旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

第三地球防衛艦隊 概要


 第三期地球艦隊はこけおどし以外の何物でもなかった。興味深い存在ではあるが、こけおどし……地球防衛の主力を担う艦隊がなぜ、こけおどしになってしまったのかを考察したいと思う。

 


 設立の経緯
 まず挙げられるのが人員の確保・調整だろう。

 

 ガトランティス戦役でほとんどすべての第二期地球艦隊を失った地球は、新たに出来るだけ同規模の戦力を整える必要に迫られた。あの最強ともいえる第二期地球艦隊ですら敵わなかったのだから、それ以下の戦力では敵と戦うにはお話にならない。それは簡単に予測できる。

 艦艇だけならば用意できるかもしれないが、持久戦となって負けかけたガミラス戦役に次いでのガトランティス戦役であるから、相当数ベテランや脂ののった兵員が失われただろう。歩兵ならば3カ月ないし6カ月程度の課程で軍人に必要とされる一通りの訓練を施すことが可能である。が、一通りのことを知っているからといって最前線で安心して戦闘を任せられるかといえば別。一年程度は教育課程ではない実戦的訓練を現場で施したしかる後の戦闘が好ましいだろう。

 味方が半分素人だからといって、攻め込んでくる敵が素人であるなんてうまい話はないわざわざ地球に攻め込んでくる敵はほぼ確実に精鋭部隊なのだから、これに備える必要が有る

 


 差し当たっては、生き残ってくれた貴重な残存兵力で運用可能な小規模艦隊でしばらく安定的な防衛網を回すとして、新規徴募や予備役の現役復帰のための訓練時間が欲しい。が、小規模艦隊のみに割と広大な太陽系圏内の防衛を全て任せるのは得策ではないだろう。縦深戦術なんてものを取られてしまっては100パーセントアウト。勝てるものも勝てなくなってしまうだろう。

 地球に負担をかけない効果的な防衛装備品はないだろうか……そこで、無人艦隊である

 艦隊整備の為、地球防衛のための時間と数を確保するには、人間が操る艦ではなく……人間が遠方で多数を一気に操る艦の方が効率がいいし安全。また、太陽系圏内での運用に限られる以上、通信が途絶するなどのアクシデントも惑星基地や監視衛星だのコロニーだのが豊富な太陽系圏内であれば十分その危険性をいくらでも避けられる。

 長期間連続で航海させても過労はないし、ストも起きない非常に便利な存在。コントロールする人間はシフト制にして確保すれば、ほんの数人で数百隻の艦隊を十分運用可能な存在。それが無人艦隊だ

 


 弱点の数々……
 武装の癖が凄い、凄すぎる。無駄なものを載せている割には必要なものを載せていなかったりと――以下に纏める。

 

 武装

 艦首方向への対艦戦闘は非常に強力である。何せミサイル14門やショックカノン12、小型砲18門に加えて波動砲が大型艦2、小型艦1を備えているのだから。
 が、他方で側面での攻撃となるとミサイルが例え発射されても大きな円を描きながら旋回するという余計な行程の最中、双方の砲撃によって爆発してしまう可能性が幾らかある。また、固定砲台は明らかに大した仰角が取れないであろうから砲撃に参加はできない。大型砲が大型艦6門、中型ないし小型砲が小型艦の6門に加えてそれぞれの対空機銃合計14門。何か微妙。
 艦尾方向に至っては物凄く脆弱で小型艦の2門+小口径4門と大型艦の小口径8門しかない。


 対艦戦闘に置いてひたすら艦首方向の攻撃しか有効では無いし、対空戦闘においては舷側方向の攻撃しか有効では無い。遠距離戦闘では大型艦以外に用をなさないし、中距離戦闘では小型艦しか用をなさない。

 組み合わせて利用するのだから弱点を相互補完できるのだが、これは――頭の無い無人艦隊にそんな簡単にできる戦術なのだろうか……。しかもコントロールセンターはとっても遠く、その設備も人員も貧弱。

 

 外付け波動砲
 これもインパクトはあるが、ちょっと意味わかんないっすね

 波動砲の新しい形式へのチャレンジだとすれば、本採用して多数の戦闘艦に搭載するなんて無謀。仮にこの外付け波動砲のせいで気流が乱れて大気圏内航行に支障があったとすれば、無人艦隊はわざわざ全艦に安定翼を装備しているのも理由づけになるが、そんなことするぐらいなら普通にすればいいのに。

 もっと言えば、180メートルの小型艦に巡洋艦のそれよりも小さくなった砲口の波動砲をつけて一体どれだけの効果があるのか。しかもエンジン直結ではないのに。

 かなり疑問

 

 


 自律行動不能
 弱点はずばり、無人艦隊なのに自律行動が全く出来ない事だろう

 

 確かに、全艦にそれぞれ強力な自立型の自律機構を乗せる必要性は薄いだろう。きっと単価も高くなるだろうし、100パーセントの自律行動をさせる必要はない。仮に艦隊自身に自律を期待するならば、大型艦や戦隊旗艦クラスの小型艦にこれを積みこみ、下級艦を指揮させればいい。

