旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス艦艇の特徴

 

 

 今回はガトランティス艦の特徴は何か、各艦の考察に入る前に概要を見ていきたいと思う。まずは――
 ガトランティス艦に限らず、各勢力は個性的な艦影の戦闘艦を多数建造してきた。宮武さんよく考えるよな~、スタジオぬえすげ~、という当たり前の感想はひとまず脇においておいて、仮に実在の軍艦であるとして考えてみる。

 


 デザインについて。
 ガトランティス艦は前作のガミラス艦と近く、有機的なデザインをしている。〈メダル―ザ〉(こいつだけデザイナーが違うから、やっぱり雰囲気も大きく違う)が直線的なデザインを多用しているが、ガトランティス艦は基本的に流線型を基調とする。また、大戦艦だけ例外だが蜂の巣状の機構がついているのも特徴。大戦艦も翼端部に蜂の巣状の何かが引っ付いている。(今度DVD見た時、注目して)

 

 興味深いのが肌色と同じ色で艦体を塗装している点

 理由は不明だが、一つは何か特殊な防護塗装――白や銀色の熱線防護や、ステルス性担保の黒色塗装と同じ――であるという説明。もう一つはガトランティス人の認識力の問題という可能性がある

 

 人間の目の感度が一番高くなるのは緑色であり――嘘だと思うなら検索してみてください――、緑色のスペクトルを持つ光線は透過力に優れる。植物は赤と青の光を多く用いて光合成をおこなうが、わずかに吸収される透過力の強い緑色は、表側の葉緑体(陽葉緑体)のキャパシティを超える光を照射されても裏側の葉緑体(陰葉緑体)が投下してくる緑色の光を吸収して光合成を続行できる。だから暑い夏の日差しによってしなびる事はあっても活動停止して枯死なんてことが起きないのである。


 何で視認性を強調する必要が有るかは不明だが、仮説を立てるとすれば一つはガトランティス人が元々暗い惑星に拠する民族であったという説

 暗い惑星であれば当然、視認性を高めなければ原始時代などは相手との接触も望めないだろう。場合によっては恒星が緑であったか。温度が低いと赤くなるし、割合高いと白、超高いと青い光を発するのが恒星の色と温度の関係。では微妙に低いとどうなるかといえば、実は緑色に光る。太陽がそれ。もし、地上から緑色に見えるとすれば大気中か砂の中ににテトラピロール環をもつ化合物が大量に存在しているという可能性が言える。だから緑色に対抗するために肌の色が緑になり、反射するからこそ緑色が地球人以上に一番視認しやすい色になった。あるいは広大な宇宙空間において味方艦の位置を視覚的に認識する必要性――気持ち的な面もあるだろうし。うっかり接近しすぎた時の事故を防ぐ手立てを出来るだけ増やしたかった、という説明も出来るかもしれない。
 

 形状の妙――

 どうして二つの形の艦体を合体させる方式を取ったのかは不明。意味は幾らでもでっち上げられるが……例えば、空母は当然格納スペースや滑走路のスペースを確保するためと言える。必要な機能ごとに文字通りのブロックごとに組み立てて一つの艦に仕上げたという事。また、扁平艦体を採用した理由は至極簡単。何といっても扁平ならデッドスペースを減らせるからだ
 筒状の艦体は恐らく一番古い艦だろう大戦艦から採用され続けているものだが、それを駆逐艦まで維持した理由は建造しやすいとか強度を保ちやすいとかそんな感じの理由だろう。何で大戦艦だけ蜂の巣を採用しなかったのかは完全に謎で、大戦艦の設計時にはそんなものが無かったと仮定するか、あるいは装備しているが装甲でおおわれて見えないという仮定が出来る。

 

 次は艦の性能についての特徴を考察してみたい。

 

 

 特徴といえば一斉撃ち方は別にして、極めて効果的な一舷撃ち方が出来る事だろう。あの、回転砲塔だ
 回転砲塔は興味深い事に水平射撃も可能だし仰角を数十度上げて撃つ事が出来る。左右に射角を広く持つことも劇中で描かれている。つまり、舷側に設置された砲塔も艦上部に設置された砲塔と同じ目標に指向できるという事だ。しかも砲塔一基あたり同時に発射できるのは概ね2門ずつである。しかも地球艦隊のショックカノンと最低で同等、場合によっては倍速い砲撃のスパンを実現した速射砲という事。これは相手にしたら非常に恐ろしいだろう。
 一斉撃ち方は描写がない以上、それ位所の事は言えないため8門ないし10門あるはずの砲が一斉打ち方を出来るのかは不明。砲門数の多い回転砲塔を全門斉射する必要が有るかもまた不明だが。

