戦闘考察Ⅱ アルファケンタウリ周辺域(ヤマトⅢ)
アルファ星第4惑星から白鳥座にかけての宙域はヤマトとダゴンが血みどろの戦いを繰り広げた舞台である。話のボリュームも何と5話も費やしている。
その割には中身のない戦いだが――考察しよう。
アルファ星第4惑星奇襲戦
ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:第18機甲師団艦隊、バーナード星第1惑星前進基地
戦力:前線基地ミサイル陣地、第18機甲師団艦隊(戦闘には未参加)
指揮官:ダゴン将軍
地球側参加部隊:ヤマト、アルファ星第4惑星警備隊
戦力:戦艦1、警備艇多数
指揮官:古代進、警備隊長(氏名不明)
展開
第7話――ダゴン艦隊の襲撃を受け、SOSを発信したアルファ星第4惑星に援護の為に寄港したヤマト。そこで目にしたのは散々に攻撃された各施設の惨状。
ヤマト自身も第11番惑星域で受けた損傷もあり、これを修繕すべくドック入りをし、一方で乗員に対しては半舷上陸を認めて惑星上の警備活動も同時に行った。
クルーらが立ち寄ったバーにて、偶発的に発生した乱闘の最中――突然どこからともなくミサイル攻撃が開始される。悪い事に砲術班の数がそろわず、現状の乗組員だけでこれに対処しなければならなかった――しかし、警備艇の犠牲と弾幕を張ることでこれを凌ぐことに成功。
乗組員を収容したヤマトは直ちにミサイル発射地点へと出撃した。
描写の妥当性
ストーリー展開上、バーでの喧嘩が必要だったかは疑問。しかもあれ、副長と艦長が放置――後でバーの主人に通報されたらこれは二人とも懲戒ものだろう。あれを許すのは、昭和だけ……平成だろうが令和だろうがその次だろうが、許されないだろう。昭和の時だって、憲兵隊にしょっ引かれただろう。あの喧嘩は誰が現場に居合わせたにしろ、即時押しとどめるべきだった。
そもそもストーリー展開的にもなきゃ無いで構わない、むしろ無い方が妥当なレベルの描写。別に第一作で沖田艦長とサシで話し合った時のように、ちゃんと話し合えばいいだけなのに無理に挿入し、無理に古代と島の和解エピソードに仕立て上げた。
無理に次ぐ無理がたたって意味のない描写になってしまった。と言えよう。
戦闘の中身だが――警備艇が出動している分、第4惑星の基地には空きが出ているのだからそこにコスモタイガーを突っ込んでおけば有機的に出動できたはず。突っ込んでおいたコスモタイガー隊を緊急的に発進させて要撃させれば警備艇を無駄死にさせることもなかったし、シーンとしても華があった。大体、敵襲があると判っているのに、惑星援護に向かったのにもかかわらず、肝心のヤマト自身が警戒態勢を解くとは何事か。古代は馬鹿なのか?
更に指揮系統の描写も整合性に欠ける。真田副長がヤマトにいるのだから、敵惑星上ではないのだから艦長と島副長にはその場でとどまってもらい、ヤマトは緊急発進して真田副長を中心に機動戦をすればよかったしその方が妥当な展開だったはず。古代と島は何がしかの方法で地表からミサイルを迎撃するとか、発射点を探るとかしてもらえば、彼らにも十分見せ場が出来ただろう。
それにもかかわらず、古代と島の帰還を前提とした指揮を開始するものだから整合性がとれないわ、警備艇は沈むわ、ダゴンに押されに押されてしまうわの大惨事。わざとヤマトが劣勢になる様に展開を調整したのかな? と疑いたくなるほどの‟逆”ご都合主義展開と言えよう。
この作品は第一作の脚本に参加していた山本暎一氏が脚本と監督に参加しておられるが、それゆえか人物に対してフォーカスが強いのがヤマトⅢ。第一作と同じく、戦闘描写が人間ドラマに押され気味なのもヤマトⅢの傾向。
いうなれば、山本氏の脚本では人間という存在の限界と同時に輝きを描き出すという特徴がある。であるから、なのかは不明だが……指摘していいのか怖いが……以前までの作品であんなにうまく戦闘指揮をしていた真田さんが、突然平凡な指揮しかできなくなっているところ、これが非常に疑問でむしろご都合主義。
2199でも似たような雰囲気というべきか、イズムが感じられ――逆にご都合主義に思えた。あれと同じというか、その起源といえる……かもしれないシーンといえよう。