 だが、それすらしなかった。地上のコントロールセンターにまるっきり頼り切るという意味不明な事をしてくれたのである

 

 アナライザーや防衛軍中央病院などのアンドロイドを考えれば、なぜ彼らに準じた頭脳を艦に搭載しなかったのか疑問。これらを利用すればたとえコントロールセンターとの通信が途絶しても自前で戦闘可能になってより有機的かつ徹底抗戦に向いた艦隊となり得る。もっと言えば、コントロールセンターを複数設けてバックアップ取ればいいという話にもなる。

 ハッキングされてインターセプトされる危険性を重大視して、全体的にダウングレードさせたという説明もできなくはないが、分散自律型のシステムを導入してハッキング対策をするなど、色々な方法があるはず。敵艦隊に勝てるか微妙な装備に押しとどめたり、エネルギー反応を検知しても応戦しないというのはあまりにレベルが低すぎるだろう。ラクタを作っているようなものだ

 

 ヤマト作品という割と色々な演出が後代の技術によって何とか整合性リカバリーが出来るという――いわばご都合主義的要素の強い作品において、このような容易に考えつくシステムを導入しなかったのは非常に理解に苦しむ


 あるいは搭載しているが、島君が艦隊を信じられず自身が全てを掌握するため、自律を切ったとあれば、あの大惨事は理解できる。だが、それはやべぇだろ。この男は「俺があの艦隊に乗っていれば」などといったが、お前は戦闘班じゃねぇ。しかし、彼の様子を考えるとやりかねん。

 そもそも、運航班出身の人間に戦闘まで受け持たせる防衛司令部の判断が――


 暗黒星団帝国の艦艇がびっくりするほどステルス性が高いのはそれまでの戦闘の中で、割と監視を忘れるガミラスは別にして、ヤマトなどもいまいち補足がうまくいっていない事を考えると間違いない。だからいまいち認識に至らず、補足・攻撃を受けたとしても妥当性はある。が、攻撃を始めれば明らかに加熱するだろう、それを狙って砲撃開始するのがある程度自律的に砲撃を行う機能があれば可能なはず。それがなかったという事は……やっぱり自律機能はなかったか。
 武装を総花主義的に全部を盛り込まず、小型艦と大型艦で性格を多少なりとも振り分けたのは理解できるが、自律機能までオミットしてどうすんだよ……

 

 


 全体的な能力
 全体的に能力がかなり低い。まず、有人艦以上に小型でしかもフィンが多数というのはスラスターなりがあまりないのか、緊急的な動作をしない前提なのか。何にせよ航行能力は低めだろう。スピードに関して言えば、普通の艦艇と同等かもしれないが、速い事と動きがいい事は別


 次いで、地球のコントロールセンターに指揮通信が運航ばかりでなく戦闘まで任されており、バックアップさえない。非常に脆弱な指揮系統。戦闘科を終えた程度=決して艦隊司令ではない人間が運航にどっぷり口を挟むのは問題だが、他方で艦隊司令を一時でもした事のない運航班=島大介が艦隊の戦闘指揮を執るというのはお話にならない


 最後に全く方針の不確かな武装

 第二期地球艦隊の対空兵装も思い返してみれば貧弱だが、それでも艦首及び艦上下方向には指向可能だった。また、大中小艦艇を組み合わせてそれぞれの特質を組み合わせて概ね穴の無いといえる対空対艦能力を編成した。

 が、大小の艦艇のみで、中間の艦や特化した艦艇がなく、全体的に貧弱な武装でしかない。航空戦力による掩護があれば当然、また違った話になるが、必ずしも――そもそも人員不足から誕生したのなら、航空支援は多くは望めないはず。それで艦隊全体があんな微妙な対空能力では、的にしてくださいと言っているような物。仮にデカい砲であっても、即応力があれば対空戦闘できなくはない。反対にちょうどいい砲があっても即応力がなければ対空戦闘はできない。

 戦術によっては活躍できるだけのポテンシャルがあるのかもしれないが……困ったことにこの艦にはコントロール機構上、全く即応力がなく碌な戦術が取れない

 

 

 

 大人の事情による演出なのだろうが、これは擁護できん

 機械文明へのアンチテーゼは理解できるが、過剰過ぎてアンチテーゼ自体が滑稽になっている
 今の技術を踏まえてリメイクするなら、十中八九自律型無人艦隊になるだろうし原作の時点でもそうしなければ合理性がない。自律出来るならもっと武装を増やしても問題はないし、効果的に機能可能。となると、ハッキングされて反対に地球攻撃の一手となって同士討ちさせられる――と言うような展開が一番スペクタクルを保持したまま、旧作に準じた展開やアンチテーゼの確保になるだろうか。

 何にせよ頭の悪すぎるアンチテーゼな展開の為に無理やり能力を色々オミットしたご都合主義的な設計。この残念さに合理的説明をこじつけようと思えば十分できるが……正直、その気力が起きないレベル