だが、しかして実力が伴わない点を鑑みると気取り過ぎと評する他ない

 ガルマン民族なのかガミラス民族なのかは判然としないが、地球を知らない事から多分はガルマン系。更に――基本的に寡黙なわりにスイッチが入ると演説が得意になるのがガミラス軍人の傾向だったことに加え、旧来からの軍人であればドメルの‟大口をたたいておきながら所詮その程度”な展開を知っているだろう故、余計な事はやはり言わないに限ると認識して当然。ましてヒスやバンデベルの最期を知っていれば無駄口は叩かない方が得だと知っているだろうということからやはりガルマン系と推測。また、思わせぶりな発言を重ねる点は旧来の軍人っぽくない為ガルマン系。

 この男の最期は不明。東部方面軍機動要塞を出撃させヤマトを捕獲したが、そもそもオリオン腕辺境の惑星に手を出すなという初期の命令を完全に忘れての独断専行だったことを総統にブチ切れられ、挙句にヤマトのガルマン・ガミラス本星への道案内をさせられて面目をつぶす。そのまま彼はいつの間にかフェードアウト。しかして、明確な描写がない為、あの手合いのしぶといおっさんは容易には失脚はしないと思われる。一時的な交代と謹慎は喰らっただろうが、最後は総統の屈辱的な指示に従ったため忠誠心を示したとして挽回は期待できる。それなりに手駒のある高官であるから、多少地位が低下するだろうがほぼ同格を維持すると期待できる。それがいい事かどうかはわからないが……

 原案だとドーナッツ提督だったという話らしいが、なぜそれで行けると一瞬でも思ったのかヤマト製作陣の考えは奇々怪々。

 

 

 氏名:ダゴンDagon
 年齢:不明(40代程度)
 階級/役職:将軍(階級は不明、少将程度か)/第18機甲師団隊司令旗艦艦長
    容貌:青い肌、ケツ顎、赤毛で七三分け的髪型・もみあげはかなりカール。

  詰襟の黄色い縦線が一本で階級は実はさほど高くないと見える。上司ガイデル提督に負けず劣らずの巨大な自尊心と挑発的な態度の持ち主。しかも、手抜きと驕りを度々見せる指揮官としてマズイ素質を有している。声はイケイケで強そうなんだが、実力が伴わない。

 ダゴンDagon)つったら、ペリシテ人の神ダゴン以外になかろう。古代カナンの地で奉じられた豊穣の神で、いつの間にか半魚人にされた少し不運な男神。或いはクトゥルフ神話の父なるダゴンか。ダゴンの企画案時点ではグドンという事だったらしい。愚鈍な人物にするつもりだったのだろうか……。

 

 性格は先に述べた通り尊大挑発的計画通りに物事が進んでいると大変落ち着いた大人物な様子を見せる。一方でかなり自己保身の傾向が強く、焦ると動揺が顔と態度に出る小物っぽさを備える。邪悪というほどではないのだろうが、しかして尻尾切りが得意攻撃的性格というのは正直上司にしたくないし部下にもしたくない。地球を知らない事に加え、どっかり座って指揮をし旧ガミラス軍人には見られない行動を多数見せたため、ガルマン系なのではないのかと推測

 指揮能力は中途半端で、低くはないが……決して高くはない。何といっても名将ラム艦長相手にステールメイトを2回に加えて一度は負けかけたのだ。

 確かにガルマン・ガミラスの戦闘艦は主砲の火力が明らかに低い上に紙装甲だから、意外と堅い上に主砲は高威力のバース星守備艦隊相手にてこずってしまうのは仕方がない。しかし、単純に押し負けてしまうのは情けない。で、プロトンミサイルをぶちかましちゃぶ台返しを狙うというのは豪放な指揮過ぎて感心しない。航空戦力の有用性を認識している人物なのは高ポイントだが、だったら最初っから空母を持って来いと。ピンチになってから言い出すのは情けない。必殺のプロトンミサイルぶちかました後も〈ラジェンドラ〉以下の戦闘艦を取り逃がしてしまう、だから続いて4回も再戦を挑む羽目になる。

 いつも力押しで戦うのがダゴン。ナレーションによれば圧倒的な戦力を誇るはずが――単純な戦闘で結果、ラム艦長に互角に持ち込まれている。そりゃ、まるで土方艦長のように采配を振るうラム艦長が強すぎるという事があっても……へぼい。対ヤマト戦闘も作戦の中盤までは毎回上手く行くのだが、結局驕りや手抜きで逆転負けを喫す。

 

 彼の場合、脅威評価も甘いラム艦長や〈ラジェンドラ〉を撃滅する事こそがバース星攻略の鍵であるという事を認識できていた点は問題ないどころか妥当。コスモタイガー隊を見て航空戦力の不足に気づくのも妥当。

 だが、〈ラジェンドラ〉と〈ヤマト〉を包囲して安心し、副官に指揮を任せたのは……幾ら信頼していたとしても責任感の欠如と言わざるを得ない。

 そのくせ決戦兵器らしい高圧直撃砲の使用許可ないしそれに類する命令を下していないのだから、上司ガイデル共々詰めが甘いのである。

 新反射衛生砲が破られた際、プロトンミサイル攻撃にさせたまではよかったがこれが迎撃される可能性を考えていなかった。第17空母艦隊を拝領した時も接近する必要ないのに包囲する必要ないのにヤマトに不用意に全周取り巻いて同時に沈められてしまう。驚くほど詰めが甘いのだ。後者は戦闘中にヤマトが欲しくなってしまったのが一つの要因だが――それはある意味、アルファ星第3番戦の途中からヤマトを総統への貢ぎ物にしようとしたあの作戦への復帰ともいえる。どうしても当初の作戦通りに進めないと気が済まないらしい。完璧主義ではないが、完璧主義に近い……状況のイニシアチブを絶対握るマンなのかもしれない。それだけの実力があれば、好材料になるかもしれない。あるいは状況が許せば誘惑に負けてしまうのも仕方がないかもしれないが、あの場面でどうして実行に移すかな……。

 戦術は十分だが、概ねにおいて戦略的な視点が抜ける戦略的な視点を持てた時には戦術的視点が抜けるというマルチタスクが苦手な人物といえよう。

 だから詰めが甘い――指揮官としては致命的な気がするぞ……。

 

 最期は乾坤一擲の戦いを挑み敗北、白鳥座名物のブラックホールに吸い込まれてしまった。これも、空母艦隊を総統から下げ渡され艦載機戦でヤマトを圧倒したのに、不用意に接近して逆転負けを喰らった挙句。ヤマトをブラックホールに誘い込もうとして自分だけが飲まれてしまうのだから詰めが甘いのである。

 風が語り掛けます。へぼい、へぼすぎる。

 

 

 

 氏名:フラーケンFraken/Luchner Von Ferrell
 年齢:不明(ざっくり50代ぐらいじゃね?)
 階級/役職:少佐/次元潜航艇隊司令・〈ガルマンウルフ〉号艇長兼務
    容貌:鬱陶しいロン毛にどじょう髭、黄色いスカーフ。目力強めの近寄りたくないタイプのおっさん。

 フランケン(Francken)ならフランク族を意味するドイツ語で物凄くよく見かける名前。第14話と15話に登場。詰襟は黄色いスカーフで隠されており、階級は判らない。登場人物中、唯一マントの形式が異なっており生地こそ同一だが、大きな折襟付きで首元に金具で取り付ける他に類を見ないタイプ。

 

 マッドサイエンティストな笑い方が特徴的で、部下をわざと敵の犠牲にする狂気の――戦術ともいえない戦術を用いてヤマトを追い詰めた人物。

 指揮能力は一見、高そうなのだが実際にはただヤマトを誘導しただけ。ガイデルのいうヤマト撃滅が何を意味するのかは判然としないが、ヤマトの戦闘能力を奪うという意味ならばそれは失敗。ヤマトは主砲などの戦闘能力を有したまま東部方面軍機動要塞に接近した。文字通りヤマトを沈めるのであれば、そもそも本人が諦めた結局、ヤマトに対して優勢に戦えたかといえば、それは次元潜航艇の能力によるところで、その優位性が失われた後は互角へ。本人の指揮によるところではない。

 意外と指揮能力は平凡のご様子、正直な所あのナスカと大差ない何なら味方を犠牲にしないという点においてはむしろ、指揮官としてはナスカの方がまだマシかもしれない

 性格としては気取り屋。更に見た目の感じもあれは一見、武骨なようで実はかなり手入れが必要なタイプだ。やはり気取り屋と評すほかない。総司令のガイデルと言い、ダゴンと言い、どうしてこうも東部方面軍は気取り屋ばかりが集まるのだろうか。故に、本人はウルフでもスピッツでもなどのたまっていたが……このタイプは冗談を本気にしてガルマン・スピッツなんて呼んだら絶対にブチ切れる。黄色いスカーフも首元の階級章を隠すための可能性が十分あり得るだろう、ほかの指揮官より階級が低かったりしたら特別感がなくなるもの。

 地球を知らないため、ガルマン系と推測できる。ドメルやシュルツのように指揮官も危険を背負ってこそのガミラス軍人、部下だけに危険を負わせるのはガミラス的とは言えない故に。

 最期は不明。ガイデル共々いつの間にかフェードアウト。

 

 

 

 氏名:キーリング(Keeling)
 年齢:不明(絶対若い)
 階級/役職:/参謀
    容貌:神経質そうなハゲ

 ヘルマン・ゲーリングなのだろうが、元ネタの要素が全く見つからない不思議。細いし、ずっと有能だし、髪の毛ないし、狂信者でもないし、気取り屋でもない。

 キーリングという名前に関しては英語圏でたまに見る。例えばイギリス東インド会社のウィリアム・キーリング船長など。Keelingは中高英語で若いタラとかタラ漁師を意味する kelingが由来。ドイツ語で類似したつづりはKühlingでこちらは多分ヘルメットに由来するらしいのだが、どうにも確定的な部分は良くわからないらしい。

 詰襟は黄色い縦線が3本、しかも縁まで黄色い。更にデスラー勲章なのか、未登場の英雄勲章なのかはわからないが、首元に引っ提げている。相当な重役であることは一目でわかるキャラクターだ。ついぞ同格の人間は他に登場しなかった。立ち位置的には――第16話で登場を果たしたタランがデスラー個人の副官であるとすれば、キーリングは総統の副官と言えるだろう。

 参謀であり作戦会議の議長を務める人物で、実際に部隊を指揮する機会はないと思われる。指揮能力が期待できない一方で、帝国の諸軍人や技官などのめぼしい人物は頭の中に名簿があるらしい。13話で見たように監察組織も彼の指揮下に入っている様子で、21話のヘルマイヤー推薦を考えると技官に対する人事権もある程度持っている様子。人事の把握や監察組織の掌握など、組織の運営に関しては十分過ぎる能力を有していると期待できる

 性格は不明だが、冷静沈着で基本的には動揺しないタイプ。唯一、第13話のハイゲル将軍処刑の際には動揺を示したが、それ以外では特に同様の態度を示した事はない。常に最適解を最速で用意するのが彼の特徴。

 裏を返せば――タランと比較した場合、必ずしも忠誠心が高いわけではないのかもしれないタランと比較するのも酷な話だが、しかしてシー・フラーゲなどの大マゼラン星雲第7空域で集結した諸将に比べれば低いのかも。表に返れば――忠誠心よりその能力を買われて参謀となったと表現できる。総統もタランも軍司令官として能力として欠け気味な後方部隊に対する指揮や、今までやってこなかったし必要なかった軍内部の調整などを担う立場である。これに関しては総統への忠誠も大事だが、それ以上に国家への忠誠や何より能力の高さが必要となろう。その為、忠誠だけで言えば他にも上手がいる中でキーリングがずば抜けた重用をされていることになり、そう見立てればキーリングの動揺シーンも道理に合う。

 第21話以降の登場はないため、彼がその後どうなったかは不明。期待としては帝国の実質的No.2として総統をサポートし続けてほしい。

 例えば――完結編において赤色銀河の衝突に見舞われたガルマン・ガミラスであるが、天変地異を前にキーリング参謀は大きな役割を果たす、果たさざるを得ないと言えるだろう。辺境視察へ向かった総統の代わりにタランが総統代理=行政権者としてデスラー・パレスに居れば、これと対になる形でキーリングが軍権の執行者として振る舞うことが可能になる。その際に二人が協調ないし、タランの指示あるいは権限の元にリソースを集約してキーリングが実際的に対処する運びとなるだろう。

 そうなっていれば、妙に運の悪いデスラー総統が指揮するより脱出できる人数が多くなりそうな気もする

 

 


 氏名:グスタフ(Gustav)
 年齢:不明(絶対若い)
 階級/役職:中将/北部方面艦隊司令
    容貌:赤毛のエルヴィス的もみあげ、右のデコから頬骨辺りまでスパッと傷を持つ迫力のある見た目。

 グスタフという名前は元はスウェーデンの人名で神のスタッフを意味するのだが、英語やドイツ語にも輸入され今日に至る。一番有名なのはグスタフ2世アドルフだろう。

 ヤマト2に登場したバレルド・アクションのデザインを流用したと言われるが、正直大して似ていない。

 

 意外な事に、縁こそ黄色いが詰襟に縦線がない。これをどう読み解くかが微妙なライン。服装的にはマントを羽織っている以外はダゴンの副官と同じで、それだと本当は佐官か准将クラスという事になろう。黄色い縁取りが参謀部付きの証なのであれば、参謀部或いは総統直轄。ただ本人やキーリング曰く中将。例えば……ドイツの西方総軍司令ゲルト・フォン・ルントシュテットは大佐の服に元帥の階級章を付けている。彼のように何がしかの深い理由で誰かの副官を務めていた時と同じ制服をそのまま着ており、階級と齟齬が出てしまったという事にしておけば彼のキャラクターも厚みが増すと思う。

 キャラクターとしてはまさに猛将であり闘将名将なのかは必ずしも断言はできないが、持った手札で最善を尽くす能力は確かなもので完全な劣勢を覆し、ハーキンス艦隊と相打ちにもちこんだ。ヤマト死守には体当たり突入以外にないと決断するがそれはどう見ても客観的事実だし、突入直前にはコスモタイガー隊に対し退避を命じるなど細やかな指揮を見せた。指揮官として十分な能力は有していたと言えるだろう。そもそもハーキンス艦隊は自艦隊より比べるまでもなく巨大でしかも戦場は平地である故、残念ながら指揮の上手い下手も最早ない。

 その点では彼の真の指揮能力を見ることは叶わなかった。

 

 性格は極めて冷静で大胆かつ義理堅く高い向上心の持ち主といえよう。

 何よりヤマトとの戦闘を望んでいた節がある点、ただ者ではないだろう。しかも、である‟一度は”という表現を使っていることからわかる様に、ヤマト相手に負けるかもしれないが生きて帰るつもりでいたらしい。これは敵――と表現していいのかわからないが、極めて珍しい考え方と認識だ。そんな彼であるからハーキンス艦隊の接近に際してもビビるよりも先に武者震いし、全砲門を艦隊の方へと向けて戦闘準備を開始。ヤマトが逃げるどころかハーキンスと正面切って殴り合う意外な展開によって、ヤマト助勢を決断しその後は総統の命令であるヤマト死守を実行する最善策を躊躇なく打って出た。これは大胆かつ冷静でなければ成し得ないだろう。また、遺言のようにヤマトに通信を入れたのは喧嘩を売る形になったヤマトに対する遺恨を残すまいという義理と総統に対する命令を確実に遂行したという証立てと言ってもいいだろう。

 部下への接し方はヤマトに対する戦闘準備から、高圧的というよりも一緒に硝煙の中を突っ込んでいくような雰囲気であり――恐らくは部下との信頼関係も築けているだろう。兄貴肌的な様相を呈する。

 そんなグスタフ中将で特筆すべき点は忠誠心デスラー総統への忠誠心は登場人物屈指である。総統の気に入りであるヤマトに対し警告射撃も何もなく臨検で済まそうとしたり、総統の命令を死守するためにヤマトとハーキンス艦隊の間に入るなど、やはりただものではない。一命に代えてヤマト死守の命を守ったのである。反対に総統も彼を完全に信頼してヤマト死守を命じているし、ファンタム処刑の執行人としてキーリングも彼が相応しいと第一に名前を上げるほど。多分、忠誠心で彼に引けを取らないのはタランとフラウスキー少佐ぐらいではないだろうか

 グスタフ中将を一言で表すならば武士だろう。最期の言葉である「残念だ、古代艦長。私も一度はヤマトとは正面から戦ってみたかった」や「古代艦長、私の最期を見ていて欲しい」は名言と言っていい。

 ガミラス系なのかガルマン系なのかは不明だが、顔に傷をつけるぐらいの激戦をくぐり、ヤマトとの戦闘を望んでいたという所から、概ねガミラス系と言っていいのではないかと思う(ガ―シバル戦区から来たとか言わないように)。ただ、ヤマトとの戦闘はダゴンらの敗北を聞いて闘志がわき上がったとも表現できる。結局、判らん。

 

 最期はスカラゲック海峡星団域にて、自らの旗艦ごとハーキンス艦に突っ込み戦死し戦況を逆転させた。

 久しぶりに真のガミラス軍人を見た思いである

 

 

 

 氏名:ヒステンバーガー(Histenberger/Smellen)
 年齢:不明(中年)
 階級/役職:将軍/西部方面軍司令
    容貌:ダゴンを赤髪にしてケツ顎をやめたような見た目。

 オーストリアヒルテンベルク(Hirtenberg) という地名があり、この地名に由来する姓が存在する。また、彼の地において操業しているHirtenbergerという金属のプレス加工で有名な会社も存在する。

 詰襟に3本線の将軍でガイデルと同格と思われる。登場した第4話にて判明したのが62パーセントの支配権を獲得したものの1/3の師団を失う微妙な指揮能力。一方で12話では前線に出た事により事態を好転させたらしく結局は支配を達成したことが明かされる。いうなれば、監督よりもコーチとかむしろ選手として腕を見せるタイプらしい。増援を受けたとしても傷んだ戦力を立て直し、支配を確立するのは容易な事では無かろう。その点、現場指揮官としての能力は非常に高いと言える。

 性格はずばり小心者だろう。第4話で「君は、死刑だ」と言われて本気にして直後に「あと二回……失敗したら死刑だ」と言葉を重ねられて安堵の表情を見せた。そんなバリバリ指揮官を殺しまくっていたら、いくらイケイケのガルマン・ガミラスでも軍が回らなくなるだろう。常識で考えて即死刑なんかあり得んだろうに――にもかかわらず真に受けるというのは小心者に他ならなかろう。

 無論、前任者が大失敗をして死刑になったか左遷されその後任としての新任ならば、ビビっているのも無理はない。死刑を本気にしても無理はない。だが、指揮を任されるというのはそれだけの能力を有していると見込まれたのだからこれ、もっと自信を持ってよかったのだ。

 よく言えば控えめと言ってもいいのかもしれないが……。おそらくはこの奥手な性格が故、西部方面軍を預かっても委縮してしまい逆に損失をこうむり、損失が損失を産んで負けてはいないが芳しくもない戦果に繋がったと思われる。逆に躍進した理由は、まだ信頼されていると自信を得て、発破をかけられて奮起したことで本来の軍司令官に任じられるだけの能力を発揮できた。という風に説明できるだろう。

 最期は不明というか、最期は迎えていないと思われる。凱旋将軍だし。

 

 


 氏名:クロッペン
 年齢:不明
 階級/役職:将軍/南部方面軍司令
    容貌:不明・名前だけの登場

 多分綴りはKroppenだろう、ブランデンブルク州に同名の自治体がある。クロッテルだともうわからん。12話に名前だけ登場した人物であり、おかげさまで徹底的に何者かわからない。

 故に考察・解説のしようがない

 

 


