旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス超兵器 火炎直撃砲―兵器体系の革新―

 

 

 火炎直撃砲はガトランティスが用意した対拡散波動砲決戦兵器である。専用母艦〈メダル―ザ〉によって運用される、ヤマト史上屈指の超兵器だ。

 


 火炎直撃砲は二つの構造からなり、砲としての根幹であるプラズマ砲1門と射程の要である連動した瞬間エネルギー移送器二基によって構成される。

 用兵、技術、登場時期からガトランティスの技術とガミラスの技術を組み合わせた兵器であると推測されるし、最も妥当なバックグラウンドと言えるだろう。

 

 

 開発・緊急の必要性

 装甲に重きを置かないガトランティスにとって、今次作戦は相性最悪と言える。

 ショックカノンの強力な打撃力の前ではガトランティス艦艇は全く無力。味方艦隊は速射性は極めて高いが射程は短く、自身を守る術として主砲は全く無力。数と言う最大の打撃力は拡散波動砲の前では確実性に欠ける。しかも、損失が極大化してしまう。

 

 ガトランティスには地球艦隊と正面切って戦う術が――ない。
 幸い、第7話という比較的早い段階でこの最悪な事態が確定的であることが判明した。事前にわかっていれば、対処のしようもある。

 その対処法が、火炎直撃砲であるのだ。

 

 拡散波動砲は直径5万宇宙キロ前後の圧倒的効果範囲と11万宇宙キロの射程を持つ決戦兵器だ。しかも、さらばではカウント5秒程度で発射に至った。

 これではどんなに速度を上げて進撃しても前衛部が地球艦隊を砲戦距離に捉える前に大損害を負ってしまう。通常兵器での攻撃を指向すれば、下手をすればただひたすら艦隊をすり潰すだけになってしまうかもしれない。デスバテーター隊の支援が絶対になるが、だが万が一それが不可能になった場合……確実に艦隊は敗北に近づく。勝てる可能性は……。

 

 そこへきての瞬間物質移送器これを用いれば、観測可能距離が攻撃可能範囲となるのだから、圧倒的なアドバンテージとなる。1発当たりの効果が限定的でも確実にアウトレンジ攻撃が出来るならば、その方がガトランティスのニーズには答えられる。

 これはぜひとも完成させたい。

 完成させて艦隊に配備したい。

 

 

 

 火炎直撃砲の性能
 メダル―ザの要、火炎直撃砲とは何か。23万8千宇宙キロから準備を進め、22万宇宙キロで砲撃を開始。原理から言えば射程は無限に近いゆえ、特に考察する必要はないだろう。ガミラスのそれに準じた性能であれば、七色星団でドメルが艦載機を飛ばした程度の距離は確実と言えるだろう。

 それよりも、一回一回の転送の素早さやエネルギー充填の速度、つまり連射性能は非常に高い。こちらの方が火炎直撃砲の有用性を高めているといえよう。

 

 

 砲の根幹は、見るからにしてプラズマ火球であることに疑いはないだろう。
 プラズマとは物質の第4の状態の事であり、陽イオンと電子に分かれた状態で自由運動しているその粒子の事を言う。エネルギーであって、エネルギーではないという極めて微妙な状態である。自由に動きまわり、常に高エネルギー状態で、性質が条件によって異なった振る舞いをする大変――文系には理解しがたい状態だ。

 

 

 火球形成は、恐らく圧力をかけた固体化した気体を砲撃直前に電離させ、前方に噴出させて行うだろう。吹き付けるだけでは一向に火球にならないため、磁力線を張り巡らせて籠の様にした遮蔽空間を作ってその中に輻射するという方法が簡単だろう。イメージとしては、水風船みたいなものだ。これで何とか形を火球としてまとめ上げてその威力を高める。

 核融合において融合を起こさせるための方式として磁界閉じ込め方式と呼ばれるものがある。プラズマは磁力によって制御可能なものなのであるらしい。私の妄想ではなく、れっきとした事実。


 あるいは、プラズマに電気を通して形成する。
 プラズマは物質的な振る舞い――物質の第4状態だしね――をする。どんな物質が原型であったかは関係なく、その後の形質によって性質が異なる。