要するに――この一連の戦闘はご都合主義を廃したように見えて逆に、無茶なほどご都合主義的な演出とストーリー展開。結果として全く無意味な試みになってしまった。
そもそも副長が二人という非合理的な設定を冒頭にぶち込んで居る時点でヤマトⅢの整合性はお話にならないレベルだが。
意義
ガルマン・ガミラスのミサイルが惑星間の長距離射撃が可能という驚愕の科学力が判明。加えて太陽系近縁部までガルマン・ガミラスの勢力が接近しているという事が判った。これが地球側の意義だろう。
ガイデルにとってはこのタイミングがダゴンを見切るベストタイミングだったはずだが……。
ガルマン・ガミラス帝国側損害:特になし
地球側損害:警備艇多数、ヤマト損傷、基地施設
バーナード星第1惑星誘導戦
ガルマン・ガミラス帝国側参加部隊:バーナード星第1惑星前進基地、第18機甲師団艦隊所属駆逐艦(旗艦)
戦力:新反射衛星砲機構1、第18機甲師団艦隊(戦闘には未参加)
指揮官:ダゴン将軍
地球側参加部隊:ヤマト
戦力:戦艦1
指揮官:古代進
展開
第8話――ミサイル発射源を追ってバーナード星域に到達したヤマト。同時並行的に新惑星探査及び、たまたま遭遇した山上一家を保護――そこへ明後日の方向から突然閃光が走る。
ヤマトは敵襲を受けたのだ。
この第一波攻撃を探査より帰還中の古代たちが目撃。閃光の発射速度、軌道およびその傾向から古代はかつて冥王星で対決した反射衛星砲ではないかと考えた。
第9話――反射板搭載機が小惑星やデブリに紛れてヤマトの周囲を滞空、これに向かって新反射衛星砲を連続発射しヤマトを徹底的に攻撃するダゴン。しかし、敵状探査を続行した古代が新反射衛星砲のからくりに気が付き、反射板搭載機を撃墜。さらにコスモタイガーの増援が到着するに及んで反射板搭載機を全機撃墜。ダゴンも馬鹿では無い為、早くから護衛戦闘機を飛ばしていたものの、これも撃墜されてしまった。
さらに深く敵状を探る古代は反射衛星砲の砲台を発見し、これを撃破。更にヤマトを誘導して一気に反撃を図った。しかしダゴンも、残存砲台の全てを投入し直接砲撃を敢行、更に惑星破壊ミサイルをぶっ放してヤマトを消滅させようと試みる。しかしショックカノンによって砲台は多数損傷、更に高空へと上昇することで直接砲撃の損害を軽減――そこで波動砲を発射。偶然タイミングの一致したダゴン側の惑星破壊ミサイルを巻き添えに基地を破壊。
ダゴンは旗艦を駆って必死に逃げるほか術は無かった。
描写の妥当性
やだよねぇ、山上さんちのおっちゃん。ああいう人って結構どこにでもいるけど、周りを振り回している自覚があるのかないのか……。自覚があっても迷惑だけど、無かったら最早害悪なのではないのか……。
第一作のバラン星で見たように、古代君は馬鹿だが愚かではない事の方が多い。
つまり、反射衛星砲に気が付いて当然だし、衛星を探してもなくて周辺に変な機体があればそれを疑うのは当然。これが元凶とわかれば一斉攻撃するのもこれは当然だろう。これはご都合主義ではなく、妥当な描写。
ダゴンの悪い癖は、詰めが甘いところ。
今回も同じで、ヤマトが射程離脱を目指して上昇したからといって手ぬるい攻撃をする必要は無い、反射衛星砲の直接砲撃を続ければよかった。また、ヤマトをどうしてもつぶしたいと思えば、かつて冥王星前線基地司令シュツルがやったように艦隊を前進させて圧迫すればよかった。でも、それをしなかった。
つまり、ダゴンは勝つためにやるべき事を、全く行わなかったのである。そりゃ勝てんわい。
かつてヤマトに立ちはだかったシュルツは機転・応用が利かなかったが、非常によく練られた作戦を慎重に進めた。ドメルは性格が悪いというか、性根が腐っていたが――それでも意表をついて効果的に艦隊戦を行う軍師だった。
だが、ダゴンは――やっぱりこの人はパワーで押しつぶす他に作戦を立てられない無能さんだったのかも。
意義
新クルーとベテランクルーが共同歩調を取れた事、バーナード星第1惑星は人類の移住先には適さないというのが判明した事、ガルマン・ガミラスの前進基地を消滅させたことが意義。
ダゴンは自分の無能さに気が付ければよかったが、それが出来なかったので、彼にとってこの戦闘の意義は無かった。
ガルマン・ガミラス帝国側損害:前進基地消滅、第18機甲師団艦隊主要艦艇全滅
地球側損害:特になし