 氏名:ハイゲルHeigel
 年齢:不明(結構年齢高め)
 階級/役職:将軍/不明
    容貌:アンカータイプの髭に前髪と頭頂部を完全に喪失した髪型。

 Heigelは元の形がHeiglで、Hugoというドイツ語の個人名で意味は“心”ないし“考え”。ある意味皮肉な命名

 13話のみの登場で、3本線な上に詰襟の縁が黄色い超高官。黄色い縁取りが参謀部所属を表すならば、多分その傾向なのだろうが登場人物中階級は2番目に高いと表現できるだろう。ただ、序列に関してはキーリングよりも総統から遠く一人挟んでの3番目の席。コの字を描いての席順であれば序列は3番目だし、左右に順次ならば序列は5番目となる。

 性格は大人物になり切れないタイプシャルバート教に入信しておきながら堂々と参謀部(推定)の会議に参加して居られるのだから、面の皮の厚さは驚きでこれは小心者ではない。しかしながら、キーリングの報告を一人挟んで向こうで聞いていると――思わず青ざめてしまう程度の度胸であるからそこは割と一般人。

 

 ストーリー的立ち位置はデスラー総統の独裁に対する否定の為に投入されたキャラクターだろう。意味や目的或いは込められた願いは理解できる。

 ただ、その存在は残念ながら論理的でも合理的でもない

 だってさ、普通に考えて――イケイケで拡大中かつ負ける兆しの無いガルマン・ガミラス帝国でシャルバート教の流行は論理的では無かろう。ソ連で宗教が復活したのもWWⅡがあったからだし、ヒトラー暗殺未遂も総統就任前と負けが込んできた時という彼が弱かった時期。

 風に乗ると神さえ吹き飛ばすのがカリスマ、逆に逆風だと神どころか自分にも負けるのがカリスマ。この法則というか大前提を外すとカリスマにいいようにされてしまうし、滅ぼす機会を逸してしまう。忘れてはいけない歴史の教訓。

 ハイゲル将軍の最期は背後からの銃殺。残念でもなければ当然である

 

 


 氏名:フラウスキーFrauski/CranshawあるいはKranshaw)
 年齢:不明(中年)
 階級/役職:技術少佐/不明
    容貌:前髪は降ろしているものの、儒学者的撫で付け髪。ハンガリアンタイプの口髭とチンストラップの顎髭。能吏然とした雰囲気。判りにくいが実は片眼鏡を左目にしている

 第17話と18話に登場。詰襟の縁が黄色く彩られていた。多分、ヘルマイヤー共々技術職の制服なのだろう。ただ、フラウスキー少佐の場合は肩から黄色い破線と三角が追加されているため、とにかく高官なのだろう。またデスラー勲章なのか、未登場の英雄勲章なのかはわからないが、首元に引っ提げている点はキーリングと同じ。もう一つ、剣のような形の何ぞが左胸についている。

 例えば――ナチスコーブルク闘争名誉章は鉤十字を背景にリースと銘文に剣が縦方向にあしらわれている。鉄十字を背景にリースとクロスした剣に中央は白鷲を配するヴィルヘルム・エルンスト戦争十字章はヴィルヘルム・エルンスト大公が1915年に創設したザクセン大公国(ザクセン=ヴァイマル=アイゼナハ大公国とも)の勲章。ラザロ十字を象ったシャルロッテ十字章はヴュルテンベルク王国ヴィルヘルム2世妃シャルロッテにちなんで名づけられた1916年の勲章。鉄帽勲章は1814年にヴィルヘルム1世選帝侯が制定したヘッセン選帝侯国の勲章。

 要するに、何がモデルなのかは不明。そもそも勲章なのかも不明。


 性格は冷静で実は優しい傾向の人。真田副長とも短い期間でそれなりに信頼関係を築いたようで、見た目と違って心の壁は大して高くない模様。また一人太陽に突っ込む際も部下を銃で脅してまで退艦させた、その部分は他人を巻き込みたくないという人として当然な姿勢を見せた。藤堂長官にも手を差し伸べてやるという立場ではなく重大任務を預かったという立ち位置で礼節を欠くことは一刻たりともなかったと言える。それが故……合理的な考え方と人情の間に挟まれる系の人物らしく、制御作戦の内容や分遣隊を真田副長に任せるなどの判断は合理的の極み。一方、あまりに気負い過ぎて作戦失敗の責任を感じ総統へ顔向けできないと太陽に突入してしまった。彼に関しては常に周囲に対する気遣いが見て取れ――総統への詫びの言葉、期待してくれた古代艦長への詫びの言葉、説得する真田副長への感謝を述べ最後に地球再生への希望を口にする。徹底的に他者に対して丁寧な姿勢と、真心を忘れない登場人物屈指の優しい人だったと言えるだろう。

 技官としての能力は十分高いらしく、真田副長も太鼓判を押していた。残念ながらストーリー上のご都合主義で作戦が失敗する羽目になったが……。

 総統への忠誠はグスタフ中将に勝るとも劣らず、「総統に伝えてくれ、フラウスキーは全力を尽くしたと」と太陽突入直前に真田副長に伝言を頼んだ。真田副長が言うように、作戦立案時と太陽の状況が異なっていたある意味での不可抗力なのは間違いない。にもかかわらず、総統の信頼にこたえられなかったと思い悩んでしまう――総統も彼の喪失は大きな痛手と認識していた。

 

 「真田君、残念だった」からのセリフは涙なしでは聞けないだろう。太陽突入を辞めさせるべくの真田副長のが必死に対して、フラウスキー少佐はすでに覚悟を決めていた。そして「ありがとう、さようなら」とだけ応じ、古代艦長にもすまなかったと伝えるように言葉を重ねる。

 ――私も美しくよみがえった地球をこの目で見たかった――

 ガルマン・ガミラスの名誉を守った、見事な最期だったというほかない

 

 


 氏名:ヘルマイヤーHelmeyer/Nayzmayo
 年齢:不明(中年差し掛かり)
 階級/役職:少佐(意外と普通に軍人か)/不明
    容貌:儒学者的撫で付け髪ゆえにシルエットが赤茶色の富士山。太っているというより、骨格がごついタイプ。

 第21話と22話に登場。惑星ファンタム調査の際にキーリングから地質学のプロとしてキーリングの推薦を受け人に就いた人物である。服装は階級章なしの縁が黄色い詰襟とマント姿、部下らの服装を鑑みると、技官というよりも普通の軍人の可能性が高い。黄色い縁を重要視すれば、参謀部付や総統直轄か。

 性格は真面目で融通が利かないタイプらしく、学者らしいと言えば学者らしいかもしれない。一見すると傍若無人にも見えるだろうが、しかしガルマン・ガミラスを背負って調査に向かった科学者が相手の話をうのみにして引き下がる方がマズイ。むしろ、礼を失しないようにヤマトクルーの調査や推論を否定するのではなく物証がないという一点にのみ焦点を当てて独自調査を続行した。この相手を全面否定しない姿勢は、ヤマトクルー相手にこそ通用しない感があったが普通は相手をうまくいなすに十分と言えるだろう。

 ただ、少し慎重すぎるきらいがあると言えばあるだろう。未確認情報で伝えるか伝えないか迷ったように見えるヤマトがルダ王女を収容したという情報――大事な情報故未確認では憚れると思ったのだろうが、しかしてデスラー総統からすれば早く知らせろという話だった。一方、どんくさいとか腰が重いというわけではなく、調査船がファンタムに絡め取られかけた時にはクルーが動揺して何もしない中、緊急発進を命じ何とかだ出に成功する。

 

 二人のロン毛と短髪な二人の副官を従えて登場。惑星ファンタムに探査ドリルを近くへぶちかますが、痛みにもがいたファンタムが地表面の繊毛というか触手に調査船が絡め取られそうになるのを全速力で脱出。何とか難を逃れ、続く第22話で本星帰還時にルダ王女がヤマトに収容されたらしい事を報告する。

 多分、最期は迎えてはいなかろう。粛清されるようなヘマもしなかったし。

 

 ヤマト2の特に第18話に登場したヴィジュアルのマイセル・ノムドラムと同じデザインで手抜きと呼ぶのか、それともリユースと呼ぶのかは人によるだろう。

 

 

 

 

 あまり大きな役割ではないが画面に登場した人々――

 総統の従卒:第13話でハイゲルを処刑した際にデスラー総統に銃を渡した――シーンは描かれなかったが、使用後の銃を回収した人物。階級は不明だが、服装は完全にグスタフ中将と変わらない将官クラス。処刑に一切の動揺を見せていない事から、ガミラス時代からの仕官か、相当に総統へ心酔している人物かのどちらか。

 ゲーレン:二連三段空母艦長を務めるごつい禿げ頭の童顔。名前の綴りは判らないが、Gehrenならドイツの地名にある。第11話で何故だか名前のテロップが出る人物。多分、他の禿げと混同しないようにとの気遣いだろう。艦長クラスはどうやらマントは羽織るが、詰襟には階級を表す何ぞの証も表されない模様。最期は煙突ミサイルに貫かれた乗艦と共に戦死

 フラーケンの副官( oafish second-in-command):左目の下あたりにほくろのある人物。亜麻色な毛でナウいイカした髪型。酒好きというほどなのかは不明だが、14話にて少なくとも東部方面機動要塞に呼び出しを受けた際は宴会を期待していた。無地に黒ワッペンの普通な副官の服装だがしかしてマントを着用している。ひょっとすると副長とか〈ガルマン・ウルフ〉の書類上の艇長は彼が務めるのかも。

 ダゴンの副官(Captain Boche):割とごつい輪郭、薄茶色の髪色をしたまあまあ珍しい見た目の人物。短髪でごつい見た目、第11番惑星境界面での戦闘を任されたがコスモタイガー隊相手に苦戦した。他の艦長クラスや副官クラスが無地の緑な中、服装が彼だけ白い破線を有しており、階級的には将官の可能性がある。

 駆逐艦艦長:3話で登場した威勢のいい人物。前髪こそなでつけているが、もみあげの毛先は遊ばせているおしゃれさん。迎撃機を引き付け一気に叩くつもりがむしろ叩かれてしまった。驚愕の表情を見せた後、自艦は爆発して墜落する。

 駆逐艦艦長:6話で登場したカッコいい人物。僚艦が次々爆沈していく中、ヤマトと刺し違えるつもりで前進を開始。しかし到達直後、火炎に呑まれる艦橋で「諸君、よく戦った……デスラー総統万歳!」と叫びながらこと切れた。その後駆逐艦はヤマト左舷後方の食堂近くに突入、残存乗組員は艦長の仇を打つべくヤマト艦内へ白兵戦を仕掛けた。容姿は3話の艦長より少し細い以外、大差ない。ただ、どうしたことか左胸の黒ワッペンがない。

 司令機機長:若干、バルゼー総司令と似た感じの髪型。何なら容姿はヤマトクルーのキャップにも似ている。飛行服なのだろうか服装が独特でマントがポンチョのように頭を通すタイプらしい。詰襟の前にマントの生地が出ているのだ。更に鎖骨辺りに金のわっかとそれに通された黒い紐があしらわれている。

 新反射衛生砲護衛隊司令(Usterz):名称不明。司令機機長とほぼ同じ、眉がなく少し顎が直角で長い程度の差しかない容姿の一方、服装が大きく異なり普通の副官系の無地に黒ワッペンの服を着て……デスラー総統と同じマントの羽織り方をしている。ナニモンなんだ……。指揮能力は微妙で、反射板搭載機に古代機が迫った際に護衛戦闘機を発進させたのはいいのだが――ある意味では反射衛星砲と相手に確定させる行動だしあまりよくはない。初めから護衛機を付けておくべきだった。指揮範囲はどうも衛生砲の護衛らしい。それじゃ仕方がないかもしれない、指揮権を統括しなかったダゴンが悪い。

 他にも、作戦会議や参謀会議(第13話、面々が明らかに他の会議と違う)に参加した諸将や各艦のクルーなど様々な人物がわずかとはいえ登場していた。

 

 

 服装等、その他――

 旧ガミラス軍服とガルマン・ガミラス将官が着用する軍服とは意外に違いがなく、襟とベルトの形状が違う程度。

 一方、階級による軍服の形式差はかなり大きい一般将兵はミッドナイトブルーの戦闘服でブルーグレーのブーツとベルトと角付いたヘルメット。艦長級ないし副官級は形は将官と同じだが無地の緑色の制服で左胸に黒ワッペン、バックル無しベルトを着用する。将官は旧ガミラス軍とほぼ同じで白い破線とバックル付きベルトにマント。

 ただ例外もいくつかあり、ダゴンの副官やマイセル・ノムドラムと共に現れた2名などは同様の服装でありながらマントを着用しなかった。技官系は上から下まで服装が微妙に異なり、肩から袖にかけて直線ないし破線があしらわれている。といった点が例外として存在している。

 

 

 苦難を共にしたガミラス民族と違い、ガルマン民族を吸収したため幾らか軍の様相が変化しているのがガルマン・ガミラス帝国残念ながらかつての超強力な団結力を見せた国家から、巨大化して幾らかの緩慢さを有する国家へと変質している感がある

 苦難の道にあったとはいえ天から降って来た自由を享受――ここからガルマン系が万能感と選民感を醸成し総統に対する忠誠が薄れるのも無理はない。よくある話だし、人間的ともいえる。しかし、傍から見ると猛烈な勝手気ままな連中にしか見えない。そこから関連してか、おそらくガルマン系というか新入りな軍人は無謀で戦力をすり減らす戦い方を平気でぶちかまし保身に走るタイプが目立った

 一方で武人的な人物に関しては総統に対し変わらぬ強固な忠誠を見せている。また、戦い方も部下をすりつぶすのではなく最善を尽くし、自らも危険を分かち合うタイプの指揮を行う。

 

 

ヤマトⅢ 地球側登場人物の考察

 

 久々のテレビシリーズであるヤマトⅢでは地球側でも懐かしい面々の他に、新たな登場人物も多数現れ結構なボリュームを成す。

 なお、今期から軍人や公職者の被る帽子の顎紐が腰(俗にいう鉢巻)と同じ色に変更された模様。今までは黄色で目立ったが、今回からは全く目立たなくなった。

 

 

 

 氏名:団彦次郎(英語版:Dan Hammer)
 年齢:不明
 階級/役職:宇宙開発気象局一等技官/気象観測船船長
    容貌:Full beardな髭

 艦長用の濃紺コートと同じほぼ同じシルエットだが、両の肩口に黄色い錨のマークがあしらわれていたり、コート全体に黄色い縁取りが成されている点が違う。また、胸に何の勲章かは不明だが略綬が、恐らく肩にも肩章があしらわれている。帽子も鉢巻が紺色で容貌と相まって、宇宙戦士っぽい。その為、アルファ星第4惑星警備隊司令よりも軍司令官っぽい。最も特徴的なのは黄色いジャボだろう。

 若干高圧的な態度が鼻につくし、人の話をあまり聞かないタイプ。揚羽財閥を揚羽コンツェルンと呼ぶところも、何ともお洒落さんで。どう考えても頑固な人物だが、その裏返しで義侠心は溢れており悪い人では決してない。プライドの高さとそれに見合った振る舞いの出来る人といえば、一番聞こえのいい表現だろう。

 判断力はかなり高い方だろう、元々宇宙気流に巻き込まれたがそれを何とか脱出に成功し安全な空域まで離脱出来たのだから。また、ダゴン艦隊の強力さを理解しヤマト誘導の罠に使われると理解したうえで、SOSではなく退避要請を放つなど優先順位をかなり明確にして行動に移す。その流れる様な判断は彼が凡人では決してない事の証左だろう。実際、気のゆるみ勝ちなダゴンが指揮を執ったから勝ったのであり、彼の副官が指揮を執っていたならばヤマトは圧倒され負けていた可能性すらある。

 ヤマトとの出会いは――宇宙気流に巻き込まれ観測船の機関が損傷したため立ち往生していたところを、たまたま付近を通っていたヤマトに救援される。

 その際の様子から古代の名前を知っているらしく、ヤマトが駆け付けたと分かったが為に観測船の護衛を依頼したした模様。また、あくまで艦長を見込んでの事だったらしく、他のクルーには目もくれなかったのが大分印象悪いが同時に古代艦長に対しては真っ正直に対峙。ヤマトの任務を知った上での行動という点、自分の仕事はそれと同じぐらいに重要だという自負があるとみて相違ない。方針決定の会議が行われている際の時間つぶしで自分にワインとステーキにスープやらハムかなんかの前菜やらサラダやらのもてなしを受けた際はヤマトクルーがいつもこれを食べていると勘違いし贅沢だとキレる――短絡的な行動ではあるが半面、もてなしをする必要がないという意味ともとれるし自分は贅沢ははするべきではないという考え方を持っているともとれるだろう。公僕という立場であるとか任務に就く際の気概という点では大変に生真面目・実直な側面を有するのが見受けられた。

 揚羽武の父・蝶人と知り合いでヤマト乗り組みをした武に感銘を受ける妙に純粋な所もあるのが団船長の特徴で、ヤマトの任務やそれに携わるクルーの気概に触れた結果、会議の結論と同じ頃に同じ結論を自分で出して無人宇宙気象観測ステーションへ単独行を行う。その後部下二名と共に作業に当たっている最中、ダゴン率いる第17空母艦隊の攻撃を受けた際にはSOSではなく罠だと警報を発しヤマトを退けようとした。驚くほどの胆力のある人物である。

 最期は――意外と堅い観測船で脱出を試みるも猛攻に次ぐ猛攻を受け観測船は爆散、すぐ隣のロス第154惑星に脱出ポッドで不時着するも重傷を負い、収容に現れた揚羽にヤマトに対し古代艦長に対し第二の地球を見つけるよう、現宙域を離れるように言葉を残しこと切れた。

 お見事な最期と言えるだろう。とにかく高潔で孤高なのに情熱家、それに見合うだけの振る舞いと威厳を有する大人物といえよう。

 

 

 氏名:アルファ星第4惑星警備隊司令本名は不明
 年齢:不明
 階級/役職:不明(中佐程度と推定)/アルファ星第4惑星警備隊司令
    容貌:短髪口ひげ、薄茶色の髪質、小さい黒目、覇気のない表情。

 キャプションは警備隊司令第7話に登場した人物で先に述べたように物凄く気迫にかける覇気のない顔で、部下も同じように気迫に欠ける。司令の制服は形式こそさらばの空色な制服に近いが、左右に二つづつあるボタンで留める形式かつ内側の生地は黄色ではなく赤と結構違う。肩にも階級を表す肩章がついているのかもしれないが、判然としない。軍帽の鉢巻きはヤマト2の艦隊司令官たちとは異なり、紺色。

 部下たちはベルトこそしているが、くすんだスカイブルーの生地で前で留めるタイプの学生服然とした制服であり……これが余計に覇気のない要因と思われる。

 

 ひょっとすると、警備隊は防衛軍とは違う指揮系統なのかもしれない国土交通省の外局である海上保安庁のように、宇宙移民省の外局として警備隊があるとすれば制服の系統が大きく違ったとしても不思議はないだろう。無論、いざという時には海上保安庁のように自衛隊に組み込まれる可能性はある。第2話で襲撃された際は戦闘衛星が防衛軍の指揮の元に集結して防衛線に当たっていたが多分……明確な外敵あるいは多数の敵に対峙した場合は即時に防衛軍が中核として戦闘を行うという事前のプロットがあるとすれば何とかなるはず。

 先に述べたように第7話に登場したが、その後は不明。確かに圧倒的戦力を有する第18機甲師団艦隊相手に傷ついた手勢を率いることになったとはいえ――指揮能力は残念ながら低く、小型の警備艇を宙に浮かせてヤマトとドックをカバーする程度の策しか打たなかった、これはほぼ無策と言っていいあの気迫ゼロで逆によく全滅しなかった。11番惑星と冥王星に加えアステロイドべルト基地から出撃した惑星パトロール艦隊と合流したのかは不明だが、彼らが到着するまでよく持たせたと思う。反対に何とか戦い抜いたからあの気迫ゼロ=燃え尽きた状態だったのかもしれない。そう言う事にしてあげよう