 普通の分子と同じように振る舞って結晶を形成するダストプラズマや、電気的に偏ったプラズマ固体プラズマなどがある。形質が判っていれば利用目的によってその形状というか性質を変える事が可能で、例えば人工的に通電させることでひも状に凝集化させることが可能だ。当たり前だが、プラズマ発生時点でこの形質を設定しておけば苦も無く利用できる。

 低温プラズマ高温プラズマというざっくりした定義もあり、後者は核融合に用いられる。何と温度は1億度に到達するのだ。

 

 で、これら複数の方法を組み合わせる事で火球を形成することは容易となる。

 何にせよとりあえずプラズマを発生させて磁界の中に封じ込め、球状に形成する。それが出来ればそれでいい。

 実のところ、プラズマ一粒が1億度など、結構火傷する程度でそんなに問題とはならないしかし、相当数のプラズマで構成されたの濃密な結晶であれば当然、そんな悠長なことは言っていられ無くなる。太陽クラスの火球が高い密度で媒質を手に入れて熱エネルギーを発散すれば、当然その影響は高いものとなる。

 プラズマの材料は何でも構わない。水だってその候補である、つまりいわゆる水プラズマだ。利用するのは正確には気体である水蒸気。


 星巡る方舟のメガルーダなんかは、水プラズマを採用しているとすれば――砲撃終了後のあの蒸気噴出も余剰蒸気を排出したとして解釈出来て、“なんだかわからないけど、リアリティのあるっぽく見えるなんちゃって描写”から“結構理に適った描写かもしれない”へと深化させることが出来る


 つまるところ、磁界の中に1億度を担保したダストプラズマを放出、結晶化させ、発射直前に電気的エネルギーを加えてさらに凝集。これを瞬間エネルギー移送器によって転送させるという事になろう。

 発射前の火球は当然巨大になろうが、発射直前においてほんの粒子数粒分にまで縮小できれば、あるいは転送できるかもしれない。少なくとも人体転送とは違って、内部の情報を完全な形で転送する必要はないのだから、多少強引な方法を使っても問題ないだろう。高エネルギー状態を保って敵艦に直撃させればいいだけなのだから。

 

 

 転送方法が問題になるが、これは量子テレポートが成功している現代科学であれば大して危惧するというか……突っかかるほどの事ではないだろう。

 現代で成功を見た方法を利用すると、光線であるとか光ファイバーによるガイドが必要になってしまう。残念ながら、地球に現段階で存在するテレポート技術は基本的に転送範囲の制約がかかっているのだ。良く言えば、火炎直撃砲に射程が存在する理由に採用してもいいだろう。かなり前向きな捉え方だが。

 反対に、出来事は2201年と遠い未来なのだからわざわざ現在の技術に落とし込んで想定などせず、無視してもさほど大きな矛盾や齟齬を生むものではないと切り捨てる事も可能。

 

 正直言うと、文系の限界。こっから先の技術の整合性はちゃんとした理系の人にお願いしたい。

 

 

 


 一つ、よく言われる事だが……つまり、エネルギーは転送できないという問題がある。だが、今回は問題を私が問題として認識できていないため、いったん棚上げさせてもらう。つまり、一貫して「プラズマだって物質じゃん、物質の状態の一形態じゃん」という前提で話を進める

 素人考えで恐縮だが。

 

 


 他の仕組みの転送という可能性も考案できよう。

 別に一個に絞ることはない。

 

 

 
 量子もつれをプラズマ火球ではなく、空間自体に適用させるという方法である。
 対象となる空間のデータを観測し、数学的に同一の空間を火炎直撃砲前方に展開、電気ないし物理的エネルギーによってその空間に投射。ゼロ距離状態として着弾させる力業が一つ。

 イメージ的には着弾地点を強制的に砲の真正面に引き寄せるという事。数学的に同一ならば、本当は別物でも大体一緒で同じと仮定しても問題ないと言うような話である。双子の片方に刺激を与える事で、もう片方の刺激を推測してアクションを起こす――みたいな考え方だ。

 ただ、相手方の攻撃がこちらに影響を及ぼす可能性もあるため、安全性に疑問が生じる。まあ、極めて限定的な一致である為、容易に崩壊するだろうから、大した心配は必要ないはず。