 エネルギーの供給システムの想定としては、バッテリーで補助し戦闘直前にリボルバー的にあらかじめ装填するという方法ならば、どんな射撃も可能だろう。エネルギー充填は1か所ないし2か所で固定し、任意の砲門から射撃したとしても回転するためどこかのタイミングで必ず再装填できる。と言う形式を推測できる。全く描写がないからいくらでも何とでもいえるが。

 

 斉射という用語は(用語ではないというお叱りはこの際、ド素人相手だと思って飲み込んでください)結構鬼門な言葉だったりする。斉射は基本的に複数砲の同時射撃を指す単純な言葉だ。2隻いれば相手が漁船同士だろうが何だろうが艦隊ないし船隊である、というのと同じ。
 ただ一斉撃ち方となると話が変わってくる。この一斉撃ち方とは個別の砲塔内部における設置された砲の同時射撃を意味するらしい。で、一般的に映像が浮かぶ全砲門をぶっ放す射撃方法は一舷撃ち方と呼ばれる。

 同じ字面でもイメージが異なるから、この認識の差が埋まらないままに話を進めると、我々文系及び俄かミリオタと軍事専門家が取っ組み合いになってしまう。
 だって一斉撃ち方って響き的に搭載する全ての砲を撃ちそうな感じじゃん? と我々は思うのだが、軍事的には違う。斉射も規定されていなかったわりに、ここら辺こだわるのが日本軍。ここを取り違えたまま話を進めて、どえらい批判を食らった御仁が居るが、それは別にはなしに。私は司馬なにがしさんの事があんまり――というか乃木大将の件で大嫌いだから実はどえらい批判を食らった御仁の本、結構好きだったりする)

 

 話は戻して――

 例えば駆逐艦は円盤状の艦体部を持ち、その形状から上下の砲が常に参加可能で戦闘において搭載砲の半数を必ず発射できる。

 大戦艦に関しては確かにほとんどの砲を指向できるのは光体砲翼と衝撃砲の関係上、艦首のみ。しかし、通常の砲戦において使用するのは回転砲塔であり、砲塔に限定すれば片舷に搭載砲のほとんどを指向できる。

 極めつけは超巨大戦艦で、設置された巨砲砲塔群を片舷に集中する事が可能だし小型――と言っても実際は巨大――回転砲塔もそれに加勢する。
 例外は〈メダル―ザ〉。あれは固定砲台で俯仰角を調整できるぐらいだろう。当然、そもそも艦砲の無いミサイル艦も例外。
 この回転砲塔の速射性と、回転砲塔の射角の広さと相互カバーによる弾幕の濃密さがガトランティス艦の特徴の一つである。

 


 もう一つの特徴は快速である。

 個別の速力に関しては不明だし、地球艦やガミラス艦との比較は難しい。しかし、ゆっくりと反転して逃げていったバンデベル座乗の戦闘空母より、大戦艦の方が若干動きが早く見える描写が多いように思われる。

 土星決戦はバルゼー艦隊(シリウス方面軍)の進軍スピードをアンドロメダの艦橋クルーやヤマトの艦橋クルーも速いと認識していた。しかも、陣形を組んだままの高速移動が可能という点はかなり興味深い。
 無論、ヤマト第一シリーズの第一話で見せたガミラス冥王星前線基地艦隊の艦隊運動は目をみはるものであった。が、シリウス方面軍は規模が違う。また、プロキオン方面軍でも損傷を受けた僚艦の間を縫って駆逐艦や高速中型空母が航行していた為、航行性能は極めて高いと言える。

 快速であることは高火力である点と矛盾するどころか強い親和性を持ち、ある意味で火力偏重となった時点での宿命ともいえよう

 