 

 

 氏名:サイモン(フルネーム不明/Dr. Simon Probe)
 年齢:不明
 階級/役職:民間人・教授/地球連邦大学宇宙物理学部長
    容貌:フラウスキー少佐的な金髪、ふっさふさの口ひげを有するアメリカ人。詰襟のシャツに濃紺のウエストコートを常用する。

 第一話にて太陽の燃焼異常増進を観測データから読み取りこれを認識し地球連邦大統領に通報。大統領はこれを危険な情報と認識し太陽エネルギー省の黒田博士に相談――その結果、サイモン教授の意見は退けられる。それでもサイモン教授はめげずに懇意の藤堂長官を頼り危険性を説いた結果的にこれが黒田博士に対して闘争を仕掛けたと捉えられてしまった様子で、地球連邦大学総長が直々に首を言い渡しに訪れるに至る。

 性格は実直だが全く空気が読めないタイプと言えるだろう。

 まず総長に話を通す、知人経由で黒田博士に意見を問う、これらの下ごしらえをしてから大統領ないし藤堂長官に話を持っていくのが筋。しかして、一足飛びに大統領に話をしてしまったのである。総長だって気分は悪いだろう、黒田博士も気分悪いだろう。藤堂長官に話を持っていったのも、これ大統領が後で知ったら気分悪いだろう。そう言ったところを考えていないというのが、悪く言えば独りよがり。ただ、良い面もあるだろう――真面目で臆しない性格というのは人間的には十分魅力的。藤堂長官が好きなタイプだ。誰に忖度することなく、正しいと思ったことを実行するというのは生中な事では出来ない。

 ただ、それで日本的な組織において活躍できるかといえばそれはない。アメリカ的な組織であったとしても、あまり一足飛びに物事を進めると結構キレる人がいるらしいからアメリカでも無理かもしれない。結果、サイモン教授は在野の専門家として或いは独自に財団でも立ち上げてそこで研究を続ける他ないだろう。多分、それがサイモン教授にとってのベストだと思われる。

 第1話と第2話に登場したが、権力闘争に敗れアメリカへ帰国した。その後どうなったかは不明可哀想だが当然と言える結末

 

 

 氏名:黒田(フルネーム不明/Dr. Dubiaius)
 年齢:不明
 階級/役職:博士(専門は不明)/太陽エネルギー省観測局長(公務員・文民
    容貌:意外とシャープな輪郭、黒髪、口ひげの日本人。ライトブラウンの背広とレッドブラウンのネクタイを常用。

 第1話及び第2話では太陽燃焼の異常増進を認めず、表面温度の上昇をよくある現象として一笑に付した。しかし事態は好転せず太陽は異常増進を続け――ついに第7話で態度を変え、太陽燃焼の異常増進を認め対策を練り始め第8話において太陽冷却作戦を実行に移すが失敗。その後の行方は不明。多分、引責辞任はしただろうがアカデミズムの中では十分に立場を維持しているとみて問題ないだろう。異常増進自体がイレギュラーであるから逃げ道はある。

 昨今お茶の間をにぎわせた学者なのか政治家なのか扇動者なのかわからないタイプの学者に見えるが――実は学者にはよくあるタイプ学者はアカデミーに属している限りは政治抜きでは語れないのである。たまに学者が政治を出来ない奇人変人ばかりのように思っている人もいるが、確かに奇人変人もかなり多いがしかして自分の立場を守れるだけの政治力と身の回りに万が一が起きないように程度の気遣いが出来る人がほとんど。ノーベル賞を取るような学者も奇人変人だとしても大抵は周りからの評判が高かったり、業界では圧倒的な発言力を誇るのが常。そしてその業界での常識は世間では全く通じない……。学内政治、あるいはそれに類する闘争が出来ないタイプは大抵、政治力がないのではないく才能がないから浮上できない。考えてみればわかる事で、自分が傍若無人に振る舞えば上司に当たる学者にも迷惑がかかるのだから一般人程度には人付き合いをするのが当たり前といえば当たり前だろう。政治力がなくともただ者でなければ大体、誰か政治力のある人が後ろ盾になってくれるものなのだ。別に学会に限らず、建築やお笑いやそれこそ政治の世界では頻繁に見られる光景である。

 黒田博士に関しても同じだし、黒田博士が動かない=地球連邦大統領府が動かないという事でサイモン教授は藤堂長官とコンタクトを取った。ある意味先制攻撃を受けたから、防衛のために反撃で大学に圧力をかけただけ。大変セコイ、汚いやり口ではあるが別に違法ではない。

 正直、印象はよくないし性格もよくはないだろう

 裏から手を回してサイモン教授をクビにするのは中々性格が悪い。しかも、しれっと方針転換して太陽燃焼の異常増進を急に認めて制御計画の先頭を走るのだから面の皮が厚いという他ないだろう。マイナスのエネルギーを照射して太陽の燃焼異常増進をおしとどめようという考え方も対症療法的で、はっきり言えば官僚的。

 だから表面的な付き合いならば全く問題ないむしろ一緒にいて楽しいぐらいかもしれない。また、敵にさえならなければ付き合いやすいタイプだろうし或いは自分が権力者ならば……

 学者としての能力は平凡だが、考え方が官僚的で完全に学者としての自分の足を引っ張っている。何といっても負のエネルギーを照射して冷却、太陽の燃焼異常増進をおしとどめようとしたのは根本対処ではなく対処療法でしかないのだから発想が硬直的。ごく一般的な観測からの学者として分析は十分出来るとは思われるが、しかして何かを大きく転換するクリエイティブなタイプの学者ではないことは断言できる。

 

 

 その、出番・影響力の少ない面々――

 移民本部会議の面々:第12話と第19話に登場し、第12話の方では色とりどりの制服が集まり、長官(つまり本部長)らを合わせて21人と大所帯。赤いちょっとロン毛な副本部長らしい人物が取り仕切っていた。一方で第19話はカーキ色ばかりで政治家らしいため会議の性質と面々が少々異なっているらしい。こちらは第12話とは違い、長官をヒステリックにつるし上げていた。役に立つような面々ではない。

 

 戦艦〈ヤマト〉戦闘班砲術科第一砲塔:キャップこと坂巻浪夫(Greg)仁科春夫(Ben "String" Bean)が指揮するのが第一砲塔。

 キャップは鷲のくちばしのような髪型で一見すると科学忍者隊。第4話からの登場で、第6話の食堂防戦でも多分登場、第7話では酒場を荒らした一人に名を連ねる。アルファ星第4惑星の来歴について簡単な知識を有するなど、見識は広い模様。第7話の奇襲攻撃では帰還後、砲撃を指示し圧倒されかけた戦況をちゃんと回復するため砲術長としての能力は十分らしい。雷電にぶっ飛ばされるなど、ジャブは早いが体幹は強いわけではないらしい。砲術以外は得意ではないらしく、テーブルを雷電にぶちかまそうとしたところ、うっかり赤城に振り下ろしてしまう大ポカをやらかした。第22話で再び登場し、グスタフ艦が放った惑星破壊ミサイルを撃破しようと試みたが、勝手違う第二副砲と第三砲塔を指揮したためか当たらず……。最終的に戦死したかは不明設定上は加藤四郎の同期でイカロス天文台時からの乗り組みとの事。

 仁科は第7話から登場した、平田を軽薄にした感じの見た目の茶髪男。キャップと一緒に酒場を荒し、古代艦長の命令には従っても島副長の命令には従わないと豪語したヤベェやつ。キャップと同期らしいが、口ぶりを見ると二人ともガトランティス戦役に護衛艦辺りに乗り組み従軍しているとするのが妥当だろう。各種戦闘の敗北をナチュラルに各艦航海班の腕と考えていても不思議はない。じゃないと仁科がエグイ傍若無人な輩になってしまう。ただ――砲術科の手腕を称える揚羽と土門にプロは甘くねぇんだよと答えるなど、口が悪いだけかもしれない。戦死したかは不明

 

 戦艦〈ヤマト〉生活班炊事科:古代の親友平田一Alan Hardy、チーフ幕之内勉Tsutumu "Whizzer" Makunouchi)などが所属するのが炊事科。

 髪は短くもみあげも襟足もまったく遊ばせていない真面目人間な平田は古代の同期。第4話では味見を担当、また同話で深夜に古代の面倒=訓練後の楽しみであるレモンティーを用意している、雪より奥さんをしていた人物。意外と戦闘指揮が出来る人物で、第6話の〈ヤマト亭〉大食堂での戦闘ではテーブルを盾にして抵抗線を敢行したものの……最期はガルマン駆逐艦の突入に伴う白兵戦で古代ら戦闘班到着前に重症を負い、戦闘終了時にはすでに戦死ガミラス戦役からの生き残りの最期である

 幕之内チーフは度付きグラサンが特徴的で第4話に登場、訓練中にクルーの食事を用意すべく大鍋をかき回し部下に指示を出していた。第4話では〈ラジェンドラ〉の艦内気圧や大気組成などから知的生命体は同じ環境でしか発生しないと仮説を立てるなど論理的思考の持ち主であることを見せた。また、味見は雪の仕事らしいが同話にてラム艦長にBタイプのディナーを実際に用意したのはチーフである。真田副長の同期でガトランティス戦役生き残り19名の内の一人という話らしいが、画面上には全くそれらしいエピソードは出ていない。第20話ではおたまで深底鍋を叩いて楽し気な様子を見せたが、これがかなり印象的。

 最期を迎えたかは不明だが、大丈夫だろう。

 

 赤城大六(Ace "Toughy" Diamond):戦艦〈ヤマト〉機関部所属の元輸送船機関長で新人ではないらしいがいつヤマト乗り組みになったのかは不明、あだ名が‟宇宙のトラック野郎”。揚羽をヤンキーにしたような見た目で、大変気取り屋なご様子。

 第7話で「待った! その喧嘩、俺が買ったぜ」とヘルメットをバスケットボールのように人差し指の上でまわしながら初登場、「よく聞け! 元輸送船機関長、宇宙のトラック野郎赤城大六とは俺の事よ」と啖呵を切り、更に喧嘩を辞めて仲直りしないと、俺のど根性見ることになるぜと述べた親分肌なトラック野郎。キャップが間違って彼の頭を椅子でぶん殴った時、仲裁人を殴るとは何事だとキレたが、仰る通りごもっとも。第13話では占拠しようとしてきたバース星の囚人相手に食って掛かろうとするが太助に制止された。長幼の序というか、先輩後輩の関係は大事にする人物らしい。

 戦死したかは不明。まあ、機関部員だしヤマトが沈んでないから多分大丈夫だろう。

 

 雷電五郎(Goro "Buster" Block):戦艦〈ヤマト〉航海班航海科所属。島を航海班長様と呼ぶほど尊崇している人物で航海班相撲チャンピオン。島をゴツくしたような容姿で、凄く背が高い。詰襟に白い斜め線が加えられているため、新乗組員。設定上は宇宙開発大学付属高校出身らしいが画面上は全く出ていない。第7話ではスナックで大暴れした一方、第8話ではコスモハウンドに乗り鋳込み古代をサポート。第20話で喜びのあまり同僚をぶん投げまくる。

 戦死したかは不明。地味に外に出る人物であるため、ヤマトⅢで生き残っても完結編では果たして……。

 

 板東平次(Heiji "Beaver" Bando):眉間のほくろが印象的な戦艦〈ヤマト〉工作班技術科所属で今作における真田副長の右腕的存在、2における新米と同じ。詰襟に白い斜め線が加えられているため、新乗組員。

 地味に第1話の宇宙戦士訓練学校の反重力ドームのシーンにも登場第4話の訓練時に宇宙服のヘルメットを前後逆さまに着るアホな姿や、訓練後に土門と一緒にソファーでぐったりするだらしない姿をさらしたものの第7話では戦闘班と航海班の欠けたヤマトで防戦すべく、艦橋でレーダー員として敵ミサイル補足に当たった。また、第18話で真田副長と共に工作班分隊のオペレーターとして太陽制御任務にも当たる。第21話では真田副長と共に惑星ファンタムの調査に当たった。

 以降の登場はないため、最期を迎えたかは不明

 

 京塚ミヤコ(Penny Aycur):戦艦〈ヤマト〉生活班医療科所属看護婦第2話佐渡酒造と共にアルプス秘密ドックに現れたが、あの感じだと彼がスカウトように思われる。そのまま二人は一緒にヤマトへ乗り込む。

 第9話で他の女性クルーと共に下艦

 

 藤堂晶子(Wendy Singleton):南十字島で相原が出会った想い人。藤堂長官の孫娘で移民計画本部長秘書つまり祖父の右腕。左目に泣きほくろの茶髪ロングな女性で、一見すると真田澪的な容姿。第3話や最終話などに度々登場した

 多分死んではいない。だが、以降の登場はない。

 

 山上一家:山上老人トモ子トモ子の夫の3人でバーナード星第1惑星を開拓すべくヤマト到着の5年前に地球を出発。寒い環境に必死に慣れそれなりに幸せな生活を送っていたが風土病によって夫が倒れ、それにより望郷の念の湧いた息子夫婦に故郷を捨てた山上老人がブチ切れ乗って来た宇宙船を爆破してしまい、それ以降地球帰還を目指したトモ子は付近を通りかかる宇宙船へこっそりSOSを送っていた。そんな苦しい境遇の一家である。第8話と第9話に登場したが残念ながら第8話で角刈り夫が第9話で額から頭頂部にかけて禿げた老人がヤマト艦内で絶命。残ったトモ子は身ごもった子ともに警備艇へと移り地球への帰還の途に就いた。

 揚羽一家:揚羽蝶武の母の3人家族。第2話に登場した揚羽財閥当主の蝶人は長官の友人でヤマトの改造費用を提供したが、息子が可愛いあまりに彼の軍人としてのキャリアを裏からつぶそうとするエスタブリッシュメント全開な人物。ただ、重病の妻には弱く結局武の出征を認めた。東起デパートの稲森社長を見習った方がいいと思う。それに引き換え奥さんは高潔で自分の命さえ息子の道が切り開けるならばと投げうつ、さすがオカン。二人の容貌としてはブラウン系のスーツに身を包んだ口ひげの男性と幸薄そうなご婦人。

 一方の武(Michael "Flash" Contrail)は判りやすいロン毛のハンサムボーイで戦艦〈ヤマト〉戦闘班飛行科所属。詰襟に白い斜め線が加えられ、当然だが新乗組員。宇宙戦士訓練学校でも優秀だった様子で、かつての山本や坂本に比べれば劣るもののコスモタイガーの割と優秀な乗り手。気の合う友人・土門と共に度々無茶をやらかす。第13話では囚人処刑中のレバルス隊長をコスモタイガーで射殺するなど、活躍。最大のやらかしはルダ王女と相思相愛になった事……最期は第25話、土門が致命傷を負ったシーンを目撃かつ、このままではハイドロコスモジェン砲発射叶わないとみた事からベムラーゼ首相旗艦機動要塞のインテークらしき箇所へ特攻して果てた。その後、シャルバートへ迎え入れられる。ちなみに、第4話の訓練時にヤマト艦内で同期と共に迷子になって出撃が少し遅れた。

 

 土門一家:父母土門竜介の3人家族。第1話で父母は結婚記念日の行事として太陽観光に臨んだが、そこでダゴン艦隊が放ったプロトンミサイルの流れ弾により遭難。残念ながら古代らが捜索に当たったが、遺体は見つからなかった。眼鏡をかけた白いジャケットの紳士とポニーテールと言っていいのかわからないがそんな感じの髪型のご婦人である。14時東京発水星経由の太陽観光船に乗ったのが、運の尽きだった

 黒髪の毛先を遊ばせている以外は古代とほぼ一緒の容姿な竜介(Jason Jetter)。詰襟に白い斜め線が加えられ、当然新乗組員。彼は宇宙戦士訓練学校をトップで早期卒業するも、古代の無茶な人事により戦艦〈ヤマト〉生活班炊事科勤務となる。結果、古代に猜疑心を抱くも、拳で話し合った結果和解。度々生活班として艦外任務に従事し、たまたま舷窓を見た際に目撃した次元潜航艇の潜望鏡を発見――更に異次元戦闘を選択科目で履修していた為、対次元潜航艇戦の指揮を執る。そのまま事実上の戦闘班移動・艦橋勤務となり、第20話の惑星ファンタムでの調査にも従事。揚羽とはかなり馬が合ったらしく、第一志望が通った彼を羨むだけで反発は全く見せなかった。また、度々二人で無茶な行動をしでかす。最期は第25話、ハイドロコスモジェン砲の掩蓋を作動するため甲板に出てボラー艦載機の銃撃を受けた意外だが、割とミソジニーな所や無防備なシャルバートを見て征服しようと言い出すなどかなり粗暴な気質がある

 

 東京空港職員の皆さん第2話で災難に遭った方々。太陽の異常により電波障害が発生し、一切の機器に支障がきたしてしまった為に空港を閉鎖しようとしたが手遅れ。「まただ」という発言があった為――普通に考えれば、そもそも便数を減らすなどの措置をするのが上策だと思うのだが通常業務を行い衝突事故が起きてしまう。

 商用機パイロット第2話で災難に遭った方々パート2。全体として青いカラーリングに袖口が白と黒の一周横じまをあしらった制服を着用している。ヤマト2で登場した空港職員に似たような恰好。機長は金髪おっちゃんだが、副機長はほぼ映っていない。機長で計器異常でほとんど横倒しになった機体を水兵に戻し、緊急着陸(というよりも不時着なのだが)を試みた。しかし副機長の見た通り、着陸しようとしたB滑走路には自家用機のような小型ジェットが進入中。機長は驚愕の表情を見せ、最早どうにもならない機体はそのまま自家用機を踏みつぶし双方が致命的な損傷を受ける。そしてそのまま火だるまになって爆散した。ずっと帽子をかぶっているぐらい几帳面な人なのだから多分、着陸のほぼ最終段階での事故だろう、避けられる感じはしなかった。

 

 地球連邦大学総長:髪も髭もロマンスグレーな新渡戸稲造第2話に登場し、サイモン教授を首にした。死んではいないと思うが、もしかすると熱中症で……

 

 宇宙戦士訓練学校第1話に登場した校長教官。ハゲの博士然とした髪型で口ひげがあるのが校長の特徴、目がバッキバキなのが教官の特徴。それぞれ早期卒業の決定と訓示、早期卒業生を訓練場からピックアップ――ひょっとすると射撃訓練が最終試験だったのかもしれない――する役目を負っていた。他にもエイブラハム・リンカーンみたいな見た目で白と赤の制服に身を包んだ教官が登場し、古代と会談を持っていた。

 死んではいないと思うが、存外教官も配置換えで前線に出向くのが地球防衛軍でありひょっとすると護衛戦艦に乗って――という事も有りや無しや。

 

 〈SNACK CENTAURUS〉のご主人第7話に登場。ちょっと額の広い口髭を蓄えた赤毛のおっさん。勤務中に酒を飲んでいいのかと疑問を呈す、普通の感覚の持ち主。哀れにもヤマトクルーの乱暴狼藉で店を破壊され。ビール樽まで穴をあけられ――必死に塞ごうと試みたが、叶わなかった。昔は繁盛していたと思われるが、スナックは現在、閑古鳥が鳴いている。

 多分、最期は迎えていないはずだがスナックの経済状況は厳しいかもしれない

 

