旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティスの考察―概論―

 

 ガトランティスを深く考察する上で、その全体像をあらかじめ把握しておく事は極めて重要である。(私個人にとっても順序立てて投稿するにも都合がいいのです)

 そこで今回はガトランティスについて大まかな特徴を掴んでみたいと思う。

 

 

 ――ガトランティスの概要――

 

 国家名:大帝星ガトランティス(彗星帝国ガトランティスとも)

 国家体制:共和政実質的君主制(これらに独裁的色彩を加味)

 拠点:都市帝国(白色彗星に内包)

 支配領域:アンドロメダ銀河及び周辺域天の川銀河はくちょう腕(テレザート、シリウス恒星系・プロキオン恒星系を含む)

 植民地/属国ゼラーム星雲(即位1年制覇)、パラジウム星団(即位2年制圧)、グラスダー星(即位3年征服)ドライゼ星(即位4年制圧)

 主要動力機関:不明

 


 国家体制
 帝を閣下と呼ぶ点から実は共和政である可能性が指摘できる。実際問題として、帝の独裁には大貴族に対抗できるだけの官僚制度が不可欠であり、民衆の中から登用試験を課した帝の自由になる官僚が必要である。地球の中世的政治体制――貴族政やそれを含んだ王政における官僚はほとんどが世襲制であり、主従関係や金銭の貸借関係などによって結びつく。つまり封建制度は結構、売り手市場な契約関係である。

 これを打破するには、登用試験と言う現代的な要素によって採用される官僚が不可欠なのだ。判り易く言えば汚職や癒着を権利として主張できる中世的官僚の代わりに、身分の上下なく能力のみによって選別された現代的官僚が必要。

 

 これは、帝による独裁には不可欠なものだが、一方で民主的な政治に必要な実務面のテクノクラートとしてやはり必要なものなのである。反対に貴族政では無用なものなのである。

 

 民主主義の中で誕生した独裁者は数知れない。これは官僚という為政者の為の滅私実務集団、民衆の歓呼が武力や合理性に代わる力であることを意味する。ローマ皇帝もこの類であるし、ナポレオン三世もボガサ一世も同じだ。

 独裁者が必ず民衆を抑圧するかと言えばそうではないし、民主主義の非独裁者であるからと言って民衆を尊重するかも全く確定的ではない。ここは押さえておきたい。

 

 つまり、王権も帝号も独裁の必要条件ではなく十分条件

 独裁の必要条件は現代的官僚と十分な数の支持者である。

 

 だからガトランティス大帝ズォーダー5世がどのような政治体制から現れた制度の継承者であっても不思議はないのである。仮にガトランティスの帝位がローマ皇帝的な成り立ちを経た場合、ガトランティスは元来共和政国家であるという推測は十分成り立つ。その名残が“閣下”という敬称と考えれば筋が通る。

 君主専制を否定する形で成立した共和政をベースにした場合、君主専制を否定するがために共和政を君主制に代わる器として保持し続け、それがために独裁化してしまったと考えられる。

 共和政を守るために共和政の庇護者として振る舞う独裁者を支持する、そのほかの選択肢を持たない。彼らは強力なイデオロギー保有し、押し立てながら全宇宙を回り、自身の専制独裁的性格を再生産し続けるまさに共和政独裁帝国と呼べよう。

 


 周回する理由
 まず、明確にしたいのはガトランティスは巨大軍事国家であるという事。同時に資源の極めて乏しい帝国でもある。どっからどう見ても資源は無かろう。

 都市帝国は恐らく莫大な量の食料や資源を蓄積することが可能であろうが、生産することは難しいと考えられる。一見すると中身の詰まっていそうな下半球だが実際には空洞であり――殊、鉱物資源に関しては全く見込めない。だって中に超巨大戦艦が居るじゃないのさ。

 