 そして最後は紙装甲である点。
 先ほどのバンデベル艦、何とヤマトのショックカノンの直撃に耐えた。デスラー艦も文字通りのヤマトの直撃に耐えた。
 が、ガトランティス艦はショックカノンの集中攻撃を受けてもしばらくは耐えたメダル―ザ(と多分超巨大戦艦)以外はすべて紙装甲。普通にショックカノンの直撃で全艦木っ端みじん。しかも巡洋艦の砲撃で沈んだものも居るのだから、アレだ……。ガミラス艦やその他の陣営の戦闘艦はヤマトのショックカノンという一種の、負けても仕方がないという免罪符を所有しているが、ガトランティス艦にはそれが無い。正面から地球艦隊の砲撃を受けて壊滅した。
 まあ、損失が出ても大量に新しく建造して配備すれば問題ないとしたならば、幾らかの戦闘で大火力を供給すればいいだけで、紙装甲でも問題ないだろう。

 人でなしな運用思想という感は否めないが。

 

 

 

 最後に運用法。
 まず、集中運用方式の採用が特色だろう

 

 高速中型空母の鬼のような集中運用は冒頭シーンで見た通り、プロキオン方面軍のそれも同様。一方で、戦艦も又かなりの数をひとまとめにして運用しており、特に使い方の困るミサイル艦は同一艦のみで構成された艦隊として運用されていた。
 別個記事に纏めるが、中型高速空母は単艦での作戦能力は艦隊防空か揚陸支援か強行偵察程度、そこまで高い能力ではない。しかし、複数隻を投入すれば単艦でも作戦遂行能力の確保できる超大型空母並みの能力を質的に確保することは可能だろう。
 投射力に優れる駆逐艦、単艦では当然攻撃力は限定的になる。元々、何度も何度も攻撃を繰り返すのはかなり危険であり、単独では成功率は低くなる。一方で日本海軍が日本海海戦で見せた高速近距離射法の様に猛烈なスピードで接近してありったけの弾をぶち当てて、全速力で退避するヒット&アウェイ方式ならば練度が高ければ安全性は一定程度担保できる。集団で襲い掛かれば、味方に損害が出ても敵を撃ち沈める事が出来るだろう。つまり、さらばで見せたデスラー艦隊のそれだ。

 潜宙艦に至っては集団で襲いかかれば逃げる必要すらないだってその場にとどまって隠遁した方が安全だもの。
 大戦艦は撃たれ弱さが玉に瑕だが、その快速とえげつない威力の衝撃砲を束になってぶつければ当然、どんな艦隊でもヒペリオン艦隊の二の舞を演じる事になるだろう。

 

 どの艦も単独行動できなくはないが、しない方が得策だ。単独での任務がこなせるほど万能な艦はないと言える。超大型空母だって、単独だとデカい的でしかなく敵艦に接近されたらそれでお仕舞である。

 故に、特化した能力を持つ戦闘艦を敵艦隊を押しつぶせるだけの数を確保することで、各艦の弱点を無理やり覆いつくす。これが基本方針。

 

 だから、投入する量を確保する必要が有る。大量の艦を一か所に集中展開する。

 これをガトランティスは忠実に実行した。


 ガトランティス艦隊はたとえそれがデスラー総統率いるガミラス残存艦隊であっても撃破できるであろう数の艦をテレザート全面に展開させた。妙な二正面苦戦にならないようにゴーランドの守備艦隊を配下に付けた。

 ナスカの偵察陽動艦隊も地球の冥王星基地駐留艦隊程度は十分に撃破出来たと考えられる。一方的に第3外周艦隊をなぶったデスバテーターを大量に保有するこの艦隊ならば、当然第11番惑星程度蹂躙できた。

 シリウス方面軍のうち、第二艦隊もヒペリオン艦隊より強勢であったし、第一艦隊には火炎直撃砲があった。この超遠距離の攻撃では拡散波動砲も射撃機会すらない。


 ガトランティス艦隊は常に、相手より強力な戦闘艦隊を用意して攻撃を行った。そして彼らは万が一、状況がひっくり返りそうになった場合に限って必殺の特殊兵器を使用(おかげでヒペリオン艦隊は散々な目に。事前に知っていれば……)したのである。

 と、運用面からそう推測する事が出来る。何ともすごくアメリカっぽいドクトリンだし、陣を張って順繰り・着実に攻略しようとする点はすごくローマっぽい考え方

 

 以降に登場した勢力、例えば――暗黒星団帝国の唐人君デーダー司令は普通に交戦して味方艦隊全滅でも、そんなヤバいヤツあいてに余裕ぶっこいて居座り、やっぱり敗北。ボラー連邦はプロトンミサイルがリスクになるにもかかわらず旗艦にぶら下げ、意気揚々と出撃したバルコムもゴルサコフも返り討ち。