 ケンタウルス座駐留 地球防衛軍警備艇艇長第9話でほんの一瞬だけ映った人でヤマトから退艦した京塚ミヤコら看護クルーを収容する。服装含めアルファ星第4惑星の警備隊長と大差ないが、黒目が大きく少しだけ覇気のある人物。「〈ヤマト〉、航海の無事を、お祈りいたします」とセリフがあり古代は「ありがとうございます、〈ヤマト〉発進します」と応じた。ケンタウルス座駐留地球防衛軍警備艇はガトランティス戦役で登場したパトロール艦であるが、艦体がグレー一色の波動砲口や砲の前盾て或いは艦橋の前半部がクリーム色に塗られている。ノズルコーンやフィンの色は不明。驚きなのが、甲板上に出た面々が皆宇宙服を着ていない事。ヤマト第一作でシールドが展開されていたシーンがある為、多分そんな感じなのだろう。艦長なのだから大佐程度の階級のはず。

 アルファ星第4惑星の援護に向かってあげてもよかった気がするが、一方でたった一隻のパトロール艦で何が出来るかは疑問。ワープ明けの拡散波動砲発射であれば何とかなったかもしれないが、ワープ明けに砲撃は不可能。エネルギー充填中にダゴンに襲われる可能性の方が高い。だから出撃しなかったのは無理もないが――ただ、何か失態に見えてしまう。まあ、襲撃後の配備という可能性もあるだろうし、微妙なライン。

 

 他にも何人かいるのだが、情報が無さすぎて判らん

 

 

 ヤマトⅢにおける登場人物は結構思い込みが強い傾向があると言えるだろう。裏を返せば信念のある、気骨のある人物と言えるのだが――しかしてそれが当人たちの立場を悪くする傾向に働いているのは悲しい限り。

 挙句に、空港での電波障害などで大惨事を起こす。これ、ヤマト2でもテレサの祈りやナスカの奇襲で似たような事が起こっていたのだから、対策は講じられたたはず。だのに何もしなかった……これは現実にもある話で、皮肉とかあぶりだしといった次元を通り越している。ガトランティス戦役に直面し驕りから遠ざかったはずが、また驕りに近づき今回はキャラクターの行動まで問題含みで全員が……正しさとか理想を求めた結果逆に驕りにどっぷりつかっているのは見ていて苦しくなる程。

 また、指揮官やクルーは正直な所……ヤマト2の時代に比べれば結構質が下がったように思われる。単純に、勤務時間と時間外の区別や公私の区別がつかない傾向が強くなっている。何となく放映時の時代背景も頭に浮かぶためあまりいい気はしない。

 ちょっと質落ちたね、地球人

 

 

ボラー連邦側人物の考察(ヤマトⅢ)

 

 回を重ねて来たヤマトⅢの考察或いは解説、今回は対象を人物に絞りたいと思う。つまりボラー連邦陣営の面々である。

 


  ボラー連邦――

 国家元首(或いは最高指導者)
 氏名:ベムラーBemlayzé/Bolar Prime Minister Bemlayze)
 年齢:不明(中年と推測)
 階級/役職:連邦大元帥スターリンを参考に推測・名誉職)/連邦首相
 容貌:白色の肌、極めて薄い色彩の栗色の髪、赤い虹彩、多少肥満体型

 彼を表す形容詞は苛烈果断過大そして冷徹。天の川銀河一帯に支配力を展開する巨大国家・ボラー連邦の采配全てを握る首相であり、必要があれば前線に立つ軍司令官でもある。旗艦仕様の赤い戦艦(通称ベムラーゼ艦)とブラックホール砲を主兵装とする大型機動要塞とを移動司令部として利用する。連邦首相と表記したが、劇中でも公式でも首相としか呼ばないが、連邦制の国では大体の場合において首相や大統領の頭には連邦を付ける為それに倣った。

 基本的に政治家としてはかなり能力の高い部類に入るだろうという事が一つ言える人物。何といっても中長期的戦略眼と大規模艦隊の投入を躊躇しない大胆さは政治家にとって決して欠いてはならない資質だ。また、同格以上の強力な政治リーダーであるデスラー総統に全く物おじしないというのも、なるほどトップリーダーとして相応しい姿である。東部方面軍の猛攻を受けて守備艦隊が壊滅したバース星に直ちに、それも天の川銀河の外周を回ったのかガルマン・ガミラスの領域を突っ切ったのかはわからないが――どちらにせよボラー連邦の中心地から遠く離れた彼の地へと赴いたそのパフォーマンス力は目を見張る。首相直属だろうが強力な戦闘艦隊をバース星へと回航させたのも同星の住民を安心させるのに十分役だっただろう「我らが首相には無尽蔵の戦力がある」といった具合に。軍に対して首相がどれだけ口をはさんでいるのかは知る由もないが、しかしてボラー連邦艦隊は基本的に一隻当たりの火力は大した事無い、ガルマン・ガミラスの艦隊に比べれば主砲は意外と威力が高いが反対に射角が格段に狭く話にならない。ところが、一隻当たりの中途半端火力と射角も圧倒的多数を集結させる事でデメリットを粉砕してしまう。このとにかく物量に物を言わせて敵を押しつぶす作戦は見事だし合理的。あまつさえ、新技術や新型艦の建造に余念がない。結果としてこれを後押ししているのは当然に首相だろう。その点は視野が極めて広いと言わざるを得ない。ベースとして冷静で計算高さのある人物だ。古代との面会時も、〈ラジェンドラ〉に味方したという事はボラー連邦に属したのだと無茶な言葉を述べたが一方で属国という表現は決定的に避けていた。つまり、実際は別にして表面的には地球がボラー連邦に属する事になってもあくまで属している保護国であり独立は守るという立場を堅持したのである。この言葉のセレクトはまさに政治家と言えるだろう。

 ただし彼には致命的な問題があり――軍事的センスが壊滅的なのであるデスラー総統ほどではないが、指揮が雑で弱い判断の全てが政治的過ぎて、軍事的にはあまり意味を成さなかったりリスクが多きスグリうのだ。確かに、自身を囮としてデスラー総統をガルマン・ガミラスの勢力圏外である太陽系におびき出した作戦、これを成功させたのは見事だ。自身を囮とする危険な作戦を実行する決断力もこれ、一級の政治家と言えるだろう。だが、どう考えても危なすぎる。軍司令官としては渡るべきではない橋を渡っているのだ。しかも、頼るべきはブラックホール砲の力押しの一本鎗でしかない、ベムラーゼ首相旗艦機動要塞・通称ゼスパーゼだ。頼りないというほかないだろう。挙句に護衛艦隊の数も十分とは言えなかった。

 そりゃ、デスラー総統をおびき出すのに本国に残った艦隊を全て吐き出させたら――おびき出されなかったとは思う。シャルバートが大した事無いという事実が判明して猶、地球に固執するのはあまり意味がない。大艦隊を動かす、本国防衛を手薄にすればそこにある意図を探ろうとするのは当然。動かせるだけの艦隊を引き連れた割合に弱勢、復讐のような短絡的行動に見せた方がデスラー総統も安心しえ、本国帰還せず地球に直行できただろう。

 だが、あまりに危険であまりに無謀。案の定、ハイパーデスラー砲に蹴散らされてしまった。基本的に自国の軍事力と割と高めの技術力に頼った、それも相手がこれに全く抗せられないという前提で作戦を組んでいく、このお花畑思考回路は最早謎。

 キャラクターとしてはこれくらいアホでなければストーリー展開上、ヤマトが勝てなくなってしまうし、もっと言えばこの程度のお花畑政治家はそこら中に転がっているからある意味でリアリティはあるのだが、ちょっとどころではなく残念な要素。

 政治家としては中々どうして見どころがあるが、それを打ち消してあまりある軍事的なセンスの欠如に加えて地味に運も悪い。

 個人的な資質に関しては明らかにサディストで猜疑心がかなり強い、まさにスターリンタイプの人間性であろう。デスラー総統がヤマトを見逃すように要請した時の反応は特に晩年のパラノイア気質の高まったスターリンのように、自分が相手によからぬことをすると考えるのだから相手も自分に同じことを考えるだろうと、とにかく疑ってかかった。また、バース星への粛清は完全にスターリン的残虐さの発露と言える。彼の発言は志向も思考も徹底した大国主義・帝国主義で単純明快かつ簡潔極まる点もスターリン的。振る舞いは尊大――よく言えば偉大・威厳ある保護者としての自らを演出するがそれはあくまでボラー連邦その物の方向性でもある。その範囲で推移しており、自身を救世主のような形で演出する内容はついぞなかった。これはそのものずばりにスターリンで、彼もソビエトを打ち立てたレーニンに対する崇拝の系譜につなげる形で自身を崇拝させたのであって直接崇拝はさせなかった。これはある意味共産主義のジレンマだろうが。

 しかしながらその狂気は表面的には隠されている。表敬というより苦情を申し立てに現れた古代らに対し〈ラジェンドラ〉への支援に対し感謝の意を表し、その後の囚人に対する古代の不躾な内政干渉へも烈火のごとく怒るというわけではなかった。短気な人間ならあそこでブチ切れてもよかったが、彼は我慢した。古代がボラー連邦に背く(本来は手を振り払っただけではあるが……)事を明言するまで、実力行使は避けた。これは中々できる事ではない。もし自分なら、古代の最初の口答えの時点で銃をぶっ放すもん。

 彼は概ねにおいて口汚く罵る事はなく、幾らか高飛車な相手に対しても王者のように庇護者のように振る舞う。紳士的というほどの好感はないが、粗暴というほどでもない。部下の話もそれなりに聞くし、不要な暴言もない。

 

 キャラクターとして、見事なまでにスターリンをトレースしストーリー展開上必要な要素を詰め込んだと言えるだろう。元々はベムーリンとして登場する予定だったとか。ベムラーゼになった理由は知らん、名前の元ネタもわからん。似たような名前の人があまりいないから。

 


 氏名:ゴルサコフ(Gorsakov)
 年齢:不明(中年と推測)
 階級/役職:不明(大将ないし上級大将と推測)/参謀長
    容貌:白色の肌、多少緑がかった黒髪、虹彩色不明、中肉中背型

 ベムラーゼ首相の副官のような立ち振る舞いをした人物でシャルバート遠征を行った。率いた艦隊が本国第二主力艦隊なのか、別の艦隊なのか不明だが――3個艦隊を出撃させ南辺のハーキンス艦隊まで繰り出すのは危険だろうから多分、バルコム艦隊出撃に出遅れた部隊を率いたとするのが妥当。

 存外普通ないし、結構優秀な軍司令官ゲオルギー・ジューコフに例えるほどではないが十分に勝ちうる作戦展開を指揮できるだけの能力は有している人物。脅威評価も意外と妥当で、ある意味でキャラクターとしてはさほど面白くない。呼称や立ち位置と描写から決して政治家ではないと思われる。ボラー連邦に軍事委員があるなら、多分そこに席を有するだろうが、政治家に軸足はおいていないだろう。劇中では結果的に本国第二主力艦隊と推定される艦隊を率いることになったが、役職を考えれば固定の艦隊を率いることはないだろう。

 ゲオルギー・ジューコフといえば、WWⅡの初期において参謀総長としてレニングラード包囲戦以降は最高司令官として采配を振るい軍事的無能なスターリンの介入にさらされながらもソ連軍を立て直し反転攻勢に導いた人物である。

 ゴルサコフの場合、ジューコフほどは有能・名将ではなかろう。ただ、情報の統括力というのは極めて高く遠隔地の情報を直ちに収集・分析しベムラーゼ首相へと報告を上げる能吏としての側面をシリーズ中盤までにおいて能力を十二分に見せつけた。戦闘指揮もなんだかんだ言って十分に通用するレベルでシャルバート星制圧戦では機動部隊をほぼ地上攻撃に当ててシャルバート星を確保した後にデスラー親衛艦隊との艦隊決戦を試みる描写があった。これはまさに縦深戦術であり、同時多発的にそれも前衛(この場合デスラー親衛艦隊)だけではなく本隊(シャルバート星)や後衛(ヤマト)に対し攻撃を掛けたのは見事であるし明らかにソ連をモチーフにした勢力の戦闘として堂に入っていた。ボラー連邦全体では艦隊直掩以外にあまり使わない艦載機を敵艦攻撃や対地制圧に使ったり、降下兵を差し向けて王宮制圧を目指したりと、結構興味深い。

 個人的な要素としては、まさに軍人。ハーキンスのおべっかを鬱陶しげに止めさせ、ベムラーゼ首相への報告も常に端的、シャルバート星制圧戦もゲート突入を急いだり、戦闘開始前に命令を下して以降は各自に任せていた。これらを総合すると、せっかちな傾向は当然強い。そしてまた簡潔を好むタイプというのは確実だろう。

 ちなみにゴルサコフに似た名前でロシア人にままある名前或いは苗字にコルサコフがある。リトアニア総督アレクサンドル・リムスキー=コルサコフ(1753~1840)やブルガリアの暫定ロシア政権僅差大臣とロシア南西部総督にオデッサとハリコフの暫定総督を務めたアレクサンドル・ドンドゥコフ=コルサコフ(1820~1893)などが有名どころ。

 


 氏名:ハーキンスHarkins/Barphin  Balsiky)
 年齢:不明(中年と推測)
 階級/役職:中将/第8親衛打撃艦隊司令
    容貌:白色の肌、赤毛ないしモスグリーンがかった極短髪(シーンによって色彩が変わる)、虹彩色不明、中肉中背型

 おべっか使いと追撃戦・高速戦に長けた人物で、見た目的に冗談が通じなさそうな雰囲気の割に柔軟な脳みそと感性の持ち主らしい。本国への通信応答の際のおべっかを根拠に、ボラー連邦軍内でも祖国や或いは首相ら中枢への忠誠を求める――大粛清がかつて行われたとしてもいいかもしれない。ともかく、ボラー連邦の中では割とユーモアのある人物と期待できる。

 新型駆逐艦の投入や躊躇ない火力集中などは目を見張る活躍で、縦深戦術理論を編み出したミハイル・トゥハチェフスキー……ほどではないが、極めて高い作戦指揮能力を劇中に提示した。特に敵の迎撃を拘束する高速の戦闘展開は見事というほかない。最期の戦いでは大艦隊による高速接近でヤマトを完全に圧迫する事に成功、グスタフ中将の取れる手段を奪い破滅的選択につなげた。

 ハーキンスの最大の不運は常に追撃戦でしかも攻撃対象が二つあるという、誰だって判断に迷う展開に毎回遭遇したことだろう。ヤマトとシャルバート巡礼船はどちらも逃せぬ目標だし、ヤマトとグスタフ艦隊もまたどちらも逃せぬ目標。しかして、同時に戦うには戦力を分けねばならずボラー連邦軍の基本戦略である火力集中とは正反対の方向に進まねばならない。これでは勝てる戦いも勝てなくなってしまう。まあ、一回それで味方駆逐艦を全滅させてしまったし、グスタフ艦隊の猛攻を跳ね返すだけの火力展開が出来なかったのは残念というか情けないが……。

 ハーキンス最大の特徴は高速で戦うという事。猛打を浴びせ猛スピードで猛攻を仕掛けるのが彼の得意技。ゴルサコフのような例外を除けば、ボラー連邦全般に航空戦力に対する理解が乏しい感じで描かれているように思われる。しかしながら、水雷戦隊と航空戦力はヒット&アウェイであるとか、単独では制空権=制海権を獲得し得ないとか、最大の能力を発揮するには気象条件をある程度調整してやる必要があるとか、結構補給に何があるとか、類似する部分が多い。

 恐らく、ハーキンスもちゃんと理論を学べば十二分に航空戦力を有効活用できる指揮官になれたと思うのだが、グスタフ艦隊に敗れ戦死。惜しい。

 

 ロシアっぽい響きのハーキンス(Harkins)であるが、実はアイルランド系の名前。ゲール語Ó hEarcáinが元型で意味合いとしてはそばかす(Erc/Earc)らしい。ハ行系の音になる接頭辞がついてハーキンスに変化したらしい。

 カットイン前の「――したがって」の前にどんな会話があったのかは永遠の謎である。個人的にはぜひ知りたい。

 


 氏名:バルコム(Balcom)
 年齢:不明(中年と推測)
 階級/役職:提督(=大将か)/本国第一主力艦隊司令
    容貌:白色の肌、ヘーゼル色に近い左目を隠す前髪・逆毛だった襟足(手塚治虫作品風)、ヘーゼル色の虹彩、中肉中背型

 リメント・ヴォロシーロフかセミョーン・ブジョーンヌイか、という具合の残念な人物。極めて高飛車・高慢ちきな性質を持つ上にがさつと正直救いようがない。キャラクターとしては面白いが、実在はしてほしくない指揮官だのに、服装からして意外と高官。多分ゴルサコフと同格。

 劇中では第8親衛打撃艦隊の後方、小惑星帯に待機して戦闘の成り行きを見守っていた。艦載機ぐらい繰り出してやればよかったのにとは思うが、しかしてハーキンスが戦っている最中に関しては確かに前進する必要はなかっただろう。あの時点で前進し就てしまえばヤマトが逃走する可能性もあったのだから――その点では戦略家と呼ぶにふさわしい振る舞いと指揮である。また、圧倒的戦力を誇示しての降伏勧告も、行動として妥当である。ルダ・シャルバートの回収が最大の目的で、別にヤマトに復讐したいわけではないのだから攻撃までのモーションが鈍くても当然と言えば当然。

 だが問題はその直後だ、あまりにも味方戦力を過信しすぎな上に明らかに戦いずらいだろう小惑星帯から艦隊を一ミリも動かさせなかった。これはまずかろう。敵の戦闘準備に味方が追いついていない事に気が付けなかった。これは非常に情けない。相手が直ちに反転攻勢へと出られないだろうという、妥当といえば妥当な予想の元の反応ではあろうが、脅威評価が雑。

 これらの要素から、商売人気質というか株屋というかディール好きな面が見えてくる。計算に基づいた反応をするのが商人であるが、最後の一手は人間に立ち戻って判断するというのが商売人だろうが、バルコムの場合はその最後の一手をミスったのである。最後の一手で凡人や同業者との違いを見せつけるのがトップというモノ……それは軍人というよりもどちらかといえば政治家といった方が正しく、大なり小なり軍人らしい姿勢を見せて来た登場人物の中でベムラーゼ首相と同じか、それ以上に政治家……むしろ貴族的と言ってもいいぐらいの姿勢を見せた。確実に、ボラー連邦の軍人の中では最も異質な存在と言えるだろう。

 この男に気に入られたいなら、少々の危険を冒してでも派手な戦い方をして一番槍を付けるのがベストだろう。後はちゃんとおべっか使っていけば、余程バルコム自身が追い詰められない限りは少なくとも政治的な後ろ盾にはなってくれるだろう。常人の考え方だと、エキセントリックな人間に見えるだろうがエキセントリックな人間という前提に立てばむしろ普通かもしれない。そんなキャラクター。

 

 雰囲気こそロシア的な名前だが、しかして実際には英語圏だったりする。地名としてもアメリカはイリノイ州バルカン(Balcom)、カナダのヌナブト準州Qavarusiqtuuqの旧名バルカン湾、類似でイングランドのバルカム(Balcombe)などがある。ドイツのザスニッツ級ミサイル艇はバルカン10型とも呼ばれる。

 要するに、何が名前の元ネタなのかわからん。キャラクターの気質に関しても元ネタがいまいちわからん。

 

 

 バース星(ボラー連邦内、保護国:摂氏五度が最高温度の凄く寒い星)

 氏名:ラム(Ram)
 年齢:不明(中年以上と推測)
 階級/役職:不明(大将以上)/バース星守備艦隊司令・戦艦〈ラジェンドラ〉艦長
    容貌:緑色の肌、黒毛で割と強めの天然パーマな短髪。ずんぐりむっくりで若干背が低い。

 寡黙・果断・果敢な人物でヤマトの介入という助力があったとはいえ、守備艦隊をほとんどすり減らしたとはいえ、バース星を第18機甲師団艦隊の攻撃から最後まで守り抜いた名将。格としては例えるならマンネルヘイム元帥の右腕エリック・ハインリッヒス、描かれ方としてはスオムッサルミの戦いでソ連軍を殲滅したヤルマル・シーラスヴオに近い。