 旅を始めた原点は別にして、あの資源の乏しい都市帝国で宇宙を周回する場合、他の星を征服する他に資源を獲得する方法はない。他の星を征服する場合、内戦状態の惑星であれば苦も無く征服できるであろうが、確固とした惑星国家となれば話は別である。負ければさっさと逃亡する必要が有り、勝った場合は損失を取り戻す必要が有る為徹底的に搾取する必要が有る

 しかし、度の過ぎる搾取をした場合、その国家は当然再起不能不良債権と化してしまう。そんな場所にどうして留まる必要が有るか。むしろ移動する必要性が高まる。


 同時に別の理由が存在するとも考えられよう――敵を征服するには大量の兵力が必要である。遊牧的国家は基本的に国民皆兵主義で、武装は当然ながら、兵士一個人の能力もカリスマ性も含めて重視する。遊牧的活動であるからこそ強大な戦闘国家足りえるが、ガトランティスもその例にもれずかなりマンパワーを重視しているらしいく、人口の確保は重要課題であろう。一方でその確保した人口を養えるだけの体力が都市帝国には存在しない。

 つまり――

帝国を維持するためには戦わねばならず、

戦うためには人口は一定程度増やし続けなければならず、

帝国を維持するに人口を一定程度消費し続けねばならない

 これを実現する最適解が他国の征服なのだ。一見すると破壊しかない、実際は破壊でしかない場合が多い。そんな破壊を正当化する、これを押し立てる原動力が『宇宙は全て我が意志のままにある』というイデオロギーなのである。宇宙はガトランティスの意のままにある、所有物だと。であるからこそ支配し破壊し変化をもたらす事はガトランティスの使命であり宇宙に変化をもたらす一種の天啓であるとして自己正当かするのだ。

 

 詳細は帝位発生と共に、個別の記事に纏めたいと思う。



 文化面
 当然、全く不明である。だってそこまで深く描かれていないから。しかし、第15話の晩餐会では国家元首から服装からして大した事のないレベルの将兵まで顔を出しており――更に命令違反疑惑のかけられたデスラー総統の側近タランまで招待され、どうも宴の席では階級について無頓着らしい。

 また、帝国支配庁の長官が実務最高司令官である遊動艦隊司令長官に対して命令を強制している点からも、階級よりも個人の資質や能力・派閥による力の方が優越していると考えられる。一方で支配庁長官に支配惑星上の軍備について指揮権があるとすれば、組織として有機的に横のつながりが存在しているともいえる。(大分ひいき目な言い方だけど)

 

 女性の登用という点も中々に興味深く、そもそも女性の登場しない他の勢力や単なる侍女でしかなかったサーダとは違いガトランティスのサーベラーは一味違って実際的な権限を有していた。これはさらばもヤマト2も共通しており、ズォーダー大帝の身びいきが無かったとまでは言えないだろうが、一方で実務能力を有している人物であれば女性も高官に成れるという証左と言える。

 さらに言えば、さらばの監視艦隊司令ミルは極めて中性的な容貌であり――そのような姿で公の場に現れたり高官に登用されたりするというのは、地球視点に立てば及びもつかない先進的な考え方を有しているともいえよう。禿頭やロン毛や髭など制服以外の部分ではかなり自由度が高く、全般的に自由な気風を有している勢力とも評せよう。自分たちに対してもかなり自由であるから、逆に他者に対しても自由に振る舞うのかもしれないが

 実力主義というのも、実力がないからガトランティスの侵攻を退けられずそれ自体が一種の悪として滅ぼされる理由になるのかもしれない。

 

 ほぼ確定的なのは、基本的に裏切りや投降を恥とするのは全般を通しての描写である。ヤマト2にて捕虜となったメーダーは帰還を許されず、撤退してきたと思われたデスラー総統も大帝の信頼を失っている。また、さらばでフランスないしソ連流に政治将校つまりガトランティス監視艦隊司令を同行させる点も、徹底して裏切りを嫌う描写と言える。

 ヤマト2の隠れた見どころともいえる、最後の3馬鹿が超巨大戦艦に乗り込みを禁止されるシーンもまた、裏切りを恥としている描写だろう。大帝の信頼を裏切り保身に走る賢しい手を使ったサーベラーとゲーニッツ、その暴走を目の前で見ていながら止められなかったラーゼラーが巻き添え食って断罪されたが、これも同様と言える。