 必殺の兵器もない癖にイキったルガールJrも変な艦隊展開させただけで、ハイパー放射ミサイルが通用しなかった際に迅速に砲雷撃戦に転換したことで上げた株を、結局は落とした。思えばダゴンも大して優勢でもないのに戦闘を仕掛けて、うっかり戦況をひっくり返されてしまった。

 みなさん、ヤマトの(ゴルサコフのみ、新型デスラー艦のハイパーデスラー砲)被害者ですが、にしても圧倒的な戦力差や作戦、必殺の兵器もないのに突撃をかました結構雑な方々。負けたのには、負けたなりの理由があった。

 勝てる戦いを組織の甘さで逃したともいえるだろう。

 

 

 一方ガトランティスは常に大戦力を、相手を十分偵察した上で戦闘に持ち込んだ。

 この用意周到さは、さらばでの第11艦隊との戦闘や、ヤマト2での土星決戦の対戦艦戦闘で見事に的中している。あの場面で負けたのは組織の甘さというよりもむしろ、指揮官のわきの甘さに起因すると言っていい。バルゼー、ゲルン両提督の事。

 一方で敗軍の将を冷遇してしまう傾向にあるガトランティスにおいて、多分軽く扱われたであろうデスラー総統のヤマトについての(どこか感情的で説明しがたい)情報は捨て置かれたと考えて不思議はないだろう。となると、事前情報の質が悪かったゴーランドやナスカがうっかり負けたというのも説明がつく。

 これも組織自体というより、指揮官やらのわきの甘さといえよう。

 

 

 基本的にポテンシャルは高い、それがガトランティス
 どうも決戦兵器は現地最高司令官ないし艦隊最高司令官の発砲許可が必要らしいこれはかなり珍しい要素。確かに少し運用を硬直化させるが、同時に上意下達のシステムを堅持するうえでは重要だろう。また、戦略的に使えば、戦術的に戦闘で生かすことさえ可能だ。

 

 例えばゴーランド艦隊の支隊を率いた、デスタール。彼は劣勢確実と言う状況に冷や汗流しながらヤマトを迎撃した。その際、破滅ミサイルは未使用だった。だからデスタールは木っ端みじんになったが、ゴーランドは安心して破滅ミサイルの使用に移れた。ビックリドッキリ感が確実に維持されていることがわかっているからだ。結局波動砲で粉砕されたが……。

 他方、11番惑星兵站基地司令はちゃんとヤマトの脅威評価を行い、駐留していた第25戦闘艦隊との共同作戦を敢行した。が、であるならば必殺の衝撃砲を使っても不思議ではないのにそれをしなかった。それが故にシリウス方面軍第二艦隊がヒペリオン艦隊に対して圧倒的優位を以て衝撃砲を利用することが出来た。第二艦隊は衝撃砲を以て戦闘を進め、そのビックリドッキリ感が地球艦隊主力の行動を抑制する事になったと言えるだろう。

 さらに言えば、彼らは決戦兵器を封じられながらも正しく脅威評価を行った後ではヤマトに対しては十分損害を与える事に成功している。これはある意味驚異的な所で、まさにガトランティス艦の戦闘的なポテンシャルを示す事案と言えるだろう。

 

 艦隊戦に関しても艦隊の性能を組み込んでのプロットが作成され、それに基づいて我々ガトランティスは正面切って決戦を挑むという選択をする。これも又、各艦のポテンシャルが高くなければ出来ない事であり、同時に艦隊としてのポテンシャルの高さがある故に様々な作戦展開が構築し得た。

 そう考察する事が出来るのではないだろうか。身内びいきだが。

 


 だったらバルゼー(映画版)はなぜ負けたのか――これは多分、波動砲の充填スピードがヤマト並みであるとの見込みが外れたため、展開しきる前にアンドロメダに畳みかけられてしまったと説明できるのではないだろうか。まして拡散波動砲だったなんて知る由もなかっただろう。そうなれば、不用意な行動をしても彼の得ていた情報からすれば仕方がない。
 ともかく、ガトランティスをヤマト作品の登場勢力として評すならば――常に戦略的に妥当な判断を下し続けた、妥当な手法を取っていた勢力。フィクションの存在としてて極めてリアリティのある勢力、であろう。

 

 高火力、高速力、大集団、紙装甲。

 それが我らガトランティスである。