 作中では実に4回程、第18機甲師団艦隊を退けた名将でダゴンの指揮下手を鑑みても間違いなくヤマトシリーズ史上でもトップクラスの指揮官と言えるだろう。シリーズ冒頭などで見せたように陣を張って敵艦隊と正面切って激突し、戦艦群の火力を以て敵陣を崩しにかかる正攻法を得意とするが、一方でバース星前面域でのように包囲殲滅戦を仕掛けられてもそこから脱出することが出来るだけの戦況把握が出来る人物でこれは稀有な存在。最後の一戦はどうにもならなかったが、度々撤退戦を無事に成功させているのも中々どうしてできるものではない。あまつさえ戦力が減っても代わりを用意し、第18機甲師団艦隊と同等の火力を有する艦隊戦力を調達する――母星の戦力をちゃんと把握しきったがゆえの作戦展開であり、武骨な雰囲気からは予想もつかないが官僚的な側面さえ見える。しかして、最も特筆すべき点は3度の敗北にもかかわらず大艦隊を動員できる統率力だろう。更に彼の敗北はある意味で自国戦力の喪失につながっているのだが、レバルス隊長もラム艦長が地球に救援された事に対して、別に否定的な反応をした様子はなくヤマト来訪を喜び戦闘を即時中止していた。

 ラム艦長の唯一にして最大の弱点は航空戦力に対する理解の無さだろう。ボラー連邦全体において問題な航空戦力の利用がド下手な点を継承してしまっており、結局空母は戦艦扱いでの艦隊戦参加という形になってしまった。これは残念。まあ、本国でも扱えない航空戦力をバース星で使ってしまったらベムラーゼ首相にどんな怒りを落とされるか分かったモノでもないから、うかつに手を出せなかったとしても構わないだろうが。

 一見するとスラヴ系の農民のような無骨一遍な雰囲気なのだが、しかしてテーブルマナーの基本は外さず、礼節を重んじ自らも実践する知的な側面を有する。武勇と義理とに重きを置くのは当然だが、勝てるわけの無い戦いに参加するほど狂信的ではない。敵に対しても一定の礼を取るのも紳士的。この紳士的な姿と武士的な勇敢さと作戦指揮能力が組み合わされば、確かに負けの込んだバース星を統率できる唯一の人間にもなるだろう。多分仕掛けないだろうが、ボローズ総督が仮に政治的な闘争を仕掛けても容易に打ち払いそれでもラム艦長を失脚させようとしたならばバース星が再び独立国としての立場を取り戻そうとしたとしても不思議はない。

 そう予想させるほどの人間的な魅力を有したキャラクターと表現できるだろう。

 名前の由来は判らん。カナダのアルバータ州にはラム川、セルビアの要塞都市ラム(セルビア語ではパム)と旧約聖書の登場人物であるへツロンの子・ラム(新約聖書ではアラム)とそれにちなむイスラエルのラム湖が地名にある。名前としては先に述べたラム(アラム)由来の人名と南アジア全域で頻繁に使われるラーマ神由来のラム。変わり種では軍艦の喫水線下にかつて付いていた衝角(Ram)。

 ラム艦長というキャラクターを一言で表すなら武人だろう。最期の戦闘では〈ラジェンドラ〉は戦闘・航行能力を喪失し、生還期しがたいというのを戦列を離れると表現し赦しをと理解を乞うたり、最期の言葉が「ヤマトの諸君、さようなら」というのは泣ける。そりゃ、艦長席に主要クルーが集まって泣いて最期を待つわいな。

 

 

 氏名:バルス(Levars /Justin Liberatus)
 年齢:不明(20代後半ないし30代中盤)
 階級/役職:不明(大佐か少将クラスと推測)/警備隊長
    容貌:白い肌、前髪の短い009的赤毛、中肉中背

 見た目からしてボラー連邦本国から送り込まれた人物だろう。凄く普通の人物で、強いて言えば連邦の統治に対して大した疑問を持たない半面でヤマトクルーの行動や発言にも大して反発して居ないところを見るに、政治委員のようなしっかりした連邦に対する忠誠心はない可能性が考えられる。旗艦として普通仕様の戦艦タイプBを用いる様子である。

 職務に関しては劇中で見たようにボローズ総督の護衛やバース星近傍空間の警備という実際部分と、コミッサール(政治将校)であり率いるのは督戦隊といったところではないかと推測できる。赤い詰襟が多分、長職を意味するのだろうが結局は不明。

 基本的に可哀想な人物で、古代にいわれのない怒りをぶちまけられてしまった挙句にコスモタイガー隊に射殺されてしまうのだ。彼がバース星の総督かなんかだと古代は勘違いしていたのだろうか、そんなはずは……ヤマトⅢの古代君に限ってはあり得るかもしれないがどちらにせよレバルス隊長に何ぞの権限もありはしないだろう。窃盗のような微罪だったら、もしかしたらレバルス隊長にも権限があったかもしれないが――実際にはシャルバート教徒つまりは政治犯騒乱罪を冒したようなものだ、どうあがいてもボラー連邦ではそこそこクラスの役人では差配できるはずもない囚人なのである。

 欧米的責任論であれば確かにベムラーゼ首相と同罪ではある。しかして権力構造からして大分下っ端なのだから、囚人の処刑には責任と言えるほどの責任があるかといえば……ボラー連邦が解体された暁には長めの懲役刑が妥当だろう。それをコスモタイガー隊の銃撃による裁判なしの処刑であるから哀れというほかない。

 彼の指揮能力が高いかどうかは不明で、ヤマトに対して艦載機戦力で母星から引き剥がし艦隊戦力の待ち構える戦闘域に誘導し、挟み撃ちにしたのは見事な手腕であるが――ヤマトも初めから戦うつもりというわけではなかったからあまり参考にはならないだろう。

 ちなみに、レバルス隊長の部下は〈ラジェンドラ〉号のクルーと同じ肌が緑色であるためバース星人であろうという事が推測される。

 

 レバルス(Levars)の名前は〈HMS レパルス〉のもじりだろう。レヴァー(Levar)だったら英語圏に割とよくある名前。

 

 

 

 氏名:ボローズBorroughs/General Lobo )
 年齢:不明(40代程度)
 階級/役職:不明(上級大将格の政治委員と推測)/バース星総督
    容貌:白い肌、赤毛のストレート(若干襟足長め)、結構なやせ型

 服装だけ言えばゴルサコフやバルコムと同格。政治委員で軍事に携わって居るのか、軍人だけど政治家に近く軍事委員を務めている、といった雰囲気の人物。両側面を有するローマの属州総督的なイメージといったら端的に表せるかもしれない。人物の立ち位置として例えるならハンガリーのカーダール・ヤーノシュやブルガリアのトドル・ジフコフに似ている感じもする。

 頬骨がしっかり見えるぐらいの線の細い人物で、背はそこそこ高い様子。基本的には穏やかな性格であろうというのが立ち居振る舞いなので推測できるが、焦ると雑で攻撃的になる。一見すると尊大なのだが、しかして相手の立場をそれなりに認識かつ重んじる傾向が強く間違いなくベムラーゼ首相より話がわかる人物。何より、初対面から地球を属国扱いにしようとベムラーゼ首相のナチュラルな見下しと違い、ボローズ総督は地球をはじめから対等――というには勢力が違いすぎるが、しかして一応は独立国としての地球の立場を重んじかつ念頭に置いて接していた。同時に、ただ寄港しただけというヤマトの立場も理解した歓迎の辞を述べていたところを見るに本来はまともな統治者なのだろう。負けの込んでいたラム艦長が艦隊を率いるのを邪魔しなかったのだろうし、その時点で必要な所に必要な物を投入するという当たり前の事を出来る政治家だとして差し支えない。一番怖いベムラーゼ首相の前では明らかにベムラーゼ首相の肩を持ったが、だからと言って古代を叱りつけるほどの事は言わなかった。ごくごく、一般的な感性の持ち主といえよう。

 残念ながら第18機甲師団艦隊の襲撃により守備艦隊を壊滅させられた事と、ヤマトクルーの逃亡を阻止できなかった事により責任を星ごと取らされることになってしまった。

 

 アメリカ合衆国ミシガン州はカラマズーにある棚などのオフィス用品メーカーに同名の株式会社がある。一方でバローズ(Burroughs)というのもありこちらはアメリカの計算機やコンピュータの会社。バローズないしバロウズであれば英語圏では人名でもまま見られる。

 自治区を意味する英語のBoroughであるが、これは現在のスペル。昔のスペルはBurroughs。もし、自治区をイメージしての命名だったならば英語とロシア語で大いに異なるが皮肉の効いている命名と言えるのだろうが――多分違うだろうなぁ……。

 

 

 ボラー連邦の場合、ガルマン・ガミラス帝国と違い将軍が入っていない為に少しは階級がわかりやすい。ソ連やロシアは提督(Адмирал)は大将を意味する海軍の階級とされていた。別にソ連やロシアだけではなく、ドイツも同じでイギリスに至っては提督に日本語訳される語が二つありCommodoreの場合は准将ないし代将だしAdmiralなら大将となる。

 ボラー連邦で興味深いのは、それ以前或いは以後の登場勢力と違い副官がいない事だろう。確かに、ベムラーゼ首相の旗艦では諸将が居並び首相に話に激しくうなずいていた、副官なのか従卒なのかただのスタッフなのかは判然としないが明らかに首相府の人間がベムラーゼ首相の傍に侍っていたのも間違いない。バルコムの傍にも副官の可能性がある人物が何人かいたようだ。しかして、割に階級が低そうなレバルス隊長は当然としてもボローズ総督やハーキンス中将にゴルサコフ参謀長ら高官にも副官がいないというのは驚き。考えようによっては――これは分断支配という見方もできるだろう。個々の将官は独断の裁量を与えられてはいるが、しかしてそれはあくまで連邦に対する忠誠や軍事的功績を前提としたもの。個々の将官は誰かと相談するという事を阻害されるために横のつながりが乏しくなり、他方で縦のつながりは連邦を盾にしたベムラーゼ首相個人支配を構築が容易になる。そうして将官ベムラーゼ首相と同格以上の存在になる事を阻止し、クーデターの可能性を完全排除。この方式を徐々に保護国への軍隊へと導入していけば保護国は衛星国となり、属州として完全に連邦に同一化できる。合議制の国のように見えているボラー連邦だが、実際は独裁である――副官の無い体制は形式的に合議だが実際は独裁という国家体制の内実を表すものであると同時に、国民や軍人に刷り込む手段としても機能するのではないのかとも思う。

 類例としては暗黒星団帝国で、あちらもデーダーを除いて副官がいる様子はなかったし彼だって副官に何か助言を頼んだことも仕事を申し付けた事もなかった。しかしてこちらは単なる物理的(決して能力ではなく)な人材不足が理由という事もあるかもしれないが。

 一方でバース星は他の勢力と同じように副官ないし、それに類する立場の人間がいるようである。その意味では決断までの過程が冗長化されて失態を演じにくくなる為、意思決定の安全性は高いと言えよう。

 

 その他の要素――

 ボラー連邦の服装は軍服が基本でそれ以外は見られない様子。灰色を基調としてY字切開の軌跡のような黒いラインを有し、割合ぴっちりとしたシルエット。半円・縦形の肩パットに加えてデコルテもどうも材質が堅そう。さすがにベムラーゼ首相はデザインが異なり、襟が黄色で胴の横じまが一本入るのが特徴的。彼に耳打ちしに来た副官らしき人物も同じくデコルテに黄色い横じまが一本入る為、首相府の職員は黄色が目印なのだろう。

 細かく見ると、肩パットが袖に連なる形で覆いがつくと――シルエット上、二の腕と肩パットが一体になると政治家か軍事委員なのだろうと推測できる。ベムラーゼ首相や彼の旗艦で居合わせた面々、ボローズ総督にゴルサコフ及び同じ服装のバルコムは大分シルエット的に肩パットが分厚い。また、マントに関しては明確に差があり現場指揮官級では絶対に着用しない。総督や本国艦隊司令、参謀長や首相など一国一城の主とでもいうべきような規模の組織を率いる人物は必ずマントを着用する。ボローズ総督らのマントから察するに、全員後付けで元から縫い付けられているわけではない様子。何なら肩甲骨辺りに金具なのか、左右に差し渡した紐に巻き込むように着用するのかは不明。

 

 一方でバース星の元からいる軍人は19世紀末のヨーロッパ軍人のようなコートを着用し、ベルトで締める。指揮官は恐らくジャボを襟につける様子。コートは階級によって違うのかもしれないが、あまり明確ではなく――黒と赤の組み合わせで開襟が指揮官で詰襟で黒と青の全体配色が副官ないし一般将校らしい。前と後ろの配色が一般兵は副官は同じというのだからある意味驚き。

 

 

  と、以上のような存外に多彩なキャラクターが登場しているのがボラー連邦である。能力が高い人や低い人、ハッタリ半分な人など実に様々だ。

 このそれなりに細かい設定やオブジェクトが存在する故に、ヤマトⅢがぎりぎりのラインでSF的面白さを保てたと言えるだろう。

 

 

戦闘考察Ⅵ シャルバート上空戦~太陽前面域決戦

 

 

 ヤマトⅢ、シリーズの佳境であるシャルバート到達から太陽系帰還にかけてのエピソード。それは佳境に相応しく幾多の熾烈な戦いに彩られていた。

 長かったヤマトⅢ戦闘考察、今回でようやくの区切りです。

 

 

 シャルバート上空奇襲戦 

 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:デスラー親衛艦隊(直属戦隊)
 規模:1個戦隊     
 戦力:旗艦級戦艦1、大型戦闘艦3、中型戦闘艦12 
 指揮官:デスラー総統

 ただし、出撃した艦隊はより大規模な戦闘艦隊。複数個艦隊規模であり戦力は画面上で新型デスラー艦、大型戦闘艦4隻、中型戦闘艦10隻、デスラー砲艦21隻

 あくまで画面上の話であり、左右のバランスから言えば――前衛に中型戦闘艦が4隻、直後に上段5隻と下段4隻。その後ろに新型デスラー艦を中心に菱形に前後左右を4隻の大型戦闘艦が囲み、先頭の大型戦闘艦の両舷に3隻ずつデスラー砲艦が陣取る。で、その下段に6隻。新型デスラー艦及び大型戦闘艦の左右にもデスラー砲艦が4隻ずつ展開。新型デスラー艦の艦尾に位置する大型戦闘艦の左右にも2隻ずつのデスラー砲艦――か中型戦闘艦、更に殿として2隻ほどのデスラー砲艦ないし中型戦闘艦が陣取っていた。

 つまり凡そ新型デスラー艦1、大型戦闘艦4、中型戦闘艦13から19、デスラー砲艦20から26の総数38隻がシャルバート星周辺に到着していた計算になる。

 


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 ボラー連邦側参加部隊:第2主力艦隊(推定)
 規模:連合艦隊(第一・第二主力艦隊残存艦全力) 
 戦力:旗艦級戦艦1、戦闘空母多数、大型空母多数、デストロイヤー艦多数、戦艦タイプA、タイプB多数

 指揮官:ゴルサコフ参謀長

 

 展開

 第24話――シャルバートに到着したヤマト。しかし、ヤマトを迎え入れたが為にシャルバートと外界を隔てるゲートが一時的に開放状態になってしまっていた。そこへグスタフ艦隊の増援へと向かって果たせなかったデスラー親衛艦隊が遭遇、ヤマトを追ってシャルバート上空へと到達したのである。

 シャルバートの実在に感慨深げなデスラー総統。だが、それ以上に驚いたのがシャルバートの現状であった……彼の目に映ったのは全くの非文明的にも見える今のシャルバート星の姿である。かつて宇宙に覇を唱え天の川銀河制した強力な戦闘艦隊など影も形もない。シャルバート星はまさに丸腰なのだ。

 そんな丸腰なシャルバートを前にした総統は、騎士道精神というべきか最早シャルバート占領の意思を失ったのである。彼が恐れていたのはシャルバート星が未だ宇宙に覇を唱え得る力を蓄えている事、それがボラー連邦に与する事であった。もはやシャルバート星にその力はない――それを確認したデスラー総統はシャルバート星征服の意思を捨てたのだった。

 

 直後、ゴルサコフ参謀長率いるボラー艦隊が奇襲的攻撃をシャルバート及びデスラー親衛艦隊、ヤマトに空襲を仕掛けて来たゴルサコフ艦隊もヤマトと総統を追ってゲートを通過していたのである

 完全無防備であった親衛艦隊は複数隻が撃沈され、抵抗の手段を持たないシャルバートは全く歯が立たない。即座にコスモタイガー隊が迎撃に当たり、地上では上陸済みのクルーがボラー降下兵との白兵戦を繰り広げる。

 

 直ちに反撃を開始し地上戦、空中戦において概ねボラー側の攻勢を押し返すことに成功しつつあったヤマト。他方、ゴルサコフ艦隊主力の接近に際しデスラー艦は艦首を廻し、その射線に艦影捉える。

 発射準備完了、満を持して放たれたハイパーデスラー砲はゴルサコフ艦隊を呑み込み、消し散らす赤く広がる光芒が消えた頃には敵の姿は一欠けらもなかった

 

 

 描写の妥当性

 防衛に必要な装備一式を全て王墓の中に隠してしまっているのだから、逃げ惑うしかないのは仕方がないだろう。非暴力不服従の態度の不徹底=あのじい様のある意味で勇敢な態度、アレが彼以外に見られなかったのは……世代の違いというべきか、あるいは決意の次元が違うという事か

 でもさ、シャルバート人が全滅したらあの超兵器群が全部敵に渡るんでしょ?

 何でつぶさなかったんだろうね。何でかね? 何でかね?

 

 

 ヤマト側は、ボラーがシャルバートを征服しようとしているのは認識としてすでに持っている。シャルバートが非武装の惑星であるという認識である以上、しかも好意で招いてもらっているのだから、守る手段を持つ人間として、目の前の人間を守るのは当然だろう。

 ヤマトを飛翔させるには多少時間がかかるし、差し当たっての敵はボラー艦載機や降下兵であるのだから、コスモタイガー隊を向かわせるのは当然だし妥当。更に、デスラー総統に敵意が無いというのは確認済みであるから、接近中の敵艦への対処は彼に任せることが可能と考えても不思議はない。

 親衛艦隊も空襲受けているし、卑怯な手を嫌う総統の性格からして、絶対に戦闘に参加するという見込みは十分あった。だからヤマト側の行動は全て合理的

 

 一方でデスラー親衛艦隊――ガミラス時代から続く、周辺警戒の雑さがガルマン・ガミラスにまで受け継がれてしまった。という感じ。そんなにボラー艦隊がステルス性が高いという描写は特にない(第23話のバルコム艦隊は小惑星帯に隠れていた故の発見の遅れと説明が可能)のだから、なぜに空襲を受けるまで気が付かなかったのか。

 この点はご都合主義といっても構わないだろうが、BGMと相まって演出効果は高かったと思う。ガミラスが火力重視で紙装甲なのはいつもの事だし、今更……

 また、大型戦闘艦が使えないというのはグスタフ艦隊対ハーキンス艦隊で見た通りだから、あれが手もなく爆沈するのは当然。中型戦闘艦が爆沈したのは痛いし情けないが一方で下方からの攻撃であるから、これは警報が遅れた以上は抗する手段が無かったともいえる。だから戦闘の中身まではご都合主義というほどではない。

 何にせよ、デスラーが通用してよかった。ほんと、良かった。正確にはハイパーデスラー砲だけど

 主力艦隊接近に対応しての一挙に葬る必殺兵器。以前のデスラー砲ならば艦隊なぞ葬れるとは思えないが、ウラリア戦役後の復讐心を込めた新兵器であろうから艦隊を一挙に葬れるほど威力が向上しても不思議はない。プラットホームも以前の6倍近い規模だし、機関部をそれだけ強化したならば威力は……6倍? 