 

 反対に、頑張ってダメだった場合は意外にも寛容だったりする。

 ヤマト2において愚策を重ねに重ねたナスカも潜宙艦でヤマトに対して決死の戦闘を挑み戦死したが、この時に重ねての叱責はなかった。

 さらばでは第6遊動機動部隊を思いっきり失ったバルゼーだが、実際問題としてアンドロメダ率いる地球艦隊はきわめて強力。仮に善戦しても第6遊動機動部隊が大損害を被って結局負けるという可能性も十分あった。最終的に彼は、地球へ降伏勧告を行う使者の任を受ける事となり――失態には死をもって報いるタイプのガトランティスにおいてはさほど大きな失態とは受け止められなかったと推測できる。
 基本的に男気や義理、執念を重んじ、だからこそガトランティスが正義、破滅的なイデオロギーが正当である考える。つまり、自分たちは誰に対しても正々堂々と恥じる事のない戦いを行う勇士であるからこそ、他者への征服も『マニュフェスト・デステニー』として広く浸透している。

 このように理由づけが出来るだろう。マッチョイムズが基本だが、幾らか中身を拡大した概念といったところか。

 

 

 想定される主機関

 これも不明だが、実は波動エンジンではない可能性があったりなかったりする。地球征服を目的とした長期戦やむなしのガミラスならばいざ知らず、短期決戦以外に選択肢を持たないガトランティスが第11番惑星を兵站基地として占領するのは、仮に無限の航続力を持つ波動エンジンを有していたならば、大した意味がなくなってしまう。第11番惑星周辺に到達した時点で全地球艦隊がタイタンへと集結を始めたのを知っていて当然なのに、どうして兵站基地を築いて安心安全な戦いを目指したのかイマイチ整合性が取れないのだ。

 兵站が必要な理由の一つには食料、もう一つは弾薬、もう一つは燃料。食料は艦が大型であるから差し当たっては十分量を搭載可能だろう、何なら前線基地を襲ってその食料庫や地球を征服して一般家庭の冷蔵庫を物色したってかまわない。弾薬も大して闘っていないのだから減っていない以上、土星接近までの間=現状は補給する必要はない。決戦に勝利した後ならば敵の規模はたかが知れているため弾薬補給は必ずしも必要ではない。仮に必要であったとしても、白色彗星本隊到達の露払いであるから戻って弾薬補給するぐらいなら喰らい付いて特攻したってかまわないはず。

 一方で燃料補給は有限の機関を利用していた場合、大きめの課題として最後まで残る。前に進むにも戦うにも燃料は必要。この場合のみ、兵站補給が必要となる。ガトランティスが航海用に通常使うエンジンがもし、無限の波動エンジンとは違い後に登場するディンギル帝国のような有限のエンジンであったとすればこの問題は重大というほかない。艦が大型でも燃料のスペースを確保できるとは限らないし、大体被弾時があまりに危険だ。それに、装甲を施せばそれだけ容量は減る。故に、十分な装甲を施した燃料庫にそこそこの量を置き、適宜輸送艦を繰り出し補給させるのが妥当だろう。この時、兵站補給基地と輸送艦をセットで置いておけば機動的かつ有機的に補給活動を行う事が出来る。

 これらの要件を考えれば、ガトランティスの通常使う機関が波動エンジンタイプでない可能性が高いと示す事が出来るだろう。さらに言えば、白色彗星以外に劇中でまともにワープをした描写がない。ワープへの言及もないと言っても過言ではない。波動エンジンはワープが出来てナンボであり、ワープは波動エンジンありきと言っても過言ではない。でもそれが劇中ほとんど見られないのだから、波動エンジンをメインに使う事はない――と説明しても何ら問題はない。