 もう一つは、量子もつれを全力で利用する方法

 細かく言うと、あるいは着弾地点と数学的(ないし量子論的に)対=EPR相関にある量子同士の内、片方を艦前方空間に展開させる。そして発射と同時に磁界で遮蔽されていたプラズマを対になる通常空間に放出、この量子もつれの状態にある通常空間の粒子を急激に変質させる事でEPRペアの片方(送信側)の状態を確定する。この極高温状態を着弾地点=受け手側のEPRペアに送信する。

 例えるなら、宙に浮いたコインの表裏を積極的に確定させに行くのに似ている。宙に浮いている状態ならばいくらでも不確定なままでいられるが、表を表に状態を確定させることで裏が表になる可能性を消滅させる。つまり、コインの状態を一方確定することで支配するという事だ。

 磁界によって極限まで小さくして事実上一つの粒子の情報として組み込むことが出来れば、あるいは複数同時に情報を確定して分割して転送する。これで何とか転送できるだろう。そもそも一般的なイメージの転送ではないが。

 

 

 あまり転送を使わない方法としては真空崩壊
 仮に今の宇宙が真の真空であったとしても、あるいは偽の真空であったとしても、偽の真空を積極的に創ってしまえば構わない。自分側で創った真空であれば、それが偽であろうが真であろうが自由に設定できる。

 その真空を創るのが難しいが。ともかく、真の真空を創って通常空間=偽の真空を崩壊させる;偽の真空の持つエネルギーを放出させる。あるいは偽の真空を創って通常空間=真の真空にエネルギーを放出するかのどちらか。
 偽にせよ真にせよ宇宙の真空はほとんど安定状態である。この安定状態を崩壊させるためには当然相当なエネルギーが必要だが――そのエネルギーが火炎であり、瞬間エネルギー移送器は崩壊したエネルギーを正しい方向へ転送という形で投射する……火炎直撃砲は電灯の笠のような役割をアグレッシブにこなし、崩壊の影響を前方に集中させるという事。

 

 

 これらのひねりを利かせた転送方法はネーミング詐欺といわれる危険性がある。

 が、アメリカに限らず性能や中身ではなく音や見た目で名前を決める国は多いのでそんなに問題ないと思われる。

 例えばポンポン砲(撃つ時ポンポンいうから)やT40ウイズバン(ウィズがヒューンで、バンがバコーン。撃って着弾する時そんな感じだから)、1.59インチビッカース Q.F. ガン, Mk II=通称ビッカース・クレイフォード・ロケットガン焼夷弾を発射した時の火炎から)だったり、ノリで名付ける事も欧米はよくやる。

 この辺りのノリの良さは正直、日本にはあまり見られない。

 

 

 ともかく、火炎と転送を組み合わせての攻撃方法は現代の理論でもいくつかを組み合わせて都合のいい条件下であれば、極めて難しいが――やって出来ない事はないだろう。火炎直撃砲は、現代の地球でも優秀な科学者と莫大な資金をつぎ込めば、やって出来ないことはないかもしれない兵器といえる。実用に乗るかは大いに疑問だが。

 そんな兵器を、超科学兵器:白色彗星を有するガトランティスが製作出来ないはずはない。

 ただ、〈大きい事はいい事だ〉的な側面のある彼らでは、瞬間物質移送器の必要性が薄い。巨大な艦を巨大な艦隊でぶつければいいだけで、奇襲的に襲わせる必要がないからだ。もし仮に構想があったとしても能力範囲外の艦体であったり、同移送器が巨大化して運用難であったという可能性を想定できる
 そこに豆粒のような大きさにもかかわらず、駆逐艦や艦載機編隊程度ならば十分に転送できる高い能力を持った瞬間物質移送器がガミラスからもたらされた

 であるならば、持てる技術を組み合わせて火炎直撃砲の製作に取り掛かるのは当然だろう。求めていた完成形の火炎直撃砲制作へ大きな飛躍がもたらされたのだから。

 


 わかって書いてると思う? 用語は一々明らかに頭のいい方のページとか、コトバンクとかで調べたけど、後は私の妄想レベル。

 

 

 メダル―ザ建造にはおおむね50日程度しかかかっていない。
 火炎直撃砲は、デスラー総統を保護した時にすでに次世代の新兵器構想の中にあったかもしれない。デスバテーターに代わるロングレンジ兵器としての期待である。当然、技術が揃っているのだから障壁は少ない。

 難にせよ、最低でも一年程度は構想と試作にかけただろう。 

 