 もし、ボラー艦隊が以前のデスラー砲のデータのままに接近してきたとすれば、あの「私達を丸焼きにしてください」といわんばかりの密集隊形もわからんではないだろう。だから余計に効果的に作用してしまった。

 とすれば十分整合性は取れるだろう。カッコいいシーンだし。

 

 

 ゴルサコフ艦隊の動きは――艦隊を二手に分けてシャルバートへの攻撃と敵艦隊への攻撃にそれぞれを集中させたのは頭がいいし、妥当な判断だろう

 あまり接近したくない敵艦に対して無理に艦隊戦を挑むより艦載機で襲撃するのは良い手。また、デスラー砲というものを知っていれば、あの微妙な威力や効果範囲を知っているのだから逆に侮って密集隊形で接近するのもわからんではない。直撃を受けなければ怖くもない、密集隊形なら敵の高速艦艇に対し火力を集中させられる。だから危険はないと。

 だが、うかつどう見ても敵旗艦、バカでかいじゃないか……。

 せっかく電撃的縦深戦術を成功させたのに、うかつに接近したことで首脳部が一瞬にして崩壊。それじゃシャルバート星制圧部隊も機能しなくなるだろうし、対艦戦闘に回っていた残存艦隊も機能しなくなって崩壊必至。多分これ、第20話でヤマトに手を引いてくれと総統がボラー連邦に連絡入れた時ベムラーゼ首相が「デスラーともあろうものが、気の弱い事を」とか「ヤマトを見逃してくれとは老いたものだ」とか侮ってたのが凄く大きなファクターになったんじゃなかろうか。コスモダート・ナスカと同じでさ、あの人も侮った相手が警戒する相手を同じように侮った結果大失敗したじゃん?

 結局劇中ではゴルサコフ直属の艦隊しか消滅する描写が無かった。

 が――恐らくというか、妥当に考えれば、コスモタイガー隊がゴルサコフ艦隊の別動隊に空襲を仕掛け、残存のある程度はデスラー親衛艦隊が引き受け、全体を通してみれば共同で撃滅したという事になろうか。

 描写が無いからここはいくらでも説明は可能。

 

 

 意義

 本来、この時点でハイパーデスラー砲の危険性をボラー連邦は認識すべきだった。出来るだけ当たらないに越した事はない兵器であると、狙われたらまず逃げるという判断をするように認識を変更すべきだった。あと、深追いはしない方がいいという事も学ぶべきだった。が、どれも学んでいないから意義があってもなくなってしまっている。

 地球側――というより、ヤマトクルーは総統が決して敵では無いという事、理念や手段が多少異なろうとも意図して阻害しようなどとは考えていないという事が判った。これは気分的な問題だが、それなりには意味のある事だろう。また、一連の戦闘の献身によってハイドロコスモジェン砲を譲渡するという決意をルダ王女にさせたのだから、この部分に関しては決定的な作用をしたと言える。

 ガルマン・ガミラスとしては、従来極めて危険だと思っていたシャルバートが大した事無かったという事が判っただけでも十分。その上、ボラー連邦の軍事上は確実にNO.2であろうゴルサコフ参謀長を葬ったのは大金星といえる。また、念願のデスラー砲が敵に着弾し、殲滅する事に成功したというのも実に華々しい。

 

 この戦闘は一見するとガルマン・ガミラスの大惨事にも見えるが、実際は最も成果を得たのはガルマン・ガミラスだったと説明できるだろう。

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:大型戦闘艦多数、中型戦闘艦多数 
 地球側損害:なし(シャルバート人に多数の死者)

 ボラー連邦側損害:第2主力艦隊全滅、司令官戦死

 

 

 

 太陽前面域・最終決戦

 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:デスラー親衛艦隊(主力艦隊)
 規模:連合艦隊(総数約100隻)     
 戦力:旗艦級戦艦1、デスラー砲艦多数、駆逐艦多数 
 指揮官:デスラー親衛艦隊


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 ボラー連邦側参加部隊:ベムラーゼ親衛艦隊 
 規模:連合艦隊 
 戦力:機動要塞1、デストロイヤー艦多数、戦艦タイプA、タイプB多数(総数不明)

 総指揮官:ベムラーゼ首相

 

 展開

 第25話――ようやく太陽系へ帰還したヤマト。司令部への連絡をそこそこに、直ちに太陽前面域へと進出、ハイドロコスモジェン砲を以て太陽制御を試みた。

 その瞬間、背後からの猛烈な砲撃を受けたヤマト。何と、ベムラーゼ首相の機動要塞が親衛艦隊を伴って太陽前面域へと進入してきたのである。首相直々の復讐戦、心を込めた首相のプレゼント=ブラックホール砲が炸裂し、ヤマトは手も足も出なかった。

 

 そこへ、颯爽と駆け付けたのは他ならぬデスラー総統率いるガルマン・ガミラス艦隊。陣容を整え、ベムラーゼ首相を追って太陽系へと突入してきたのである。

 展開をし終えた親衛艦隊は直ちにデスラー砲の一斉射撃を以てボラー艦隊を一掃。古代らへの挨拶もそこそこに、第二斉射を機動要塞に定めて放つ――だが、悪夢の不発……。

 その時、ベムラーゼ首相の高笑いが響く。なぜなら全ては総統をおびき出すための、罠であったのだ。ガルマン・ガミラスを一挙に崩壊させる為その国家元首であるデスラー総統を本国の護衛戦力から引き剥がして葬る、その為に彼は出撃した。ベムラーゼ首相にとって、ボラー連邦にとって、ヤマトも地球もどうでもよかったのである。

 だが、この程度で大ガミラスの総統デスラーが動揺するはずもない。彼はこの手であなたを葬ると宣言。これにベムラーゼ首相はブラックホール砲の連続射撃を持って答えた。

 

 ヤマト、デスラー艦とボラー艦隊との死闘が繰り広げられる。

 混戦の隙をついてハイドロコスモジェン砲発射を狙うヤマトだが、その機会が無い。機動要塞を仕留めようにもブラックホール砲の攻撃を前に手が出せないデスラー総統。一方で艦隊を失い機動要塞だけでは決め手に欠けるベムラーゼ首相。

 一進一退の攻防の中、揚羽機が対空砲火の中無理に要塞に突っ込んでいく。機体する危険も構わず突っ込んだ先は機動要塞のウィークポイント。突入直後に大爆発を引き起こし、機動要塞はその機能の一部が停止する。

 揚羽の犠牲を無駄にするわけにはいかない。機動要塞が体勢を立て直す前にすかさず、総統は必殺のハイパーデスラー砲を発射、その光芒の中へと機動要塞を滅す。そしてヤマトはハイドロコスモジェン砲を発射、その作用を以て太陽制御に成功。

 

 こうして――地球の運命は救われ、激烈を極めた銀河系大戦も大きな転機を迎えたのである。

 

 

 描写の妥当性

 ここまでくると描写の妥当とかそういうレベルの話ではない。基本的には力押しの戦いでほとんど戦術が駆使されていないため、妥当かどうかを考察する必要のあるシーンがそもそも存在しないのである。だから割とのったりくったり戦闘が前に進まなかった。

 ベムラーゼ首相旗艦機動要塞はブラックホール砲の力押し、ヤマトはコスモタイガーの力押し、デスラー艦はハイパーデスラー砲の力押し。三者ともかなり拮抗した力であった為に戦線は膠着したのである。

 

 考察すべき部分があるとすれば、ベムラーゼ首相旗艦機動要塞か。

 もし、要塞の表面装甲が実弾にもある程度耐えるが、エネルギーを散らすような特殊塗装を施されていたとすれば。それを保持するため、あるいは損傷の無い塗装部を前面に出すために電流を流し続ける必要が有るとしたならば。例えるなら電気防食的防護策。

 揚羽が突っ込んでいったのが排気口なり、星間物質を取り入れるインテークであったのならばそこが弱点なのは当然だろう。また、要塞の一部機能が停止すれば一体として防護を行うならば――構造体全てが弱点化するのは当然だろう。

 そして、ハイパーデスラー砲がその機能不全に陥った区画を粉砕し、その破孔から内部にエネルギー流を強制注入し全体を機能不全へと落とし込み、そして消し去った。

 とすれば十分妥当な展開と言えるのではないだろうか。

 

 総統が太陽系圏内に突入してくるのは、ベムラーゼ首相が動いた事を知れば、それは宿敵を討つ機会であると同時に好敵手にして友人のヤマトを救う事になるのだから当然の流れ。また、味方艦隊も正直ボラー連邦艦隊相手にあまり圧倒は出来た事が無い。たとえ強力なヤマトでも、中々戦えるものではない。そこで総統は元々の艦隊規模よりも多く、決戦用にデスラー砲艦を大量にそろえ太陽前面にはせ参じた――こうすれば、いきなり大量のデスラー砲艦を率いて太陽前面に現れた、一見すると整合性がないように見えるシーンがむしろバッチリ整合性が取れているのである。

 加えて、ブラックホール砲に対抗すべくハイパーデスラー砲に頼ろうとした総統をタランが押しとどめるシーンは、第20話の振る舞いからすれば齟齬が出ているように思われるだろう――だが違う。太陽制御失敗によって第20話ごろから機嫌が悪くファンタムやシャルバートに囚われていた総統だが、彼は第24話でシャルバートの無防備さを見て憑き物が落ちたようになり冷静さを取り戻す。その流れで突入した第25話だ。

 激怒の第20話が起点で、この話までは古代がかつて友情を結んだデスラー総統と、かつて戦った独裁者としてのデスラー総統が入り混じっていた。むしろかつて戦った独裁者としての側面が強かった。しかし第24話で折り返し、友情を結んだ英雄としてのデスラー総統という威厳を再び見せた。だから古代も総統の助力を素直に受け入れたし、タランも怯えることもなく総統の命令に異議を唱え、そして勝利をも手に入れた。

 これは、総統の内面的変化を総統のセリフに寄らず、しかも端的に表すという中々どうして高度な演出テクニックを駆使していたと言えるだろう。

 

 土門や揚羽のアレな行動は場数を踏んでいない新人宇宙戦士、それもティーン特有の蛮勇ともいえる行動という事である程度落ち着くだろう。確かに現代のティーンはもっと思慮深いかもしれないが、かつてのティーンは15の夜に盗んだバイクで走り出すなんて事も全くないわけではなく。まあ、そういう事。

 これを美しく体裁整えたのが先輩であり上司である加藤の涙ながらの揚羽連呼、その様子を見ていた(通信を聞いてたんでしょうね)デスラー総統が「見たかタラン、地球の少年が命を懸けて咲かせた美しい花を。あの花を無駄に散らせてはならん」とハイパーデスラー砲をベムラーゼ首相旗艦機動要塞に放ちこれを殲滅する。一連のシーンにより最大限に情緒豊かに表現し、同時に土門のシーンへと移す。

 全体で見るとお話にならん事の多いヤマトⅢなのだが時折、猛烈に演出の仕方が美しいシーンが登場するから侮れない

 

 整合性はそんなに毀損されていないし、そもそも戦闘としては頭ひねったモノではないから考察するほどの内容ではないというのが正直な所。

 そこで――今回は趣向を変えて見どころを述べたいと思う

 見どころはあの――デスラー君、ようこそ見えられた――から始まる一連の応酬だろうベムラーゼ首相旗艦機動要塞から新型デスラー艦に例の如く通信を飛ばし、互いにモニター大写し。そこでベムラーゼ首相「デスラー君、ようこそ見えられた。我々はヤマトなどどうでもよかったのだ。あなたをおびき出すのが目的だった。罠にはまったな、デスラー」と半笑いで指さしながら挑発するのだ。今まで本人の前では一応総統とかそれなりに読んでいたのに急に君づけだもの。厭味ったらしい。

 これを受けてデスラー総統は冷静に「大将同士の決闘にご招待とは光栄だ」と応じる。そして目をつむり「念のために聞いておきたい……あなたのお葬式は何宗で出せばよいのかな、ベムラーゼ君」と目一杯に溜めて目を見開く。

 これにキレたのがベムラーゼ首相で、応じるように「葬式を出してやるのはこっちだ! ブラックホール砲発射!」と砲撃開始を命じ戦闘は再開された。

 この伝説と言っていい名シーン。これは絶対第20話、「わかった。私が老いたかどうか、いずれ戦いで知ることになろう」の答え合わせだろう。

 久しぶりに再開させたホットラインでヤマトから手を引いてくれと要請した際に「デスラーともあろうものが、気の弱い事を」と、この時総統は思わず「何!?」と機嫌悪いのを表に出してしまった。そしてベムラーゼ首相は続けて「ヤマトをガルマン・ガミラスの先鋒としたやり方はさすがだが、ヤマトを見逃してくれとは老いたものだ」と。で、総統が「わかった。私が老いたかどうか、いずれ戦いで知ることになろう」と述べて通信を切った。

 総統、太陽前面にて有言実行である

 

 

 意義 

 地球人類にとってはこれで再び地球に安心して住むことが出来るようになったという事が意義。また、敵の直接攻撃以外にも危険な要素が宇宙には存在するという事がわかった。

 ガルマン・ガミラスにとっては宿敵ボラー連邦の独裁者を葬る事に成功した。いつか必ず行われるであろう決戦が、図らずも、最も援護に来てくれなさそうなヤマトの支援下にて行う事が出来、そして勝った。これは何物にも代えがたい成果であり、それが意義。

 ボラー連邦にとっては、さほど政治的なセンスのない指導者を追放することが出来たと言える。確かに連邦の権威は傷ついたが、ベムラーゼ首相を放逐できたという事でトントンに落とし込めたのではないのだろうか。

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:デスラー砲艦多数、駆逐艦多数 
 地球側損害:死傷者複数名、コスモタイガー数機

 ボラー連邦側損害:機動要塞消滅、親衛艦隊全滅、ベムラーゼ首相戦死

 

 

戦闘考察Ⅴ スカラゲック海峡星団決戦 ――勇敢なるグスタフ中将――

 

 第22話ラスト、グスタフ中将率いる北部方面艦隊によって惑星ファンタムは抹殺された。衝撃を受け、抗議する古代だが彼の理論はガルマン・ガミラスには通用しない。

 しかして、古代たちは足踏みをしている場合では無かった。人類が移住できる惑星を探さなければならないのである。更にルダ王女がヤマトに乗艦したと察知したボラー連邦が巨大艦隊を出撃、彼らの後を猛追していた。

 

 ヤマトが目指すスカラゲック海峡星団は惑星ファンタムの比較的近傍空間にあった。そして目当ての惑星である海峡星団β星――地表は猛烈な乱流にさらされ、構造物なぞ数カ月どころか数日でも持たぬであろう過酷な環境。しかも酸素含有量はあまりに少ない。この惑星は全く人類の居住に適さなかった。

 惑星探索は万策尽きた……落胆の中、ヤマトの背後には追いついたガルマン・ガミラス北部方面艦隊が迫る。

 

 

 スカラゲック海峡星団決戦・第一会戦

 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:北部方面艦隊
 規模:1個艦隊     
 戦力:惑星破壊ミサイル母艦(旗艦仕様)1、大型戦闘艦4、駆逐艦10 
 指揮官:グスタフ中将

 所属:北部方面軍


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 ボラー連邦側参加部隊:第8親衛打撃艦隊 
 規模:連合艦隊(打撃艦隊所属艦全力) 
 戦力:旗艦級戦艦1、デストロイヤー艦多数、戦艦タイプA多数

 指揮官:ハーキンス中将

 

 展開

 第23話――スカラゲック海峡星団β星に到達したヤマト。しかし恒星間・惑星間の引力によって引き起こされる地表面の猛烈な嵐と低酸素状態は人類の移住先にはどう考えても適さなかった。

 仕方なく引き上げるヤマト。しかしそこへグスタフ中将率いる北部方面艦隊が現れた。彼らの目的はヤマトが収容したルダ王女を引き取る――場合によっては臨検して奪い取ることである。

 しかし古代はこれを拒否、直ちに戦闘準備に入るが、グスタフ中将も直ちに戦闘態勢に入り本気度を示す。だが、更に悪い事にデスラー総統から通信が入ってしまう。内容はボラー連邦主力艦隊の接近であり、同時に元来好敵手であるヤマトの死守だった。ようやく、正面から戦えると楽しみにしていたグスタフ中将は落胆の表情を見せた。

 

 その時、ハーキンス率いるボラー連邦第8親衛打撃艦隊が現れ、ヤマトに向かって60宇宙ノットの猛スピードで接近する。圧倒的な数で押しつぶそうとするハーキンス艦隊の目的はヤマトからルダ王女を奪うか、さもなくばヤマトごと亡き者にしようという事だった。

 古代は当然ハーキンスの要求を、グスタフ中将を相手にしたときよりも極めて強硬に拒否した。「断る」この一言でハーキンスは即刻砲撃を開始する。距離450宇宙キロと迫る中での戦闘開始――しかしすぐさま間合いは詰まって行き、ヤマトは400宇宙キロの時点で反撃を開始。だが、コスモタイガーをグスタフ艦隊への対応に割いたため、効果的な攻撃は望むべくもなかった。

 ヤマトの戦況は全く不利。

 グスタフは総統の命令を守るべくヤマトに向けていた全砲門をハーキンス艦隊に向けて発射、戦闘を開始する。だが、数の差は埋めようがなかった。ヤマトが13発被弾に及ぶに至り、グスタフは艦隊を前進させハーキンス艦隊との間に割り込み攻撃を引き付けようと試みるが、火力は敵側の方が圧倒的でたかだか15隻の戦闘艦では時間稼ぎにしかならない。

 総統の命令、何としてもヤマトを死守しなければならない。グスタフ中将は決意を固め、コスモタイガー隊を退かせる。代わりに自艦隊が前進し、ハーキンス艦隊に対して体当たり突入を決行。僚艦の突入成功に続きグスタフ中将もまた「私も一度はヤマトと正面から戦ってみたかった」との言葉を残し旗艦はハーキンス艦に突入、惑星破壊ミサイルの起爆によって敵艦隊を消滅させた。

 

 描写の妥当性

 ヤマトがコスモタイガーをグスタフ艦隊に向かわせたのは妥当だろうコスモタイガーの攻撃は確実にガルマン・ガミラス艦艇に有効であると判っている反面、ボラー艦艇相手には少々頭を使う必要が有る。加えて、グスタフ艦隊の数はたかだか15隻。強力なコスモタイガーの攻撃で駆逐艦を仕留めれば、グスタフ艦隊のほぼ脅威は排除できたも同然

 一方でハーキンス艦隊は規模が違うため、コスモタイガーを差し向けたとて足止めも難しい。ヤマト自身で戦線を支える必要が有る。それに交渉中にもかかわらず急速接近してきたことを考えると、グスタフ艦隊よりハーキンス艦隊の方が危険度が高いし、どのみち戦わざるを得なかった。

 グスタフ艦隊が進撃を停止しかつ、ハーキンス艦隊へ攻撃を開始したのを確認してすぐコスモタイガーを引き揚げさせたのも正しい判断。

 それ以降は――少数精鋭と巨大艦隊の力と力のぶつかり合いであった為、作戦もへったくれもない。悔しいかなバルコムの言う通り、グスタフ艦隊がいなければ負けていたかもしれない戦いだった。

 

 ハーキンス艦隊も圧倒的多数の戦力を擁している以上、わざわざ艦隊を分ける必要はない。妙な対応をして火力を減じて万が一という事もあったらヤバイ。だったら中途半端に策を弄せず、正面切って戦うのが相応しいだろう。自身が得意な高速戦闘にもちこんでヤマトを圧迫、グスタフ艦隊に戦術の選択幅を与えなかったのは見事といってもいいかもしれない艦隊も密集すればそれだけ弾幕が厚くなり、厄介なコスモタイガーを寄せ付けることなくデストロイヤー艦のウィークポイントを晒すこともなくなるだろう一見すると雑な戦闘展開に見えて実は、割と前回の戦闘を踏まえた感じの展開であるから個人的には好き。