 戦略的にも、万が一ワープの軌跡をトレースされれば居場所がバレてしまう。それを避けるために波動エンジンつまりワープを前提としない航行を旨としているがゆえに波動エンジンやワープが活躍することが無かった、としても理に適うだろう。


 他にも、波動エンジンは確かに長大な航続力を有するが、星間物質(或いはエネルギー)を利用する可能性が高い形式であるため超空洞(ボイド)やら、亜空間等の通常とは違う空間での安定した運転ができるかは不明。

 一方で燃料を自分で搭載する必要のあるイオンエンジンであれば、超空洞に突入したとしても端っからその前提であるから、反力さえ得られれば十分行軍ないし帰還することが出来る。都市帝国自身は惑星から略奪した物資を用いて発電所でも稼働させていればよく、原子力でも火力でも大出力の発電であれば何でも構わない。

 波動エンジンの使用=ワープが鈍い、あるいは不十分な理由の想定としては、ガトランティスは宇宙のどの地点でも確実に稼働できる安定性を取った結果、と説明できよう。

 

 波動エンジン以外に使う機関の仮定としてはイオンエンジン――例えばホール効果推進器なんかがあげられるだろう。推進器のビジュがガトランティスっぽいし。
 イオンエンジンはエネルギー効率が高い推進方法であり、必要な推力が出るまで時間がかかるものの、極めて小さいエネルギーで高い速力を得ることが出来るエンジン形式である。また、エネルギーを投入した分だけ推力を上げられるため、電力の使い方によっては発動直後から高い推力を得られる可能性もある。

 無論、ワープ機関を別個に設けていても上記のエンジンを改良して機能を持たせたとしても構わない。推進用に使っていないだけでワープ用には波動エンジンを有している可能性だって十分ある。

 


 兵器

 極めて高い対艦攻撃力を有し、全て大型。肌の色と同じグリーン塗装で、恐らく新型ないし改修艦には蜂の巣状のレーダーらしき機関を備える。これが一般傾向。

 形状としては概ね生物的なイメージで、扁平と円筒の組み合わせが基本。自前の技術かは不明だが、技術力は間違いなくシリーズ中トップクラスである。火炎直撃砲搭載母艦〈メダル―ザ〉、潜宙艦、白色彗星など比類なき高性能兵器を備え、決戦兵器クラス(つまり大戦艦の衝撃砲)を汎用できる勢力は他には地球しかないだろう。

 問題は結構防護性能が無い事。地球艦隊の集中砲火に耐えた〈メダルーザ〉以外、ショックカノンの一撃ないし二撃で木っ端みじんに粉砕されてしまう。また巨大空母も火薬庫に火が入るとそのまま手の付けられない様子で、最終的に爆沈した。

 これらは敵を征服しなければガトランティスを維持できないという点と、十二分に合致する。つまり、火力を高めて敵を撃滅し負傷した艦は躊躇なく捨てる。その繰り返しで敵を次々征服し、失った資源を征服地から搾取する事で補い。

 いうなれば武力の大量生産大量消費傾向である。

 

 

 ガトランティスアメリカをモチーフにしたとされる

 確かにガトランティスは単なるアメリカモチーフというよりも、超大国に普遍に存在する性質を取り入れた存在と言った方が正しいといえるだろう。しかしながらガトランティスには大量生産大量消費、イデオロギー優先の征服計画。同時に合理的な考え方であったり、自由な気風を是としていたりといった複数のファクターが存在している。これらは極めてアメリカ的だ。

 超大国といえばアメリカだが、しかしアメリカだけが持つわけではない超大国の問題というのも存在する。超大国ばかりではなく、普遍的に存在する物質文明としての問題も存在する。

 これらの集合体がガトランティスと言っても過言ではない。

 だからこそガトランティスアメリカをはじめとした超大国、あるいは物質文明の歪な側面を映し出す鏡として機能する。だからこそガトランティスはヤマト史上でも指折りの意義深い存在なのである。

 

 

 

 これが、当ブログ――もとい協会が提示する横断的なガトランティス像である。 

 次回以降は、ガトランティスについての各論記事を上げていきたいと思います。