 では、なぜメダル―ザ建造を急いだのか。なぜ火炎直撃砲の投入を急いだのか。
 アンドロメダの存在であろう。必要か微妙、あったらいいなという程度の兵器であった火炎直撃砲を、必要な兵器たらしめたのは他ならぬアンドロメダだ。

 アンドロメダが搭載する拡散波動砲は単なる決戦兵器ではなく、領域を支配しうる兵器である。それが艦隊の大型艦には全て装備されているというのだから恐ろしい。
 絶対に敵の有効射程圏に入ってはならない。これを実現する夢の兵器が火炎直撃砲をだった、そう理由づけられる。

 だから火炎直撃砲の実用砲製造は極めて急ピッチで進められただろう。もしかすると別の目的の為のキャリア艦だったメダル―ザを転用して徹底的に建造期間を削減したかもしれない。ズォーダー大帝はアンドロメダに初めから懸念を示していた。これを払拭するには、火炎直撃砲以外の兵器使用はあり得ないだろう
 

 
 
 敗北の理由

 これは複数の可能性があげられる。一つの理由に集約できるかもしれないが、正直一つに集約する必要性もない。複数の理由が同時に存在したとしても不思議はないのだ。何はともあれ、技術の緊急開発と言う事が事故のベースには存在するだろう。

 

 一つには水蒸気爆発。
 みたらわかる。高温で凝集したプラズマ大火球を氷の中に突っ込ませたら一発だ。バルゼーが転送プロセスを磁界による完全なる遮蔽と過信し、磁界が途切れるリスクを軽視したと説明づけられる。あるいは、連続射撃によってそもそも砲身が過熱しすぎて図らずも水蒸気爆発を引き起こして、プラズマ転送に支障をきたして期待値以下の転送にとどまってしまった。

 要するに膅発事故を起こしてしまったという事。連射のし過ぎ。

 

 氷以外のものが引き起こした爆発。
 土星の輪は何もすべてが氷というわけでは無い。岩もあるし、薄っすらガスの分子が漂っている。これら複数の性質を持った粒子が発射後の高熱から3度に温度が急激に下がる過程に巻き込まれて、結合が保てなかったのか、結合が強固になったのか、膨大なエネルギーを生じさせたという考えが出来る――かな?

 デブリによる観測ミスないし、デブリ自体の観測ミスでEPR相関が保ち切れなかった。これはものすごく単純。デブリによって着地点の観測が甘く、構成条件の同一化できなかったりEPR相関のある粒子の探査が不十分で、転送が一部完了しなかったという事。仮に同様の事態が起こっても、本来ならば宇宙空間に直接放出ないし艦自体が媒質としてそのエネルギーを受け取り明後日の方向へ受け流し無力化するはずだった。それがデブリによって阻害されたという可能性。

 総括すると、通常物質と予想もしない形での粒子の接触や、多数の媒質によってエネルギーが予期しない形で伝播されてしまい、乱流が発生したというもの。

 

 瞬間エネルギー移送器の不具合=初期不良
 本来、直撃砲発射直後まで照射しなければならない転送波が何ら中の理由で途切れ、転送しきる前に照射が終わってしまったということ。元来は別の技術体系であろうガトランティスガミラスの技術を合算したのだから、当然齟齬が出てもおかしくはない。

 つまるところ、初期不良という身もふたもないが肝心のタイミングで発生する椿事。たとえるなら、POWなんかビスマルクを撃ち切れなかった事。他にも、ポンポン砲なんか、初期不良が標準装備クラスに具合が悪かったという話もある。

 初期不良は歴史上ままある事。これを可能性から排除するのはご都合主義だ。

 


 考えようによっては、バルゼーの無策というよりも人間が創り出した兵器の限界というか不安定さによるところが大きいのかもしれない。

 初めて出会ったかもしれない長距離決戦兵器=拡散波動砲。これに対抗するため、火炎直撃砲を出来るだけ早く完成させなければならない。その焦りを原因として、開発に関わる全ての工程を簡素にしたことは想像に難くない。

 技術を焦って開発するとろくなことにならないが、残念ながら火炎直撃砲もその落とし穴からは逃れられなかった。そう説明づけられるだろう。

 


  火炎直撃砲は対拡散波動砲決戦兵器としてよく機能した。そして、ガトランティスの性格を良く反映した兵器であるといえよう。

 ただ、実戦投入するには試験運用が不十分だったのかもしれない。