 ハーキンスは元々、ルダ王女を再捕縛するために現れたのである。ベムラーゼ首相はヤマトがガルマン・ガミラスの手先である可能性を危惧していたが、それ以上に危険なのがルダ王女。ルダ王女再捕縛がハーキンスの目的である以上、ヤマト攻撃が最優先であり初期において交戦の意思を見せないグスタフ艦隊予防的に火力リソースを割くわけにはいかない。一方、仮にヤマトに逃げられた場合、明らかに連邦に仇を成すし、ハーキンスはグスタフ中将がヤマト死守を命じられているとはつゆほども知らない。万が一ヤマトを中途半端に損傷させてグスタフ艦隊に漁夫の利を与えるわけにも行かない。

 だとすれば、グスタフ艦隊がヤマト掩護に向かうまでの段階では、ヤマトに全火力を集中させるのは当然だっただろう。また、グスタフ艦隊が本腰を入れて戦闘をするならば、それは迎え撃たなければならなかったのは当然だしただそれだけの話。主砲をヤマトへ集中、射角の広いボラー砲のみを向けてグスタフ艦隊に対し攻撃を加える。ボラー砲はいい意味で主砲と大差ない威力だし、圧倒的多数を有する味方艦隊ならば各艦一門だけのボラー砲でも十分グスタフ艦隊を圧倒出来る見込みがあった。

 そりゃ終わってみれば事前に旗艦だけでも退避させればよかったかもしれないが、旗艦援護がてらに火力を集中させていたあの密集隊形である。僚艦との距離が取れず、退避叶わなかったとしても十分整合性は取れるだろう。その結果、グスタフ艦の突入を許してしまい、敗北につながった。

 

 グスタフ艦隊の行動に関しては、動機の部分はいくらでも説明可能

 総統の命令は絶対であったから、ルダ王女をボラー連邦に奪われるわけにはいかなかった。あるいは、ヤマトに対し一種の――誰にも渡したくない獲物という感情を抱いていたか。一隻で巨大艦隊を相手にするヤマトに感服して武人として共に闘う事を選んだとも表現できるだろう。

 ルダ王女の処遇に関しては、ヤマトが生き残れば勝手に護衛をしてくれるし、まさかヤマトがボラー連邦に寝返るはずもない為、自艦隊が壊滅したとしてもリスクは最小化可能つまり、これはハーキンス艦隊を殲滅=ヤマトを死守するのが全ての観点から優先されるべき目標と合理化できる本当はハーキンス艦隊を引き付けている間に、ヤマトが最大戦速で離脱してくれればよかったのだが……グスタフ中将もそれを期待したと考えて不思議はない

 

 さて、さすが総統の信任厚い司令官らしく、戦闘内容は極めて自然で妥当

 当初、ヤマトより更にハーキンス艦隊の遠方から砲撃を開始することで、ヤマトと自艦隊の二手にハーキンス艦隊の意識を分けさせるのは憎い作戦であり、イニシアチブを握り得る采配だった

 ただ、ハーキンス艦隊の主力が射角が広いボラー砲を備えたタイプAだったのが誤算。タイプBとデストロイヤー艦だけであったならば、艦隊はグスタフ艦隊に対応するには当然、対ヤマトとは別に艦隊を分けなければならなず、これを強要することでヤマトと自艦隊が総力を挙げることで戦力差はどうにでもなった。

 だが、タイプAは牽制すべきグスタフ艦隊へボラー砲を向けるだけ事は済む。で、艦隊自体は主砲を用いて最優先目標のヤマトへ攻撃を集中させ続ければいい。グスタフ艦隊への投射力の不足は圧倒的な大戦力でカバー可能である。

 これが、グスタフ中将にとって破滅的な要因となった

 

 残念ながらグスタフ艦隊は、果敢に砲撃をしたものの……大してヤマトに対する攻撃を引き付けられなかった――結果、ヤマトへの攻撃を停止させるために自艦隊が盾となる形で間に割って入らざるを得なくなったのである。しかも、自艦隊を囮として使うのだがから損害は覚悟の上だろうが……割って入る間のタイムラグで多数の戦闘艦が大損害を負ってしまった。

 総数が15隻程度でしかないグスタフ艦隊がハーキンス艦隊と戦って勝利できるかといえば、元から疑問ではあった。そこへ、更に艦隊の数が減ってしまう。

 目下最大の目的であるヤマト死守、これを果たすにはハーキンス艦隊の殲滅が絶対条件。だが、現状では達成できそうにない

 唯一、この絶望的戦況をひっくり返せるのが惑星破壊ミサイルの起爆だろうだが、グスタフ艦単独での突撃では集中砲火を受けてミサイルの起爆前に撃沈されかねないグスタフ艦のハーキンス艦隊中核への突入にはどうしても僚艦の援護が不可欠だ

 全艦を以ての体当たり突入……これも致し方ないだろうヤマト死守をするには、むしろこれしかない惑星破壊ミサイルの起爆を確実に行うには、これしかない。この決断は、軍人としての冷静な判断と武人としての果断な精神を兼ね合わせたグスタフ中将だからこそと説明できる。

 

 敵より速いスピードで接近し、敵艦隊の中核に向かって突撃しその首脳を撃滅することで艦隊を機能不全に陥らせる。独自の判断で動くという事がガルマン・ガミラス以上に苦手な傾向がボラー艦隊にあるとしたならば、最善策といっていい

 戦闘のあとはヤマトが自分で考えるべきこと。ヤマトは逃げることも、或いは残敵掃討をすこともヤマトにとっては容易だったはず。 

 そう考えればグスタフ中将の体当たりも合理的な判断ではあっただろう。無謀というより、仕方がない作戦の破滅的転換。これによってヤマトは最大のピンチから救われたのである。

 

 グスタフ中将が体当たり突入しなければ、ヤマトが捕縛され或いは破壊され、ルダ王女が奪われ、最悪ガルマン・ガミラスにすら災いがもたらされたかもしれない。その意味では、彼の献身が全宇宙を破滅的な暗転から救ったとも表現できる。

 悲劇的だがグスタフ中将の武人の誇りと祖国・総統への忠誠を見事に示したエピソードといえよう

 グスタフ中将の「私も一度は、ヤマトと正面から戦ってみたかった」という最期の言葉に裏付けされた彼の武人らしさによって、この体当たり突入とその決定プロセスにご都合主義ではない、断固たる妥当性が見えてくる

 

 そもそもだが、ヤマトがハーキンス艦隊から逃げてくれればよかったのだ。確かに、結局のところヤマトの戦線離脱を助力せねばならず、その際にグスタフ艦隊がハーキンス艦隊相手に体当たり突入をしなければならない展開も十分ありえた。

 だが、ヤマトがほぼ動かずにハーキンス艦隊と戦闘を行ったおかげでグスタフ艦隊は間に割って入る以外にヤマトの援護方法がなくなってしまった。グスタフ艦隊も艦隊運動を行い、ハーキンス艦隊をより有効かつ機動的に叩けた可能性があったのだが――ヤマトが動かないおかげで盾になるほかなくなってしまった。ヤマトの鈍い戦闘のおかげで、体当たり突入に押し込まれてしまったと言っても過言ではない。

 

 

 意義

 ガルマン・ガミラス艦はどうやってもボラー艦相手では劣勢、火力が足りない。まして少数で、作戦を立てられるだけの戦力がない場合は、逃げるほかに生還の手段はない。

 ボラー側はファンタム往路で見たような中途半端な数では全く有効打にならないが、大量に艦隊を派遣すればヤマト相手でも十分沈黙させられる=数こそ力という事がはっきりした

 ヤマト側は――ボラー相手に開けた空間では戦ってはいけない。相手が数の優位を生かせない状況においてはじめて、互角に戦える。これがはっきりした。

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:北部方面艦隊全滅、司令官戦死 
 地球側損害:なし

 ボラー連邦側損害:第8親衛打撃艦隊全滅、司令官戦死

 

 

 

 スカラゲック海峡星団決戦・第二会戦

 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 ボラー連邦側参加部隊:本国第1主力艦隊 
 規模:連合艦隊(第一第二主力艦隊より、一部を抽出。ハーキンス艦隊の5倍) 
 戦力:デストロイヤー艦多数、タイプA多数(以上、バルコム艦護衛隊)/大型空母多数、戦闘空母多数、タイプB多数、デストロイヤー艦多数、戦艦タイプA多数

 総司令官:バルコム中将(第1主力艦隊司令

 

 展開

 第23話後半――グスタフ中将は総統の命令を完遂し、ヤマトを死守した。

 だが、バルコム率いるボラー連邦第1主力艦隊が付近に迫っていたのである。バルコムはヤマトに通信を飛ばし、ハーキンス艦隊の5倍の戦力を誇りルダ王女の引き渡しを要求した。しかし、半ばキレていた古代は「くどい! 如何なる理由があろうとNOだ」とぶっきらぼうに返答。これにイラっと来たバルコムは通信を切り、10秒以内の戦闘開始を下令した。

 ヤマトの反撃に必要な猶予は10分。バルコム艦隊の猛攻をコスモタイガーを以て牽制し、ヤマトの機能回復までのタイムラグを稼ごうとするが大火力相手にうまくいかない。たまらず岩塊の陰に隠れ、波動砲発射を試みるが――その猶予すら稼げない。

 そこで、隠し玉である波動カートリッジ弾を以て苦境を打開しようと画策、岩塊伝いに250宇宙キロまで急接近。射程圏に捉えると同時に砲撃を開始し、上部からたたきつけた第一波攻撃で前縁部を撃滅。この第一波攻撃でバルコム艦の撃沈に成功、続く第二波攻撃で側面よりバルコム艦隊を攻撃、最終である第三波攻撃はバルコム艦隊の下方から挑むに及び、これを完全に殲滅したのである。

 

 描写の妥当性

 バルコムはあの性格からしてディーラー。それも懐かしのトランプ大統領と同じタイプの勝負師である。つまるところ、損失自体は恐れないが、損失が無駄になる事を拒否するタイプ。小さくても戦果はいかようにも利用が出来る以上、どんなにちっぽけな戦果でも確保したい。

 ゆえに、バルコムが小惑星帯を挟んでヤマトと対峙したのは当然だろう。打って出て、万が一損害が出たらもったいない。加えて彼の元来の目的はハーキンス艦隊の援軍であって、ハーキンス艦隊が圧倒的優勢だった対ヤマトや対グスタフ艦隊相手では前進する必要は本来なかった。たまたま、グスタフ艦隊が退かず、ハーキンス艦隊が全滅したからハーキンス艦隊の目的を引き継いだまで

 

 ハーキンス艦隊が敢行し戦果を挙げたのは大火力を絶え間なく浴びせかけ、ヤマトを圧倒するという数の暴力。これは対ヤマトにおいて大当たりな作戦である。ヤマトは意外と大艦隊の猛攻に手も足も出ない。

 バルコムが行ったのも同じ内容である

 艦載機群を繰り出しても良かったが、グスタフ中将がコスモタイガー隊をどかせたように、誤射が怖い。バルコムが恐れるであろう、無意味な損失になりかねないのだ。であるならば、艦載機を繰り出すよりも徹底的に砲撃に努める方が合理的

 ただ、小惑星帯にとどまったまま攻撃を開始し、ヤマトの反撃を受けたのは凡ミスいうか、不作為と言わざるを得ない。ヤマトをなめ過ぎた。あの巨大艦隊、あの数の障壁――あれでは迅速には動けないのだから、手を打っておくべきだっただろう。ヤマト反撃を受けてからでも構わなかった、小惑星帯から艦隊を動かし平野でヤマトに集中砲火を浴びせるべきだった。

 ちょっと、損失を恐れ過ぎたきらがある。悪くない作戦だったけど。

 

 ヤマトに関してはこれは何とも評価しようがない

 初めの内はグスタフ艦隊を警戒し、後にこの艦隊がある意味邪魔な位置に入り込んだためヤマトはハーキンス艦隊をうまく攻撃できなかった、という説明もできなくはない。また、対ハーキンス艦隊戦は小惑星のような隠れる場所がなかったため逃げようがなかった、反撃するタイミングをつかめなかった。といえなくもない。ヤマト側に好意的に見ればの話だが普通は、グスタフ艦隊のおかげで圧倒的劣勢を覆したとみるのだが問うだろう

 一方で対バルコム艦隊戦は小惑星帯の中での戦闘。幾らでも身を隠す場所はあったし、実際に小惑星に隠れてバルコム艦隊の砲撃をやり過ごしていた。この小惑星帯の存在を決定的に大きく評価するならば、ハーキンス艦隊戦で木っ端みじんにヤマトが役立たずだったのも仕方がない。つまり、小惑星帯に守られたためにバルコム艦隊と互角以上に戦えた。という説明になる。ヤマトはたった一隻で小惑星を渡り歩くようにして身を守り、反対にバルコム艦隊は砲撃が小惑星に阻まれた上に艦隊の行動を邪魔されてしまいいいようにヤマトに狙撃されてしまったと。

 地形が戦闘に影響を及ぼすのは陸戦の常だし、天候で戦闘が変わるのは海戦の常だ。この説明だとバルコムがアホすぎる感じになってしまうが……

 まあ、無い話ではなかろう

 

 例えば陸戦だがテルモピュライの戦い、或いはサラミスの海戦。近現代ではスリガオ海峡海戦。これらは地形が攻勢側にとって全く不利で大艦隊や大火力を生かすことが出来ず、むしろ守勢側がその持てる総力を一点突破的に集中させて徹底抗戦し戦いである。テルモピュライの戦いに関しては負けてしまったものの、しかしアルテミシオンの海戦の勝利も相まって、ギリシャ連合艦隊集結や味方陸戦兵の退避・再集結までの時間を稼いだ。何となく悔しいが、戦略的には大勝利といえる。サラミスなんかは見事にペルシャ艦隊を押しつぶしたし、スリガオ海峡でも西村艦隊は大きな回避行動がとれずに魚雷や砲弾の雨にさらされてしまい文字通り爆散してしまった。

 このスカラゲック海峡星団決戦を完全に擁護するにはなかなか難しいが、絶対にありえない、絶対に合理的ではないというほどではない

 正直な所、バルコムの性格に全責任を押し付けるという意味でのご都合主義感があるのは間違いないが

 

 ただ、一つだけ確実に合理的かつある意味ご都合主義だがあり得ない話ではないのが――第一波攻撃中でのバルコム艦への波動カートリッジ弾直撃であるこれはご都合主義に見えて、実は極めて有用かつ合理的な描写

 あの密集隊形じゃ避けようがないという事に加えて、あの一発の直撃によって司令部は消滅し、残りの艦隊は全く機能を失ったという事。旗艦が爆沈すればそれは司令部を喪失を意味する。当然、不可抗力的な突然の爆沈である為、バルコムから副司令への権限の継承などはできたはずもない

 ボラー連邦ほどの強烈に中央集権の指導体制であれば、独自の動きを出来る指揮官などむしろ邪魔。という事は、攻撃続行以外の選択肢を能動的にとれる指揮官がいたかといえば大いに疑問。次席司令が艦隊を掌握できなければ当然艦隊は組織的に動けない。各戦隊司令は直前に下された命令ないし元来の命令のどちらかを実行する他ない。

 まるで、頭を失った蛇の体と言ってもいいだろう

 その結果、ヤマトにいいように攻撃され消滅してしまった。ヤマトばかりがよくそんな上手く行くなという部分において結構苦しいが、全くあり得ない内容ではないだろう。逆に言えば、バルコム艦の撃沈描写が後ろ倒しになっていたら、全く持って一ミリも合理さの無い描写になったといえる

 旗艦への直撃は完全にラッキーヒット。このラッキーヒットが冒頭に来たことで、一見ご都合主義に見えるが実はかなりリアリティのある描写となったのである

 

 現実の戦闘では古くはレパントの海戦オスマン帝国艦隊総司令メジンザード・アリ・パシャ、右翼艦隊司令マホメッド・シャルークのような最高級司令官が戦死や負傷して艦隊は統率が著しく低下。左翼艦隊司令クルチ・アリ・パシャが取りまとめた一部の艦隊しか逃亡すら叶わなかった。

 日清での黄海海戦で〈松島〉と〈定遠〉がともに大破して旗艦としての機能が著しく低下し、その最中は艦隊が独自に動けた部隊もあったものの全体としては機能不全に陥った。

 また、日露での黄海海戦では〈ツェザレウィッチ〉が大破し、司令部喪失。結果艦隊は散り散りになってしまったし、日本海海戦でも〈クニャージ・スワロフ〉が大破して旗艦能力を喪失した後は艦隊は次席艦が継いだとはいえ有機的な艦隊運動はほとんど行えなかった。前者に至っては日本艦隊が苦し紛れにぶっ放した本当にラッキーヒットだった。

 何が言いたいかといえば、旗艦が機能を喪失するというのは艦隊の機能不全に直結するという事。別に撃沈や大破させられなくても構わない。指揮官がいないだけで艦隊は十分機能不全となる――リッサ沖海戦のように。 

 

 意義

 バルコム提督……大艦隊を小惑星という障壁で援護させたまでは良かった。だが、自らが利用できるという事は敵も利用できるという事。つまり、逆に相手が利用してきた場合は自艦隊が巨大すぎて身動きが取れない。早く退避しておくべきだった。ボラー連邦の概ね基本戦略である大艦隊運用をする際の問題点が明らかになった戦闘だろう。

 ヤマト側に関しては、やはり開けた場所で大艦隊と戦うべきではないという事がはっきりした。もし開けた場所で戦っていたら今度こそ敗北しただろう、逆にバルコムが小惑星帯に留まってくれたおかげで戦闘のイニシアティブを握れた。開けた場所では二度と戦うまい。


 地球側損害:とくになし

 ボラー連邦側損害:本国第1主力艦隊、本国第2主力艦隊全滅、司令官戦死

 

 

戦闘考察Ⅳ デスラー帝国危機一髪~巡礼者遭遇(ヤマトⅢ)

 

 

 シャルバート信者という強烈な伏兵に苦しんだ本星防衛線、巡礼者に構った結果うっかりハーキンスの襲撃を受ける。ダブルでシャルバート信者に苛まれて、それでも共感してしまうヤマトクルーの‟振り子メンタル”には辟易するが――

 少なくともガルマン・ガミラス本星防衛線は、ヤマト古参ファンにとってはそれなりに楽しめた面のあるシーンでもあった。

 

 

 

 ガルマン・ガミラス本星防衛戦

 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:防衛衛星、戦闘衛星、地上ミサイル陣地、デストロイヤー艦戦隊
 戦力:防衛衛星(探知衛星)多数、戦闘衛星多数、ミサイル砲台多数、デストロイヤー艦8
 最高司令官:デスラー総統


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 ボラー連邦側参加部隊:ボラー連邦前線基地 
 戦力:ミサイル陣地複数

 指揮官:古代進

 

 展開

 第17話――ダゴンの愚か者を排したデスラー総統。再会するに及び総統と古代は和解に至った。更に総統はヤマトを本国へと呼び寄せる。

 本国の宇宙港へと到着したヤマトを表敬訪問する総統は、艦橋へと足を踏み入れ、初代艦長沖田十三の顕彰碑に向かって膝を折る。そして更に、ヤマトへの攻撃の贖罪として彼は太陽制御を申し出た。

 断る間もなくヤマトを辞した総統は直ちに制御班を派遣すべく、工作艦艇を宇宙港へと回航させた。しかしその時、すでにガルマン・ガミラスとの境界ラインにあったボラー連邦南西部辺境域の惑星前線基地より長距離ミサイルが放たれていた。

 

 第一波ミサイルはワープしてガルマン・ガミラスの警戒網を突破して、本星衛星軌道へと直接に到達。ガルマン・ガミラスは直ちに要撃を開始、戦闘衛星のミサイル攻撃でこれを迎え撃ったが――非力で地上砲台も要撃に参加。幸いにも全弾を撃ち落すことに成功した。

 間髪入れずに、第二波襲来。悪い事にATACMSやその他のミサイルと同様の多弾頭形式で、親ミサイルに対しての攻撃は通用しなかった。更に、シャルバート信者の破壊工作によって防衛システムに損傷が発生して地表に被害が出てしまう。落ち着いたタイミングで総統は戦闘艦艇を発進させ、前進してミサイルを迎え撃つべく策を打ったものの――ガミラス時代の戦闘艦でボラー連邦の最新鋭ミサイルには敵わず。更にシャルバート信者の破壊工作は徹底したもので、防衛機構は大損害を受けていた。

 第3波襲来、最終攻撃は何と惑星破壊ミサイルだった。ぎりぎりのタイミングで工作艦は発進し、防衛機能回復までには後30分をめどに完了できる――だが、惑星破壊ミサイルは180秒後に着弾する。当然、戦闘衛星程度では全く歯が立たない。

 ヤマトは工作艦を援護するため発進、これを守る為に波動砲を以てこれを撃滅。しかしながら、武力に自信を持つ総統と、シャルバート信者に洗脳されつつあった古代との間にわずかな溝が生じてしまった。

 

 描写の妥当性

 戦闘の内容については別に何の不自然もないだろう。数撃ちゃ当たるとはよく言ったもの、ガザ地区イスラエルの武力衝突を見ればわかるだろう。イスラエル軍アイアンドームはよくハマスのロケット攻撃を防いだが、完璧では無かった。一方でハマスも大して高くもないロケット弾でアイアンドームの量産するからこそ安く済む弾を無駄に撃たせていた。

 要するに、敵弾が多ければ多いほど幾ら優秀な迎撃システムがあっても打ち漏らしはあるという事。しかもガルマン・ガミラスに関しては、一般兵の中にシャルバート教のテロリストが混じっていた為、より分が悪かった。

 

 しかしまぁ――ガルマン・ガミラスが滅びたところで、ボラー連邦からの弾圧は確実なのだから、何の救いにもならないはずなのに……シャルバート信者の思考回路には辟易する

 さらに言えば、しょーもないヒロイズムを発揮し喚く土門、防衛戦闘の失敗の直接的原因はシャルバート信者であるのにガルマン・ガミラスの科学力の敗北だのとのたまう古代。この二人のセリフというか、キャラ造りの意味不明さは――しかも自分が一番武力を使って地球の敵を、地球の敵という理由で踏みにじって来たのに、お説教という……救いようのないストーリー展開。

 だったら君ら、一作目でガミラスに滅ぼされてなさいよ。我らガトランティスに素直に滅ぼされなさいよ。ウラリア人にボディ提供してあげなさいよ

 平和を実現するためには、戦っちゃいけないんでしょ? 戦わない事が平和なんでしょ?

 

 もっと言えばさ古代君……総統が感謝しているのだから、普通に受け入れればいいのにね。何をわざわざ波風を立てるのか。甚だ疑問。

 

 意義

 古代の矮小なヒロイズムのせいで危うくガルマン・ガミラスとの関係が険悪になるところだった。意義も何も見付けられたものではない。

 強いて意義を上げるなら、シャルバート信者が凶悪という事がわかったぐらいか。これはガルマン・ガミラス側の意義であるが。

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:戦闘衛星多数、デストロイヤー艦多数、都市部複数区画 
 ボラー連邦側損害:特になし

 地球側損害:特になし

 

 

 

 惑星ファンタム往路――巡礼船援護戦

 ボラー連邦側参加部隊:第8親衛打撃艦隊
 戦力:デストロイヤー艦13(戦闘参加は12隻)
 指揮官:ハーキンス中将


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 展開

 第19話――惑星ファンタムへと向かうヤマトを静かに補足したボラー連邦の警戒衛星。この情報は直ちにボラー連邦本星へともたらされた。

 ベムラーゼ首相は事態を重く受け止め、周辺域を担当する第8親衛打撃艦隊に出撃を命じる。参謀長ゴルサコフの直接通信を受けたハーキンス中将は挨拶もそこそこに命令を受領、高速艦艇たるデストロイヤー艦を出撃させてヤマト迎撃に艦隊は出撃した。

 

 一方でヤマトは途中でSOS信号(実は子供のいたずら。ガルマン・ガミラスやボラーを避けるべく、基本的に発信はしていなかった)を受け取り、周辺で小惑星に不時着した見慣れない船を見付ける。この船はシャルバート信者の巡礼船だった。銀河大戦によってもたらされた惨禍を避けるべく、マザーシャルバートを、その総本山シャルバート星への道を25年の間探し求めていた。

 ヤマト工作班はこれを総力を挙げて補修。

 そこへ、ハーキンス中将直々に率いたデストロイヤー艦隊が出現。コスモタイガーを巡礼船護衛の為に繰り出し、一方でヤマトはハーキンスと交渉を試みる。しかし、問答無用と切り捨てられてしまう。

 先に仕掛けたのはハーキンスであり、艦隊を二手に分けてヤマトに対してミサイル飽和攻撃を開始した。迎撃が一瞬遅れたヤマトは第一波ミサイルを派手に喰らうが、波動爆雷やショックカノンを以て第二波以降および艦に攻撃を加えた。

 他方、もう一隊のデストロイヤー艦隊は巡礼戦を砲撃。しかしコスモタイガーの要撃を受けて、しかもウィークポイントであるミサイルサイロに集中攻撃を受けてしまい、本来は比較的強固な装甲も意味をなさなかった。

 

 無事危機を切り抜けたヤマトは惑星ファンタムへ、巡礼船はたとえ安住の地を見付けるのがどれだけ遠くなろうともくじけることなく旅を続ける。

 

 描写の妥当性

 古代君の判断も加藤君の判断も間違っていなかっただろうし、ヤマトとシャルバート巡礼船という危険な存在を取り逃がすことなく踏みつぶそうとしたハーキンスも間違ってはいなかっただろう。

 

 今までの戦闘からして、ヤマトで十分ボラー連邦艦隊は撃破できるため、武器を持たない巡礼船をコスモタイガーに護衛させるのは当然。特に、シャルバート教はボラー連邦も弾圧の対象にしているため、仮に戦闘域外にあったとしても、ハーキンスは追いすがって――巡礼船は十中八九攻撃を受けただろう。それをカバースつにはヤマトの援護より巡礼船の援護を優先するのは当然。

 それにしてもデストロイヤー艦の艦体ミサイルサイロというあからさまなウィークポイント。発射前後に関しては当然次弾装填完了状態であろうから、襲撃を受ければこれは危機的状況。誘爆すれば、普通にミサイルが起爆してしまえばこれは連鎖的に誘爆が起こってしかるべき。

 よく気が付いたね、加藤君

 

 ハーキンスも、端っからヤマトをつぶすために出撃したのだから当然攻撃はする。問答無用で攻撃だ。二手に分けたのも合理的で、ヤマト攻撃に集中する一隊、巡礼船およびコスモタイガーを攻撃する一隊――特に後者は最悪負けても、ヤマト攻撃隊へのコスモタイガーの攻撃を一定時間防げればヤマトの被害は増大するはず。

 多分勝てるとは思っていなかったのか。あるいは緊急命令で取り急ぎ出撃、また改めて迎撃しようと算段していなかったのか。どちらにせよ、どうやらハーキンスは旗艦を戦闘域から離れた位置に置いていた模様。出撃したのは確実に13隻だが太田は12隻と報告していた。まあ、この卑怯と冷静さの間のような判断も、デストロイヤー艦が抱える脆弱性を考えれば仕方がないかもしれない。

 

 巡礼船のじい様はには「黙ってろ」と申し上げる。このじい様の語りが果たしてどこまで事実なのか、時系列が木っ端みじんなので疑問以外の何物でもない。態度も、いい加減まで割と悪かった。

 まあ、シャルバートのじい様に比べれば圧倒的にマシというか普通の人ではあるが。

 

 意義

 ボラー連邦にはまだ中々に強力な武器があるという事が判明した。また、艦隊によって性格が大きく異なるという事も、軍事的センスのないベムラーゼ首相とは違い現場指揮官はかなり手ごわいヤツもいるという事がよくわかった。これは多分、ヤマトの今後の戦闘からして役に立つ情報なのだが――多分気が付いていないんだろうな……。

 一方でハーキンス中将からすれば、デストロイヤー艦の弱点がはっきりわかったしヤマト航空隊が弱点を攻めてくるだけの機転を利かせてくる敵だという事もはっきりした。これだけわかれば結構後の戦いで役に立つだろう。そして、彼は役に立てた。

 

 ボラー連邦側損害:デストロイヤー艦、旗艦を除き全喪失
 地球側損害:特になし

 

 

戦闘考察4+1/2 バース辺りの戦闘(ヤマトⅢ)――卑怯者め byグレムト・ゲール――

 

 バース星周辺では極めて卑怯卑劣な戦闘ばかりが繰り広げられた。

 といっても2つしか戦闘は起きていないが――中でもあのガルマン・スピッツ(本人談)の戦闘はまさにゲール君が2199で述べていた「卑怯者」の戦闘。オリジナルらしく、2199のあのギロロヴォルフ何とかさんより卑怯さが隔絶的に上。

 内容が気分悪い為、さっさと考察して終わろう。なお、個人的に大事な数字であるⅣは使いたくなかった為、数字の4による表記を行った。

 

 

 バース上空戦

 バース星側参加部隊:バース星守備艦隊
 戦力:戦艦タイプA/タイプB多数
 指揮官:不明 
 最高司令官:ボローズ総督

 

 ボラー連邦側参加部隊:第17空母艦隊
 戦力:旗艦級戦艦1、戦艦タイプA/タイプB多数
 最高司令官:ベムラーゼ首相 


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 展開

 第12話の続き、第13話――ボローズ総督の言葉に引っかかりを感じたヤマトクルー。しかもバース星の収容所にぶち込まれていた囚人がヤマトに乗り込み、シャルバート星へ連れていけなどと騒ぎが発生。駆け付けたレバルスがこれを鎮圧して事なきを得たが、バース星やボラー連邦の裏側を彼らは見てしまった。

 更にバース星を保護国としたボラー連邦の最高権力者:ベムラーゼ首相がこの星を視察に来たため、表敬訪問を行った。その際、ボローズ総督との会話の中での引っかかりをぶつけてしまい、ベムラーゼ首相の逆鱗に触れてしまった。

 危うく捕縛されそうになったところを間一髪、総督府から脱出に成功。コスモハウンドでヤマトへ帰還する途中で行きがけの駄賃とレバルス警備隊長を射殺し、囚人を開放する。

 

 そこへヤマト撃破の為に地下基地から出撃したバース星守備艦隊。だが、ヤマトには敵わず、散々に打ち破られてしまう。この最悪な状況に激怒したベムラーゼ首相は、直ちに大型ミサイルの発射を命じた。

 さすがのヤマトも、これを止める事が出来ず。バース星は爆炎の中に消えていった。

 

 描写の妥当性

 ヤマトクルーの偽善者っぷりには閉口したが、仕方がないさ昔っから、ああいう人達だもんね

 

 戦闘の内容に関して言えば左右に回頭しながらバース星艦隊を砲撃したのはこれは意外と妥当な判断。ボラー製の戦闘艦は砲が基本的に旋回できないため、容易に射角から逃げることが可能。

 いくら追いすがろうとも、ガルマン・ガミラス艦艇に結局競り負けてしまった——しかも名将ラム艦長亡き今のバース星にヤマトを撃破できる力など、初めからなかったのだ。果敢にヤマト撃滅に向け襲い掛かっただけでも良しとするほかない

 

 ベムラーゼ首相に関しては、あの行動はまずいだろう。保護国なのだから、彼の所有地ではないのだから、我慢するべきだった

 一応幹部会にでも議題をかけてから星ごと粛清する――ベムラーゼ艦の中に相当な閣僚がいたと思われることから、容易だったはず。もしかしたら閣議決定とか首相令とかを緊急に出したのかもしれないが、大分急ぎ過ぎた判断だったと言わざるを得ないだろう。

 だって彼はこの行為によってガルマン・ガミラスを挟撃できる拠点を一つ失い、挙句ガルマン・ガミラスに傾きがちな第3勢力を思いっきり「少なくともボラーの敵」という立ち位置に押し込めてしまったのだから。

 結果、これが彼の命取りとなってしまった。

 

 意義

 ヤマトや地球にとっては、バース星にはいい人がいたかもしれないが、その宗主国であるボラー連邦は非道かつ地球とは相いれない文化の国であることがはっきりと分かった。これで十分だろう。

 バース星にとっては、いまさら遅いがボラー連邦の味方をするより素直にガルマン・ガミラスの軍門に下った方が良かったのかもしれない、というのがわかった。本当にいまさら遅かったが。

 一方でボラー連邦にとっての意義は地球が明確に敵であり、差し当たって脅しても逆に相手を奮い立たせてしまう――直接対決するより、最後まで距離を取って圧迫する方が対ヤマト戦術としては妥当だろう。という事が判明した。

 

 バース星側損害:バース星消滅
 ボラー連邦側損害:特になし
 地球側損害:なし 

 

 

 

 ヤマト捕獲戦

 ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:東部方面軍司令部、次元潜航艇隊
 戦力:機動要塞1、次元潜航艇10ないし11
 隊司令:フラーケン少佐(大佐に昇進の模様)

 最高司令官:ガイデル提督


 地球側参加部隊:ヤマト 
 戦力:戦艦1

 指揮官:古代進

 

 展開

 第14話から第15話――右腕に近い立場だったダゴンを失ったガイデルは腹心の部下であるキザ野郎:ガルマンなんとかさんを招集、これによってヤマトを捕獲しようと余計なことを始める。

 亜空間に潜んで待ち伏せるという極めて卑怯で救いがたい戦術をぶっ込むガルマン何とか。ヤマトにとってこの手合いの卑怯な相手との戦いは半ば初めてであり、しかも数が多い。半ば一方的に攻撃を受けるものの、亜空間ソナーを短時間に完成させてこれを以て次元潜航艇を粉砕しようと試みた。

 このソナーは傑作で見事に次元潜航艇の優位性を大幅に引き下げたが、しかし髭スカーフの卑怯かつ非人道的な囮作戦を敢行してわざとヤマトに味方を殺させる狂気の沙汰。こんなとんでもない作戦など、まともなヤマトクルーにとっては想定外であり、結果罠にかかり東部方面軍機動要塞へと誘い込まれてしまう。

 まるっきり無意味な要塞の展開に阻まれヤマトは離脱に失敗――だが、いざ総統へとヤマトを献上する段階に至って、ヤマトが総統にとっての好敵手であることが判明。ガイデルもキザの屑も赤っ恥をかく羽目になった。

 ヤマトのネームバリューに負けるという、ある意味珍しい敗北を喫した二人である。

 

 描写の妥当性

 3号艦が第3主砲で粉砕された翌話でも3号艦が登場するというとんでもない失態を犯している。凡ミスも甚だしい。おかげでヤマト後方で爆沈した艦のナンバリングが判らなくなっている

 

 戦闘だが――亜空間というのが卑怯でセコイしかも戦術として凝ったものをヤマトにブチ当てた訳でもない。あの腐った卑怯者のダゴンですら、力のある時は正面から戦う最低限軍人らしい戦い方をした。

 だというのにあのガルマンスカーフの情けない戦闘よ……このガルマンなんとかというキザなスカーフ髭野郎は栄光あるガルマン・ガミラス軍人にはふさわしくない極めて卑怯で陰険な戦い方を行ったそれ自体が実は整合性に欠ける戦闘で、彼の存在をご都合主義足らしめている。後に登場するグスタフ中将とは雲泥の差だし、彼の登場によってガルマン何とかの存在だけが、ガルマン・ガミラス帝国のアウトラインからずれてしまい、彼自身の存在こそが整合性に欠ける演出マターのご都合主義な存在になってしまっている。

 シュルツなど、かつてのガミラス帝国軍人と比べてグスタフ中将の方が筋が通っているため、ずれているのは間違いなくガルマンスカーフ。

 

 また、あれだけ巨大な帝国で、一応正規軍らしい存在が一提督の子飼い状態というのも解せない。彼ら近代的な軍事国家だよね?

 さらに、味方を思いっきり見殺しにする戦術。デスラー総統がかつてガトランティスの宇宙駆逐艦を犠牲にしてデスラー砲を発射したが、あれはあくまでガミラス臣民ではなくガトランティス帝国人であってデスラー総統が保護すべき対象、愛しむべき対象では無かった。だから平気でぶっ放せた。だが、髭キザは自分の大切な部下を、確実に死地に追いやったのだ。人間として、腐っている

 

 作戦としても次元潜航艇自体が不必要。機動要塞に誘引したいのならば、別の機甲師団艦隊を招集して攻撃させて誘導すればよかった。そもそも機動要塞自体が出動してヤマトと直接対決をしたってよかったのだ。

 しかしながら、それをしなかった。つまるところ、ガイデルは単なる腑抜けだし、そんなのを慕っているガルマンスカーフも大概。ガイデルは強力かつ堅固な要塞に居ながら、自分の身を危険にさらすことはなかった。髭の屑もまた、自分の身を危険にさらすことだけはしなかった。なぜ故、他の指揮官が陣頭指揮を執る中で、自分たちだけ危険を避けるのか。ガミラス軍人の風上にも置けない

 大体、こいつらがとった戦闘指揮は、人でなしな部分以外は誰にでも出来るレベル。逆にあの程度の戦闘が出来ない人間が存在するのか疑問なレベル。彼らが途中で戦死しても艦隊からすれば、恐らく支障など無いだろう。

 

 

 それはそれとして――ヤマト側の戦闘もちょっと意味が解らなかったあくまで機動性はヤマトの方が圧倒的に上である事は間違いなく、幾らでも戦闘の方法はあっただろう

 敵魚雷をパルスレーザー砲で弾幕を張って迎撃しても良かったし、コスモタイガーを出しても良かった。少なくとも、土門の報告によればヤマトを視認するためには次元潜航艇は通常空間に潜望鏡を出す必要が有った――これを見付ければいいだけだ。別に難しい事はない、実際の戦闘でも潜水艦発見には上空から見たりピンを打つなりするのが手っ取り早い。この艦載機で敵を見付ける戦法は2199でもあったが……あちらの場合は逆に、あの小惑星帯からさっさと逃げるかパルスレーザーをガチャ押しすればよかったという別の問題があった為、ご都合主義の修正には至っていない。

 あと、波動爆雷はヘッジホッグより派手な形式でぶっ放しているが、だったらヤマトの周囲にばらまきゃいいだろ。浮上した哀れな2号艦と3号艦との位置から亜空間魚雷の射程は容易に分かったはず。だったら周辺にぶっ放しまくればよかった。ぶっ放して着弾を待たずに小ワープで逃げて、周囲にあらかじめ波動爆雷をばらまいてやっても良かった。上手く行けば弾幕にもなっただろう。そして何より、艦内工場でいくらでも次弾装填が可能なヤマトの強みを生かす戦術をするべきだったし、今までのヤマトの戦績を考えればそれぐらいクリエイティブであっても何ら問題はない。

 

 ハッキリ言って、ご都合主義にとらわれ過ぎて、それを排するための逆ご都合主義と言える。つまり、度々指摘されていたであろうヤマトのあまりの強力さを低減する、あまり意味のない試み。

 製作側とすれば、リアリティを持たせるようにと気を付けた結果かもしれないが、むしろリアリティの無い行動。ご都合主義なわざと負けるように戦っているかのような戦闘内容になってしまい逆効果だだった。

 

 意義

 卑怯な奴はどこまでも卑怯な手を取る。まさか同じぐらいの奴が後年、冥王星域に現れるとは……思わなかったね。

 

 ガルマン・ガミラス帝国側損害:次元潜航艇3(2号艦、3号艦とナンバリングがダブった艦)、ガイデル提督のメンツ、フラーケンの部下からの信頼
 地球側損害:なし